NO.003
発行年月日:2004/10/14

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トピックス
ゼロリスクが目標の「安全ボケ」社会!?
    ———第11回化学物質と環境円卓会議を聞く
論壇
ダイオキシン騒動を顧みて
倉敷市 牧野哲哉
お知らせ
編集後記

トピックス

ゼロリスクが目標の「安全ボケ」社会!?

    ———第11回化学物質と環境円卓会議を聞く


 秋雨前線真っ只中の東京10月5日(火)、港区青山のフロラシオン青山へ、傘をさして出かけました。お目当ては9時半から開催の「第11回化学物質と環境円卓会議」。環境省主催の会議で、環境問題に関するリスクコミュニケーションについて行政側、産業界側、市民側の代表が、文字通り円卓を囲んで議論する、なかなか面白い企画です。

 第11回を迎えるこの日のテーマは「環境ホルモン問題」。ここ数年間、社会を騒がせ続けているこの問題に、日本の各界の有識者がどのようなコメントをするか、興味を持って聴講しました。

 会議はまず、国環研の森田氏と国連大学副学長の安井氏が、それぞれ25分間の話題提供。「いわゆる環境ホルモン問題は学術的には緒についたばかり。人類にはかり知れない影響を与える可能性があるので、今後もゆるめず研究を続けたい」と森田氏。対して安井氏は「環境省の発表データを見る限り、この問題は、まあたいしたことはなかったなという程度だと考える。リスクはゼロにすべしという論があるが、何事にもベネフィットとリスクとは表裏一体のもので、リスクだけゼロにしようとするとかえって別の大きなリスクを抱えることになりかねない」と力説。

 引き続いての討論では、各界各氏のコメントと応酬が続きました。個々人でニュアンスの差はあるものの、エイヤッとまとめれば、「まだ発現してないものの、将来、長期的な、かつ世代を超えた悪影響が懸念される環境ホルモン問題については、徹底的な調査研究を進め、一日も早く事実を明らかにすべきである」という市民側、「不安はわかるが、リスクの大きさから言えば環境ホルモン問題が最大なのだろうか?貴重な国家資源の投入をより効果あらしめる為に、何を重点施策とするか幅広く考えるべきだ」とする産業界側、「環境ホルモン問題は今後長期に取り組むべき課題の一つ。研究資源配分も、全体のバランスを見ながら着実に進めたい」との行政側、といった所でしょうか。

 なかで、私たちにとって興味深かったのは、経済産業省の某氏の発言。いわく、「リスクを気にしすぎるとかえって別のリスクを負うことになりがちである。たとえば、鉛のリスクを気にして、電線被覆材を非塩ビにする向きがあるが、代替材料は燃えやすいため、漏電等による火災が増えている可能性がある」というもの。これを受けて市民側の某氏からも、「市民団体のわれわれも、塩ビを全面排除する意見ではない。適材適所で使用すべきだという論である」と、思わぬ塩ビ擁護(?)のコメントも飛び出しました。

 全体の議論を通じて感じたのは、いまや、単なる「リスクゼロ」の思想は論外であり、それぞれの課題について、ベネフィットとリスクのどの辺で折り合いをつけるかの社会的コンセンサスが求められており、そのためにもこういった幅広い構成メンバーによる意見交換の場が有益であるということでした。安井氏の資料にあった「ゼロリスクが目標の『安全ボケ』社会」というせりふは、やや強烈過ぎるものの、今の日本の現状をある意味で鋭く突いていて、共鳴感を覚えました。

 この種の催しは、聞くところによると今後も定期的に続けられる由ですが、もう少し参加者の層も厚くし、より多くの人が議論に加われるようにすることも必要ではないのかな、とも感じた次第です。


論壇

ダイオキシン騒動を顧みて

倉敷市 牧野哲哉

 犬を連れて散歩に出ると、今は、庭先に芙蓉の花が風に揺れ、金木犀の匂いに出会う。やがて菊爛漫の時期になる。そして垣根で山茶花も咲き始めるだろうか。花屋の店先では、パンジーとシクラメンが並ぶ。と、頭の中で花を追いかけていて、ふと思った。今の日本で、自然を愛でる人達はどれ位いるのかな、子供達は何処でどんな風にして花の名前を覚えるのかな。どうも、環境、環境と言えば言うほど自然が遠くなる気がする。

 話は一挙に飛ぶが、ダイオキシン騒動、それは問題ではなく騒動と呼ぶに相応しい事が漸く判り始めたのでこう書くが、で苦しめられて、何故騒動になってしまったのかを考えて見ることにした。
 ダイオキシン騒動は、1990年(厚生省旧ガイドラインが出た年)頃までは、それ程ではなかった様に思うのだが、それ以降、1997年に新ガイドラインが出て、特別措置法まで成立してしまう間の経緯は異常としかいいようがない。ダイオキシンが猛毒であるという偏った学者の主張のみが採用され、マスコミの騒ぎに乗じて政治的に利用されてしまった。

 ダイオキシンは人に対しては猛毒ではないと言うデータはかなり前段階で、既にあった。過去の不幸な出来事(ベトナム戦争の枯葉作戦、セベソの農薬工場事故、カネミ油症事件)のため、ダイオキシンに高濃度に被曝した人達の臨床データの報告は80年代に出されている。冷静に読めば、いずれも人に対して深刻な内容ではない。一般の者でも読める書物としては、例えば、滝沢先生の「ダイオキシンの医学」(1993)、John Emsleyの「化学品ガイド」(1994)、その日本語版「逆説・化学物質」(1996、渡辺東大教授訳)に、ダイオキシンにはそれ程の脅威はない事が解説されている。J.Emsleyの本には、ダイオキシンが毒でないことを示そうとして、これを飲んだ医者の話まで書いてある。
 間違った恐怖を少しでも和らげようと、和田東大名誉教授は、産業医学レビュー(1999)にダイオキシンの人に対する臨床データ(延べ34万人もの高濃度曝露データである)を詳細に解説し、行政がリスク削減のために用いる動物実験から求めた、安全率を大きく取った耐容量が、人の絶対正確な有害性指標として誤って理解してはならない、と指摘されている。和田先生のこの言葉には、人について信用に足る臨床データがあるにも拘らず、動物実験のデータを用いている事への抗議も含んでいると、私は思う。

 ダイオキシン猛毒説に対する慎重論が、何故、消えたのだろうか。思うに、化学品規制のやり方にも問題がある。法的に規制を考える場合、常に動物実験のデータが採用されるが、そのやり方が本当に正しいのだろうか。人についてのデータがない場合は、動物実験に依らざるを得ないが、動物で起きた事は人でも起きるとする常識論に当てはまらない例が幾つも知られてきている。ダイオキシンもその例だが、塩ビの可塑剤であるDEHPもそうである。DEHPを含む塩ビ製医療器具によって幾多の命が救われ、その背景に膨大な人の臨床データがあるにも拘らず、これを無視して、一部の動物実験のデータのみから、安全率ばかり大きく取った規制のやり方にはどうしても納得できない。
 逆に、動物実験で安全とのデータが出ていても、人の臨床試験で有害なデータが出る場合もあるだろう。この場合は深刻な被害が出てしまう。

 そろそろ、化学品の規制の根拠を、ある種の動物試験にのみ拠るのを考え直すべき時期ではないかと思うのは、私ばかりではないだろう。何とか、今度の様な過ちをしないやり方を考えて欲しいものである。


お知らせ
セミナー

・慶應義塾大学 開放環境科学専攻

  16年度・後期 一般・環境公開セミナ−
テ−マ:『21世紀は人類最後の世紀になるか?』
期間 平成16年10月23日(土)〜平成16年12月18日(土)全6回
時間

13:30〜15:00(90分)(休憩10分)15:10〜16:40(90分)
場所 慶應義塾大学・日吉キャンパス・来往舎2階 中会議室
募集人数 学生30名・一般30名
参加申込

必要事項を記入の上、FAX又はメールにて申込下さい
株式会社テムス・環境コミュニケ−ションセンタ−事務局
FAX 03−3547−3656
携帯OKです
mail http://www.adad.jp/i/p/29469
(1)住所 (2)氏名 (3)メ-ルアドレス (4)FAX番号
詳細は下記URLをご覧下さい。
http://www.env-center.com/report/index.html

展示会 出展紹介

・「びわ湖環境ビジネスメッセ 2004」

開催日時 2004年10月20日(水)〜22日(金)
10時〜17時(最終日は16時まで)
開催場所

滋賀県立長浜ドーム(JR田村駅から徒歩5分)

JR米原駅〜長浜ドーム〜JR長浜駅を結ぶ
無料循環シャトルバスを運行。

主  催 滋賀環境ビジネスメッセ実行委員会

PVC NEWS発行致しました

PVC NEWS 50号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されました。詳細は下記からご覧頂けます。
購読を希望される方は、送付先などご連絡下さい。

http://www.pvc.or.jp/index/i_saisin.html

編集後記

 先週の3連休、久しぶりの骨休みで、伊豆へ出かけました。
 台風22号で道路が不通になっていたり、大変でしたが、何とか休暇を楽しみました。今日はそのときのお話。
 伊豆のとある町で、○○小学校の横を通りかかったら、3階建ての校舎の壁に、でかでかと、いわゆるその学校のモットー、というか、標語が掲げてありました。
 それがなんと「なにくそ、はげめ、つつしめ」というのです。
 しばらく絶句してしまいました。まあ、考えれば、意味は分からぬでもないけれど、なあ…。
 生徒に、想像力を身につけさせるための言葉なのかな?(H2記)


VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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