NO.022
発行年月日:2005/03/10

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◇マッチだけでポンプのないマスメディアでホントにいいのか?
第13回「化学物質と環境円卓会議」を傍聴して想う

随想
塩ビリサイクル事始
信越化学 木下清隆
お知らせ
編集後記

トピックス

◇マッチだけでポンプのないマスメディアでホントにいいのか?

第13回「化学物質と環境円卓会議」を傍聴して想う

 3月2日、肌寒い午後、地下鉄表参道駅近くの「フロラシオン青山」へ出かけ、「第13回化学物質と環境円卓会議」を傍聴しました。この会は、化学物質の環境リスク低減のために市民、産業、行政の代表による意見交換をする場として、環境省が主催して3年前から続いている会議です。
 今回のテーマは「メディアにおける化学物質問題の取り上げ方について」。以前から、この問題については、なんとなくむしゃくしゃしていましたので、これは聞きのがせないテーマです。

 会議出席者は、常連の行政・市民・産業各界メンバーに加え、NHK解説委員の小出五郎氏、もと日経新聞論説委員の武居照芳氏、上智大学教授でメディアリテラシーの専門家の音好弘氏の3氏。このお3方がそれぞれ話題提供され、それに関して意見交換する形で議論が進められました。

 化学物質に関する報道という意味で、当日話題提供されたお3方、とりわけメディア関係者のお2方の発言のなかから、筆者が興味を持って聞いたポイントを下記します。興味ある点だけ抜き出したので、ある種公平でないことは認めますが、ご容赦ください。
記者は、「大きくなる」記事を書きたい。危険を煽る記事は「大きくなる」が、安全だったという記事は「大きく」ならない。

危険でなかったという記事は、よほどうまく書かないと、デスクに「ボツ」にされる。

記者は大変忙しく、勉強する暇もなく、発表された情報を鵜呑みにしてそのまま書くケースが多い。

リスクマネジメントの観点からすれば、個別の記者に対するレクチュアを充実させ、彼らに正確な記事を書いてもらうようにすることが重要と思う。


 そのほかいろいろコメントがありましたが、全体として、筆者が、多分こうなんだろうな、と考えていたとおりの発言であり、その意味では非常に率直な、好感のもてる内容でした。
 ただし、マスメディアのあり方、という本質的な課題に関していえば、やはり、現在のマスメディアには基本的な欠点がある、と考えざるを得ません。

 ある化学物質が危険である、という論を、誰かが公表すれば、ろくに勉強もしないでメディアが飛びついて記事にする。その記事は「大きく」なる。社会は、市民は、それを信じる。後日その物質が安全だとわかっても、メディアは記事が大きくならないから、書かない。社会はその物質が危険だ、と信じ込んだまま、その物質を忌避する。
・・・ひいては、有用な物質を誤って忌避したことによって、社会全体が不利益をこうむる。
 メディアや、危険論者にとって都合のいい事には、すべての化学物質には絶対安全なものはなく、なにがしかの危険性はあるので、危険論を唱えたり、安全だという記事を書かなかったりする理由はいつでもある。

 ちょっと我ながらエキセントリックになってきたのでもう止めますが、マスメディアたるもの、このような、火付けのマッチは持ってるけれど、消火用のポンプは持っていない、という状態で、いいのでしょうか。単なる視聴率至上主義、利益至上主義を追うだけでなく、世論を正しい方向に誘導する機能をもっと発揮すべきである、もっと社会をより良い方向に導くべきである、とお考えにはならないのでしょうか。

随想

塩ビリサイクル事始

信越化学 木下清隆


 「硬質塩ビ板協会」なる塩ビ製品の加工団体がある。塩ビシート・波板・厚板を生産販売しているメーカーの業界団体である。1989年の秋、私はそこの初代環境委員長に指名された。その翌年の1990年5月には、早速、ヨーロッパにおける塩ビ環境問題の調査団長としてかの地に赴いた。メンバーはたった三人である。当時、日本においては環境問題など殆ど話題にもなっていなかった時代である。ところが、ヨーロッパでは1988〜1989年にかけて、塩ビは、燃焼したときに発生するHClが酸性雨の原因であり、多くの森林が枯れているのは塩ビのせいだとして、社会的に糾弾されていた。更に廃棄物処理問題も大きな社会問題となっていた。このような状況に対処するため、塩ビメーカー各社はそれぞれにいろんなパンフレット類を作成し、懸命に反論に努めていた。廃棄物対策として、フランスでは飲料水用塩ビボトルのリサイクル活動が始められようとしていた。ヨーロッパの塩ビ団体であるECVMが組織されたのもこの頃である。

 帰国後、我々業界も何かすべきであるとの判断から、塩ビ板協会は卵パックのリサイクル活動を開始した。1991年初頭のことである。当時、業界団体として都市ごみ系廃棄物のリサイクルに取組んでいたのは発泡スチレンとペットボトルである。従って、我々は3番目ということになる。
 活動の手始めとして大手スーパーを訪問した。当時、スーパーでは牛乳パックと発泡スチレントレー(PSP)の店頭回収が行われていた。だから、その横に卵パック用の受入容器も置いてもらえるものと、期待しての訪問である。スーパーの店長、本社環境担当者レベルの反応は好意的なのだが、上層部に持ち上げると尽く否決された。我々はその理由が分からなかった。一年程経った頃、横浜の或る大手スーパーを訪問したとき、先方の担当者は「こうゆうリサイクル活動は必要なんだが、卵パックが塩ビだとバレるのはねー」と口ごもった。これで一年来の疑問が氷解した。皆、塩ビ製品の使用そのものを知られたくなかったのである。何処にも相手にされなかった理由が分かった以上、この活動は続けられないと判断し、開店休業にした。

 ところがそれから半年ほど経った頃である。長野のスーパーと岡山の生協が、相次いで卵パックのリサイクルを始めたいと云ってきた。我々が鶏卵業界に手広くチラシを配布していたのが功を奏したのである。早速、二ヶ所でパックの回収を始めた。回収されたパックは路線便で関東と関西の所定のリサイクル業者に送ってもらった。数量は二ヶ所合わせて月に150Kg程度である。これを粉砕し、床タイル等の原料として再利用してもらうのである。こちらは粉砕費込みで40円/Kg程度で売却できたことから、リサイクル業者には迷惑が掛からないで済んだ。ところが店頭からリサイクル業者までの横持ち費用がバカ高いものになった。形状から分かるように空気を運んでいるようなものなので、その運賃はKg当たり250〜300円にもなった。正味200円以上の逆鞘である。
 これを何とかするために、岡山の生協では、店頭に我々が自前で制作した減容機を設置した。入口に数枚の卵パック空容器を重ねて入れると、これが押しつぶされて受け籠に落ちるという優れものである。我々は“パックマン”と名付けた。これを導入したことで運賃は150〜200円程度に下がった。しかし、このパックマンにも大きな問題があった。店頭に設置する以上、子供が手を突っ込まないか、入口から金属片を挿入されたらどうしよう、といった安全対策が全部取り入れられた。このため異常が起きると直ちに止まる仕組みにした。ところが実際に使用してみると、パックマンはやたらに止まったのである。これを管理していた生協の作業員は悲鳴を上げた。次は店頭粉砕しかないなと方針転換を検討し始めたが、この頃になって、岡山生協での卵パックリサイクル事業は残念ながら終焉を迎えざるをえなくなった。長野の方は、ペット製卵パックの混入率が徐々に高くなったことから、こちらの方は自然に中止となった。

 このように書くと話は簡単だがこの間、4〜5年は経っていた。そして、卵パックリサイクル事業も塩ビ板協会のレベルから、塩ビ業界全体のリサイクル事業に格上げされていた。塩ビレジン業界と加工業会とで「塩ビリサイクル推進協議会」が1991年末に設立されたからである。ここで卵パック・塩ビボトル・塩ビパイプのリサイクル事業が推進された。しかし、これらはあくまでもモデル事業であり、その期間は数年間と決められた。このような塩ビ業界の大方針から、我々の卵パックリサイクル事業もやむなく店仕舞になったという次第である。

 今から振り返れば、あの時継続していればの思いは尽きないが、当時の判断が、あらゆる意味での塩ビ業界の実力だったということであろう。なお、最盛期、卵パックは殆どが塩ビ製だったが、今は殆どがペット製に代わってしまっている。


お知らせ
PVC Newsが3/15に発行されます。

PVC News52号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されます。
お楽しみに。


目次

■トップニュース
 公共住宅への採用拡がる、リサイクル塩ビ管

■視点・有識者に聞く
 「SRI(社会的責任投資)」が企業を変える
 (株)グッドバンカー代表取締役社長・最高経営責任者 筑紫 みずえ氏

■リサイクルの現場から
 昭和電工(株)の廃プラスチック・ガス化プロセス

■海外事例紹介
 「塩ビへのポジティブな評価」が世界的な傾向に

■インフォメーション
 関東建設廃棄物協同組合の活動から

■塩ビ最前線
 全国に広がる、塩ビ管スピーカー仲間


塩化ビニル環境対策協議会のホームページはこちらから。

http://www.pvc.or.jp/

編集後記

 3月にもなって、なんと時ならぬ大雪が、東京や中国地方、さらには熊本や奄美大島まで降り積もったようです。これってもしかして、「地球寒冷化」か?
 冗談はさておき、月末には名古屋で「愛・地球博」が始まります。リニアモーターカーが開業したり、恐竜やシャチホコが展示されたり、楽しいイベント一杯のようです。
 この万博のあちこちで、塩ビが大活躍することをご存知でしょうか?どんなところで活躍するか、そのうち本誌でもご紹介します。お楽しみに。

 さて、それで、前回の数字語呂合わせ第2弾の解答
(1)0899:親孝行、(2)1564:人殺し、(3)2040:度忘れ、(4)2934:副作用、(5)9123:恋文、 (6)52884:五人ばやし、・・・ドウジャッタカナ?

(H2記)

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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◆編集責任者 事務局長  原田 浩

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