NO.142
発行年月日:2007/08/30

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トピックス
◇サブプライムショックと塩ビ
VEC 加地

随想

これぞ至福の時 −オオムラサキとの戯れ−

原田 浩(H2)

お知らせ
エコキュートフェア 出展案内
時代にあった高性能・高耐久住宅は?
=ハイクオリティな家づくりセミナーのご案内
世界ビニルフォーラムの詳細プログラム決定

編集後記

トピックス
◇サブプライムショックと塩ビ
VEC 加地

 サブプライムローンの焦げ付きに始まって、住宅ローン会社やヘッジファンドの破綻、そして短期金融の収縮など、アメリカ発のサブプライムショックが世界中に連鎖しています。日本では8月17日には日経平均が2000年4月のITバブル崩壊時以降で最大の下落を演じました。焦げ付き自体はローン全体の1%にすぎず、各国の中央銀行による流動性の供給もあって足元は小康状態にあるものの、いまだ予断を許さない状況です。
 震源地のアメリカの新築住宅は、7月度着工件数が年率138.1万戸で前月比▲6.1%、前年同月比が▲20.1%、先行指数である7月の着工許可件数も前月比▲2.8%の減少となりました。また中古市場の6月販売戸数は前年同月比▲11.4%の年率575万戸で、2002年以来の低水準となっています。米連邦準備制度理事会(FRB)が8月17日に「成長の下振れリスクがかなり高まった」と声明したように、個人消費への影響も懸念され始めています。アメリカのGDPの65%を占める個人消費が沈下した場合、アメリカの実体経済だけではなく、中国や日本、新興諸国でも波乱が生じかねません。

 これらの懸念の発端となったサブプライムローンですが、通常のプライムローンを借りることが出来ない移民や低所得層を対象に1990年代から始まった制度です。米国の住宅ローン残高10兆ドル(約1150兆円、日本の約6倍)の10%、件数では15%であり、日本と違って銀行ではなく、民間のローン会社がプライムローンより数%高い金利で融資します。ローン会社は個人の抵当ローン(mortgage loan)を束ねて証券化します。国際通貨基金(IMF)によれば、全米の住宅ローン10兆ドルのうち、その6割の6兆ドルが証券化され、ヘッジファンドをふくむ世界中の投資機関に販売されています。しかし余りに分散性が高いため、ヘッジファンド等がサブプライムローン証券をどの程度に組み入れているか、投資銀行にとって分かりにくい状況があります。そこで現在、延滞という借り手の問題よりは、ローン会社の審査、格付け機関による証券評価という貸し手側の金融システムの問題の方で洗い直しが進められています。

 それはさておき、サブプライムローンやプライムローンの借り手である消費者は大変な苦境にあることでしょう。彼らには、住宅価格が上昇したらその分を担保にして、低利のローンに借り替えできるという期待が高かったようです。ところがそれとは裏腹に2006年から住宅価格が下落し、加えて、グリーンスパン前FRB議長の12回に及んだ政策金利の連続的な引き上げ(現在、5.25%)でローン金利が急上昇したため、余儀なき延滞が増加し始めました。
 ここで忘れてはいけないことは、サブプライムやプライムローンといった金融制度によって、低所得者をふくむ広範な層が、まずまずの広さとバスや断熱サッシを備えた温熱環境の良好な住宅を購入でき、これを産業側も支えてきたという歴史です。塩ビの立場で言えば、断熱サッシやサイディング開発と普及です。中古を含めて年間800万戸のアメリカでは2×4住宅が一般的ですが、その外壁に厚さ2ミリ弱の塩ビサイディング(羽目板)、窓には塩ビサッシが使用されています。この二つで年150万トン、なんと日本での塩ビ消費量に匹敵し、アメリカの塩ビの約25%となります。デザイン、難燃性、メンテナンスフリー、材工費の安価さに加え、断熱性が高くCOの排出削減に直結し、地球温暖化の抑制に貢献しているため、カリフォルニア州などではエネルギースターマークが付与されています。

 米国では、2050年には現在の3億人が4億人になるだろうと推測されています。1年に200万人が増加する計算ですが、4人に一軒としても年間50万軒が、新築か中古リフォームとして必要になります。当然、建設において省資源、住んでみて快適、省エネルギーで保有コストも低く、リーズナブルな価格の「良質な住宅」が今後もニーズです。
 翻って日本ですが、住宅の省エネルギー基準が欧米より低いままですし、太陽光発電や樹脂サッシの購入でNEDOや環境省の助成措置が拡大されてきましたが、まだ部分的な措置にとどまっています。アメリカとは人口動態が異なり、人口増による経済効果は日本では期待できません。ということは、世界トップクラスの住環境を目指すような、質で勝負する内需喚起が必要なのではないでしょうか。京都議定書の公約達成のためにも、「地球と消費者にやさしい住宅政策」が望まれる所以です。(了)

随想
これぞ至福の時 −オオムラサキとの戯れ−
原田 浩(H2)

 今の世の中は全然そんなムードではありませんが、昔々、私がまだ少年だった頃は、昆虫採集というのが趣味、それもまともな趣味のひとつだった時代でした。
 その頃、まだ純情で人付き合いがすこし苦手、人間嫌いに近かったヒロシ少年は、ふるさと四国の城下町に残されていたお堀端でトンボ(狙いはギンヤンマでした)を捕まえたり、お城の中のクヌギ林でスミナガシを初めて見てギョッとしたり、気取って言えば自然に親しみ、自然の多様さに酔いしれながら過ごしていました(かっこいいねえ)。
 中学校では生物部に入り、仲間と一緒に近くの山に登ってチョウチョを採ったり、植物を観察したりして楽しみました。それが嵩じて大学生となって上京してからも、懲りずに東京の昆虫同好会に入って昆虫採集にいそしみ、おかげで4年で卒業する予定がちょっぴり長引いたりもしたのです。

 それはさておき、社会人となってからはさすがに昆虫の標本などは作らなくなりましたが、昆虫に対する興味と情熱は失わずに今日まで続いています。今でもテニスの時、コートに飛んでくるツマグロヒョウモンが気になったり(最近ずいぶん数が増えた)、たまに登った大菩薩峠でクジャクチョウを見つけて喜んだり、…。
 その意味では、採集こそしませんが、年は取っても少年の心を持ち続けているヒロシ君、と自分で自分を褒めてやってる(誰も褒めてくれないから)のです。

 前置きが長くなりましたが、実は私、先日素晴らしい体験をしました。7月の始めの日曜日、山梨県北杜市長坂にある「オオムラサキ自然公園」なるところへ行ってきたのです。
 ここではその名のとおり、日本の国蝶として名高いオオムラサキを、大きな温室のなかで飼育して来園者に観察させているのですが、時あたかも7月始めは終令幼虫や蛹を観察できると同時に成虫、つまりオオムラサキそのものが飛び回る、一年で一番の見ごろなのです。数年前に一度訪れた時には季節が少し早くて、飛び回る姿を見ることができず、今年こそと思って狙って行ったのです。

 くだんの温室、大きさは体育館ぐらい、オオムラサキの食草(幼虫がその木の葉を食べて育つ)のエノキの若樹がいっぱい植えてあって、長さ7〜8センチの終令幼虫がうじゃうじゃいる。葉陰のあちこちには蛹がぶら下がってて羽化の日を待ってる。それにも増して、オオムラサキのオスの成虫が数十頭、所狭しと飛び回ってる。普段はオオムラサキの飛んでる姿を垣間見るだけで心高鳴り、小躍りして喜ぶのですが、それが数十頭、ですぞっ。

 さらに、温室のところどころにオオムラサキの好む食べ物(樹液や動植物の腐敗したものを好む。ここではなんと腐ったバナナを置いてあった)をセットしたえさ場、いわばオオムラサキ食堂があり、数匹のオオムラサキが集まってきて、わき目も振らずに長い口吻を伸ばして食を満喫している。ふだんは用心深い成虫もこの時ばかりはえさに釣られて、人間が近寄ってもびくともしない。入園者がここぞとばかりデジカメのシャッターを押しても、平気の平左。つまり、酔っ払い状態なんでしょうな。

 そこで一計を案じ、人差し指につばをつけて、そうっとオオムラサキの方に差し出した。びくともしない。勢いを得てちょんちょんと突っつくと、もぞもぞっと動いて、口吻を伸ばして唾液を味見。気に入ったのか、重そうな身体を揺すりながら、人差し指に這い上がってくるではないか。よしよし、と様子を見てると、指から手のひらへ、さらに手首から袖口を経由して、胸もとまで這い上がってきて、一休み。しばらく胸の勲章の役目を果たした後、飛び立ちましたが、その間約5分間、まさに夢見心地、幸せの絶頂のヒロシ君でした。

 チョウチョ大好きの私にとって、オオムラサキは大いなる憧れの的。その一頭が空飛ぶ姿を見るだけでも胸つまるほど嬉しいのに、数十頭の群舞を眺めることができ、さらにこの指にとまらせ、この胸元にとまらせてひと時を過ごせたなんて、60年を超える人生のなかで誠に得がたい、至福の時そのものでした。

 最近では昆虫採集は、「環境を破壊する」とかであまり褒められた趣味ではなくなってるそうですが、破壊するもしないも、自然を知り、自然を理解するところから始めなければならない。自然に親しみ、自然を愛する心からこそ真の環境保護の精神が生まれ育つのではないか、としみじみ思う、今日この頃なのです。(了)

お知らせ

エコキュートフェア 出展案内

 オール電化は魅力だけれど、省エネも気になるし・・・。
塩ビサッシで窓を断熱すると、無駄な電気を節約できます。
エコキュート&塩ビサッシでより快適にオール電化生活を!

 樹脂サッシ普及促進委員会では、下記4ヵ所で行なわれる東北電力(株)主催の「エコキュートフェア」に出展致します。(入場無料)

【山形】 (終了)
【青森】 (終了)
【秋田】
・開催日: 2007年9月13日(木)、14日(金)
・場 所: 秋田市文化会館 地下第1・2展示ホール
【新潟】
  ・開催日: 2007年9月19日(水)、20日(木)
・場 所: 新潟市産業振興センター 2F大・中会議室
※各会場とも開催時間は、10:00〜19:00(2日目17:00終了)


時代にあった高性能・高耐久住宅は?
     =ハイクオリティな家づくりセミナーのご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会、樹脂サッシ普及促進委員会では、下記のセミナーに参加し講演を行ないます。
 セミナー後には、実際に塩ビサイディングでリフォームを行なった住宅の見学会も行なう予定です。
(こちらのセミナーは、建築士会継続能力開発(CPD)制度認定プログラム(3単位)です。)

・日 時: 2007年9月10日(月)
13:00〜18:00(受付12:15)
・場 所: 青森市文化会館 小会議室4
・主 催: 株式会社日本住宅新聞社
・入場料: 無料
・参加申込み締切り:9月3日(月)先着70名
※参加希望の方は下記までお問合わせ下さい。
   株式会社日本住宅新聞社
   電話:03(3823)2511

世界ビニルフォーラムの詳細プログラム決定

 9月米国ボストンで開催される世界ビニルフォーラム(World Vinyl ForumIII)の第二次開催案内がウェブ上に公開されました。
http://guest.cvent.com/EVENTS/Info/Agenda.aspx?e=e54b1463-74fc-4c18-867a-dd4856c8bebb
 会議は、9月26日のwelcome receptionに始まり、世界のビジネス環境と塩ビ産業の過去・未来について意見交換が行われるほか、塩ビ製品の製品開発やプロモーション活動状況、電子・電気業界の塩ビに関する話題やグリーンビルディングに関する講演が予定されています。27日と28日は展示会も同時開催されることから、デザイン性を活かした塩ビ製品の展示や情報交換が行われるものと期待されます。
参加の申し込みはウェブからどうぞ。

編集後記
 暦の上では暑さが峠を越える処暑を過ぎました。記録的な猛暑日が続いた今年の夏も終わろうとしていますが、長期予報では9月に入っても厳しい残暑が続くものと予想されていますので健康管理には充分な注意が必要です。
 ところで、この夏休みに日本の蒸し暑さを逃れて南太平洋の小島を旅して参りました。気温は30度を越えていましたが、湿度が低いせいかとても涼しく感じました。空港やホテルのロビーも開放的な構造で風通しがよいのが印象的でした。日本では四季があるのでこのような建築構造は無理ですが、東京では屋上緑化や自然の風をうまく利用した温暖化対策も進み始めているようです。ビルの緑地を工夫して、海風の通り道が出来るように小さな森を造ったり、ビルの配置や向きまでも工夫して風の通り道を作ろうとする試みが進められています。
 日本では古来から自然と生活環境をうまく調和させてきました。都市にあっても自然の恵みをうまく利用した温暖化対策を行うことで、より快適な生活が営めるようになるのではないでしょうか。(樹)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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◆編集責任者 事務局長  東 幸次

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