さて、塩ビ製品と室内濃度指針値の関係はというと、住宅には塩ビ壁紙やクッションフロアーなどが多く使われることから、塩ビ製品に使われる可塑剤であるフタル酸ジ‐2‐エチルヘキシル(DEHP)が空気中に放散する可能性があることです。実際の室内濃度測定の結果では、指針値と比べ2桁も低いことはわかっていましたが、DEHPを含有している塩ビ製品の製品評価のため、業界としても放散量試験方法の開発が必要となっていました。
折りしも、経済産業省では、2002年よりシックハウス対策に関わる建材の測定法のJIS化整備に取り組んでいました。その成果の一つとして、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)の放散測定方法(JIS A 1901)があります。ところが、DEHPは沸点が高いため、空気中に簡単に出てくるようなものではなく、空気中に飛び出した分子は空気中に漂うことなくほこりとか周辺の素材に吸着してしまうという性質を持っているため、このVOC放散測定法をDEHPの放散量測定としてそのまま適用できないことが分かってまいりました。
前述の経済産業省のJIS化整備に取り組んでいた建材試験センターのSVOC測定法部会(部会長、田辺信一早稲田大学教授)では、2003年から3ヵ年に亘りこの方法を含め各種試験法の評価と審議を行った結果、塩ビ業界が開発してきたマイクロチャンバー法が一番信頼性が高いとしてJIS原案としてまとめました。その原案を基に経済産業省工業標準調査会での審議を経て、このたびようやくJIS規格(JIS A 1904)「建築材料の準揮発性有機化合物(SVOC)の放散測定方法−マイクロチャンバー法」として成立、公示されました。 http://www.jisc.go.jp/newstopics/2008/080220sikkuhausutaisaku.html