NO.177
発行年月日:2008/05/22

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トピックス
◇塩ビマテリアルリサイクルを進める欧州の取組み
  −レコビニル(Recovinyl)システムについて−

随想
古代ヤマトの遠景(25) −【出雲の王】−
信越化学工業(株) 木下清隆

お知らせ
エネルギーソリューション&蓄熱フェア2008 『エネ蔵』出展案内
健康・省エネのための住まいを推進するシンポジウム IN 経団連 ご案内

編集後記

トピックス
◇塩ビマテリアルリサイクルを進める欧州の取組み
  −レコビニル(Recovinyl)システムについて−

 建物解体現場や施工現場からでる廃材、端材など使用済みの塩ビ建材を対象とした新しい収集システム、Recovinylがこの2,3年、欧州の広い範囲に拡大し、大きな実績を上げています。VECでは、Recovinylシステムの認定リサイクル事業者やRecovinyl事務局メンバーを4月下旬に訪問し、同システムの調査を行いました。以下このシステムについて紹介します。

使用済み廃材(窓枠)【硬質】
再生原料【軟質】
再生製品(自動車マット)
 Recovinylとは、登録された廃塩ビの収集、運搬、選別者(廃棄物処理会社、自治体などさまざま)と認定された廃塩ビのリサイクラーがウェブサイト上で情報交換できる収集インフラを通じて収集、運搬、選別者やリサイクラーに対する経済的なインセンティブにより、これまでリサイクルされることなく最終処分されていた使用済み塩ビ建材をリサイクラーへ持ち込むことを促すための仕組みです。このシステムの運営母体は2003年6月、当初は民間会社としてスタートしましたが、2005年より欧州塩ビ製造者協議会(ECVM:欧州のVECに相当する組織)も参画している「Vinyl2010」が全額出資する現在のNPO法人(本部ブラッセル)となりました。このシステムに参加するにはRecovinylに登録し、更にリサイクラーは認定を取得する必要があります。登録事業者の手で収集、選別された使用済み塩ビ建材は認定リサイクラーによって再資源化されます。廃塩ビを受け取り、再資源化したことがリサイクラーからRecovinylへ報告され、Recovinylは提携している監査機関の確認を得て、収集、選別もしくはリサイクラーにインセンティブ(資金支援)が支払われます。これらの情報伝達はすべてウェブサイト上で行われ、2007年現在、欧州全体で既に8000件以上の収集、運搬、選別事業者およびリサイクラーが登録、認定されている、とのことです。

 収集されている塩ビ建材には、硬質塩ビ製品では管・継手、雨樋、シャッター、窓枠、異型押出建材など、また軟質塩ビ製品では電線被覆材、床材などが挙げられ、排出場所に応じて、施工端材などと解体や改修からでる廃材とに分類できます。Recovinylによる収集実績は2005年、約1万t強に過ぎませんでしたが2006年には5万t近くまで、2007年は約11万tと急激な伸びを示しています。
 Recovinyl以外も含めた2006年の全体収集量が8万トン余りですので、このシステムがいかに欧州の塩ビ製品のリサイクルに寄与しているかがわかります。ちなみに、日本ではほぼこれと同量の使用済み塩ビ製品がマテリアルリサイクルされており、欧州の塩ビ製品のマーケットの大きさが日本の4倍以上であることを考えると、量としては遥かに凌駕しています。またRecovinylが対象としている建材の分野でも、住宅メーカー、ゼネコンのゼロエミに向けた取組みや中間処理事業者との連携によるリサイクルなど個々のケースで欧州に比べ進んだ取組みがみられますが、Recovinylの優れている点は、製品の種類を問わず登録、認定さえすればウェブサイト上で収集からリサイクルへの流れに容易に入れることにあります。このことが経済的なインセンティブとは別にRecovinylにより収集実績が上がっている大きな理由の一つと思われます。更に必要な品質さえ確保されれば再生品であっても抵抗なく受入れる欧州消費者(最終製品メーカー)の合理精神に加えて、この進展には欧州全体で、特に2005年よりドイツで最終処分(埋立)の規制が強化されたことが追風として大きく影響しているものと思います。

 建設分野の廃プラスチックリサイクルは、少量分散的に発生する廃プラスチックをいかに効率よく収集できるかが経済自立性のあるリサイクルにしていくうえの大きな課題であると言われ続けてきました。今回紹介したRecovinylシステムはこの課題に対する答えのひとつかもしれません。(了)

随想
古代ヤマトの遠景(25) −【出雲の王】−
信越化学工業(株) 木下清隆

 前回の結論として、初代倭王の出自は出雲の可能性があることを示したが、今回はそのような人物がいた可能性があるのかどうかについて検討してみることにする。

箸墓古墳
 その決め手になるものは王達の墳丘墓である。王や各地の首長達の墓としては前方後円墳がよく知られている。最初期の最大のものは大和の箸墓(はしはか)古墳であることは先に紹介した。この箸墓古墳の墳丘長は280mもあり、築造されたのは260年頃ではないかと推定されている。要するに三世紀中葉過ぎということである。四世紀になると奈良盆地東部の三輪山周辺と、北部近鉄奈良駅の北西側とに、巨大な前方後円墳が多数造られるようになる。次の五世紀に入ると更に巨大化し、その多くが大阪平野南部に築造されるが、羽曳野・藤井寺地方の古市古墳群と、堺市の百舌鳥古墳群がよく知られている。これらは平野の東西に対峙するかのように築造されており、両古墳群で交互に巨大墳墓が造られたといった説も有力である。最大の大仙陵古墳(墳丘長486m)は現在の阪和線百舌鳥駅のすぐ近くに位置しているが、あまりに巨大なためその周辺から全貌を見渡すことは出来ない。かつては仁徳天皇陵といわれていたが、仁徳天皇の在位時期とこの陵墓の築造時期とがかなりずれることから、仁徳天皇陵とすることには疑問が出されており、現在では「大仙陵古墳」と呼ばれるようになっている。この陵墓の築造時期は五世紀前半から中葉にかけてと推定されており、この時期以降、前方後円墳の巨大化は止まり、その築造も徐々に衰退してゆく。そして、六世紀末から七世紀初頭にかけてその造営は収束する、というのが考古学の見解である。

 では、前方後円墳全盛の時代以前は、即ち弥生時代後期においては、どのような墳墓が築造されていたのであろうか。それは円墳或いは方墳だったとされている。円墳は瀬戸内地方、方墳は鳥取・出雲を中心とした日本海側に築造されたらしい。この裏日本側の方墳は、幾分長方形の四隅に突出部がつけられており、一般に「四隅突出型墳丘墓」と呼び習わされている。

 古代において出雲は、現在の松江を中心とした出雲東部地域と、出雲市を中心とした西部地域に、大きな勢力が存在していた。松江地方にはその後、出雲国造が置かれるが、その時代この東部一帯は、意宇(おう)郡と呼ばれており、これに対し出雲市一帯は神門(かんど)郡と呼ばれていた。このような東西の勢力が弥生時代末の出雲で、拮抗していたと考えられている。ところが考古学的知見により、この時代の出雲の神門地方には、出雲全体、更には山陰全体を統一するような勢力の存在が想定されるようになってきた。

荒神谷遺跡
 その論拠の一つが、弥生後期後半(二世紀後半頃)に築造された「西谷墳墓群」(出雲市駅南東約2km)である。この中の西谷三号墳と名づけられているものは、縦横40×30m近くもあるような、当時における屈指の規模の「四隅突出型墳丘墓」で、山陰地方連合の最高首長の墳墓と考えられている。遺品からこの王は、出雲の広い地域を支配し、吉備や北陸と交通していたことも知られている。
 その二が、一九八四年に荒神谷遺跡から発見された三五八本の銅剣であり、一九九六年の加茂岩倉遺跡から発掘された三十九個の銅鐸である。これらは一ヶ所からの発掘としては類を見ない大量の銅剣・銅鐸であり、制作された時期は、前一世紀から一世紀にかけてと想定されている。荒神谷遺跡は、JR出雲市駅の東方約九km、加茂岩倉遺跡は同じく約十二kmの所にあり、かつての神門勢力圏と考えることは出来よう。

 このような考古学的知見により、出雲西部の神門地方には弥生時代後期に大きな勢力が伸張し、二世紀後半には出雲・鳥取地方からなる連合体が生まれ、その長にこの神門地方の王が推戴されていたといった構図が浮かび上がってくる。初代倭王は三世紀後葉に倭国連合の長として、諸国から推戴されたと想定しているが、この当時まで神門勢力がその力を維持していたであろうことは十分考えられ、そうであれば神門地方から倭王が出たことは十分に考えられることになる。
 このような検討から、卑弥呼・台与の後に出雲神門地方の王が、倭王となったとする想定は、まんざらの絵空事ではないと云えることになる。(続く)

前回の「古代ヤマトの遠景」は、下記からご覧頂けます。
☆ 古代ヤマトの遠景(24)・・・【初代倭王の出自】

上記以前の「古代ヤマトの遠景」のバックナンバーは、
以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

お知らせ

エネルギーソリューション&蓄熱フェア2008 『エネ蔵』出展案内

 下記の要領にて「エネルギーソリューション&蓄熱フェア2008『エネ蔵』」が開催されます。
 塩ビ工業・環境協会、樹脂サッシ普及促進委員会、樹脂サイディング普及促進委員会にて出展します。
・日 時  2008年5月28日(水)〜30日(金)
10:00〜17:30
・場 所  インテックス大阪4号館
・主 催  蓄熱フェア実行委員
・入場料  無料
・エネルギーソリューション&蓄熱フェア2008 
 『エネ蔵』のホームページをご覧下さい。
    http://www.enezo.jp/enezo2008/

健康・省エネのための住まいを推進するシンポジウム IN 経団連 ご案内

 下記の要領にて、「健康・省エネのための住まいを推進するシンポジウム」が開催されます。
 このシンポジウムは、関係省庁、産業界、医療界、消費者団体等により、「国民の生命財産を守る」「日本の地球環境問題における責任」「国民から信頼される健康=省エネ改修の仕組み」等について意見交換や協力体制の構築を目指すものです。
・日 時  2008年6月3日(火)
13:00〜17:00
・場 所  経団連会館
・主 催  NPO法人シックハウスを考える会
安全な住環境に関する研究会
・協 賛  塩ビ工業・環境協会 他
・参加費  無料

※ご案内・参加申込書はこちらからご覧ください。(PDF)
      https://www.vec.gr.jp/mag/176/symposium.pdf

編集後記
 さわやかな5月の風に誘われて久しぶりに「盆栽村」を散策してみました。家から歩いて20分ほどのところにあります。きっかけは、A新聞土曜版に紹介された女流盆栽家山田香織さんの記事を見てのことですが、いまやBONSAIは世界に誇る日本の伝統文化となっており、素人目に見ても本物の盆栽には自然と芸術を調和させた美しさと迫力を感じます。これを現代風にアレンジして(掟やぶりをして)一般の方にも楽しめるようにしたのが山田さんの主催する彩花流で、若い女性の間で静かなブームとなっているようです。
 このように、日本人は古来から、自然を生活の中に取り入れ、自然を友とすることで独自の技術や文化を育んできた歴史があります。しかし、自然は時として友から脅威へと変わることもあります。今回の中国四川省を震源とする大地震やビルマを襲ったサイクロンで甚大な被害を受けた方々には心よりお見舞い申し上げますが、一方で自然の脅威への備えも万全であるべきだと改めて感じる次第です。他山の石としたいところです。(樹)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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◆編集責任者 事務局長  東 幸次

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