NO.202
発行年月日:2008/11/20

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トピックス
◇塩ビ製品のリサイクル現場で今、何が変わりつつあるのか
 − PVCマテリアルリサイクル企業を訪問して −

随想
金融と資源のバブル、素材と塩ビの近未来
株式会社タツノ化学 梶ヶ野 彰

お知らせ
【NEW】ハイクオリティな家づくりセミナーin静岡のご案内
【NEW】Vinyl2010が(英語)論文を募集中!
日経住まいのリフォーム博2008出展、及び第6回「住まいと環境・エネルギーセミナー」開催のご案内

編集後記

トピックス
◇塩ビ製品のリサイクル現場で今、何が変わりつつあるのか
 − PVCマテリアルリサイクル企業を訪問して −


 塩ビ工業・環境協会では塩ビリサイクルに関する調査活動の一環として、廃塩ビ製品のマテリアルリサイクル(以下MR)企業の現状を把握するため、アンケート調査を昨年末から今年の始めにかけて行いました。また、アンケートに協力いただいた企業の中から20社余りを7月と10月、2回に分けて訪問し、塩ビ製品のMRの現状について伺いました。

塩ビ管 使用済品
塩ビ スクラップ
  塩ビ樹脂は、使用期間中の劣化が小さいことや無機物から有機物まで幅広い物質と相溶しやすいため、異物混入の影響が少ないことなどMRに対して優れた適性をもった素材です。そのため循環型社会の構築や省資源が叫ばれるようになるはるか以前からMRが当たり前のように行われてきました。例えば農ビフィルムでは1960年代からリサイクルが行われており、プラスチックの中で最も長いMRの歴史をもっています。戦後の塩ビ工業が本格的な生産へ移行する際には、米国からの廃塩ビスクラップが大きな役割を果したと言われているのも頷けます。

 しかしながら、ここ5,6年、再生材マーケットの海外移転・縮小や中国を主とするアジア諸国への廃プラ輸出の急増などによって、塩ビを含む廃プラスチックのMRを取巻く環境は大きく様変わりし、国内リサイクルへの影響が危惧されています。廃塩ビの排出情報とそれに適したリサイクル施設、再生製品などの最新の情報を的確に把握し、外部からのお問合せに対応し、協会として塩ビのMRの進展に少しでも力になれるようにとの思いで行ったものです。リサイクルの現場で今、何が起こり、変わりつつあるかについて、訪問したMR企業の皆さんから伺ったことをご紹介します。

一つ目はやはり何と言ってもMRに適した良質の廃塩ビ(塩ビスクラップ)の集荷が益々むつかしくなっている点です。中国をはじめ、アジア各国の廃プラスチックに対する需要は極めて旺盛で国内循環量が減り、それに加えて昨今の資源高騰による樹脂素材の値上がりで、加工メーカーでも工場端材などの排出量も減少しており、どこのMR企業も良質の廃塩ビ製品を集荷することにご苦労されています。こうした背景から最近ではマテリアルリサイクルの原料は有価で購入される(したがって廃棄物ではない)場合が殆どです。ただ10月の第2回目の訪問調査では、米国発の金融危機の影響でアジアへの廃プラ(プラスチックだけでなく、金属、故紙も同じ)の輸出は激減し、これまでの流れは9月を境に様相が一変しつつあることが今回伺ったいくつかの企業の方のお話からみえてきました。

 訪問して感じたもうひとつの点は廃塩ビから再生材をつくるメーカーと再生製品をつくるメーカーが分業した事例が多くみられるということです。再生材から作られる製品も新樹脂からの製品と同様、安定した高い品質が要求されます。再生材メーカーとは、様々なソースの組成が変動する原料から特定用途に適合した一定の品質の材料を作りこむ企業であり、そのためには永年の経験に裏打ちされたノウハウと通常のコンパウンド企業に劣らない高度な技術が駆使されています。様々な技術を品揃えし、ニーズ(再生材)とシーズ(多様な品質要求)をきめ細かくマッチングさせ、市場の要求に応じられる様に大変な努力をされていることを強く感じました。こうしたビジネスの構造変化が今後、更に進むことで再生ルートが拡がり、塩ビのリサイクルが進展するものと思います。このような変化を頭に入れて、私ども協会のリサイクル活動も進めることが必要だと感じました。(了)

随想
金融と資源のバブル、素材と塩ビの近未来
株式会社タツノ化学 梶ヶ野 彰

 世界で2500兆円が吹き飛んだ金融バブルの破裂、特に10月以降の推移には唖然として眺めるのみというのが正直なところでした。主要20ヶ国金融サミットでの意義深い協調はあっても信用収縮の回復への政策効果がまだ見えず、ニューヨークやシカゴ市場で発表されている各種の指数からは、千尋の谷がもう一つひかえていると読み取れるほどです。

 さらに、7−9月期決算の大幅減益など金融恐慌の実体経済への影響がたて続けに報道されています。10−12月についてはクリスマス商戦の動向が気になりますが、ウォルマートなどの小数派を除き、今回は不発のようです。北米GDPの7割を占める個人消費はBRICs経済をも牽引しているだけに心配です。現に中国では、米国マテル社の生産委託の中止によって玩具加工20社以上が倒産の憂き目にあうなどオリンピック後の企業活動の失速が顕著となり、当局はなんと57兆円相当の財政政策を発動するにいたりました。

 さて、金融バブルはその一方、銅、鉄、原油、ナフサなどの資源バブルをもたらしてきました。その川下であるプラスチックや金属素材の実感としては、資源バブルを資源インフレとして受け止めたうえで、生活者にいたるサプライチェーンの中でどう適合させるか?という新たな問題に直面し、悩まされてきたのです。これは塩ビにおいても然りです。現在、この資源バブルと金融バブルという二つのバブルが破裂し、EU、北米を先頭にした先進国の消費財と耐久財の急速な需要収縮をもたらしています。この急変がBRICs経済にカップリングしてしまうと、リセッションを一気に飛び越え、世界同時不況に突入しかねません。

 しかし。。。中長期で見れば、実体経済は力強い成長を継続していくと思われます。一時的な危機の影響はあっても、世界の人々の生活と企業の生産活動はたゆまずに続き、強い企業への投資も綿々と継続されるからです。したがって早晩、株価もGDPの水準にまで回復するはずです。この確信をもとに、今の時点で今年を整理してみました。

1. 資本主義である以上、投資も投機も原理的に必要であり、資源価格の大きな変動をもたらし続ける。
2. 次世代エネルギーや代替資源への持続可能な成長のための投資は続く。健全な投資は健全な需給にやどり、原油やナフサ価格の合理的な変動幅はそこに見出される。それ以上は射幸心に基づく投機であるため、投機リスクを負った人々と企業が自己弁済や破産のリスクを負うルールが再認識されていく。
3. サブプライムローンやエクイティローンのモーゲージがすべて悪ではなく、むしろ弱者に工夫された住宅調達システムと言える。投機バブルは回避できないが、あまりに強欲で複雑な証券化へのモラルハザード規制、具体的には、ローン一次貸出の上限の設定や債務担保証券への規制が必要である。今後は我が国のような、住宅の資産価値に見合った健全なローン制度が世界モデルとなる。
4. 今回の金融と資源の二つのバブルは、エネルギー・素材の使用パラダイムの転換への明確な動機となった。例えば次世代エネルギーへのバトンタッチまでの過渡期において、資源の激しい価格変動の緩和に塩ビが役立つ。また塩ビの省石油・省資源という3R的経済性が見直されていく。
5. あわせて化学物質のコントロールに長けた、安全なモノつくり日本への信認が増し、多くの日本製品、例えば塩ビにも需要が回帰してくる可能性がある。

 以上、世界景気は来年後半には回復し、株価は景気に先立って来年前半に持ち直し、日本への信認に伴って塩ビ見直しも進む、が私の占う近未来です。楽観的すぎますか?(了)

お知らせ

【NEW】ハイクオリティな家づくりセミナーin静岡のご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会、樹脂サッシ普及促進委員会では、下記のセミナーに参加し講演を行います。

これからの住宅を考える
 〜住宅の長寿命化、省エネリフォーム、地震対策等を考察する=ハイクオリティな家づくりセミナー

・日 時  2008年12月2日(火)
13:00〜17:10(受付12:15)
・場 所  B−nest(ビネスト)静岡市産学交流センター
【6F プレゼンルーム】
・主 催  株式会社日本住宅新聞社
・後 援 (社)静岡県建築士会【CPD制度認定講習:3単位】
・参加費  無料
・参加申込み締切り:11月24日(月)先着100名
・お問い合わせ:株式会社日本住宅新聞社
          電話:03(3823)2511

【NEW】Vinyl2010が(英語)論文を募集中!

 欧州の塩ビ製造者協会であるECVMも参画しているVinyl2010が、論文コンテスト(英語)を行っています。このたび、日本からも応募してみませんかとのお誘いを受けましたのでお知らせいたします。

・テーマ 「食糧・エネルギー危機に直面している現在、社会はいかにしてその健全性を改善できるか
(Faced with a food and energy crisis, how can society improve its well being?)」
・応募資格 世界各国の18−30歳
・締め切り 2008年12月1日までにオンラインで予備登録し、2009年1月31日までに1000ワードの論文を提出
・賞金金額 欧州エントリー部門:1位3000ユーロ、2位2000ユーロ
世界エントリー部門賞:3000ユーロ(約37万円)、
業界特別賞:2000ユーロ
 (こちらは他の賞と同時受賞も可能です。)

詳しい提出フォーマットはリンクをご覧下さい。
http://www.vinyl2010.org/essaycompetition/

日経住まいのリフォーム博2008出展、及び第6回「住まいと環境・エネルギーセミナー」開催のご案内

 「日経住まいのリフォーム博2008」が下記の要領で開催されます。塩ビ工業・環境協会、樹脂サッシ普及促進委員会、樹脂サイディング普及促進委員会は、環境省、日本経済新聞社とも協力して、同博のゲートとなるウエルカム・スクエアにおいて展示を行ないます。
 樹脂サッシに加え、環境性能に優れた種々の塩ビ製品も展示されます。

・日 時  2008年11月20日(木)〜23日(日)
10:00〜17:00(最終日のみ16:00まで)
・場 所  東京ビッグサイト(東5・6ホール)
・主 催  日本経済新聞社
・入場料  無料
・日経住まいのリフォーム博2008のホームページをご覧下さい。
 http://sumai.nikkei.co.jp/reform/reformhaku/
 「ウエルカム・スクエア」
 http://sumai.nikkei.co.jp/reform/reformhaku/event/kaijyomap.html#06


 この会場内にて、第6回「住まいと環境・エネルギーセミナー」を開催します。
 環境省総合環境政策局長小林光氏、東京大学大学院教授坂本雄三氏、歌手・女優の早見優さん、モデル・タレント・エッセイストのはなさんが参加されます。

・日 時  2008年11月22日(土)
第1部 11:40〜12:40
第2部 13:10〜14:10
・会 場  「日経住まいのリフォーム博」会場ステージ
・参加費 無料
・主 催  (財)地球人間環境フォーラム
塩ビ工業・環境協会
・セミナー内容  
第1部 「地球温暖化防止と窓のリフォームとの関係」
第2部 「家庭でできるエコリフォーム STOP!温暖化」

詳細はこちらをご覧下さい。
http://sumai.nikkei.co.jp/reform/reformhaku/event/event.html


 また、「温度差の少ない家で医療費が変わる?」というタイトルで、近畿大学准教授の岩前篤氏の講演もあります。断熱改修の決め手は窓。健康への効果についてのお話を聞くことができます。

・日 時  2008年11月21日(金)
11:40〜12:10
・会 場  「日経住まいのリフォーム博」会場ステージ
・参加費 無料
・主 催  安全な住環境に関する研究会

編集後記
 先日、日本ビニル工業会の研修会に参加させて頂き、各方面で活躍されている方々のお話しをお聞きしました。その中で、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS)の大石美奈子先生が講演されたグリーンコンシューマーの話しに“広報のあり方”のヒントを頂きました。演題の“伝えていますか・届いていますか 塩ビのはなし 商品の一生を知ろう”には、日頃から「消費者と企業の橋渡し役」として活躍されている姿がにじみ出ています。
 環境に配慮した生活をされるグリーンコンシューマーの方に、塩ビ製品を選んで頂くためにも、目線を合わせたわかりやすい表現で、塩ビの持つ省資源・省エネ・有用性の長所に加えて、不安に感じる部分についても、塩ビの話しをしっかりと伝えて行きたいと思っています。伝える機会があればありがたく、是非、お声をかけて下さい。(円行)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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