NO.212
発行年月日:2009/02/12

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トピックス
◇東京大学サステイナブル・キャンパス・プロジェクト
 (TSCP)で内窓設置・計測開始!

随想
EPRの誤解(連載23)
国際連合大学 上野 潔

お知らせ
【NEW】建築・建材展2009 出展のご案内

編集後記

トピックス
◇東京大学サステイナブル・キャンパス・プロジェクト
 (TSCP)で内窓設置・計測開始!

  TSCPとは、東大が従来から有している知的資源を生かし、研究と教育の活性化を図りつつサステイナブルなキャンパス実現に向けて、また、東大として先導的な試みを実践することによって、サステイナブルな社会の実現への道筋を示す活動です。地球環境問題への取組はその重要な部分であり、その一環として、内窓の設置がきまったこと は既にご報告しておりました。1月31日〜2月1日に設置工事が終了し、その効果についての計測作業が始まっています。
 設置されたのは、総長室のあるフロアー全体で、その効果が検証されれば、学内に広く導入される可能性が高まります。2月7日に、東京大学でおこなわれた地球温暖化問題に関する公開シンポジウムの場において、小宮山総長からこの内窓設置とその効果についての紹介がありました。総長室は日が暮れても冷えなくなって快適になったとのこと。データはまだ計測中ですが、かなりの断熱効果が期待できそうです。データ分析の速報は3月中旬に行われる予定ですが、結果が楽しみです。(了)

随想
EPRの誤解(連載23)
国際連合大学 上野 潔

  環境分野に関わる人々にとって欠かせない略語がEPR:Extended Producer Responsibility(拡大生産者責任)です。EPRは、1994年にOECD:Organization for Economic Cooperation and Development(経済開発協力機構)から提唱された理念です。日本ではこれを「拡大製造者責任」と呼んでいました。その後「製造者」から「生産者」に修正されて「拡大生産者責任」という日本語が定着しました。「生産者」には工業だけでなく農林漁業、畜産業などあらゆる業種が含まれると解釈できるようにしたのでしょう。2001年3月に(財)クリーンジャパンセンターから「拡大生産者責任—政府向けガイダンスマニュアル」の翻訳版が公開されています。用語の意味や背景が忠実に訳された優れた資料であると思います。しかし多くの人はこの訳本を読まずに、(もちろん原文も読まずに)「拡大生産者責任」という言葉だけを使用します。

 外国語の日本語訳はつくづく難しいと思います。Performance, Implementation, Manifestなども環境分野では良く使われるけれど翻訳の難しい用語です。
 大学で、「拡大生産者責任」を英語に翻訳してくださいと言う演習をしたことがあります。電子辞書を引きながらExpanded Manufactures Liabilityと訳せば英語的には正解です。決して、Extended Producer Responsibilityの英語には戻りません。つまり「拡大生産者責任」という日本語が誤解を招いていることがわかります。

 OECDの原文では、「Responsibilityとは何を意味するか」、「Producerとは誰か」などを丁寧に説明しています。Shared Responsibility(共有責任)という言葉も使われています。つまり素材調達から製造、使用、廃棄にいたるまで、それぞれの当事者が「役割を分担して」対応をしてほしいとの意図であったのです。

 恐らくProducerはProducts(製品)を作る人の意味で「生産者」と訳したのでしょう。ProducerとはProduceする人、つまり作品や番組の製作者でもあり、お店や展示を企画する人、政策を立案実行する役人も含まれます。それらを勘案すると「当事者」という適切な用語があります。「生産者」では「消費者」や「自治体」など製品に関連する多くの部門が抜けてしまいます。
 Responsibilityには確かに「責任」という意味がありますが、この場合は、法的な責任を意味するLiabilityとは異なり、道義的な責任のほうが適切です。Responsibilityを単純に「責任」と訳すと意味が異なります。Responsibleには「反応する」「対応する」という柔らかい用語があります。EPRは「拡大当事者対応」とでも訳すべきであったのではないでしょうか?

 もちろん製品を設計製造した生産者が素材調達から廃棄方法にいたるまで最も多くの技術情報を持っているのですから、製品の情報開示をはじめとして多くの重要な対応が求められることは当然です。そのことは原文にも明記されています。しかし、素材を供給する川上産業も、部品やコンポーネントを提供する川中産業も、製品を使用する消費者も、廃棄処理を担当する自治体も役割に応じた応分の対応を分担することが必要なのです。

 役割分担の中でも、DFE:Design For Environment(環境適合設計、環境配慮設計)は、製品設計を担当する生産者しか対応できない分野です。しかし欧州でもアジアでも新しい廃棄物処理のスキームでは生産者にお金を出させることのみに重点が置かれ、生産者に対するDFEへのインセンティブが消えてしまいつつあります。お隣の韓国で最近改定された電気・電子製品及び自動車の資源循環に関する法律は「EPR法」と呼ばれています。中国、台湾、タイのWEEE(廃電気電子規制)も基本的に欧州WEEEと同じ考え方で、EPRを製造業の責任として資金の拠出を要求し、DFEへのインセンティブはありません。
 欧州WEEEの見直し報告では、DFEの成果が殆ど得られなかったため、DFEは、EUP:A framework for Eco-design of Energy Using Productsなど製品設計の規制の中で取り上げるようになりました。最近の世界の生産者は「EPRとは廃棄物処理の金を出すことなのだろう。DFEとは別の問題だ」と開き直ってさえいるようです。

 「拡大生産者責任」という訳語によって、生産者にお金さえ負担させればよいという考え方が日本でも広まっています。中央官庁も、自治体も、消費者も、全て生産者にお金を要求します。しかし生産者にお金を出させるのは実はもっとも安易で簡単な方法なのです。製品の価格に全ての費用が含まれることになります。見えないお金になって消費者に負担を転嫁させることが可能だからです。廃棄物処理業者は安定的にお金が入ってきますから大歓迎です。政府や自治体は税金を使わなくてすみますが、それによって所得税や住民税が安くなったという話は聞いたことがありません。納税者である消費者が一番損をしているのです。

 世界で始めて生産者自身にリサイクルを義務付けたために日本の家電リサイクル法では、生産者による自主的なDFEが進んでいます。今のところ世界で唯一のEPR本来の目的を実現したスキームであると思います。しかしEPRの本来の理念を忘れて、資金提供だけを求める風潮が進むと将来はどうなるか心配です。
 さて、生産者の中でも組立て産業に素材を供給する川上産業である塩ビ工業に従事される会員の皆様は、拡大生産者責任をどのように捉えておられますか?(了)

前回の「環境報告書の変遷と未来(連載22)」は、下記からご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/203/index.html#zuisou

バックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

お知らせ
【NEW】建築・建材展2009 出展のご案内

 快適・健康・安全な住環境・商環境の実現に向けた様々な情報を発信する、建築・建材展が以下の通り開催されます。
  塩ビ工業・環境協会、樹脂サイディング普及促進委員会は、「健康・エコロジー建材ゾーン」に出展いたします。

・日 時 2009年3月3日(火)〜3月6日(金)
10:00〜17:00(最終日のみ16:30終了)
・場 所 東京ビッグサイト 東5・6ホール
(VEC小間番号:AC5117)
・主 催 日本経済新聞社
・入場料 当日一般 1,500円
下記HPより事前登録いただくと無料となります。
 https://www.shopbiz.jp/w/?page=Prereg&action=form&expo=ac
・建築・建材展2009のホームページをご覧下さい。
 http://www.shopbiz.jp/top/index_AC.html?PID=0003&TCD=AC

編集後記
 今回は暖房の話、我が家は石油ファンヒーターを使っています。掘りごたつもあるのですが子供が落ちたら発見できなくなる。それとこたつから出るのがめんどくさくなり、行動力が落ちるからなどなどの理由からです。
 我が家の石油ファンヒーターの室温表示は下限が0度です。(ご存知でしたか?)樹脂サッシの内窓を入れる前は、朝起きた時、何度かゼロ表示でした。最近は最低でも8℃で、通常10℃が保たれています。
 暖房費の軽減はもちろんですが、灯油をガソリンスタンドまで車で買いに行って重たい20リットルのポリタンクを何度も家まで運ぶ回数が減ったことが私にとっては腰痛対策の大きな効果です。(リマル)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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