樹脂サイディングのQ&A

・基礎編  ・技術編  ・環境編

 

樹脂サイディングQ&A 基本編

Q8「サイディング」とは、何のことでしょうか。

一言でいうと外装材のことです。
雨や雪などの降下物に対する防御や外気温の遮断、火災の延焼防止などの安全性確保のための重要な機能を持っています。サイディングには、鉄板やアルミなどの金属系サイディング、セメント系やセラミック系の窯業系サイディング、樹脂サイディングなどがあり、国内では窯業系サイディングのシェアが最も高くなっています。樹脂サイディングは日本での歴史の浅さから、現状ではシェアこそ低いものの、今後は長寿命の住宅が増えていくことから、それに最適な外装材として、大きな期待を担っています。

 

Q8「塩ビ樹脂」と「プラスチック」の違いは。

「塩ビ樹脂」は塩ビビニル樹脂の略称で、ポリエチレンやポリプロビレン、ポリスチレン、PETなどと同じプラスチックの仲間です。
塩ビ樹脂の原料は60%が天然塩で40%は石油。他のプラスチックが100%石油から作られるのに比べ、塩ビ樹脂は石油資源を節減し、原料採取から製品の製造までの全工程のエネルギー消費量およびCO2の発生量が少ないのが特色といえます。また、プラスチックには「錆びない」「腐らない」という特長がありますが、塩ビ樹脂はさらに長寿命で燃えにくいという特長があります。

 

Q8 塩ビ樹脂は他にどんなものに使われますか。
樹脂サッシと樹脂サイディングとの組み合わせは省エネ効果も高い。

塩ビ樹脂の長寿命や燃えにくい特長を生かして、例えば、上下水道用のパイプ、電線被覆材や床材、壁紙、雨どい、窓枠などの建材やレザー製品、農業用のビニールハウスなどの農業資材、ハイテク資材や医療用具など、生活に欠かせない設備や材料を中心に、さまざまな分野で社会生活を支えています。

 

Q8 樹脂サイディングの歴史を教えてください。

樹脂サイディングは1965年、アメリカで製造が始まりました。その後1990年代にアメリカ・カナダで大きく飛躍。日本では1996年頃から販売が開始されてました。特に凍害によって外装材に問題が多く発生している北海道などの寒冷地から普及が進み、いまでは全国でその耐久性が高く評価されています。リフォーム市場の伸びからも樹脂サイディングの採用率は年々高まっており、今後は樹脂サッシと同様に大きな伸びが期待されています。

 

Q8 定期的なメンテナンスは必要なのでしょうか。

修繕や定期的なメンテナンスがとても楽な素材です。

錆びることがなく、塩害、火山灰、酸性雨などにも強い樹脂サイディングは、色がはげることがなく、変色もしにくく、汚れたら水洗いすればきれいになる、とてもメンテナンスが楽な素材でもあります。厳寒地でも、凍結でひび割れを起こすことなく、たわみやひっかき傷にも強いなど、そのソフトな素材感とは裏腹に、強度の高さは大きな特長といえます。もし破損しても、1枚から交換が可能です。

 

 

 

樹脂サイディングQ&A 技術編

Q8 どんな工務店でも施工できるのでしょうか。

初めての工務店でも施工マニュアルや施工指導によって施工が可能です。 樹脂サイディング本体1?あたりの重さは約2~2.7キロ。軽量で運搬しやすく、そのうえ既存壁の上から施工しても家屋に負担をかけません。接合部や窓周りのシーリングも不要。他素材に比べ、面倒な後処理や養生なども不要のため、工期の短縮も可能です。こうした特長の数々は、結果的にユーザーのメリットとなって還元されるのです。

 

 

Q8 シーリング材が不要といいますが、雨対策は。

樹脂サイディングは「疎水性」が高く、隙間から水が入りにくい構法のため、シーリングを必要としません。

金属系・窯業系サイディングとも、隙間から水を吸い込む毛細管現象があります。水分がしみ込むと、冬の寒さで凍結したり、破損したりすることもあり、そのためにシーリング材で隙間を処理します。しかし、シーリング材は一般的に耐久性が劣るので肉やせや亀裂が生じやすく、そこから雨水が進入することも少なくありません。樹脂サイディングは「疎水性」という他素材にはない特長があり、隙間から水が入りにくく、かつシーリングをしないオープンジョイント構法なので、外壁内外の圧力差が小さく、隙間から水が入りにくく、仮に裏面に水が回っても通気性があるので、乾燥しやすい外壁構造になっています。

 

Q8 樹脂サイディングの品揃えを教えてください。

樹脂サイディングの表面は木目模様でカラーバリエーションは約10色が用意されています。

現在日本では横張り下見板形状の製品が販売されています。寸法は長さが3660~3810mm、働き幅が205~250mm。形状や仕様の詳細は、樹脂サイディングメーカーのカタログをご覧ください。

 

Q8 樹脂サイディングは安くないように思います。

樹脂サイディングは決して割高なものではありません。

樹脂サイディングはモルタル壁下地以外は既設の壁に直接張ることも可能です。材料としては耐久性や強度などを考慮した高級な塩ビ樹脂を使用しており、長期間ほとんどメンテナンスの必要もありません。塗装工事と比較すると確かに材料分だけ経費は上乗せになりますが、長寿命なので1年あたりの負担額で比較すると、結果的に、他素材に比べて圧倒的に高いコストパフォーマンスを誇っています。

 

Q8 これまで集合住宅での施工例はありますか。

一般住宅はもちろん集合住宅や学校、福祉施設などでの採用も進んでいます。

また、リフォームはいうまでもなく、最近注目を浴びている外断熱工でも、軽量で施工性の高い樹脂サイディングは注目の的。なかでも、北海道では公営物件での採用実績が多くあります。新築の町営集合住宅から学校の改修工事とさまざまな建物での採用が進んでいます。

 

Q8 採用する際には法規制はあるのでしょうか。

建築基準法により規制されますが、樹脂サイディングを使用した外壁構造は、準防火地域および22条区域における使用について、各メーカーが個別に認定を取得しています。

外壁構造についての建築基準法のポイントは、法律で性能が定義され、政令で要求性能の技術的基準が定義されています。その技術的基準を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法が告示として例示されています。建築基準法では外装材のみについて防火上の規制はありません。外壁の防火性能は外装材から内装材までの外壁構造全体についての防火性能が要求されています。外壁構造として政令で求められている技術的基準を満たし、国土交通大臣の認定を取得していれば、国土交通大臣が定めた告示にない外壁構造でも使用することができます。

 

樹脂サイディングQ&A 環境編

Q8 ダイオキシンや環境ホルモンを連想します。

心配はありません。

塩ビ樹脂に限らず、塩素を含む有機化合物または食塩などの塩素化合物と有機化合物の混合物を不適切な条件で燃焼すると、ごく微量のダイオキシンを生成することがあります。しかし、現在は法律で定められた技術基準及び排ガス濃度を満たした焼却炉しか運転が許可されておらず、焼却炉排ガス中のダイオキシンは全く心配ないといえます。また、環境ホルモンについては、一時、塩ビ樹脂を軟質化する可塑剤に環境ホルモン性があるのではないかと疑われましたが、環境省で調査研究が行われ「人への環境ホルモン性はない」ことが公表されています。

 

Q8 塩ビ樹脂製品はリサイクルも可能なのですか。

塩ビ樹脂はリサイクルが可能です。

プラスチック製品のリサイクルには大きく分けて3つの方法があります。使用済プラスチック製品を物理的手法により再びプラスチック製品に戻すマテリアルリサイクル、化学的手法により原料に戻すケミカルリサイクル、そして、燃やした時に発生するエネルギーを利用するエネルギーリカバリーです。塩ビ樹脂製品はどの方法でもリサイクルが可能ですが、特にマテリアルリサイクルでは他のプラスチックと比べて最も進んでいるといえます。例えば塩ビ樹脂の代表的用途である農業用ビニールハウスは使用後は床材やシートに、また、使用後のパイプは再びパイプにリサイクルされています。塩ビ業界はさらなるリサイクルのために、リサイクル技術の開発やリサイクルシステムの構築のための活動を積極的に進めています。

 

Q8 石油を使用するため環境負荷が大きいのでは。

塩ビ樹脂は他のプラスチックと比べ石油依存度が低く、環境負荷の小さい素材です。

他のプラスチックが100%石油から作られるのに対し、塩ビ樹脂の原料の60%は天然塩で、あと40%が石油。一過性の消費財よりも耐久消費財に主に使用されていることから、他のプラスチックよりも環境への負荷ははるかに小さくて済み、リサイクルもしやすい材料です。また、原料資源エネルギー(原料として消費された炭化水素源をそれぞれの発熱量で評価したもの)についても、他のプラスチックに比べてきわだって低く、※LCA的にも優れた素材といえます。

※製品の製造段階から廃棄リサイクルに至る全工程のエネルギー投入量と環境負荷を全量的に分析・評価する手法

 

Q8 廃棄される場合の環境負荷が問題なのでは。

塩ビ樹脂は丈夫で長持ち、使用後もリサイクルが可能な環境負荷の小さい素材です。

塩ビ樹脂の特長の一つは、再生しても特性がほとんど低下しないこと。ちなみに、15年間使用した樹脂サイディングを粉砕し、リサイクル品として成形された製品を物性試験した結果、未使用品と遜色にないことが確認されています。耐久性が高く、長期間使用した後の回収品からも再製品化することが可能な塩ビ樹脂は、金属やガラスなどと比べても、同一製品を製造した場合のCO2による環境負荷が少なくて済みます。