先日マスメディアは、ロシア共和国が、地球温暖化防止のための京都議定書に批准する方向を決めた、と報じました。
ご承知のように、京都議定書は1997年に京都で開かれた地球温暖化防止京都会議(COP3)で採択された取り決めで、この条約が発効すれば日本は、CO2などの温室効果ガスの排出量を2008年から2012年までの間に、1990年レベルと比べて6%削減することが義務付けられることになります。条約発効のトリガーとして最後まで残っていた「1990年当時のCO2排出量の55%以上を占める国が批准すること」という条件が、今回のロシアの批准で満たされることになるのです。
日本のCO2削減は、前途多難です。日本政府が2002年に策定した「地球温暖化対策推進大綱」(新大綱)によると、この6%削減を果たすために、エネルギー起源のCO2排出は1990年度と同水準に維持する、その内訳は産業部門7%削減、民生部門2%削減、運輸部門17%増とする、とされています。
ところが、2002年の実績を見ると、エネルギー起源のCO2排出総量は1990年比12.0%増、内訳は産業部門1.7%減、民生部門33.0%増、運輸部門20.4%増となっており、民生部門の排出抑制が最重要の課題となっています。
この民生部門のCO2対策については、ライフサイクルの変革を含め、これまでにさまざまな手段がとられてきましたが、最近一部で話題になってきている対策に、住宅の断熱化があります。住宅の新築時やリフォーム時に、可能な限りの高断熱・高気密化を実現しよう、というものです。そのためには、最大の放熱源である窓を高断熱化すること、すなわち窓ガラスを二重ガラスにし、窓枠を高断熱の塩ビ製にすることがもっとも有効なのです。
この複層ガラス・塩ビサッシシステムは、日本ではまだ北海道地方や北東北地方を中心に普及している程度ですが、アメリカ、ヨーロッパ、それにお隣の中国や韓国などでは、ほとんどの窓にこれが採用されているとか。これにすると断熱効果や省CO2効果のみならず、結露防止やそれによるダニ・カビ防止、火災に対する安全性向上、さらにガラスが二重であることによる防犯効果も見込めるとあって、国内でも各方面から注目を集め始めています。
もしも、日本全国の戸建住宅27百万戸のすべてが、この複層ガラス・塩ビサッシを採用した場合、それによる省CO2効果は年間約26百万トン分にも上ります。この数字は1990年の民生部門のCO2排出量273百万トンの約1割。家庭からのCO2排出量129百万トンの実に20%になるのです。
政府もこれに目をつけて2004年度、環境省や経産省などから高断熱・高気密化住宅に対しいろいろな補助金を出して推進を図ってきており、来年度の予算要求にも引き続きの資金補助や税額控除などが盛り込まれています。
ロシアの議定書批准をきっかけに、本格化する省CO2対策。民生部門の決め手ともなりかねない住宅の高断熱・高気密化に関して、塩ビの特性がフルに発揮できる日がいよいよ近づいているような気がするのです。
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