12月11日の日経新聞は、松下電器産業(株)が、従来表明していた2005年度末に塩ビの使用を全廃するという基本方針を、部品によっては対象外とし、あるいは廃止時期を1年先送りする方針に変更した、と報じました。
電子・電機業界では、ヨーロッパのEU(欧州連合)で施行が迫っているRoHS規制を先取りする形で、鉛、カドミウム、6価クロム、水銀、一部の臭素系難燃剤など6種類の化学物質を、自社の関連製品からフェイズアウトする計画が進んでいます。2003年に松下電器は、これら法律で規制される6種類に加えて、塩ビ製品も使用禁止にする、という方針を公表し、その実施に向けて検討を続けて来ました。
塩ビ製品を禁止項目に加えた理由は、同紙の報道によると、「燃焼条件によっては焼却時にダイオキシンが発生する可能性がある」ということと、「環境ホルモンの疑いがある物質が混入している懸念がある」ため、とされています。
これらの理由は、科学的根拠に乏しいことが数年前から指摘されており、今では数々のデータによって、その根拠のなさが明らかになっています。
ダイオキシン問題については、この欄で私たちが繰り返し主張してきたとおり、「何を燃やすかではなく、どのように燃やすかの問題」であり、このことはここ数年間のダイオキシン対策特別措置法の進展によって、いまや日本全国の発生量が一時のわずか数%にまで減少してきていることから見ても、誰の目にも疑いようのない事実であることが明白になってきています。
環境ホルモンの問題にしても、いわゆる「疑い」がかかっていた、フタル酸系の可塑剤について政府は、数年に渡る研究の結果として、「明らかな内分泌撹乱影響は認められなかった」との公式コメントを公表し、この点でのいわば安全宣言をしています。
こういった状況について、私たちは先般来、松下電器に対し事情説明を繰り返し、科学的事実に基づいた政策決定をされることをお願いしてきましたが、今回、同社がこのような判断をされたことに対し、大きな敬意を表するところです。
どの企業でも、どんな製品でも、素材の選定に当たっては、その用途に最適なものを選ぶのは当然のことです。塩ビよりもその用途に適した素材がある場合には、塩ビからその素材に変更するのは当たり前です。しかし、用途的には塩ビが最適であるにもかかわらず、科学的事実に基づかない理由で、塩ビが採用拒否されることについては、私たちは、納得いきません。
塩ビについては数年前、ダイオキシン問題や環境ホルモン問題で、事実とは異なる情報によって世間で騒がれたため、産業界でも塩ビ製品の使用を躊躇し、あるいは使用を制限する動きがありました。この流れは今でも続いています。
しかし、上記のように、ダイオキシン問題や環境ホルモンについては、その後科学的事実が明らかになり、塩ビに向けられた冤罪は晴れました。どうか、安心して塩ビ製品を使っていただきたい。私たちは切に、そう望みます。
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