NEW VEC MAGAZINE Vol.04
発行年月日:2003/4/24



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コラム
陰影礼賛・・・面としてのプラスチックの日本的な進化・・・
塩ビ工業・環境協会 梶ヶ野 彰
生活バンク・FPの部屋
読者便り
グラフで見る塩ビ
お知らせ
編集後記
コラム
陰影礼賛・・・面としてのプラスチックの日本的な進化・・・
塩ビ工業・環境協会 梶ヶ野 彰
 寺院や茶室などの日本建築は、大屋根や深い庇によって、門、壁、窓などの外貌に陰影が意図されてきた。また和紙を活用したあかり障子は、外光をやわらげ読書勉学に相応しい調節光を供してきた。
さらに内壁、天井、ふすま、欄間などの建具から、磁器や金箔の漆器などの調度品に至るまで、室内空間もその陰影において鑑賞される。
谷崎潤一郎の「陰翳礼賛」ではこのように述べられている。翳は影と読んで良いようだ。

 この日本の美意識は今に引き継がれ、現代住宅の建具のありように影響をおよぼし、天井、回り縁、内壁、巾木、床、敷居、内窓などは、自然な木目模様や艶消し模様で仕上げられる。また外回りにおいても雨樋や鼻隠し、破風板、羽目板などが、光沢仕上げよりは艶消に仕上げられ、家の外貌を陰影に関連付けて調節することが多い。

 戦後の旺盛な建材需要にこたえ、木や石という自然素材を補うものとして、プラスチックやアルミなどの新建材が登場した。気密化においての貢献はさておき、それら素材の表面デザインについてであるが、始めは均質性であり、連続模様のような幾何学性であり、輝いた光沢性であった。その後、市場の広がりにつれて、木や石といった自然素材がもつ不均質性にならった揺らぎのあるデザイン、そして恐らく陰影を礼賛する日本人の感性に沿って、光沢よりは艶消しが好まれるようになってきた。

 表面加飾に関するこういった流れは、生活者の美意識を取り込もうとするハウスメーカー、家電、自動車など組立産業からの意匠ニーズとしても由来した。ターゲットたる最終消費者の各層がそれぞれ抱く美意識は、組立産業のマーケティングにとって極めて重要だ。価格、機能、耐久性、デザインを掛け合わせて、素材にまつわる諸々が社会的に決定される。
 その結果、素材表面への微細な加飾(印刷や凹凸の付与)を可能にする分子設計技術の発展が見られた。たとえば塩ビ樹脂やABS樹脂では、高流動化、高重合化・部分架橋化によって、ナノレベル以下で製品の表面光沢度(艶出し、艶消し)のコントロールが可能となった。
 またプラスチックインクによるグラビア印刷技術や、直角だったり曲面だったりする合板や鉄板のコーナーへのフィルムとその接着技術などが大きく進歩した。

 これら素材と加工技術の進歩の結晶として、住宅の内外装、家電やAV(オーディオビジュアル)の筐体外面、自動車のダッシュボードやハンドルなどの工業意匠性が豊かになっていった。プラスチックは必需品の域を超え、人間の感性に沿って生活を楽しむものに脱皮した。つまり、光沢と陰影に関する日本的感性が日本のプラスチックの技術とマーケティングに刺激を与え、組立産業全体の国際競争力や個別ブランドの差別化を押し上げていったのである。

 中でも意匠における代表選手はやはり塩ビ樹脂であろう。機能のみならず、組立側の工業デザイナーの造形ニーズに縦横に答えてきた。もっとも同じ電源コードで色艶のグレードが20も出来てしまったというような、加工屋泣かせの笑えない話まであるが。

 最近では和室は片隅におかれ、洋室のみの住宅さえ登場している。そこでは燦々たる陽光が主役であり、夜間においても蛍光灯で隈なく照明される。日本的伝統と思われる陰影の出番は少ないかに見える。
 しかしその一方で部分照明や間接照明など、陰影による温かみや安らぎの効用を取り入れることも始まった。白熱電球型の蛍光灯の普及はその兆候だろう。
 陰影はプラスチックのもつ造形力の一つであるが、これからも時代と国民性に応じて様々なる意匠を表現し、再評価され、進化していく。

生活バンク・FPの部屋

ファイナンシャルプランナ−(略FP)、長谷部和子
保険(2)
『活用しだいでは、預貯金としても優れている生命保険』
1.) 相続財産として受け取れる生命保険金がある場合
相続人一人当たり500万円は無税
2.) 保険支払人  被保険者  受取人
  被相続人→ 相続人  → 被相続人
(1) 高齢又は持病などで保険加入出来なくても、相続人に保険を掛けると、相続後に解約した場合、相続人は払込んだ保険金が一時所得として受け取れる。
解約せずにそのまま、払込み済で預金同様にもできる。
その場合保険会社によっては、預金より有利な利息が付く場合が多い。
(2) 被保険者が死亡した場合は、保険金支払人は普通に保険金を受け取れる。
勿論解約もできる。
3.) 外資系保険
例) 纏まったお金がある場合や退職金などが入った場合。
一時払終身保険(払い込んでから→10年超〜=およそ利息8%利回り)

『損害保険耳より情報』
某外資系のオーダ−メ−ド火災保険
「建物を複数持っている場合」
複数物件のうち、一番高額に査定された建物の火災保険を掛ける金額のみで、他の物件全部の火災保険は掛けなくても、全部カバ−してくれる。
例) 自宅+マンション2戸 自社ビル+自宅 自社ビル+工場+自宅等々。
理由) 他の離れた場所にある物件が、同時に火災に遭う例は極めてすくないため。

読者便り
Q. 塩化ビニルについて教えて下さい(Hさん・Kさん)
1.PVCとPCBの違い
2.PVCは塩化ビニル(ポリエチレン)のみの素材のこと?
3.可塑剤加えるとダイオキシン?加えないとダイオキシン発生減?
4.PVCの他の記号と意味は?
5.PVCは難燃材?
6.塩ビはどうやって出来るの?
7.半硬質ビニルとPVCの違いを教えて下さい
8.PVC−Uとは?リサイクル出来るの?ダイオキシンは?
9.射出成形と押出成形の違いは?
10.可塑剤とは?
11.環境ホルモンはどうなの?
12.報道通り、塩ビは駄目ですか?
その他塩ビに関して教えて下さい
. VECからの回答
1と2. PVCはエチレンと塩素を粗原料とし、VCM(塩ビモノマー)を直接の原料とするポリ塩化ビニル(塩ビ樹脂)のことです。ポリエチレンはエチレンを原料とする樹脂です。
ともにプラスチックであり、人体に摂取したとしても発がん性やダイオキシンの心配はありません。
PCBはポリ塩化ビフェニールであり、コンデンサーや変圧器の絶縁油に多く使われていましたが、難分解性な化学物質である理由から製造禁止となっています。
3. 可塑剤とダイオキシンの関係は全くありません。可塑剤があろうと無かろうと塩ビ製品を不十分な条件で不完全燃焼させるとダイオキシンは発生することがあります。

また可塑剤については、可塑剤工業会のホームページをご覧下さい。
http://www.kasozai.gr.jp/
4. PVC=Poly Vinyl Chlorideです。
直訳すれば「塩素がついたビニルの高分子」ということです。
5. 塩素を含むメリットとして難燃性に富みますので電線や建材に世界中で使われています。
6. VCM(塩ビモノマー、塩素化されたビニルのモノマー)を重合(モノマーを沢山つなぎ合わせること)して作られます。この時40〜50度の熱と圧力と攪拌が必要です。
  7. おおむねの基準は標準的な可塑剤であるフタル酸エステル、たとえばDEHPの塩ビ樹脂に対する重量比で区分けされています。
硬  質: パイプ、雨樋、板、波板、平板、シート、異型押出、デッキ、排水マス
半硬質: 建材・家電などの化粧フィルム
軟  質: 電線、各種軟質フィルム(農ビ・家具・文具・袋物など)レザー
超軟質: 特殊電線、バッキング、ホース、自動車の部材
8. PVC−Uは硬質塩ビです。Uは無可塑(Unplasticized)を表し、可塑剤を使っていないという意味です。軟質塩ビについてはPlasticized PVCのほかにS−PVCという表現もあります。
Sはソフトを表します。いずれでもきちんと燃焼させればダイオキシンは出ません。
9. 射出成形は金型に溶融樹脂を水鉄砲のように打ち込み、冷やしたあと、金型を開いて目的の製品を取出します。押出成形は金型の中で溶融樹脂を通過させ、出口以降で冷やして連続的に製品を得ます。
10. 可塑剤とは塩ビやゴムに柔軟性や耐熱性、耐寒性、風合いを付与するために混ぜる液状の安全な薬品です。
11. フタル酸系の可塑剤が環境ホルモン擬似物質として環境省で調査されてきましたが、ヒトに対する環境ホルモン作用がないことが判明しております。
12. 一言で言えば報道の多くは誤解に基づくものであり、このようなメディアからあまりにも広く広報されてしまった結果、「塩ビは危ない」との認識がまだ一部に残っています。
私たちの広報に工夫が足りない点もありますが、最近はEUやアメリカ、中国での塩ビの伸張等、かなり事実報道がでるように「改善」されてきました。

グラフで見る塩ビ
ホームページでご覧いただけます。
 https://www.vec.gr.jp/gurafu/index.html

お知らせ
VEC関連展示会
「信州・住まいと暮らしの快テクフェア」
日時:5月17日(土)〜18日(日)
場所:ビッグハット (JR長野駅から徒歩15分)
樹脂サッシ普及促進委員会プラスチックサイディング懇話会にて出展しています。
「三重の21世紀リーディング産業展」
日時:5月23日(金)〜24日(土)
場所:四日市ドーム
塩ビ工業・環境協会にて出展しています

編集後記
 経済産業省の「世界の石油化学製品の今後の需給動向」によりますと、2002年のエチレン・プロピレン誘導品の世界需要は1.3億トン。その多くはプラスチック向けです。一方、鉄(粗鋼)の世界需要は約9億トンでした。
 鉄の比重はプラスチックの7倍ですので、世界のプラスチックは鉄とほぼ同じ容積の需要量となります。まさにプラスチックは基礎素材産業といえます。
 日本の基礎素材はプラスチックも化学薬品も鉄も、生産能力は現状維持か微増で十分となっており、その一方で中国などの大躍進は間違いありません。つまり日本の素材産業は量を追う時代が終焉し、機能やデザイン分野などいわゆる高付加価値化で需要量を維持すべきことが明確です。
 プラスチックの良さのひとつに意匠性があります。プラスチック塗料やフィルムに変身しながら鉄や木材など他素材の意匠表現にも力を貸します。ここにプラスチック、なかでも塩ビが他素材と調和しながら発展していく可能性を見る思いがします。
 そこで今月のコラムは、古くて新しい特徴である「プラスチックの意匠性」を試論しました。加工メーカーさんのご意見をお聞きしてからでないと怖かったのですが。

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●プラスチック・サイディング http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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塩ビ工業・環境協会

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