◇非塩ビ系ラップフィルムはホントにダイオキシンを出さないのか? |
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消費者を誤らせる広告は、もういい加減にして下さい。 |
「塩ビを燃やすと有害なダイオキシンが発生するので、塩ビ製品はなるべく使わないほうが良い」。
なんていう、もっともらしい「風評」が、日本の社会にまかり通っていた時代がありました。
しかし、ダイオキシンはどんなものを燃やしても微量ながら発生すること、山火事などでも発生するので元々自然界にも存在していたこと、この発生を抑えるためには燃やす設備や燃やす条件を適切にコントロールすればいいこと、そして焼却設備が改善された日本ではダイオキシン発生量が数年前に比べ1/30~1/50にまで激減したこと、などの事実が明らかになり、広く社会全体にこの事実が知れ渡りました。その結果、今では良識ある人の中では塩ビとダイオキシンの関係が云々されることは皆無になりました。
・・・と思っていたのですが、意外や意外。食品包装に用いられるラップフィルムの世界では、未だにこのダイオキシン神話が生き残っていたのです!
最近発行されたある業界新聞ではこのラップフィルムの特集を組んでおり、そこにラップメーカー各社が協賛して自社製品の広告を出していたのですが、その広告文たるや凄まじいものでした。
曰く、「非塩素系ポリエチレン製ラップですので、焼却時にダイオキシン等の有害、有毒物質を発生することはありません(C社)」、「燃やしてもダイオキシンが発生しない○○ラップ(M社)」、「××ラップならダイオキシン0%(U社)」、などなど、派手にやってくれてました。
このメルマガをお読みの方なら既にご承知と思いますが、どんなものを燃やしても、焼却条件によっては微量ながらダイオキシンは発生します。塩ビやその他のプラスチックでもそうですし、新聞紙や木材、食物などもダイオキシンの原因になり得ます。
さらにプラスチックについて言えば、燃焼時にはダイオキシン以外にもごく微量とはいえ多種多様な化学物質が発生し、そのなかには例えばベンゾピレンなどの多環芳香族物質や青酸ガスなど、発ガン性のあるものや有毒、有害なものも含まれていることが、微量分析技術が進歩した結果分かるようになりました。これらのうち例えば多環芳香族物質は、塩ビを燃やした場合に比べ、ポリオレフィン類やナイロンなどを燃やした場合の方が、発生量ははるかに多いことが分かっています。塩ビはダイオキシンが出るから安全でない、その他素材はダイオキシンが出ないから安全、などとは、科学的にはとても言えたセリフではないのです。
私たちは、非塩ビ系のラップフィルムが危険だ、などと主張しているのではありません。どのラップフィルムにせよ、焼却時には法律で定められた焼却設備で適正に処理されているのであり、その限りでは塩ビ系であろうが非塩ビ系であろうが、何ら不安を感じる必要はない、と考えています。
ただ、数年前の「風評」を未だに謳い文句に使い、社会の不安をいたずらに煽り、その影で自社の利益を拡大しようという魂胆が、如何なものかと思うのです。
「風評」を作り、それを煽り立て、社会に不安を巻き起こして自らの利益に結びつける行為は、残念ながらわが国のいろいろな場面で見られる現象ですが、他の業界ならいざ知らず、製造業の、しかも塩ビ製造とも関係が深い、化学業界の仲間内でこのような動きがあるということは、なんと悲しいことでしょうか。 |
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