先週のメルマガに掲載いたしましたように、2月1日、玩具販売大手が中国から輸入した塩ビ製おもちゃに食品衛生法で使用が禁止されている可塑剤が入っていることがわかり、回収される騒ぎがありました。おもちゃから検出された可塑剤の量から推定すると、意図的に使われたというよりも製造段階における混入の可能性があるとみられています。いずれにせよ、基準値(0.1%)以上の禁止された可塑剤が混入することは許されず、あってはならないことです。製造メーカーにしっかりした管理を期待するとともに、何はともあれ、このたびの行政の監視体制や玩具販売大手の迅速な対応に感心した次第です。
しかし、このニュースの報道のされ方に疑問を感じました。一部の新聞やそれを転載したネット情報では、使用が禁止されている物質名を「フタル酸ビス」と呼び、「環境ホルモンの疑いがある」とか「環境ホルモンの一種である」と紹介しているのです。これでは、食品衛生法違反のためおもちゃが回収されたことは伝わっても、物質名とその物質の特性については正確な情報となっていないと感じています。もちろん、新聞社の中には、報道発表資料に頼ることなく正確な情報を冷静に報道しているところもありました。
今回おもちゃから検出された可塑剤は、略して「フタル酸ビス」と呼ぶことはないため、もっと正確に表記していただきたいものです。一方、化学物質の内分泌かく乱作用いわゆる環境ホルモン作用については、環境省が2005年3月に「ExTEND2005」の中で公表しているように、前述のフタル酸エステル類を含めて化学物質には、ヒト推定暴露量で内分泌かく乱作用(環境ホルモン作用)は見当たらなかったといっているのです。これが、最新の情報です。
私たちは、業界団体のひとつの役目として、化学物質について誤った情報や一方的な情報だけの伝わり方を是正すべく広報活動を行っています。今回の件でも、早速、一部の関係者に連絡を取らせていただきましたが、マスコミ関係者にとっては行政から発表された報道資料が唯一の情報源であったようです。ニュースをいち早く伝えることの使命感を持ちながら、情報の詳細を確認することの難しさが垣間見られたような気がしました。
1週間経った2月8日、9日の新聞には、その玩具販売大手は同一工場から輸入したおもちゃについて自主検査を行い、他のおもちゃにも禁止されているDEHPが含まれていることがわかったため、追加回収をしたとのニュースが報道されました。注意深い玩具販売大手の自主的行動には共感しますが、「環境ホルモンの疑いがあり」と規制物質に修飾語がついていたり、物質名も相変わらず「フタル酸ビス」のままの報道には失望を禁じえません。化学物質について正しく理解してもらうのは難しいことですが、私たちの情報発信やコミュニケーション不足をも痛感しました。
インターネットが普及した今日では、情報はいくらでも検索できますが、その反面、情報の新旧や情報の真偽の区別がしにくい場合もあります。私たちは、報道関係者にも冷静な姿勢で真実を伝えていただきたいと思い、情報発信やコミュニケーションを続けています。 |
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