◇中環審・産構審
「プラスチック製容器包装に係る再商品化手法・取りまとめ」について |
商品の包装や飲料水のボトルなど、容器包装に使用されたプラスチックのごみを分別してリサイクルすることが法律(容器包装リサイクル法)で定められ10年余り経過しました。容器包装リサイクル法は住民、自治体、企業の三者の連携で推進され、住民も主体的な役割を担う社会的にも意義の高いものです。現在分別収集されるプラスチックごみは約60万tにまで拡大したものの、住民・自治体の分別収集負担や特定事業者のリサイクル費用負担は決して軽いものではありません。それだけに苦労がきちんと成果に結びつくリサイクルシステムでなければなりません。
有効に利用されているのだろうか、環境負荷の低減や資源の節約に真に寄与しているのだろうかなど、リサイクルの成果が明確に見えてこないところにある種の苛立ちがあります。使用済みとなったプラ製容器包装は材料リサイクルとケミカルリサイクルの2本柱で運営されてきました。材料リサイクルは、他の方法より優先されることによって近年急激に拡大しましたが、品位の高い再生プラスチック製品が得られず、用途拡大も進まないという状況は殆ど変わっていません。このような事情を背景に、中環審と産構審の合同会合で材料リサイクルの在り方等について審議され、今般その「取りまとめ」がパブリックコメントにかけられました。リサイクルの現状とともに「取りまとめ」について考えました。
平成19年度のプラ製容器包装の落札結果では、落札数量は63万tで内訳は材料リサイクルが32万t(51%)、ケミカルリサイクルが31万t(49%)と、材料リサイクルが過半を占めています。材料リサイクルの問題は品位の低さに加えて、再商品化率が51%と低く、残り半分は廃棄物として処理しなければならないことです。ケミカルリサイクルではコークス炉化学原料化の再商品化率89%をはじめ、すべての手法で材料リサイクルを上回っています。再商品化にかかる費用(委託単価)についても材料リサイクルでは89円/kgかかっているのに対し、ケミカルリサイクルでは63円/kgで済みます。このような実態をみれば、誰しもが材料リサイクルに疑問をもちます。元来材料リサイクルはペットボトルや白色トレイのような単品収集が対象であり、ポリエチレンやポリプロピレンは混合物でもパレット、擬木、棒、杭に利用されてきました。容器包装プラスチックのなかで利用されているのは、実質上ポリエチレンとポリプロピレンだけという状況です。今回の取りまとめでは、このような実態また具体的事実関係が明確であるにも拘わらず、本質問題に踏み込んだものとはなっていない感があります。材料リサイクルには入口(原料となる分別収集品)と出口(再生製品と廃棄物処理)があり、その認識に立って材料リサイクルの在り方が十分に審議されるべきであったと考えます。そのために、LCAによるリサイクル手法の比較検証が試みられましたが、材料リサイクル優先について結論を出すまでには至らなかったようです。最終的に取りまとめでは、材料リサイクル優先の品質基準として塩素・水分等に基準を設け、例えば塩素分0.3%以下などとするものですが、分別収集されたプラスチック廃棄物に含まれる塩素分の多くは食品残渣に由来する無機塩素であることは、審議の過程において委員から具体的に説明のあったところであり、塩素・水分についての基準は洗浄、乾燥等の工程を適正管理するためのものであって、材料リサイクル優先のための基準とはなりません。
また、見直しの基本的な方向性として、中長期的に「特定事業者による容器包装の機能維持や使用の合理化(リデュース)と両立する形での単一素材化・非塩素系素材化に向けた更なる取組」とありますが、単一素材化については、混合・複合素材化によって容器包装の機能を向上し、もっとも優先されるべき排出抑制につながった実態を十分に認識しない意見です。塩素系素材(塩素系プラスチック)は耐久性、安定性、ガス・バリヤー性、難燃性、良加工性などの特性に優れていることから容器包装の目的に合わせて使用されるものであり、素材としては分別により材料リサイクル性においては他のプラスチックより優れており、材料リサイクル以外にも、フィードストックリサイクルやサーマルリサイクルができます。当協会の調査によれば、産業廃棄物焼却施設においては平均で3%程度まで塩素系プラスチックを含んでいても受入可能であり、焼却物の7割がエネルギー回収されているのが現状です。それゆえに、こと改めて現時点で非塩素系素材への転換を促進する合理的理由が存在しないと考えます。
近年、社会のあるべき目標が循環型社会から持続可能な社会へと、より大きな視点に立った考え方へ移行しつつあります。リサイクルは重要なコンセプトに違いありませんが、それだけではなく資源枯渇性の評価も重要となります。塩ビは石油への依存が小さく、資源枯渇性の観点から今後再評価が進むものと期待しています。
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