NO.134
発行年月日:2007/06/28

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トピックス
◇ヨーロッパ埋立指令を受けた廃棄物処理技術の動向
(社)プラスチック処理促進協会 総合企画室 山脇隆

随想

映画「ルワンダの涙」所感(2)

信越化学工業(株) 木下清隆

お知らせ
【NEW】塩ビサイディング・セミナーのご案内
PVC Newsが6/18に発行されました。

編集後記

トピックス
◇ヨーロッパ埋立指令を受けた廃棄物処理技術の動向
(社)プラスチック処理促進協会 総合企画室 山脇隆

 欧州においては、廃棄物埋立てに関するEU指令で、有機物質などの埋立てが全面的に禁止されることが決まっている。各国毎の法律で運用されるため、国で事情は異なるがドイツでは2005年6月よりドイツ廃棄物埋立政令が発効し、熱しゃく減量5wt%以上の埋立が禁止されている。この様な状況を踏まえ、各種の廃棄物処理手法の商業化が進んでいる。わが国でも各種廃棄物処理の革新に力を注ぐ重要性は明白であり、このような欧州の廃棄物関連企業の動向を調査することが必要であり調査を行った。
 概要を下記する。

 1999年公布のEU埋立て指令は埋立て前の廃棄物処理、生物分解性廃棄物の埋立て量の段階的削減を求めており、そのため、家庭排出や農業系の廃棄物処理の必要が生じた。焼却は廃棄物の減容や安定化に有効であり、日本では70%を越えるが、たとえばフランス 32、ドイツ 22、イタリア 9、イギリス7%と低く、その分埋立てが広く行われてきた。EU域内では、今後リサイクルの進展などで焼却可能ごみが減る見通しのもと、20〜25年の使用期間を有する焼却工場を新規にあるいは更新、維持することに躊躇する自治体もある。そこで、焼却施設よりも低コストで建設、維持、管理できる有機性ごみの好気的あるいは嫌気的な生物処理が採用され、商業化されるに至っている。

MBPプロセス(1)
バイオ処理直後の乾燥廃棄物
バイオ処理後の廃棄物の選別プロセス
 廃棄物埋立てに関するEU指令への対応が様々な手法で行われているが、家庭から排出されるごみ処理方法で近年脚光を浴びているのは、生分解技術と機械的分別を組み合わせた効率の良い、又設備投資の少ないMBP(Mechanical and Biological Pretreatment)技術である。
 この技術は大別すると、下記2種に集約される。
(1) 先に生分解工程で分解し、乾燥と減容化を行う。続いて、金属分と分解残渣を分別し高カロリーの固形燃料を得る。
(2) 先に機械的分別を行い、金属及びプラスチック以外の成分を生分解工程で有機物を分解・減容化し、指令に適合した状態で固形燃料・埋立・コンポスト化する。
 この方式を採用している工場の多くは元々埋立処分場内に立地しており、廃棄物埋立てに関するEU指令に対応する為、生分解プロセスを増設付加しているケースが多い。
 上記(1)(2)いずれにも生分解工程に好気性分解方式と嫌気性分解方式又はその組合せ方式がある。
 嫌気性生物処理(メタン発酵)に適する対象物は、当該処理によりメタン製造に供される。得られたメタンはガスエンジンで発電に利用される。一方、メタン発酵残渣およびこの処理に適さないメタン発酵阻害物はともに好気的生物処理が行われ、減容安定化された残渣は固形燃料として利用するか又は埋め立てられる。
 農業系有機廃棄物は、農業生産企業との特定の契約で回収され、好気性生物処理で肥料製造が行われる。得られた肥料は契約企業に戻され、関係農家で利用される。コンポストに利用する為には、毒物などリスク物質が混入していない保証が必要であり、出所の明確な排出者との契約が条件となる。

 2005年にJuniper Consultancy Servicesが纏めた報告書によると、全世界のMBPプラントは80、処理能力は850万トンに達しており2006年までに123のプラントが操業し1,300万トンの処理能力にまで増えると期待されている。処理能力はスペインが最大で250万トンの能力を持ち、次いでイタリー、ドイツ、オーストラリア、オランダ、オーストリーの順である。分別物の価値は、非鉄金属・Alが有価で、廃プラスチックは種類によりボーダーにあり、嫌気性分解で得られるメタンを主成分とするバイオガスは最も価値が高く、固形燃料・埋立共に逆有償領域にある。
 尚、この調査時点でのドイツのプラント数は18であったが、最新の情報では54に増加しておりドイツ廃棄物埋立政令が2005年6月より発効したのに併せた新増設ラッシュがあったものと思われる。

 欧州では廃棄物埋立てに関するEU指令への対応が進んでおり、効率的なセメント燃料化や焼却によるエネルギー回収技術が開発され定着しつつある。ゴミの低位発熱量を向上するためのアイデアがこの指令をクリアーする為に活用され合理的なリサイクル技術に仕上げられている。国内では廃棄物の埋立に関しては環境省・東京都等で再生利用の困難な廃プラスチックは埋立でなくエネルギー回収すべきとの答申が纏められ徐々に軌道修正が行われつつあるが、特に当協会が昨年度東京都と経済産業省の委託事業として行った、小口回収モデル事業で明らかになった様に、産業系廃棄物の中でも中小規模のオフィスビルから排出される廃プラは大部分が埋立処理されているのが現状であり、有効利用を促進するにはEU指令の様な政策誘導が必須になるものと思われる。(了)

 プラスチック処理促進協会が行なった小口回収モデル事業に関する記事は、
下記からご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/124/index.html#topics

随想
映画「ルワンダの涙」所感(2)
信越化学工業(株) 木下清隆

 【ツチ族政府の樹立】
 映画は、公立技術専門学校での虐殺から逃れた数人の人達の証言を下にシナリオが書かれ、その人達が撮影スタッフとなり、当の学校でロケ撮影が行なわれた。それだけに悲しいほど説得力がある。なぜそのような撮影が可能となったのか。それは、その後、ツチ族による政府が樹立され今日に至っているからである。その経緯は要約すれば次のようになる。

 4月9日以降、ルワンダ国内の虐殺は拡大し、その後100日間で80万人とも云われるツチ族が殺された。ところが、7月になってツチ族のルワンダ愛国戦線がルワンダ政府軍との戦いで、これを破ると、これまでのルワンダ政府の要人、ルワンダ国軍、過激派民兵、それにフツ族住民が一斉に国外に逃げ出した。近隣諸国に難民として居留し始めるが、その数は約200万人と推定されている。この場合のルワンダ難民には武器を持った軍人が紛れ込んだため、極めて難しい政治問題を惹き起こすことになる。ルワンダ新政府にしてみれば簡単に帰国を許すわけには行かないし、入ってこられた側の国にしてみても、この兵力が国内の反政府勢力と手を結ばれればとんでも無いことになるからである。このような政治的に取り扱いの難しい難民を一手に引き受け、帰国への道を模索し、懸命の努力をし続けるのが国連難民高等弁務官事務所、即ち、UNHCRであり、高等弁務官の緒方貞子氏である。更にルワンダ新政府は虐殺行為を実行した兵や、民兵をUNHCRは保護しているとして、激しく非難する。このような中での彼女の想像を絶する苦悩と戦いは、その著書『紛争と難民 緒方貞子の回想』(集英社、2006)に詳しい。

 映画の舞台となった4月9日以降の主要な動きは次のようになっている。
4月25日、 和平監視のための国連軍は殆どが撤退。
4月28日、 NGOの代表機関がルワンダで起きていることは、虐殺と言明。これに対し、米国は虐殺という表現を拒否。この為国連軍介入のチャンスを失う。
5月17日、 国連安保理は5500名の国連軍派遣に同意。しかし、派遣費用の負担問題から何らの行動も取られなかった。

 このような経過を見ると、国連の対応が如何に遅かったかが良く分かる。その理由はこの国に地下資源らしいものが殆ど無いことが挙げられようが、直接的にはソマリア紛争である。1980年代から進行していたソマリア国内の紛争が1990年代に表面化してくると、国連安保理は人道的な立場から紛争解決に介入することを決議し、1992年12月に米軍を中心とする多国籍軍を派遣する。しかし、1993年10月に多数の米兵が殺害され、これがソマリア側からテレビ放映されると、米国人の篤い思いは一気にシュリンクしてしまう。「我々はソマリア人の和平を願って、わざわざソマリアの地まで兵を派遣した。それなのになぜ我々の兵がソマリア人に殺されなければならないのか」である。すっかり戦意をなくした米国は撤退を表明する。その中心を失った多国籍軍も1995年3月にソマリアを撤退する。ルワンダ紛争は、その悪夢のような撤退劇が進行する中で起きた。国連諸国は、二度と国内紛争には係わりたくないが、偽らざる心境だったに違いない。そのことがルワンダにとっては不幸なことであったと言えよう。しかし、酷な言い方ではあるが、国連軍の介入がなかったことが、むしろ国家統一を早めたのかもしれない。自分達の力関係だけで国の方針を決定できたからである。

 7月になるとルワンダ軍がルワンダ愛国戦線に破れ、前述のようにフツ族の国外逃亡が始まる。この後、旧ルワンダ軍が大量に隣国ザイールに入ったことで、この国の政権が不安定となり、複雑な経過を辿るが結果的にモブツ政権が倒れ、ツチ系のカビラ政権が誕生する。このとき国名が「ザイール共和国」から「コンゴ民主共和国」に変えられた。1997年のことである。この激動の中でルワンダ難民は強制的に本国に送還された。

 このような経緯を見てくると、ルワンダではフツ族が悪玉でツチ族が善玉のように見られるかもしれないが、もっと長いスパンで眺めると、事はそう簡単ではない。更になぜこのような紛争が発生したのか。そこには深いアフリカ諸国の抱える問題が内在している。(続く)

前回の映画「ルワンダの涙」所感(1)は、下記からご覧頂けます。
☆【1994年の虐殺】
https://www.vec.gr.jp/mag/129/index.html#zuisou1

お知らせ
【NEW】塩ビサイディング・セミナーのご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会では、下記のセミナーに参加し、塩ビサイディングの紹介を行います。

◇環境を考えた北海道の住宅づくり In 札幌
 
・日 時: 2007年7月9日(月)
13:30〜17:00(受付開始 13:00)
・場 所:

札幌市産業振興センター
札幌市白石区東札幌5条1丁目

・主 催: (株)日建新聞社
・参加費: 無料(定員:先着100名)
・お問い合わせ:(株)日建新聞社・編集部
電話:011(726)3138

◇中国地方で要求されるセミナー In 岡山
 
・日 時: 2007年7月13日(金)
13:00〜17:00(受付開始 12:30)
・場 所: 岡山国際交流センター 2F 国際会議場
岡山市奉還町2−2−1
・主 催: 住まいづくり研究会
・後 援: (社)岡山県建築士会【CPD制度認定講習】
・参加費: 無料(定員:先着150名)
・参加申込み締切り:7月7日(土)
・お問い合わせ:住まいづくり研究会
電話:092(871)2409


PVC Newsが6/18に発行されました。

 PVC News 61号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されました。

◇トップニュース1
大臣室の窓も、「樹脂サッシ」で断熱リフォーム
◇トップニュース2
“温暖化防止対策の切り札”塩ビサッシのリサイクル始動へ


記事内容は、こちらからご覧頂けます。
61号:http://www.pvc.or.jp/index/i_saisin.html
バックナンバー:http://www.pvc.or.jp/

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編集後記
 関東地方は6月14日梅雨入りとなったものの、その後しばらくは雨のない暑い毎日が続きましたが、ここに来て漸く梅雨らしくなってきました。それでもこの様子だと空梅雨ぎみで、しかも今年は“ラニーニャ現象”で暑い夏になるとか?今から夏の水不足が心配です。
 「ルワンダの涙」、この映画はまだ見ていませんが、昨年同じ悲劇を題材にした「ホテル・ルワンダ」を見た時の衝撃が忘れられません。斧や なた による身の毛のよだつような虐殺、ルワンダの悲劇は13年前の出来事ですが、アフリカの各地では今も紛争が絶えず、それをもたらす武器輸出が続いている現実に激しい怒りを覚えます。(丸茶)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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