NO.139
発行年月日:2007/08/02

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トピックス
◇加工業界の力で、『塩ビと建設材料』が発刊
 − 土木・設備から建築材料まで21の建材を紹介 −

随想

都市水環境とプラスチック

積水化学工業株式会社 神谷昌岳

お知らせ
【NEW】グリーン・サステイナブル ケミストリー賞の募集始まる
世界ビニルフォーラムの詳細プログラム決定

編集後記

トピックス
◇加工業界の力で、『塩ビと建設材料』が発刊
 − 土木・設備から建築材料まで21の建材を紹介 −

 建設用途は塩ビの国内需用の72%を占め、自己消火性と省資源、COの削減という特徴を生かして持続可能な発展を目指していくべき分野のひとつです。
https://www.vec.gr.jp/data/data05.htm

 7月30日、『塩ビと建設材料』と『塩ビの防火性と火災時の安全性』という二つの冊子が発刊されました。これは、VECと塩化ビニル環境対策協議会(JPEC)が塩ビ建材の復権と発展をめざして企画し加工業界に呼びかけたもので、1年をかけてこのたびの発刊に至りました。
 この二つの冊子は主に建設セクターに向けられており、デベロッパー、ゼネコン、ハウスメーカー、工務店、設計事務所、そして関連の行政、学会の方々を対象にしています。また電気電子、自動車など他のセクターの工場設備に係るエンジニアリングや購買の方々にも有用です。
 まず「塩ビと建設材料」ですが、総論と各論、および付録のJIS一覧の3部からなるB5版148ページ立ての構成となっています。
 総論では塩ビ樹脂と塩ビ製品について、その特徴と近年の動向、社会貢献での今後の課題が述べられています。各論ではそれぞれの加工団体からの寄稿集として21の塩ビ製品が取り上げられ、製品ごとの登場の歴史や現在の有用性、今後の社会貢献への方向性が詳細に述べられています。
 これだけの多くの製品を一括し詳細に紹介したのは近年では始めてですが、これは建設セクターから寄せられていた“塩ビ製品の一覧性の向上を”という要望に応えるものです。特に各論では個別製品のひとつひとつについて、エンドユーザーの専門家にも納得して頂けるような詳しい説明が付与されており、随所に各製品の特徴を分かりやすく説明した図解ナビもつけられているのが大きな特徴となっています。

 塩ビ建材を取り巻く環境には相変わらず厳しいものがありますが、防水や遮水、下水システムといった方面での管、シートなどの新製品も新たに開発されており、REACHやISO整合化といった国際的な課題も山積みです。今回の出版活動を通じて、情報の共有と相互理解といった塩ビ業界の内部環境の改善が進み、同時に、外部環境においてはサプライチェーンにおける再評価が進み、塩ビの需用回復に向う契機となることが期待されます。
 塩ビ建材は今後も社会インフラを日常から支え、開発と革新を繰り返しながら、循環型社会形成に貢献していくことでしょう。

 次週ではペアとなって同時発刊された『塩ビの防火性と火災時の安全性』をご紹介します。(了)

随想
都市水環境とプラスチック
積水化学工業株式会社 神谷昌岳

1.先祖様の知
 「 豊葦原瑞穂國 とよあしはらのみずほのくに 」神々の時代、祖先たちは自分たちの国をこう呼んだ。温暖な気候と豊かな水資源に育まれた自然を敬い、有難くその恵みを頂戴して、決して無駄使いはしない。連綿と続くその営みは日本人の誇りであり、環境の世紀を生き抜くための知恵が詰まっている。日本文化は水の神格化を 嚆矢 こうし とすると言ったら過言か、名刹や名勝には必ずと云っていいほど泉がある。たしか、水神の化身は龍であった。

2.子孫の戸惑い
 万物は流転する、のだ。日本には毎年、琵琶湖の23杯以上(約6500億トン)の降水がある。その3割は蒸発散し、残り7割のうち半分は川や海に流出、もう半分は地下へと浸み込んでいく。都市と山間部では比率は異なっていて、都市では流出分が多く、蒸発散、浸透分が少ない。この流出分の多さと蒸発散量の少なさが都市水害とヒートアイランド現象の元凶である。排水が追いつかず大量の雨水が市中を彷徨う(内水による)都市水害は、平成12年の東海豪雨、17年の杉並・中野浸水被害として記憶に新しい。さらに、蒸発散量不足により熱が都市からぬけなくなるヒートアイランド現象は、都心気温が周辺部より高くなり、熱中症や健康被害を引き起こすと云われている。葦原や稔る穂を眼前から排除し、自然を畏怖することを忘れた子孫が作ってしまった現実なのだ。今一度、気象変動を叫ぶ前に、龍の力によって循環系を守ろうとした祖先たちの知恵を見直すべきではないだろうか。

浸透施設
(クリックすると拡大します)
貯留施設
(クリックすると拡大します)
3.龍の霊力は何処
 現在、その地域の降雨実績量を基に、集水面積と排水能力から計算された彷徨う雨水は、点在する駐車場や公園、学校校庭など比較的容量の確保しやすい空間で待ち伏せられ、一時的に貯留されることが増えている。ただ、次の雨に備えるため、貯まった雨水は下水道ネットワークに速やかに排出される。それら施設の多くは地下にあって、プラスチック部材の組立て工法が主流で1万トン未満の貯留容量のものが殆ど。仕組みは簡単、プラスチック板材などで槽を三次元に組み立て、外周をシートで包むだけである。(社)雨水貯留浸透技術協会http://www.arsit.or.jp/調べでは、H18年度のプラスチック工法実績は全国で34万m(2918件 対前年比149%)、2010年には500億円の市場規模(環境省推計)に達すると目される成長分野である。今後、大都市から地方都市への波及、民間開発への指導強化が予想されることから、需要の拡大が見込まれている。しかし、水を待ち伏せるだけでいいのだろうか?天の恵みを簡単に捨て去ってしまっていいのだろうか?龍の霊力はもっと大きな流れを司っていたはずだ。

4.われら子孫の知:ドラゴンネットワーク
 我が国の下水道 管渠 かんきょ の総延長は約38万km、東京都では1.6万kmにも及ぶ。莫大な労力と税金を投じた世界に冠たる地下ネットワークである。この地下ネットワークと地上をクロスリンクできないだろうか。6月に東京都が“緑の東京10年プロジェクト”を発表した。注目すべきは、街路樹を10年内に現在の2倍以上の100万本にまで増やすという計画(グリーンロード・ネットワーク)で、まさに都市に出現する地上ネットワークである。植物は地界と天界を紡ぐ不思議な生物で、水を介して両者を繋ぎ合わせることで見失った大きな循環系の再構築にならないだろうか?そのためには、施設に気象と連動するような機能を組み込むことや施設の連結、街路に沿う施設の線状化など改良の必要もあるだろうが、彷徨う恵みを緑を通してゆっくりと天に還すという祖先の知に近づけるはずである。何も東京だけの話ではなく、日本中の都市で実現可能だろうし、事実、ご先祖様はそういった街づくりをやってきたのだ。ここに私は、地上と地下のネットワークをリンクすることでの龍の道=ドラゴンネットワーク構築の必要性を提案したいと思う。もちろん、水の局在化や維持管理をどうするのか、長期雨が降らないときどう対処するのか、など課題は多いが、地下ネットワークの主役はプラスチック、塩ビの華やかな舞台である。プラスチック屋の技術と経験はそれらを乗り越えて行ける重要な力になり得ると信じている。我々に新たな大役が巡ってきたのかもしれないなあと思う今日この頃である。(了)

お知らせ
【NEW】グリーン・サステイナブル ケミストリー賞の募集始まる

 グリーン・サステイナブル ケミストリー(GSC)ネットワークとは、化学技術の革新を通して「人と環境の健康・安全」を目指す組織です。
 化学系の学会・団体および国立研究所により、2000年3月に設立されました。
 VECは、GSCネットワークを構成する団体の一つとして協力しています。

 GSCネットワークでは、「第7回(2007年度)グリーン・サステイナブルケミストリー賞」を募集しています。

募集期間:2007年7月1日(日)〜10月31日(水)

詳細は、グリーン・サステイナブル ケミストリーネットワークのHPをご覧下さい。
http://www.gscn.net/

募集問合せ先:naito@jcii.or.jp

世界ビニルフォーラムの詳細プログラム決定

 9月米国ボストンで開催される世界ビニルフォーラム(World Vinyl ForumIII)の第二次開催案内がウェブ上に公開されました。
http://guest.cvent.com/EVENTS/Info/Agenda.aspx?e=e54b1463-74fc-4c18-867a-dd4856c8bebb
 会議は、9月26日のwelcome receptionに始まり、世界のビジネス環境と塩ビ産業の過去・未来について意見交換が行われるほか、塩ビ製品の製品開発やプロモーション活動状況、電子・電気業界の塩ビに関する話題やグリーンビルディングに関する講演が予定されています。27日と28日は展示会も同時開催されることから、デザイン性を活かした塩ビ製品の展示や情報交換が行われるものと期待されます。
参加の申し込みはウェブからどうぞ。

編集後記
 暑い夏、水不足も困りますが、集中豪雨も来ては欲しくないものです。人間は、自然現象をコントロールできないまでも、少しでもその被害から逃れるためにいろいろと工夫をめぐらせるものです。先週のメルマガで紹介されたJR駅に設置された雨水貯留槽や、今週紹介された都会の地下に張り巡らされた雨水貯留槽とそれをつなぐパイプは、さしづめ都会の小さな“ため池”と“小川”といったところでしょうか?もちろん、カエルが飛び込んだり魚が泳いだりはしていませんが・・・。(HI)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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