NO.144
発行年月日:2007/09/13

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トピックス
◇私は使わないけど
国際連合大学 上野 潔

随想

記憶の風化

東京農工大学大学院MOT客員教授、元旭化成 瀬田重敏

お知らせ
【NEW】PVC Newsが9/18に発行されます。
今話題になっている内容のセミナー In 岐阜 のご案内
エコキュートフェア 出展案内
世界ビニルフォーラム開催の最終案内!

編集後記

トピックス
◇私は使わないけど
国際連合大学 上野 潔

 さる8月31日、薄型テレビと衣類乾燥機が2008年度からリサイクル対象になる、との報道がありました。衣類乾燥機は自然に任せても良いとは思いますが、薄型テレビについてはCRT型テレビからの移行速度を考えると法令の対象に加えるのは当然でしょう。製品開発と同時にリサイクル技術開発も日本が確立すれば、正に両面で世界をリードすることになります。

 さて、これまでの審議においてリユース促進に多くの時間が割かれてきました。リユース促進は日本が世界に発信する3R政策の一つとなっています。私も基本的にリユースは促進すべきと考えています。しかしリユースには環境負荷物質の拡散やリサイクルできない国への輸出など、多くの課題があります。家電リサイクル法の改定を議論する国の審議会や委員会などでは「リユースを促進すべきである」との意見に対し、誰も表立って反論できない状況です。巷間でも「まだ使える製品がリサイクルのために破壊されている」「もったいない」「誰かに使ってほしい」という趣旨の発言が目立ちます。マスコミの論調も、有識者の意見もそのようです。
 そのような発言をする代表に質問したことがあります。
Q:「あなたは中古家電品を使いますか?」
A:「私は使わないけど、誰かに使ってほしい」
Q:「誰かって、誰ですか?」
A:「そういう人は沢山います。貧しい人とか、途上国の人とか。リサイクルショップが繁盛しているのを知らないのですか?」

 少し話題が変わりますが、災害があったとき山ほど集まり誰も使わないのが「善意の古着」だそうです。さすがに最近は綺麗に洗濯がしてあるそうですが、それでも被災地では迷惑だそうです。本当に被災者が必要なのは「お金」です。

 まだ使える家電製品を、「誰かが綺麗に掃除して、誰かが修理して、貧しい人や途上国の人に使ってもらいたい。」「まだ使えるのだからもちろんお金はいただきたい。」
 こんな「善意の人々」が沢山いるのです。「なぜ、自分ではもう使わないのですか」と質問すると「もっといい製品が出たから」「家族の人数が変わったから」「引越しのついでに買い換えたいから」という答えです。
 自家用車の場合はほとんどが「グレードアップしたいから」のようですが。皆様はどんなときに製品を買い換えますか? 内閣府が「消費者動向調査」で、電気製品の買い替え状況のアンケート調査を行って毎年公表しています。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/2006/0603shouhi.html

 その一部を表に示します。

     表 電気製品の買い替え状況(内閣府:消費動向調査から引用)

 

平均
使用年数
(単位:年)

買い替え理由(単位:%)

故障

上位品目
への移行

住居の変更

その他

Fy00

Fy05

Fy00

Fy05

Fy00

Fy05

Fy00

Fy05

Fy00

Fy05

電気冷蔵庫

12.4

10.4

48.7

70.4

27.6

14.2

5.2

7.6

18.5

7.8

エアコン

11.7

10.2

47.5

61.8

24.2

12.8

6.9

15.8

21.4

9.6

テレビ

9.2

9.1

75.0

66.4

11.9

25.7

1.9

3.2

11.3

4.7

電気洗濯機

9.7

8.7

65.7

73.4

13.8

13.1

3.1

6.4

17.4

7.1

パソコン

-

4.5

-

37.4

-

49.6

-

0.3

-

12.7

携帯電話

-

2.6

-

34.7

-

44.2

-

0.3

-

20.8


 この結果をご覧になった感想は如何ですか? 平均使用年数は、買い換えたときの年数で、実際に製品が故障した年数ではありませんが、パソコンや携帯電話に比べて、家電製品は、故障した時に買い換える比率が高いと思います。ほとんどの家庭では故障するまで買い換えないのです。しかし上位品目への移行のために買い換えられる製品がかなりあることも事実です。ボーナスが出たから、子供が大きくなったから、など理由は様々でしょう。特にテレビはCRT型から薄型テレビへの買い替えが急速に増えているのだと思います。最近では「省エネ型の製品が発売されたので電気代節約になるから」という環境配慮型の理由も増えているかもしれません。いづれにしても、「まだ使える製品」が廃棄されていることは確かです。

 誰かに使って欲しい。その気持ちを大切にするのであれば、「自分が使用するならば」と考えて「綺麗に清掃する費用」「小さな故障の修理費用」を自分で負担することが最低限のマナーではないかと思います。そして「取扱説明書」「使わなかった付属品」テレビやエアコンの「リモコン」も必要ですね。途上国に輸出するならなおさらです。
 自分の使用した「冷蔵庫の匂い」「冷蔵庫の壁にべたべたと貼られたシール」「洗濯機の水垢」「テレビ裏側の埃」「エアコン室内機の熱交換器にべったり付着したタバコのヤニ」「リモコンにしみ込んだ手垢」を知っていますか? 使用を継続すると電気代が高い旧製品や、現在は禁止された化学物質を含んでいる製品は、リユース促進をすべきでしょうか? 自分ならそんな中古品を使用するのはいやでしょう。貧しい人も途上国の人も、同じです。リユース品は、当然ながら残存寿命が新製品より短くなります。不適正な修理をすれば「生命の危険」もあります。そしてそのうち故障します。そのリサイクル費用は、誰が負担するのですか?

 リユースについては、世界中の環境推進派の人々、行政、NPO、有識者の全てが推進すべきといいます。もちろん、私もそう思います。自動車は中古車が立派な市場を形成していますし、何よりも車検制度があります。パソコンのように中古品の品質を保証する制度ができている分野もあります。しかしあまりにも生活に密着した家電製品の場合には「私は使わないけど、もったいないから誰か使って」「まだ使えるのだから、必要な費用も(私以外の)誰かが負担すべきです」という主張には、環境を標榜するけれど貧しい人や途上国の人を見下した、傲慢で、身勝手な顔が見えてきます。
 リユースを促進するなら、「まず自分の費用で、手入れして、故障するまで使用する。」やむを得ず手放すときは「使用3年未満であること」「自分が使うことを考えて清掃や修理をする費用を負担すること」おそらくリサイクル費用よりも高いはずですが、それが本当のリユース促進であると思います。(了)

随想
記憶の風化
東京農工大学大学院MOT客員教授、元旭化成 瀬田重敏

 2007年7月16日、震度6強の「平成19年新潟県中越沖地震」が発生した。2004年の中越地震に続く直近の大地震で、11人の犠牲者と1,300人の負傷者、家屋の全半壊4,000戸に及んだ。

 私の手元に、2004年10月の中越地震のことを書いた長岡科学技術大学の随筆集がある。未曾有の大震災の記憶と教訓を忘れないために、大学の被災体験者たちが綴った文集である。
 この随筆集には、危機に直面された学長、副学長、教授陣、教職員、学生、その中の留学生の言葉が出てくる。非常時に本当に役に立つ知恵、弱者、備え等の教訓がある。
地震発生後、同大学は直ちに教職員と学生全員の安全を確認した。
転倒防止や安全衛生防火点検をしていた研究室としていなかった研究室との差が明白。家具を天井に圧着する突っ張り棒は効果があった。
大学の自室で大きなゆれに遭遇、第2震で眼下の長岡市の明かりが一瞬にして消えた。停電で真っ暗、非常口の照明が頼りだった。
阪神大震災にも遭遇された副学長によれば、2004年の中越地震の方が揺れ、余震の回数・期間がはるかに多く長かったという。今回夕食の準備をしている時刻なのに火事の発生が少なかったのは、都市ガス供給の自動遮断システム、ガス管の高分子材料への切替、機敏な消防活動など、阪神地震の際の教訓がかなり生かされているからだと思うという。
赤十字救急法指導員、ボランティアリーダー等を勤めておられる教授の活動が報告されている。救急措置で一番多かった熱傷処置、熱傷包帯の効果は平時の認識をはるかに超えた。中でも最大のヒットは徳州会(災害医療協力隊、TDMAT)に通知し、援助を要請したこと。協力隊は鹿児島から来たが、その協力隊と同研究室の連携が重要な意味を持った。地域を知る人と医療をする人の連携で、医療協力隊の行動効率が何倍にもなったという。
地域の医療は重大な役割を担う。日が経つにつれて、医療の内容が変わる。発生から3日間は骨折、挫創、熱傷、切り傷等外科系疾患、それ以降は高血圧、不安不眠など内科・神経科系疾患、1週間を過ぎると風邪、消化器系、更に長期化するとストレスが問題になる。
研究室は教授次第。あらためて教授の指導力と助手の明るさが士気を高めた。
「(余震)間隔が短い。すぐに次が来る」「ガス、ボンベ、ブレーカー、水道、みんな切れ」、研究室全員に指示した行動指針「行動をとるときには必ず2人以上、そして教官に連絡すること、教員がいないときには紙に書いて車に貼る。」、研究室の様子を見にゆくときは「片付けはするな、写真は撮れ」「"だろう"、"と思う"、"という噂だ"、等の情報は決して流すな」など、混乱の中で各教員が下した指示は的確である。
マスコミの勝手さが目に余った。市のホテルやタクシーを一括契約で占有、電話は繋ぎっ放しで確保する、こうしたことのため、他の地域から来た被災者の身内・知人の行動が大変困難になっていたという。
分析機器などはメンテナンス体制が物を言う。購入時の値段だけでない。
災害ホームページの立ち上げ。オートバックスで大容量インバーターを購入、ホテルのフロントで無線LAN接続を依頼した、これは効果絶大で好評だった。
留学生は言葉が不自由で友人や親戚が少ない。日ごろ話をしない人々に声をかけて貰ったことがとても嬉しいという。
ボランティアでは、1度でも経験した人の存在が貴重だった。
日本酒の差し入れ貴重。神経が高ぶって熟睡できない。神戸でも最も有難がられたという。

 この文集の副学長の言葉が重い。「何よりも恐ろしいのは、被災からわずか2ヶ月しか経っていないのに、もうその記憶と教訓が風化を始めていることである。」

 筆者は大学の副学長をしているとき、大学の環境安全対策の一環として、中央防災会議報告、東京都の直下地震被害想定調査報告、大学の防震災対策では最先進の静岡大の例、その他多くの材料を参考に、来るべき大規模地震災害対策を真剣に検討した。この随筆集もそれら貴重な材料の1つとして、長岡科学技術大学に直接お願いして譲っていただいたものである。
 天災は天からの警告であり、リスクである。コストをかけ時間をかけても、何も起きないかもしれない。しかし天からの警告を受け流し、取り返しのつかない結果を招いた例は数知れない。そうした中でも記憶の風化は悔みきれない結果を引き起こす。
 今回の地震では、原発や自動車部品を始め、産業界にも重大な影響が及んでいる。阪神淡路大震災の時、日本列島が東西に分断されて物流が危機に瀕し、各社大変苦労された。
 VEC各社も近年の大震災を警告として対策や危機管理を強化されていると考えるが、今回の警告を機に、この欄を活用して自社の「経験と対応」をご紹介し合っては如何だろうか。(了)

お知らせ

【NEW】PVC Newsが9/18に発行されます。

 PVC News 62号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されます。
目次をご紹介致します。

◇トップニュース1
塩ビ業界、「リサイクルビジョン」を発表
◇トップニュース2
  進む、タイルカーペットのエコ対策
◇視点・有識者に聞く
科学ジャーナリズムのニューウェーブ
毎日新聞科学環境部記者 元村有希子氏
◇リサイクルの現場から
使用済み塩ビ管・継手のリサイクル事業、着実に進化
◇インフォメーション
「建築系混合廃棄物の組成及び原単位調査結果」から

以上、5月に発表した「リサイクルビジョン」を中心に、塩ビ関連情報をご紹介致します。

「リサイクルビジョン」はこちらからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/topics/new74.htm

・PVC Newsバックナンバーは、 塩化ビニル環境対策協議会のHPよりご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/

今話題になっている内容のセミナー In 岐阜 のご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会では、下記のセミナーに参加し、塩ビサイディングの紹介を行います。

・日 時: 2007年9月21日(金)
13:00〜17:00(受付開始 12:30)
・場 所: 岐阜県県民文化ホール未来会館5F 大会議室
・主 催: 住まいづくり研究会
  ・後 援: (社)岐阜県建築士会【CPD制度認定講習:5単位】
・参加費: 無料(定員:先着90名)
・参加申込み締切り:9月15日(土)
・お問い合わせ:住まいづくり研究会
         電話:092(871)2409

エコキュートフェア 出展案内

 オール電化は魅力だけれど、省エネも気になるし・・・。
塩ビサッシで窓を断熱すると、無駄な電気を節約できます。
エコキュート&塩ビサッシでより快適にオール電化生活を!

 樹脂サッシ普及促進委員会では、下記4ヵ所で行なわれる東北電力(株)主催の「エコキュートフェア」に出展致します。(入場無料)

【山形】 (終了)
【青森】 (終了)
【秋田】
・開催日: 2007年9月13日(木)、14日(金)
・場 所: 秋田市文化会館 地下第1・2展示ホール
【新潟】
  ・開催日: 2007年9月19日(水)、20日(木)
・場 所: 新潟市産業振興センター 2F大・中会議室
※各会場とも開催時間は、10:00〜19:00(2日目17:00終了)

世界ビニルフォーラム開催の最終案内!

 世界ビニルフォーラム(World Vinyl Forum III)の開催(9月26日〜28日、ボストン)が迫ってきました。5年ごとに開催されている本フォーラムの今回のテーマは「Charting Our Future in a Sustainable Age」で、サステイナビリティ時代に向けての塩ビ製品の開発やプロモーション活動状況について、世界の塩ビ関連産業が集まり、意見交換を行います。プログラムにもあるように日本から、電化製品における塩ビ部品の使われ方やリサイクル状況について、さらに樹脂サッシを中心とした日本の塩ビ製品を巡る最近の話題をVECから報告することになっています。現在のところ、230名を超える参加登録者を数えています。
http://guest.cvent.com/EVENTS/Info/Agenda.aspx?e=e54b1463-74fc-4c18-867a-dd4856c8bebb

編集後記
 我が家の冷蔵庫クンは修理2回のオントシ22才、エアコン様は17歳で修理1回。人間なら白寿クラス、精一杯のリユース人生でした。内需には貢献してませんが。さすがに寿命ですし余生は家電リサイクル工場へ、と申しております。
 で、住宅のほうはこれからリフォーム、これもリユースですよね。でも高く付きそうで心配。日本にもアメリカのモーゲージあったらなあ。リフォームすればバリューが上がってつぎのローンも借りれるし・・・・。イヤマテ、証券化の後がコワイのでした。(加地)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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