◇「可塑剤50年史(安全性追求の歩み)」 |
可塑剤工業会環境委員長・ |
|
50周年記念行事実行委員長 五十嵐 明 |
|
可塑剤工業会は1957年6月1日、塩化ビニル樹脂工業懇話会を母体とし、メーカー13社により創立されて以来、塩ビ樹脂工業の成長の軌跡と重なり合いながら長い道のりを共に歩んできました。
工業会創立当時の可塑剤生産量は年産2万トン台で、1960年代には年産10万トンを突破し、その後も軟質塩ビ製品市場の拡大と共に成長を続け、1997年には年産57万トンを記録しましたが、昨2006年は35万トン台の生産量となっています。この生産数量の変遷が示すように、この間、可塑剤を取り巻く環境も大きく変化し、その道のりも平坦なものではありませんでした。
1970年代には河川から可塑剤が検出され、難分解性の環境汚染物質ではないかとの疑いがかけられました。1980年代に入るとDEHPのラットやマウスへの発がん性の疑い、1990年代にはDEHP他のいわゆる環境ホルモン問題、2000年には生殖毒性問題が提起されました。可塑剤工業会は当初、製造法や試験方法の確立や規格の制定などの活動を行っていましたが、安全性に対する問題が提起されて以来、その活動を環境・安全性問題の対応に特化し、科学的データの収集・分析及び提供に注力してきました。
この結果、環境汚染問題は1978年に大阪府の安全宣言により、発ガン性問題は2000年に国際ガン研究機関(IARC)が評価を変更したことにより、環境ホルモン問題は2003年に環境庁が可塑剤には内分泌撹乱作用がないと発表したことによりそれぞれ決着しました。
また、精巣毒性及び生殖毒性に関しても産業技術総合研究所から現状でリスクの懸念はないとの評価が2005年に出ていますし、工業会としても外部の研究機関に委託することにより、霊長類では幼若期でも精巣毒性を示さず、生殖毒性には種差のあることを確認しています。
可塑剤工業会はその歴史の半分以上を費やし、環境・安全問題解決のため活動してきたわけですが、こうした活動を単独で行い得たわけではありません。関係省庁のご指導をはじめ、塩ビ工業・環境協会や日本ビニル工業会など関連団体との連携が活動の支えになったのは言うまでもありません。とりわけ、塩ビ工業・環境協会、塩化ビニル環境対策協議会並びに塩ビ食品衛生協議会の活動は見習うべき立派なお手本として、可塑剤工業会加盟メンバーの士気や勇気を奮い立たせるのに充分な内容でありました。
可塑剤工業会は本年6月創立50周年を迎え、7月に記念行事の一環として、主要な活動である可塑剤の安全性に対する取り組みを中心にして編纂した「可塑剤50年史(安全性追求の歩み)」を刊行致しました。この小冊子には可塑剤工業会のこれまでの活動を分かりやすく記載しており、ご関係の皆様にご一読戴ければ幸いです。
環境・安全問題に対する可塑剤工業会の長年の取り組みにより、科学的データが蓄積され、可塑剤は「最もリスク評価が積み重ねられた化学物質のひとつ」として認識されつつあります。省資源・省エネルギー型で環境に優しい素材である塩ビ樹脂への期待感が高まっているなかで、可塑剤工業会としても「50年間の安全実績」をより分かりやすく発信する事により、軟質塩ビ製品の有用性を広め、社会に不可欠な価値ある製品としての認識を高め、塩ビ樹脂共々需要回復を図っていきたいと考えております。
今後とも、塩ビ工業・環境協会の皆様を始め、関連団体、関係各位の一層のご指導、ご鞭撻をお願い致します。(了) |
|