この1月31−2月1日にかけて、コロンビアのカルタヘナで『ANDEAN塩ビフォーラム』が開催されました。ANDEANとはアンデス地域のことを指します。カリブ海の要所に位置し、自然の良港でもあるカルタヘナは、スペイン帝国統治下で重要な港として栄え、現在もコロンビア第二の荷揚港です。植民地時代の城壁や旧市街がよく保存されており、様々な歴史的建築物が数多く現存することから、1985年にユネスコの世界遺産に登録されています。
カルタヘナは、アンデス地域の諸国が共同体の結成に合意(1969年カルタヘナ協定)した地です。現在の共同体の加盟国は、ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルーで、域内自由貿易圏を形成しています。域内人口一億人弱、域内GDP約二千億米ドルの経済圏です。アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、チリが準加盟国、メキシコ、パナマがオブザーバとして参加しています。ベネズエラは、当初の共同体メンバーでしたが、コロンビアとペルーが米国と締結したFTAに反発して共同体から脱退しています。しかし、ANDEAN塩ビフォーラムにはベネズエラの人もたくさん参加しています。二年おきに開催され、三回目となる今回のフォーラムには約200人が参加し、日米欧の塩ビ協会からの招待者とともに、塩ビを巡る最近の動向について活発な意見交換を行いました。
塩ビの世界需要は、過去5年間は年率5.1%、これからもほぼ同率で伸びると見られています。今後、原油価格が高止まりすれば、他の樹脂に比して石油依存度が小さい塩ビの競争力は一層高まるだろうと期待されています。2006年の塩ビ市場は、欧州では西欧での需要が堅調に伸びた(2.7%)ことに加えて東欧市場の需要は二桁の伸びとなっているとのことで、欧州全体として4%と高い伸びを示しました。東南アジアも二桁の成長となったようですが、米国の生産量は、住宅着工件数減が響いて3%の減少となったとのことです。塩ビの南米市場は、生産能力で世界の4%ですが需要の拡大を反映し輸入が増大しています。需要は過去5年間、年率6.8%で伸びてきました。今後5年間も、平均年率4%程度の伸びが予想されています。
南米市場でも、建材関連の用途が多く、15年以上使う製品となるものが過半を占めています。また、包装容器としても塩ビは重宝されています。このため、フォーラムではリサイクルに高い関心が示されました。会場からは、塩ビに生分解性を付与できないかという質問もありましたが、むしろ、塩ビの優れた耐久性とリサイクル性能を生かし、効果的なリサイクルシステムを作っていくのが重要であろうというのが専門家たちの答えでした。ちなみに、EUは、2010年までに自主的に20万トンをリサイクルするという目標を掲げていますが、2006年には8.3万トンが回収できたとのことです。日本では、ほぼ同量の使用済み塩ビ製品がマテリアルリサイクルされています。西欧の内需は日本の4倍以上ありますから、日本はリサイクルで西欧を凌駕している訳です。
経済成長著しい南米の諸国において、瀟洒なホテルやオフィスの近傍に、それらとは別世界の貧困層の集落が広がる光景は珍しいものではありません。カルタヘナも例外ではありませんでした。南米だけでなく多くの途上国に見られる現実です。これらの諸国にとって、持続的な成長を遂げるためにはインフラ整備は社会的経済的に重要な課題であり、塩ビに期待される役割には大きなものがあることを感じました。安全性、環境問題への対応、リサイクルなどに関する知見や経験の共有が、途上国の持続的成長の一助となります。米欧とともに日本も積極的な貢献をしていきたいと思います。(了) |
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