NEW VEC MAGAZINE Vol.18
発行年月日:2004/06/24



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コラム
環境とビジネス
−資源とエネルギーの効率向上を求めて−
                          倉敷市 牧野哲哉
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コラム

環境とビジネス

−資源とエネルギーの効率向上を求めて−
   倉敷市 牧野哲哉

 孫の顔見たさに娘夫婦の家によく泊まる。この家のお風呂には、アルミ箔の保温シートが浮かんでいる。苦しい家計をやりくりしてくれた妻の若い頃を思い出したりして、何とも微笑ましいのだが、この保温シートの経済効果を実測計算した人がいてびっくりした。現役時代にメール交換していたカメラメーカー最大手の技術屋さんである。この保温シートを使うと、追い炊きの燃料費を節約できる。
 この方の場合、月平均15回の追い炊きをしているとの事で、保温シートの耐用年数、5年間で約4千円節約できるとの結論でした。たいした事ないじゃないかと思わないで頂きたい。これに日本の全世帯数(4千7百万)を掛けると約2千億円になる。同じ便益を得ながら、これだけの燃料の節約ができると言うことです。
 環境への対応を社会に取り込みながら、しかも経済発展が出来て、皆が幸せになるにはどうしたらよいのだろうか。環境に配慮したビジネスとは、本当はどういうものになるのか、私には良く判らないままなのだが、自分の意見をご披露しようと思う。
 最初は環境省に敬意を表そう。環境省は、昨年の6月に「環境と経済活動に関する懇談会」を組織し、約半年間の自由討議の後、「環境と経済の好循環を目指して」と題した報告書を公表した。作文としては良く出来ていて、抵抗感なく読めた。興味ある方は、ホームページからダウンロード出来ますので読んでみて下さい。20ページ程度です。
 経営者の多くは、環境を、経済の阻害要因と考え、環境ビジネスはリスクが大きく、世間の受けは良いが、収益を生む事業にはなり難いと判断していると思う。むしろ、大失策をして経営危機に陥らないための、経営リスク回避の一環として、環境対応を考えているのが正直な所だろう。
 環境にやさしいとされる商品でも、世間受けを狙った宣伝文句で、実は、逆に環境負荷を増やすものも、ないではない。仮に本当に環境に良い商品があったとして、それが大ヒットし、普及した場合、結果的にトータルの資源・エネルギーの消費が増えてしまえば、何のことだか判らなくなる。
 環境への対応が、経済の成長要因となり、持続可能な社会を構築するためには、どういうイメージの商品やサービスが開発されるべきなのか、そのためには、どういう政策が採られ、社会の仕組みをどの様に変えるべきなのか、なかなかに難しい問題である。
 定量的な計算をするデータも能力もないまま、野次馬的、直感的な感想で、誤りもあるだろうが、具体的な商品例について、私見を述べてみたい。
 先ず、最初は、インターネットや携帯電話など、最新の情報通信システムだろう。従来の通信方式では出来なかった、高速・高密度で堅牢なシステムを目指して開発されたもので、環境を意識したサービスや商品ではない。しかし、よく考えてみると、開発途上国で、社会インフラが不十分な状況でも、容易に使えて、従来の様な固定式電話やFAXに比べれば、格段に資源効率が良く、環境負荷が小さいと思う。日本など、先進国での普及は爆発的で、数年後には通信回線が満杯になり、危機が噂されるが、環境側面から見ても優れたシステムではないかと思う。
 エネルギーでは、太陽光発電だろう。今更説明するまでもないが、単に自然エネルギーと言うだけでなく、インフラの弱い離島や途上国で重宝され、優れたものと思う。日本は太陽電池の生産では、ダントツで、26万KW、世界の太陽光発電の約半分のシェアである。ただ、シリコン半導体の製造(コスト)がネックで主流にはなれないのが残念である。所が、ごく最近、シリコンを使わない光増感型の太陽電池が発明された。実用には未だ時間が掛かるが、ひょっとしたら、エネルギー分野で革命を起こすかもしれない。嫌われ者(?)のハロゲン元素も使うが、注目したい。(ノンハロゲンを売りものにしている企業がこれをやったら、皆で笑ってやりましょう)
 燃料電池は、自動車ばかりが騒がれるが、私は余り期待していない。某自動車メーカーの開発担当者自身が難しいと言っていた。製造コストは従来車の100倍(!!)である。水素をどうするかが大問題で、ボンベでは重過ぎるので、工夫が続けられている。ボンベを軽くする。ガソリンから水素を合成する改質ユニットを積む。水素を可逆的に発生する化学品として運ぶ。等々、どれが良いかはまだ判らない。私は三番目が面白いと思っている。でも、移動体のエンジンを燃料電池にするのは、無理じゃないかな。そもそも、移動体のエンジンは、重量当りの出力が命である。燃料電池システム全体は、出力のわりには重いのじゃないかな。ガソリンエンジンもジーゼルエンジンもその点では究極まで改良された代物だと思う。
 燃料電池はやはり固定式だと思う。電力と熱と両方使う方式でなければ資源効率が良くならないからである。現在開発中の石炭ガス化燃料電池複合発電システム(IGFC)は、発電端で約60%の超高効率(現状40%)を実現する次世代技術として大きな期待を集めている。この新技術では、従来の石炭火力発電と比べてCO2の排出量を約30%も低減できる。これなら石炭火力でも良い。経産省石炭利用技術戦略では、将来、ゼロエミッションを達成すると豪語する。
 家庭用の燃料電池も、給湯システムと組み合わせたものが、実用段階になりつつある。だが、こちらには、意外な伏兵が現れた。「エコキュート」である。元々は、ガス会社のコジェネ型給湯ユニットに対抗して出た商品らしく、家庭のユウティリティを全部電化してしまう家電メーカーの戦略商品だという。夜間電力で、ヒートポンプを動かし、大気の熱(!!)からお湯を作るシステムである。投入する電気エネルギーの3倍の熱エネルギーが獲得できる。宣伝資料によれば、従来の給湯システムより年間約10万円の光熱費が削減できるらしい。熱媒体に炭酸ガスを使うのがミソ。本当に資源効率が良いかは、データが見つからないので判らない。
 これは悪口だが、家電メーカーは時々変なものを作る。洗濯乾燥機もその一つ。どれもこれもダメとは言わないが、かなりの資源エネルギー浪費型商品らしい。
 環境対応商品のベストワンは何と言っても、ハイブリッドカーで、中でもトヨタのプリウスだと思う。特に新型プリウスは凄い。総合効率が32%で、最新ガソリン車の倍以上、燃料電池車も超えている。加速性能は2Lの大型セダン以上とのこと。しかも燃費は35km/Lを越える。ガソリン満タンワンチャージで1000kmの走行を達成したと言う話がインターネット上で発表されている。
 話が飛ぶが、東海道新幹線の新型車両700系は回生モーターを使っている。ブレーキを掛ける時、モーターが発電機に変って電力を回収する仕組みである。これでJRは年間約50億円の経費削減をした。所が、何と新型プリウスもこれをやっているのである。全エネルギー消費を電子制御して最適化しているのである。ハイブリッドカーを燃料電池車までの中継ぎとしてしか見ていなかった欧米のカーメーカーは、プリウスを見て驚いている事だろう。
 自動車の使い方で面白いと思ったものを二つ紹介する。自家用車というのは、実は、利用率の悪いものである。殆どが、家の駐車場に止まっていて仕事をしていない。東京都内のタクシーだって、お客が乗っている車より空車の割合が多いそうである。この無駄を無くそうと言う試みです。
 一つは、スイスで始まったものだそうですが、カーシェアリングです。特定の地域で、車を共有して使うもの。日本でも幾つかの地域で始まっているらしい。元々は、交通渋滞解消が目的のもの。
 もう一つは、2002年に発売したトヨタの小型車サファを、買ってもらうのではなく、登録者に、必要な時にだけ乗ってもらい、走行距離に見合う使用料のみを毎月支払う方式である。車の維持管理はトヨタがやる。電気、ガス、水道と同じやり方である。この方式だと、同じサービスに対する資源効率は格段に良くなるはずである。利用者もこの方が安上がりで、お互い旨く行く。事業としては赤字ではなかったらしいのですが、何故か1年足らずの試験販売で止めてしまった。本格的にやれば良いと思う。

 ここで述べたものは、ごく一部に過ぎない。しかし、これらの商品を見ていて、開発者の苦労が、もう少し報われても良い気がする。どうすれば良いかは判らないのだが、企業の環境行動が、もっと利益として還元される新しい社会的な仕組み欲しいと思う。

以上

■環境バンク・セミナ−報告

FP&環境システムプロデュ−サ−・長谷部和子
平成16年5月22日(土)前半『自動車起因する環境問題』
飯田 訓正 教授
慶應義塾大学理工学部 システムデザイン工学科

『社会のコンポーネントとしての次世代エンジン開発』

 いずれ枯渇するのは明らかな石油に変わって、なにを代替エネルギーにするか。例えば天然ガス(他にメタノール、DME、等)にした場合、自動車のエンジンはどう変える必要があるか、そうした着想から研究開発を展開しています。
こう話すと、なぜ電気自動車やソーラーカーじゃないのかと言われます。
 私の反論は、電気を作るにも結局は化石燃料を燃やす、ソーラーパネルを作るにも実は膨大なエネルギーを使う(間接エネルギーと言います)、さてどちらが環境や資源に負担が少ないか考えていますか、というわけです。これをライフ・サイクル・アセスメントと言います。
 科学技術の高度化によって、まさにこの問いに政策決定者が答えられなくなってきている。総合デザイン工学の必要性はここにあります。
 資源の問題は、結局、エネルギー変換効率の問題に帰着します。
 例えばガソリンエンジンの変換効率は20〜30%。これを高効率に変えることでエネルギー節約はもちろん、燃焼不良が原因で発生するNOxやHC(ハイドロカーボン)を減らす排気浄化技術という環境保護にも直接つながります。


自動車の普及と問題の発生


自動車の普及による問題は段階的に事故→渋滞→汚染→温暖化→エネルギー事故に対する解決策として車は衝突するものと考え、車体構造の設計改良をした。

ハーゲンシュミット教授の発見(1952年)大気に放出されたHCと燃焼によって生成されたNOxが地表近くの大気で太陽光を受けて反応し、光化学スモッグを生成する。

環境負荷:1.局所汚染による生態への直接的影響−粒子状物質、NO2、SO2 2.地域的大気汚染−光化学オキシダント 3.地球規模(地球温暖化)

日本の自動車保有台数排出ガス総量:6329万台 排出の75%がディーゼルから。ディーゼル自動車規制値は2005年度のものが実行されると、やっと排気ガスの煙が見えなくなる。
2005年から排ガス検査を実際に走行している状態で検査される。

低公害車の考え方:1.有害物質の生成防止−既存燃焼方式エンジンの改良、新燃焼方式の開発、石油代替燃料の利用、ハイブリッド化によるエンジンの定常的運転 2.有害物質の除去−触媒の導入、トラップフィルターの導入 3.燃焼に依らない動力源の導入−電気自動車、FCV

代替燃料:すすを生成しない燃料−メタノール、DME すす生成が少ない燃料−NG、LPG

次世代低公害車:次世代ハイブリッド、スーパークリーンディーゼル、LNG車

代替エネルギー車の普及条件:省エネ性、環境保全性、エネルギーの安定供給性、資源性、走行性能、利便性、経済性

低公害車の普及に関わる諸問題:車体価格、インフラ整備不足、ランニングコストが高い、積載効率の低下


読者便り
Q: 先日プール用の透明なビニールバッグを買いましたところ、においがかなり気になります。お湯で洗い天日干しにしても臭いが残ります。塩ビ樹脂と明記されていますが、臭いの原因と消す方法を教えて下さい。この問い合わせが今後の商品開発に繋がればと思います。

A:

塩ビ樹脂から作られたプール用などのバッグ類は、これまで何十年も実績がありますが、「臭気」のクレームは聞いたことはありません。ただ今回はご友人も同様に臭いが気になるとのことですので製造メーカーに確認しましたが、いつでもご相談に応じるとの事です。
 取り急ぎお答えしますと塩ビ自体は無臭なのですが、製品の中に配合されている「安定剤」とプリントの顔料インクの複合臭と思われます。臭いを消すことは残念ながら難しいのですが、人体に害があるわけではありませんのでご安心ください。
 なお塩ビ製品をやわらかくするために使われる可塑剤にはいくつか種類があり、揮発しやすいタイプを使った場合、安定剤の臭いが可塑剤の揮発に誘われてより外へ臭い出しやすいとも考えられます。塩ビ樹脂は無臭、可塑剤もほとんどの場合無臭です。


☆読者便りは、VECホームページのお問い合わせから構成されています。
 ご意見・ご質問をお待ちしております。

■講演会開催のご案内
日独外断熱セミナー
「サスティナブル・ジャパン−地球環境と私たちの生活−」

開 催 日 平成16年6月30日(水)13:30〜17:30
会  場

国際連合大学 ウ・タント国際会議場

〒150−8925

渋谷区神宮前 5−53−70

参加費用

無料、先着300名(事前登録された方のみ参加できます)

FAXまたはメールにて整理番号を発行します。

お申込み・及び詳細な内容については下記URLをご覧下さい。
http://www.sotodan-npo.org/index2.html

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●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
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