NO.197
発行年月日:2008/10/16

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トピックス
◇DEHPがREACH認可対象物質候補とされたことについて

随想
「人・家・地球」を健康にする省エネリフォームを考える(4)
プラスチックサッシ工業会 事務局長 齋藤彰彦

編集後記

トピックス
◇DEHPがREACH認可対象物質候補とされたことについて

 10月9日、欧州化学品庁(ECHA)は、将来的に認可の対象となる可能性のある候補物質(SVHC)として14物質を決定したとの報道を流しました。既に、今年6月30日に候補リストが提案されており、その後のパブコメ等を踏まえた決定とのことです。
 SVHCになった物質は、さらなる評価とパブコメを経て、2009年の6月1日までに、ECHAはECに対して認可(Authorization)対象物質とするか否かの提案をすることとなっています。SVHCとなると将来的に新たな規制が加わるのではないかと懸念する向きもありますが、必ずしもそうではないと考えられています。

 以前にもメルマガで紹介しましたが、DEHPは、希なほど詳細な安全性データが収集されており、欧州においてもすでに詳細なリスク評価が終了しています。手続き的にはさらなる評価とパブコメを行なうことになるのでしょうが、既に詳細リスク評価を行なう課程で実質的な評価とパブコメが行なわれています。そして、現行の使用制限(玩具及び育児用具への使用の禁止)を超えるリスク削減策は必要ないと結論しています。このため、おそらく現行の使用制限が維持されるであろうと考えられています。

 ただし、SVHCになることで、0.1重量%を超えるDEHPを含む製品については、川下のユーザに対しては情報提供義務が生じます。実際に義務が生じるのは、ECHAのWEBに正式に掲載された時点です。10月22日頃ではないかという情報もあります。十分な対応ができるように、可塑剤業界において英文のMSDSを用意いたしました。
(英文MSDS:http://www.kasozai.gr.jp/msds/msds01.html

 また、消費者からの問い合わせがあれば45日内に答えることも必要ですが、これは、一義的にはEU内で製品を消費者に提供する者にかかる義務です。上述のEC自身が行なった詳細なリスク評価結果も活用できるはずです。(了)

 本件及び米国の規制動向に関する情報をアップデートした参考資料を用意してありますので、そちらもご覧ください。
(参考) 塩ビ可塑剤に関する最近の動向について
https://www.vec.gr.jp/topics/new112.htm#02
日米欧比較表(PDF)
https://www.vec.gr.jp/topics/eu_us_japan_directive.pdf

関連記事
https://www.vec.gr.jp/mag/184/index.html#topics
https://www.vec.gr.jp/mag/194/index.html#topics

随想
「人・家・地球」を健康にする省エネリフォームを考える(4)
プラスチックサッシ工業会 事務局長 齋藤彰彦

 ●省エネ節約で旧婚旅行を思いっきりエンジョイしよう!

リフォーム後の家(全景)
リフォーム後の家(キッチン)
 この辺でそろそろリフォーム効果の結論を言わなければ、お叱りを受けると思われるので改修工事の経過は割愛させていただく。
 あの古びた和風住宅が以前とは見違えるように大変身。多くの友人からは「新築住宅はやはりいいね!住み心地はどうなの?」との質問が多数あり、誰もリフォーム住宅だと気づかない。

 著名な建築家は異口同音に、暖かい家で生活をすれば人がひ弱になると言うが、これはあまりにも人間心理および温熱サイエンスを知らなさ過ぎる話だと思う。私が九州に転勤した生活体験は、家の中が寒いから、子供たちは外へ遊びに行くことが少なかった。しかしその後、北海道へ転勤し、家の中が暖かい生活に変わったとたん、近所の子供たちと雪遊びに良く出かけていった。それから九州の省エネ性能が悪い家の暖房温度は26℃と高く設定をしていたが、逆に北海道の省エネの家では、暖房温度が20℃と低い温度ながら、快適であった記憶がよみがえる。

 また、高気密住宅は夏になれば、とんでもなく暑くて生活が大変だという人もいるが、これもサイエンスを知らない話である。夏は空気中に大量の水蒸気があり、そこに大きな熱ある。それは潜熱というが、1ccの水を水蒸気にするには539calの熱が必要になる。参考までに空気の比熱は0.24kcal/kg℃であるから、8畳の部屋の空気を1℃下げるには9.2kcalあれば良い。であるからこの潜熱をエアコンで取るには大きなエネルギーが必要で、従来の日本の家は隙間だらけだから、冷房しても室外の水蒸気がどんどん侵入し、まるで無防備で地球と格闘をしていたようなものかもしれない。(ただし夏の日射遮蔽は、どんな住宅でも必要である)
 しかし高気密住宅なら、外部から水蒸気の侵入防止ができ、室内空間だけ除湿すればよく、冷房温度はあまり下げず、電気代があまりかからず、経済的で快適な住生活ができる。であるから断熱リフォームにおいて気密性能C値が非常に重要になってくる。

 その理想を求めた断熱改修工事もついに完成した。さて、理想の断熱リフォーム性能の測定結果は如何なるものであったか?まるで40年昔の受験生ではないが、期待とびくびくしながら東京大学坂本先生が委員長の検証委員会に出席した。結果は下記のように、先進国ドイツ、フィンランドの高断熱レベルになり、CO2に関しては27%の削減可能とのことであった。これは京都議定書の国際公約6%削減が悲観されていることを考え合わせると、恐るべき省エネ効果であると、我々一同、大いに感動、自信を深めたところである。

(1) 住宅の断熱性能Q値 改修前 実測5.26W/mK ほぼ無断熱の性能
改修後 実測1.42W/mK 計算値2.2W/m
(2) 住宅の気密性能C値 改修前 17.2cm/m
改修後 1.3cm/m(約13倍の気密性UP)
(3) CO2の発生 改修前 3,458kg/年・世帯
改修後 2,537kg/年・世帯
CO2削減効果 921kg/年・世帯(27%削減)
(4) 光熱費の削減 51,000円/年(電気料金21円/kWH)

 高断熱・高気密リフォームの性能は分ったが、どれくらいの費用がかかったのか?工期は何ヶ月か?と知りたいはずである。

1) 断熱改修の工事費の概算
1. 窓(14箇所)の断熱工事 163万円
2. 断熱工事 274万円
3. 壁工事 297万円
2) 工事の期間はかなり急いだせいか約2ヶ月で終わった。

 この辺で最近の心境、生活実感などお話したいが、完成したばかりなので、夏と冬の生々しい快適体験を報告できないことが、まことに残念である。今年はご存知の洞爺湖サミットも開催され、一段と省エネが叫ばれている。どうも日本の省エネは「テレビや照明をこまめに消しましょう」、「シャワーの回数を減らしましょう」と、精神論でガマンの生活をしましょうと聞こえる。かといって地球環境のため、個人の犠牲心で省エネ改修に数百万円の投資をすることも違和感を覚える。私達はまず家族が健康になり、そして老化住宅のリノベーションによる家の健康回復、同時に省エネの住宅改修をすることによって、子孫に安心できる地球の健康回復を行うべきではないだろうか。

 ちなみに今回のリフォームでCO2発生は、3/4になる。したがって同様の「断熱リフォーム」を全国の既存住宅に施工した場合、日本全体の二酸化炭素削減目標の1/4にあたる4,300万トンのCO2削減ができ、地球温暖化対策上極めて有効で、「断熱リフォーム」は住む人にも優しく、そして地球にも優しいと言えます。
 (スエーデン環境省地球温暖化局スバンテ・ブデイン局長の話では、1990年から2006年にかけてスエーデンのGDPは44%増加したが、CO2排出量は8.7%も減少した。その一番大きな理由は住宅の暖房を効率化したことのようである)

 さて話しが変わりますが世界のエネルギー価格の高騰は何処まで続くのでしょうか?今年の夏は昨年同様に暑い日が続くのか?また冬の気象はどうだろうか?高齢者の医療費はどうなる?寝たきり老人になれば、その介護はどうなる?心配をすればきりがないが、安心して永い老後を元気に楽しく、省エネ生活ができる、終の棲家・居住環境を構築することが、団塊世代にとって一番の課題だと思う。

 この記事がメルマガ読者の皆様に、少しでもお役に立てれば嬉しいかぎりである。
 古来より衣食住足りて礼節を知る、しからば平成は運・食・楽温足りて晩節を全うする。それとも汚さずであろうか?ハッピーな人生を送りたいものである。
 なお断熱リフォームの費用、工期は地域や工務店によってまちまちであり、インターネットなどで事前に良く調べて、実績のありそうな専門業者に相談をされてみられたら良いと思われる。拙い文章で長々とリフォーム論にお付き合いをいただき、皆様へ感謝を申し上げたい。(了)

前回(3)は、下記からご覧いただけます。
https://www.vec.gr.jp/mag/193/index.html#zuisou
上記以前のバックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

編集後記
 株の暴落や円高の影響で日本経済も先行き不透明な昨今ですが、今年のノーベル物理学賞と化学賞に4人の日本人が受賞したという明るいニュースが先週報じられました。化学業界に身をおく我々も、日本の科学技術の底力に更に自信を持っていいのではないかと思います?
 ところで、4回に分けてお届けしてきた省エネ改善のリフォーム物語はいかがでしたでしょうか?お金もかかりますが、お金には換算できない快適さも手に入ることから、どうせやるなら高断熱そして樹脂サッシですね。秋は、“ジャパンホームショー”、“リフォーム博”と建材関連の展示会も目白押しです。快適な生活を手に入れるためにも、展示会場に足を運んで情報を集めてみてはいかがでしょうか?(HI)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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◆編集責任者 事務局長  東 幸次

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