ナミビア旅行記(1)−ブッシュマン− |
(社)日本化学工業協会 若林康夫
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昨年、エリトリア旅行の様子をご紹介しましたが、今年は、9月に「ナミビア」を訪問しました。「ナミビア」といっても知らない方が多いのではないでしょうか。以前、日本で公開された「ミラクル・ワールド ブッシュマン」という映画に出てきたブッシュマンが住んでいる国というと、ある年齢以上の人は「ああ、あの国」と思われる方も多いかもしれません。
日本の外務省の資料によると、在留届を出し、正式にナミビアに住んでいる日本人は25人。日本に住んでいるナミビア人は4人となっています。ナミビアに住んでいる日本人はほとんどが海外青年協力隊員のような援助協力に従事している人とのことで、普通の日本人にはあまり縁がないようですが、自然のままのアフリカが残っている最後の地域とも言われ、日本からも年に何本かはサファリツアーが出ているようです。今回、ナミビアに来るときにも、同じ飛行機にある秘境旅行を専門に行っている日本のツアー会社のグループが乗っていました。参加者の方はかなり旅慣れた方が多いようでしたが、さすがに秘境ツアーだけあって10名ほどのグループに添乗員は2名。当然、日本人の現地ガイドや手配会社があるはずもなく、添乗員にとっては結構大変そうでした。
滞在先の各種回線の事情が悪く、恒例となっている現地からのリアルタイム送信を断念した「ナミビア旅行記」をお送りいたします。
さて、まずはナミビアのご紹介です。
位置はアフリカの南端、南アフリカのすぐ上(北側)、南大西洋に面した国です。
以前はドイツの植民地でしたが、第一次世界大戦でドイツがヨーロッパ戦線に気を取られているすきに南アフリカが事実上占領。その後、第二次世界大戦の敗戦によりドイツは植民地を放棄しますが、ナミビアは国家として独立することはできず、国でもなく、南アフリカの領土でもなく、ただ南アフリカの占領下にある国連が管理する土地という世界でも類をみない、中途半端な状態が続いていました。
そのような状態の中、1966年South-West Africa People's Organization(SWAPO)というゲリラ組織が独立闘争を開始。1966年、国家として独立をしますが、実質的には南アフリカの占領は続き、1990年、南アフリカに人種差別(アパルトヘイト)撤退を目的とした黒人政権であるマンデラ政権が樹立したため、事実上の南アフリカによる占領が撤退され完全な独立国となったという不思議な経緯を持つ国です。
ナミビアの面積は825,418平方キロメートル。人口は2,088,669人。
単純に計算をすると2キロメートル四方に2人しか住んでいないことになり、世界で一番人口密度が低い国です。実際にはそんなに分散して人が住んでいるわけではなく、都市や村に集中して住んでいるので野生動物だけが住む無人の原野が広がっています。田舎に行くと「ちょっと買い物に行ってくる」となると、車を時速140キロメートルで走らせ、片道1時間などというのは当たり前です。
首都はWindhoek。非常にきれいで近代的な街で、街にいるだけだとアフリカではなくアメリカの地方都市といった感じです(ゴミ一つなく、アメリカより清潔かもしれません)。市街地を含むWindhoekは地図で見ると長方形のような形をしており、役所などのオフィスエリアや商業地域、住宅街がコンパクトにまとまっています。
首都の人口は約230,000人。全人口の1/100が集中しています。この長方形をした首都の短い距離を車で横断するのにわずか10分。日本のような市街地がほとんどなく、何もない原野にポツンといきなり出現します。道路標識などをよく注意して運転をしないと「首都はどこ?もう通り過ぎちゃったの?」ということになりかねません(そんなドジな運転手は他にいないでしょう!という突っ込みはナシね)。
ナミビアの平均寿命は49.89歳。
平均寿命が低い最大の理由は、成人の5人に1人以上がHIVのキャリアということ。この割合も世界で一番。比較的教育水準も高く、衛生状態もいいナミビアでなぜかHIV感染率が非常に高く、一部の学者は、この地域でHIVが最初に発生したため、全体の感染率が高いのではという説を唱える人もいます。最近ではキャリアの人の発症を抑えたり、比較的効果的な薬もできたりしているため、平均寿命は徐々にではありますが上昇傾向にあるようです。
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Himba族とHerero族の女性 |
また、アフリカですから単一民族ということはなく、複合民族国家です。
一番多い部族はOvambo族で国民の約半数を占めます。その他、Kavangos族、Herero族、Damara族、Nama族、Caprivian族、映画でおなじみBushmen、Baster族、Tswana族など多くの民族の集まりです。
また、植民地時代の名残で、ドイツ系の人も沢山おり、ナミビア人との混血の人もかなりの割合に上ります。
このような複合民族国家ですから言語もバラバラ。公式言語は英語と定められており、中学校からはドイツ語も教えられています。このため、ナミビアの人は英語、ドイツ語、部族の共通語であるAfrikaans、そして自分の部族の言葉と非常に多くの言葉を話します。
産業としては、ナミビアはお隣のボツワナと並び、非常に良質のダイヤモンドが採れ、アルミニウムの原料であるボーキサイトも豊富に存在しているため鉱業が盛んです。そのため、道を歩いていると、ついつい下を見て光る石を探してしまいます。さて、滞在中にダイヤモンドは見つかるのでしょうか。(続く)
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