NO.206
発行年月日:2008/12/18

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トピックス
◇塩ビ製品に新たな息吹を吹き込もう − 海外発の製品紹介 −

随想
人と人、連携の遺伝子
株式会社タツノ化学 梶ヶ野 彰

編集後記

トピックス
◇塩ビ製品に新たな息吹を吹き込もう − 海外発の製品紹介 −

 寒い日と暖かい日が交互にやって来て、体調を崩しやすい時期になりました。いよいよ本格的に厳しい冬を迎えるこの時期に、塩ビに関わる海外発の製品を紹介します。

アクリル製カバーをかけた湯たんぽ
  一つ目は「湯たんぽ」です。家内が最近のテレビなどで話題になっている中からインターネットで探して手に入れたのがドイツFashy社の湯たんぽです。はじめは本当に塩ビ製かと疑っていましたが、取り扱い説明書にも「本体は弾性プラスチックPVC」と明記され、ドイツ機器安全法に基づく安全性試験認証GSマークと医療・福祉分野で権威あるTUV製品安全試験の認証を得ています。年産350万個の製品が世界中に輸出されているようです。塩ビ製の本体を色彩豊かなアクリル製のカバーで包んでいます。家内は寝る前にその湯たんぽを持ち出して、熱湯を避けた70℃程度のお湯を3分の2程注いで使っています。日本では昔から陶器製やブリキ製の湯たんぽが使われていましたが、この塩ビ製湯たんぽは持ち運びが便利で、デザインも豊富なことから主婦の間で静かなブームになっているようです。省エネにも貢献している優れもので、冷え性の方にはお勧めです。

 二つ目は「塩ビ下着」で、フランスのローヌプーラン社が1950年に開発した「ロビロン」が出発点になった塩ビ繊維素材です。日本ではテイジンが1955年に開発した「テビロン」との総称で「PVC」という岸辺毛織のブランド品が下着を含めたいろいろな製品として市販されています。ウールや綿などの繊維に比較して保温効果が高く、素材自体の吸水率がほとんどないことからくるクイックドライ効果と合わせて、登山家や釣り人に愛用されています。塩ビの難燃性も安全素材として取り上げられ、下着以外にもマフラーやベッドカバーなどの商品も紹介されています。

PVC製クリスマスツリー

世界の4大汎用プラスチック 需要割合
(2006年)
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  三つ目は「クリスマスツリー」です。当協会が入居している六甲ビルの1階ホールにも既に飾られています。この塩ビ製のクリスマスツリーは生木伐採の自然破壊に代わり、子供達が育つまでの期間はもちろん、成人してからも長く使える優れものです。VIの紹介では、生木に比べてコストが安く原料に再生塩ビも使われており、製品もリサイクルにまわすことができます。米国では生木による火災の発生が年間200件以上あり、塩ビが発火や着火を防ぐ効果から、米国火災防止協会(National Fire Protection Association)がその使用を推奨しています。最近は、白、赤、ライムグリーンなど様々な色やデザインの芸術的なツリーも登場しています。発色性や装飾性も塩ビならではの長所を生かしたものです。

今回、紹介した塩ビ製品は雑貨・その他の用途に含まれますが、塩ビ素材としての良さを引き出した製品事例に学ぶことが、主用途である土木・建築分野も含めて、今後の新たな塩ビ製品を生み出す大切なきっかけとして捉えて頂きたいと思っています。塩ビ樹脂、コンパウンド、添加剤、塩ビ加工、製品、施工、消費のそれぞれの過程で塩ビに係わる方々がひとつの塩ビループを形成している場面を作り、その中で、新たな価値を塩ビ製品に吹き込む取り組みが必要と感じています。
 世界全体を視野に広げて、汎用プラスチックの中での塩ビの需要(2006年)を世界地域別でみると、世界全体での22%、北米21%、欧州CIS22%、アジア24%と比較して、日本では18%と少ない。また、一人当りの塩ビ使用量(2007年)も、米国の19.5Kg、西欧の13.2Kgと比較して、日本は10.0Kgと少ない。欧米では、塩ビの特長を活かして、塩ビ建材が多用されています。日本でも、環境省と協賛して出展した「日経住まいのリフォーム博」や、先日の「エコプロダクツ2008」で紹介した数々の塩ビ製品に見られるように、漸く、樹脂サッシや樹脂サイディングなどの塩ビ建材が認知度を高めてきています。これらのことから、まだまだ、欧米並みの需要拡大の可能性があることが期待されます。来年こそ、是非、一緒に汗をかいて、塩ビの実質的な復権への道のりに灯りをともして行きましょう。(了)

随想
人と人、連携の遺伝子
株式会社タツノ化学 梶ヶ野 彰

 高度成長のおかげで塩ビの時代が長かったが、ここ10年は脱塩ビの風潮が強まり、塩ビの凋落が目立っている。色々なプラスチックが登場するなか、包装、化粧建材、工業用といったセグメントでユーザーの塩ビ志向が弱まった結果、塩ビ事業は遅れをとり始めた。フィルム分野でも、他樹脂の前処理技術が進むにつれて、塩ビでなくとも不都合のない分野が増え「印刷適性」や「加工性」に胡坐をかけなくなってきた。もちろん下げ止まった分野もあるし、「ガスバリア」に優れた食品包材用フィルム(Kコート)のように、コストと性能のバランスで見直された分野も出てくるなど復権の兆しはあるが、いまだ決定力を欠く。
 経産省の「プラスチック製品統計」で昨年のフィルム・シート動向をみると、プラ全体650万tのうち軟質フィルム・シート系は180万tとあった。そのうちの120万tが食品用包装フィルムであり、そこでの塩ビはわずかに食品ラップ主体の3万tである。硬質フィルム65万tのほうでも塩ビはわずかなシェアとなった。

 しかしである。軟質フィルムの3割、60万tの用途を見ると、壁紙20万t、ラミネート(ターポリン含む)16万t、床12万t、皮革6万t、防水・土木1万tと、こちらは塩ビが優勢だ。さらに伸ばすには加工サイドのマーケティングと、供給サイドの支援にかかっている。
 例えば養生シート、テント、防水シート、床材料、壁紙などの、景観性、意匠性、耐久性、防汚性の要求される分野において、熱ラミネート性、発泡&エンボス特性、インキ印刷適性といった点で、表面加飾や配合、複合化の余地がありそうだ。これらはとっくの昔から鉛フリーであるし、可塑剤のブリード性、揮発性、移行性を改善すればまだ伸びる。さらにリサイクル、欧州の化学品規制(REACH)などへの対応でも、塩ビサプライチェーン内で十分な説明と連携をとれば、それこそ世界一の対応力と競争力があるはずだ。

 これらは人と人との連携によって可能である。久しぶりに塩ビ事業の世界に戻ったが、ニーズを探る力は他樹脂にくらべて優秀だという思いが、新旧さまざまな方々との出会いの中で強まっている。

 塩ビ製品とは、“人間関係のかたまり”だ。この人と人との連携に塩ビの遺伝子が残っている。生活者とユーザーのニーズに連携して向き合う限り、塩ビの未来はなくならない。そうした地平でしのぎあえば、塩ビは面白おかしく成長していくと思う。(了)

編集後記
 「魔がさして糸瓜(へちま)となりぬどうもどうも」(正木ゆう子)
 残念ながら俳句の鑑賞能力を持ち合わせていないので、一瞬「これが俳句でいいのか?」と驚きました。けれども、「なんと、自分が糸瓜になってしまった」などという状況にも慌てず騒がず、とりあえず、まわりの糸瓜仲間に「どうもどうも」と挨拶しているという、のんびりとした感じが良いなと思いました。たまたま、テレビを見ていて知った句ですが、これも何かの縁・・・この師走、忙しくなりすぎて余裕がなくなってきたら、この「糸瓜」を思い出してみたいと思います。
 今年のメルマガは本号で終了となります。おかげさまで先日、200号を迎えることができました。ありがとうございました。来年は1月8日から始めます。これからも、よろしくお願い申し上げます。どうもどうも。(漠)

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