NO.209
発行年月日:2009/01/22

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トピックス
◇塩ビリサイクル支援制度採択案件の紹介
 —使用済み塩ビ製品が人工の木陰に生れ変ります—

随想
東京湾の魚の変化 −過去・現在・未来−
東京海洋大学 海洋環境学科 河野 博

お知らせ
環境を考えた北海道の住宅づくり In函館 のご案内

編集後記

トピックス
◇塩ビリサイクル支援制度採択案件の紹介
 —使用済み塩ビ製品が人工の木陰に生れ変ります—

  「リサイクルビジョンー私たちはこう考えますー」でお示しした考えに則して創設した塩ビリサイクル支援制度もスタートしてから1年が経ちました。最近ではこの制度に対するお問合せも多数寄せられるようになり、リサイクルに携わっておられる方々の間の知名度もあがってきました。
 今回ご紹介する採択案件は昨年9月末までに申請のあった案件の中から選ばれたものです。今回も前回同様、興味深い内容の案件の応募がありました。11月に開かれた外部の有識者から成る評価委員会で計画の実現性、事業化した時の効果などの視点からそれぞれの申請案件が評価され、同委員会の意見を踏まえて下記の案件を採択しました。

 ・塩ビリサイクル材料を用いたフラクタル日除け(積水化学工業株式会社)

人工の木陰をつくるフラクタル日除け
  “フラクタル”? 耳慣れない言葉です。暑い夏、木陰の涼しさは誰もが経験することですが、これは木の葉の単位片が数センチと小さく、風を通しやすいために優れた熱放散効果と遮熱効果をあわせ持つからだそうです。日陰は日除けでも作ることはできますが、日除けそのものが日射を受けて気温よりもずっと熱くなってしまいます。日陰部分でも、日除けからの熱射が避けられません。木の葉の場合、水分の蒸散効果がすぐに思い浮かぶと思いますが、実際には、風によって葉の表面温度の上昇が抑えられ効果が大きいとのことです。このため、日除けによる日陰よりも木陰の方が爽やかで涼しく感じます。この木陰の涼しさを人工的に再現しようとする試みが“フラクタル”構造というわけです。

 今回の申請は、これを塩ビのリサイクル材料で開発して、役立てようというものです。こうしたニーズは潜在的に大きく、一度使用された塩ビ製品が再びリサイクル製品として、まとまった数量の用途を築く可能性を秘めています。耐久性が高く、複雑な構造の成形加工が容易で、しかも周囲の環境にあわせた様々なデザインも可能なリサイクル塩ビは、こうした素材としてうってつけです。塩ビによる人工の木陰、まさにグリーンなリサイクル製品と言えます。

 パイプや板、巾木、樹脂サッシなど、様々な使用済み硬質塩ビ製品から再資源化されたリサイクル材料が人工の木陰として生まれ変わる夢の実現に支援制度が役立つことと期待しています。(了)

随想
東京湾の魚の変化 −過去・現在・未来−
東京海洋大学 海洋環境学科 河野 博

東京湾の内湾と外湾
江戸前の魚」スズキ
写真提供:東京海洋大学 横尾氏撮影
  東京湾は、房総半島の洲崎と三浦半島の剣崎を結ぶ線よりも北側の海域ですが、さらに富津岬と観音崎を結ぶ線によって、南側の外湾と北側の内湾に分けられます。

【過去】
 およそ12万年前には「古東京湾」とも呼ばれる湾が形成されていましたが、今の群馬県の平野部あたりが湾奥で、房総半島なども海の中でした。現在の東京湾の形がほぼ安定したのは6千年ほど前といわれています。
 その少し前の今から9千年から7千年ほど前の縄文時代には、東京湾の、とくに湾奥部から、多くの貝塚が発見されています。これらの貝塚では、ハゼ類やスズキ類、ボラ類の他にも、サバの仲間やマダイ、ブリの仲間、カツオやマグロ類、さらにはクジラの骨も出てきます。
 そこまで時代を遡らなくても、ほんの数百年から70年ほど前の江戸時代から戦前にかけて、東京湾の湾奥では、今の内湾を代表するイシガレイやマコガレイ、スズキ、マハゼ、マアナゴなどのほかにも、サワラやダツ、サメ、あるいはカマスやマアジなどが漁獲されていたことが記録されています。本来は、これらの魚を総称して『江戸前の魚』と呼んでいたのかもしれません。

【現在】
 その一方で東京湾の内湾では、江戸時代から世界有数の大都市であった江戸の前浜として、干拓事業も行われてきました。しかし『豊穣の海』に大打撃を与えたのは戦後、とくに高度経済成長の時代に行われた大規模な埋め立てでした。その結果、現在では自然の干潟のほとんどが姿を消し、沿岸域は人工の垂直護岸によって縁取られています。それでも今の内湾を代表する江戸前の魚たちは、残存した天然の干潟や人工的に作られた海洋構造物などを上手に生活の場として利用し、しっかりと生き残っています。
 このように百年足らずで大変貌を遂げた内湾に比べて、東京湾の外湾部では、天然の砂浜や岩礁地帯がほとんど手つかずの状態で残っています。とくに、房総半島の先端部に位置する館山湾には、熱帯や亜熱帯で見られるサンゴ礁が発達していますが、これは南の方からやってくる黒潮の影響によるものです。
 その黒潮に乗って熱帯性の魚類がやってくることも知られていますが、こうした魚たちは、海水温の下がる真冬になると越冬できずに死滅してしまいます。こうした魚は『死滅回遊魚』と呼ばれ、東京湾では外湾だけではなく内湾でも見かけることがあります。たとえば、チョウチョウウオ科の魚やスズメダイ科の魚、フエダイ科の魚などです。

「越冬魚」チョウチョウウオ
写真提供:東京海洋大学 村瀬氏撮影
  しかし外湾では、『死滅回遊魚』が越冬し、翌年の春から夏にやや大きな個体が見られることがあります。ソラスズメダイやセダカスズメダイ、トゲチョウチョウウオ、キンチャクダイ、ブダイなどです。これは、最近話題の多い地球温暖化の影響によるのかもしれません。実際に日本周辺の海域では、海水温が平均で1.2℃ほど上昇しているといわれています。
 さらに東京湾では、越冬するだけではなく再生産(卵を産み、命をつないでいくこと)をする魚たちも知られてきました。外湾ではクマノミやミナミハコフグなどが、また内湾ではギマやウロハゼ、ヒナハゼなどが再生産をしているようです。これらの再生産する熱帯・亜熱帯性の魚類は、温暖化によって分布域を拡大した魚たちといえます。
 一方、人間の活動によっても東京湾の環境、とくに海水温が上昇しています。温排水の影響や暖かい河川水の流入などです。その影響からか、湾奥部の都心付近などで、熱帯性の魚であるクロホシマンジュウダイのやや大型の個体が採集されたこともあります。さらに、港区にある東京海洋大学の構内の船を繋ぐ場所(ポンドと呼んでいます)では、観賞用の熱帯魚であるグッピーやエンゼルフィッシュなどが採集されることもあります。しかしこれらの魚は、人間の手によって放たれた可能性が大です。

【未来】
未来の東京湾を群泳する?
ソラスズメダイ

写真提供:東京海洋大学 村瀬氏撮影
  このまま有効な対策もとらずに地球温暖化を放置しておくと、東京湾の海水温が更に上昇し、死滅回遊魚の多くが再生産をし始めるかもしれません。さらに内湾では、温排水や暖かい河川水の影響で、死滅回遊魚や放たれた熱帯・亜熱帯性の魚たちが越冬したり再生産をしたりする可能性もあります。とくに湾奥では、海水にかなり多量の雨水や河川水が入り込むため、塩分に抵抗力のある魚であれば、いわゆる淡水魚でも生き残ることが可能であると考えられます。
 しかしそれでも、『江戸前の魚』と呼ばれる魚たちは、しっかりと生き残ることが予想されます。
 ・・・ということは、東京湾の外湾のあちこちでは『熱帯のサンゴ礁が見られ、その間を熱帯魚が群泳する』といった光景や、内湾では『江戸前の魚をほおばりながら、熱帯魚を観察する』といったことが可能になるのかもしれません・・・。(了)

お知らせ
環境を考えた北海道の住宅づくり In函館 のご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会が、下記のセミナーに参加し講演を行います。

・日 時 2009年2月5日(木)
13:30〜17:30 (受付 13:00)
・場 所 サン・リフレ函館 大会議室
・主 催 (株)日建新聞社
・参加費 無料(定員:先着100名)
・お問い合わせ (株)日建新聞社・編集部
電話 : 011(726)3138

編集後記
  本日のトピックスはリサイクル支援制度に関する採択案件の紹介ですが、「フラクタル」との用語を始めて知りました。「フラクタル」とは何ぞや。興味が沸々と湧き、調べることに相成りました。
 「フラクタル(仏fractale)」は、フランスの数学者ブノア・マンデルブロ(Benoit Mandelbrot)が導入した幾何学の概念だそうで、図形の部分と全体が自己相似になっているものなどを言うそうです。といっても何のことやら。
 難しい説明は省かせて頂いて、俄か勉強での解説は、具体的な例として「海岸線の形などが挙げられ、海岸線は微視的に見ると複雑に入り組んだ形状をしているが、これを拡大するとさらに細かい形状が見えてくるようになり、結果として拡大しても同じような複雑に入り組んだ形状をしている。」とのこと。分かって頂けました?(古鍋)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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◆編集責任者 事務局長  東 幸次

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