===「塩ビと環境のメールマガジン」第5号 == 2001/10/4
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目 次
☆巻頭コラム
「ライフ・サイクル・アセスメントの問題点」
・・・環境にやさしい、とはどういうことなのか?
☆鉄鋼業界とプラスチック・リサイクル
「CO2削減とリサイクル」
☆触ってくれればファンになる?
「エコビルド展で塩ビ窓枠、サイディングが注目」
☆お知らせ
□展示会の出展予定
・ジャパンホームショー(東京)
□塩ビ生産出荷実績(8月)
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☆巻頭コラム
「ライフ・サイクル・アセスメントの問題点」
・・・環境にやさしい、とはどういうことなのか?
最近はやりの言葉の一つにLCA、ライフ・サイクル・アナリシ
ス(アセスメント)というのがあります。その素材や製品が、開発
・製造・使用・廃棄といったライフサイクルを送る過程で、どれほ
どの資源を消費し、どれほどの環境影響を与えたかを分析・解析し
て評価する学問体系、と言ったらいいでしょうか。
素材や製品の特質を表わす切り口として、資源循環型社会の今日に
大変フィッタブルな考え方ですが、今のところ整理不十分な部分も
見受けられます。
LCAでは例えば、その素材や製品がライフサイクルの中で、ど
れほどの資源とエネルギーを消費し、どれほどの温暖化寄与物質を
放出し、どれほどの有害物質を排出し、…、と言ったように多種多
様なキーワード毎の環境影響を分析・解析(アナリシス)します。
それ自体は貴重な、必要な分析・解析ですが、それらを総合して
「従って素材Aは、素材Bより環境にやさしい」と評価・判断(ア
セスメント)する時点で、なかなか難しい問題があります。
実際、1トンの炭酸ガスの排出と、1トンの有害物質、たとえば
SOXやNOXの排出と、どちらがどの程度「環境にやさしくない」
のでしょうか。リサイクルできない素材とリサイクル可能な素材と
では「環境へのやさしさ」はどの程度違うのでしょうか。
石油資源やエネルギーを半分しか消費しない替わりに場合によって
は有害な物質を若干量環境に排出する素材は、それだけを理由にして
「環境にやさしくない」と決め付けられなければならないのでしょう
か。
合成洗剤に反対して石鹸(天然洗剤)の使用運動を展開してきた、
著名なグンター・パウリ氏は、石鹸の原料となるヤシの木が、そのわ
ずか5%を有効利用された後、残りの95%が廃棄物として焼却処理
されていることを知り、「私はエコロジカルのパイオニアを自称する
資格がない」と反省したと言う有名な事実があります。
いろんな意味で味わいの深いコメントですが、現在日本で言われて
いる「環境にやさしい」と言う謳い文句の中には、謳う人にとって都
合のいい面だけを取り上げて主張し、あたかもそれがすべての、絶対
的な真実であると言わんばかりの論調が目立ちます。
LCAと言う、将来大事な考え方を正しい方向に育てるために、私
たちも一層の努力を注ぎ、健全なプラスチック社会を作りたいと願っ
ています。
(参考)「アップサイジングの時代がくる」グンター・パウリ著
朝日新聞社 2000年
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☆鉄鋼業界とプラスチック・リサイクル
「CO2削減とリサイクル」
●廃プラ100万トンで省エネルギー
鉄鋼業界では、廃プラスチックのリサイクルが積極的に進められ
ています。この背景には、循環型社会への対応とともに、CO2削
減への取組みがあります。
1996年12月に鉄鋼業界は地球温暖化防止対策として、201
0年までに1990年対比で10%のエネルギー使用量削減を打ち
出しました。更に、1998年9月に京都で開催されたCOP3で、
1.5%のエネルギー使用量削減が上乗せされています。
これを達成するための一つの手段として、廃プラスチックの有効
活用が注目され、鉄鋼連盟では加盟各社合計で、2010年までに
年間100万トンの廃プラスチックを活用する計画を発表していま
す。
●さまざまなアイデアで塩ビにも対応
鉄鋼各社は、自ら有するインフラや技術を活用し、上記取組みを進
めていますが、塩ビについてもさまざまなアイデアを駆使してリサイ
クルの技術開発・実用化が進められています。
NKKは、鉄鉱石から鉄を作る時の還元剤であるコークスの替わり
に廃プラスチックを活用する『高炉原料化』を推進しており、塩ビに
おいては還元剤として利用するとともに、ロータリーキルンで脱塩化
水素して得られた塩化水素も有効利用することを進めています。
新日鐵は、容リ法からの廃プラスチックを石炭と一緒に(石炭から
コークスを製造するための)コークス炉に投入する『コークス炉化学
原料化』を進めています。
加えてダイセルとともに、廃プラスチックを部分酸化し、一酸化炭
素、水素、そして塩ビから得られる塩化水素を化学原料として使用す
る『ガス化』も進めています。
住友金属は、『ガス化溶融炉』により、一廃とともに、建築解体時
に発生した使用済み塩ビにも対応できるリサイクルを進めています。
川崎製鉄は、高炉に投入する前に塩ビを特殊溶剤により脱塩素する
『溶剤法』を開発、また、『サーモセレクト法』と呼ばれるガス化も
推進し、塩ビのリサイクルに取り組んでいます。
神戸製鋼はベルギーのソルベイと提携し、塩ビ系廃棄物から塩ビコ
ンパウンドを選択的に溶解・分離する『ビニループプロセス』の導入
を決定しました。
このように、鉄鋼業界は、使用済み塩ビのリサイクルにも積極的に
取組まれ、私たち塩ビ業界にとっても嬉しい限りです。
●一廃も産廃も
容器包装リサイクル法の「(塩ビを含む)その他プラスチック」の
リサイクルが2000年4月より実施され、2000年度のリサイク
ル実績量10万6千トンの内6万7千トン(63%)が鉄鋼メーカー
でリサイクルされました。2001年度は、総量23万6千トンの内
15万8千トン(67%)がリサイクルされる見込みです。
また、産廃系のプラスチックについても、1996年より高炉での
活用が進められています。
北は北海道から南は九州まである製鉄所。
この優れもののインフラを広く活用していくことは、今後の廃プラス
チックの処理に向けての大きなポイントになるかもしれません。
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☆触ってくれればファンになる?
「エコビルド展で塩ビ窓枠、サイディングが注目」
●9月中旬池袋のサンシャインシティ文化会館で「エコビルド2001
」が開催され、VECは窓枠やサイディング(外壁化粧板)を始めと
する塩ビ建材を出展しました。
建築の専門家が主たる来場者なので、塩ビが省エネや耐久性で優れた
特性を持ち、これを窓や壁の建材分野で生かした製品が登場している
ことを紹介しようと、そんな意図での出展でした。
展示ブースは塩ビ窓枠とサイディング、雨どいなどを使って、実寸大
の住宅の形に仕立てたものとしました。
●しかし豈はからんや、余りにも本物の住宅そっくりであったからでし
ょうか。窓やサイディングをただのブース構造物と思い込み、それと
気づかない方もおられました。
そこで、一声おかけし、窓と壁に触っていただき、「これが塩ビって
いうこと分かります?」と、お尋ねすることにしました。
●すると
「金属サッシと違って暖かですね」
「いやー、聞いてましたが、プラ窓って塩ビのことですか」
「北海道の個人住宅の新築90%がこれなんですか?」
「えっ、断熱でビルにも使われ出したんですか」
「冷暖房効果や結露防止、遮音効果もあるなら、東京でも使えるね」
「ドイツでは、塩ビ窓枠が当り前なんですか」
「リサイクルもできるって本当?、おまけつきですね」
といった様々な声が返ってきました。
●つまりプロにおいても、まだまだ浸透していないようです。
しかし、ひとたび塩ビの有用な長所を理解いただければ、
そこは専門家、理解は早い。
「次世代省エネ基準を満たしているから、もっと宣伝しなくちゃ」
「ダイオキシンに関する消費者の誤解を早く解いて、普及させねば」
しかしながら
「顧客が塩ビをノーといえば、断れないんです」
・・・・・といったコメントも。
●建築専門家のみなさん、省エネや耐久性に富む塩ビ建材は光熱費が節
約出来たり、メンテナンスが容易など、お客様にとってもメリットが
たくさん。
ぜひ製品選定のひとつに加えて下さいね。
塩ビ窓枠のリサイクルに関しては、次号以降で紹介します。
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☆お知らせ
□展示会出展
・ジャパンホームショー(東京)
10月30日(火)〜11月2日(金)
10:00〜17:00(最終日は16:30まで)
東京ビックサイト 東3ホール
ブースNo.5704
(ゆりかもめ 国際展示場正門駅下車)
□塩ビ生産出荷実績(8月)
・塩ビ樹脂と塩ビモノマー
https://www.vec.gr.jp/data/data.htm
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☆編集後記
創刊以来1ヶ月とちょっと経ちました。イニシャルトラブルも一
段落して(?)ほっと一息、です(しかしまだまだ気は許せません)
皆様からのお便りに力づけられる毎日ですが、いろいろなお便りのな
かからご質問やご批判にお答えする場を、そのうち設けたいと思って
います。
思い付いたことはご遠慮なくお知らせ下さい。(H2記)
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[塩ビと環境のメールマガジン]
発 行 塩ビ工業・環境協会
編集責任者 佐々木 修一
塩ビ工業・環境協会 https://www.vec.gr.jp
塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp