===「塩ビと環境のメールマガジン」 第9号 === 2001/11/01

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目 次

☆巻頭コラム
 『わかりやすいホラー話』のこわさ

☆‘エコ・マテリアル’農ビ
 「九十九里の夕陽に輝く農ビのグラッシュ」


☆わが社の環境活動(4)    (株)トクヤマ
 「廃塩ビを塩ビ原料にリサイクルする技術を確立」


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☆巻頭コラム
 『わかりやすいホラー話』のこわさ
  渡辺正 東大教授の講演から

 先日、ある会合で、東京大学生産技術研究所の渡辺正教授の
「環境問題の虚像と実像」と題する講演を聴く機会に恵まれま
した。渡辺先生は環境科学の分野で活躍され、世間の常識と科
学的事実は異なっていることが多いという「逆説・化学物質」
や「からだと化学物質」の訳者としても知られています。

 先生は、近頃世間で広まっている『常識』はこのように間違
っているということを、酸性雨と地球温暖化とダイオキシンの
3つを例にして解説され、科学的かつわかりやすい語り口で会
場の聴衆を魅了しました。

 特にダイオキシンに関しては、その毒性があまりにも過大評
価されているとされ、ヒトがダイオキシンで死ぬためには、ど
う見積もっても数千年分の食事の量を『イッキグイ』しなけれ
ばならない計算になる、通常の生活環境下では「ダイオキシン
では死にたくても死ねない」と力説されました。

 酸性雨や地球温暖化にしても、酸性雨で森林が枯死すること
についての疑問や、地球が温暖化しているという気象データへ
の疑問を話されました。

「この国はなにごとにつけても『一億一心』になりがちだ。環
境問題でも、メディアのつくる『わかりやすいホラー話』がす
ぐさま世間に広がり、…『真理』の座を射止める」、
「貴重なお金・時間・労力をムダにしないためにも、ひとまず
平常心に戻り、問題の根元を冷静に見つめよう」
というのが先生の基調でした。

 塩ビをめぐる環境問題について、日頃同じように感じている
私たちにとって、先生のお話はまことに同感の至りであり、感
動しました。聴講した私の友人も「大変いい話を聞かせてもら
った」との感想を漏らしていました。このようなお話を、もっ
ともっといろんな場所で先生にも話して頂きたいし、私たちも
発言すべきだ、と痛感した次第です。

参考「逆説・化学物質」 Jhon Emsley 著   渡辺正 訳
   (丸善、1996)

  「からだと化学物質」Jhon Emsley and Peter Fell  著
   (丸善、2001)           渡辺正 訳


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☆‘エコ・マテリアル’農ビ
 「九十九里の夕日に輝く農ビのグラッシュ・・・リサイクルの実り」

●‘エコ・マテリアル’農ビをもう1回使うために
 秋風の立ち始めたとある日、房総の九十九里浜に近い東金市に向かい、
 使用済みの農ビをリサイクルしている千葉園芸用プラスチックリサイ
 クルセンター(千葉園芸プラスチック加工)を訪問しました。
 同社は今から約30年ほど前、千葉県経済連の100%出資で産声を
 あげ、1997年には、千葉県内の79市町村と、千葉県、それに民
 間の農ビ流通組織などが加わって、現在の第3セクターとなりました。

●数10mの農ビフィルムをどうやって回収する?
 使用済み農ビフィルムの幅は広いもので8m、長さは長いもので数1
 0mにもなります。各農家は付着土砂、木屑や針金などをざっと払い、
 10〜15kgずつ九十九折(つづらおり)に一束とします。
 地元の農協がこれを回収し、所定の集積単位に整えてから、リサイク
 ルセンターに運搬します。この回収と運搬は、地域ごとに市町村と農
 協で構成される「廃プラスチック対策協議会」の指示に基づいて行わ
 れています。千葉県の農ビリサイクル率は全国有数ですが、この段階
 での分別と回収運搬が徹底しているからだそうです。

●切断・洗浄・破砕しながら小さくし、グラッシュへ
 リサイクルセンターでは回収された九十九折の束を粗く切断し、金属
 探知器で残っている金属を除去していました。粗く切断と一口にいっ
 ても、カッターの歯の材質・形状、回転数とか様々な試行錯誤があっ
 たそうです。
 次に破砕と洗浄を繰り返し、なお付着している細かな土砂、木片、塩
 ビ以外の他の樹脂などを除いていくと、元の透明に近い8mmくらい
 のフィルム片となっていきます。

 フィルム片を脱水し乾燥のうえ、仕上げ粉砕機で2〜3mmの粒にし
 ますが、この粒をグラッシュと呼んでいます。すっかり綺麗になり、
 ちょうど差し込んでいた夕陽に当たって、黄金色の種のようにキラキ
 ラ輝いていました。
 グラッシュはリサイクル原料として、床材や、サンダルなどの日用雑
 貨を生産するリサイクルメーカーへと出荷されていくわけです。

●豊かな食を持続させるためにリサイクルを!
 しかしリサイクル市場がまだまだ狭く、処理コストに見合う価格で常
 に販売できるとは限らないのが悩みです。グリーン購入法の公布以降、
 リサイクルメーカーの側では、使用済み農ビのリサイクル品の採用を
 目指し、国や自治体に対しても働きかけを始めました。

 今やリサイクル市場をもっと拡大して資源の有効利用を進め、廃棄物
 は減らしてゼロ・エミッションを目指そうというのが、趨勢です。

 太陽光を有効に利用する’エコ・マテリアル’なビニールハウスのお
 かげで、日本では季節を問わず野菜や果物を食することが当たり前の
 ようになっています。反面、使用済み農ビも排出され続けます。
 ですから豊かな食の持続をはかるためには、その生産に用いた農ビの
 使い捨てを更に減らしていくのも、道理の一つと思われます。

 そのためにはリサイクルです。

 黄金色に染まり、まるで穀物の種のようなグラッシュに次ぎの実りを。
 そして食のサスティナビリティーへ。
 そう思いを巡らせた一日でした。


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☆わが社の環境活動(4)

 トクヤマにおける環境への取り組み
 「廃塩ビを塩ビ原料にリサイクルする技術を確立」
 (株)トクヤマ RC統括室

●「レスポンシブル・ケア」と「環境経営」を推進
 「レスポンシブル・ケア」とは、「化学物質の開発から、製造、流通、
 使用、最終消費を経て廃棄に至る全ライフサイクルに渡って“環境・
 安全”を確保する自主管理活動」であり、社会的責任を果たすことに
 重点が置かれています。

 当社はさらに「環境経営」を経営戦略の中核に位置付けました。「環
 境経営」とは、当社のすべての事業活動を見直し環境対応型に再構築
 することによって企業体質を強化し、循環型社会の構築に貢献しよう
 というものです。

●すべての工場にISO14001を導入、排出量削減にも注力
 1998年度には当社の主力工場である徳山製造所と鹿島工場にIS
 O14001を導入しました。
 また日本化学工業協会では、12種類の有害大気汚染物質の排出削減
 に自主的に取り組んでいますが、当社は、2000年度までに排出量
 を1995年度比で49%削減しました。
 PRTR法対象物質についても、環境への排出量を削減する努力を重
 ね、2000年度までに、1997年度比較で31%を削減しました。
 今後も削減対策を行っていきます。

●セメントキルンを利用し、循環型社会の構築に貢献
(1)社外から161万トン/年の廃棄物や副生物を受け入れ
   セメントキルンを持っているという特徴を生かし、2000年度
   は社外から実に161万トン/年の廃棄物や副生物を受け入れ、
   セメントの原料や燃料の代替物として活用しました。

(2)「やまぐちエコタウン基本構想」に参画、自治体から発生するご
   み焼却灰をセメントに利用します
   トクヤマと宇部興産とは今年4月に「山口エコテック」を設立し、
   焼却灰原料化設備を建設します。これは山口県から発生するごみ
   焼却灰を年間5万トン処理する能力があり、2002年4月操業
   を予定しています。

(3)廃塩ビをリサイクルし塩ビ原料へ
   当社と関係3団体(塩ビ工業・環境協会、プラスチック処理促進
   協会、塩化ビニル環境対策協議会)は、1998年に廃塩ビのリ
   サイクル技術の開発を開始し、1999年には実証試験プラント
   を建設し実験を重ね、2000年度に技術を確立しました。今後
   は実用化を検討していきます。

●グリーン購入を開始し、環境会計を導入
 グリーン購入は、環境にやさしい製品を積極的に購入することによっ
 て地球環境の保全に役立てることを目的としています。このため、全
 社的な「グリーン調達基準」を制定し、事務用品のグリーン調達を開
 始しました。
 また、効果的な環境投資を行うために環境会計を導入しました。この
 結果、環境投資とその経費を明確に把握できるようになりました。

●今後の課題:レスポンシブル・ケアをトクヤマグループ全体で実施
 当社には連結子会社が40社程度あります。昨年度よりトクヤマグル
 ープ全体としてレスポンシブル・ケアを実施する方針を打ち出し推進
 しています。


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☆お知らせ

 ■出展中・ジャパンホームショー(東京)
  10月30日(火)〜11月2日(金)
  10:00〜17:00(11月2日は16:30まで)
  東京ビッグサイト 東3ホール ブースNO.5704
  (ゆりかもめ 国際展示場正門駅 下車) 


 ■「塩ビ樹脂生産・出荷実績表」および、「塩ビモノマー生産・出荷
  実績表」をホームページにて掲載しています。
  https://www.vec.gr.jp/data/data.htm

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☆編集後記

 11月です。秋たけなわです。芸術の秋、食欲の秋、読書の秋、
 スポーツの秋・・・。
 スポーツといえばH2も人の子、週末にはラケット片手に白球
 (最近は黄球がほとんど)を追います。

 この時だけはダイオキシンも塩ビも忘れ・・・たいです。

 趣味が嵩じて、2年前に買い替えた自動車のナンバーを4030
 にしちゃいました。でもなかなかこの数字の意味を判ってくれる
 人に出会わないんだよなあ、これが。    (H2記)

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[塩ビと環境のメールマガジン]

 発   行  塩ビ工業・環境協会
 編集責任者  佐々木 修一

 塩ビ工業・環境協会     https://www.vec.gr.jp
 塩化ビニル環境対策協議会  http://www.pvc.or.jp