===「塩ビと環境のメールマガジン」 第14号 === 2001/12/06

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目 次

☆巻頭コラム
 強者のおごり(?)、弱者のひがみ(?)

☆HPVとLRI
 「化学産業界は化学物質の安全性評価をすすめています」

☆わが社の環境活動(9)             旭硝子工業(株)
 「環境活動の施策と体制」

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☆巻頭コラム

 強者のおごり(?)、弱者のひがみ(?)
 「再び有力18社のグリーン調達基準に想う」

 有力情報通信企業18社が、環境配慮型の部品を優先購入する
「グリーン調達」の基準を統一する動きについては、先にもこの
メルマガ第6号で異見を申し述べました。環境先進企業を目指す
各社の考え方としてそれなりに評価はできるものの、科学的根拠
の乏しい状況で安易に特定の化学物質群を名指しで「開示要請項
目」に指定するのは、その化学物質群の「差別」につながり、関
連業界に不当な不利益を与えかねないという趣旨でした。

 化学物質のリスク評価問題については、経済産業省も大きな関
心を寄せており、日本化学工業協会においても、HPVと略称す
る生産量の多い化学物質に関する安全性の調査研究や、LRIと
略称する化学物質の長期安全性研究プログラムの推進など、力を
入れているところであり、今回の問題についても、化学物質のリ
スクをどう取り扱うかという観点からそれぞれ対応されると聞い
ています。

 もともと自動車、電機、情報機器などのいわゆる組立型企業は、
鉄鋼、化学などのいわゆる素材型企業から素材を購入し、それら
をアセンブルして世に供給していますが、組立型企業の側からみ
れば素材は数ある選択肢の中から選択するもの、との感覚が強く、
単一素材の供給に頼っている側と比べるとどうしても「選んでや
る」、「使ってやる」という上位者概念が強いように思われます。

 今回の動きにしても、18社側の言い分は、「開示要請は単な
る情報提供の要求に過ぎず、このことが直ちに当該物質の禁止や
規制、制限につながるものではない」ということなのでしょうが、
素材を提供する企業の側から見れば、例え理屈はそのとおりであ
っても、一方的かつ意図的に24物質を列挙しただけの今回のや
り方ではいたずらに世間を惑わせ、24物質すべてがグリーンで
ない代表選手として制限・規制・禁止される対象になったと見ら
れるという、懸念、おびえ、恐れを感じざるを得ないのです。2
4物質の中にはPCBなど当然使用禁止されるべきものとそうで
ないものとが混在しており、特に、科学的根拠に立てばグリーン
でない筈のない、塩ビが取り上げられていることについては、懸
念やおびえを通り越して、いきどおりをすら覚えます。

 立場の強い側がごく単純に考えて列挙する行為が、弱者の側か
ら見ると不当な理由に因る致命的打撃を受けかねない行為に見え
る。弱者のひがみかもしれませんが、今回の事件はこういった図
柄に読めてしまいます。幸い18社側と日本化学工業協会との間
で、本件に関し充分な意見交換が行われると聞いています。関係
者それぞれにとっても、社会全体、市民全体にとっても納得の行
く、有益な方向付けがされるよう、私たちも努力を続けるつもり
です。


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☆HPVとLRI
「化学産業界は化学物質の安全性評価を進めています」

●はじめに
 近頃、ダイオキシンや内分泌かく乱物質(「環境ホルモン」という
 造語が誤解を招いていますが)を始めとして、化学物質の安全性に
 対する関心が高まってきています。化学物質は人工的に作られてい
 るとのイメージが強いのですが、私たちの体の成分をはじめ、天然
 のものは全て化学物質から成っています。

 私ども化学産業に携わるものにとっては、こうした化学物質が人々
 の生活にとって有益となるよう、その特性と使用方法を社会に伝え
 ていくことが必要であると考えています。

 そこで、その活動の中心となる「化学物質の安全性評価」の動きに
 ついて、化学業界が国際的な連携の基で進めている、二つのプロジ
 ェクトを紹介します。

●HPV(高生産量化学物質)の点検プログラムについて
 HPV(High Production Volume)プログ
 ラムとは、OECDが1990年からはじめた既存化学物質の点検
 プログラムのことです。

 まず、人の健康や環境に対する影響に関するデータを収集し、その
 結果をレポートにまとめます。次に、そのレポートは国際間で協力
 して行われる会議で評価され公表・出版されます。

 HPVプログラムの対象物質は一カ国で年間1000トン以上生産
 される化学物質と決められ、約5000物質が対象になります。
 その中で優先順位に従って、OECD加盟各国が分担して調査して
 います。日本では厚生労働省、環境省、経済産業省のそれぞれの試
 験研究機関が、毎年10〜20物質について試験を実施し、データ
 の整備を行って来ています。

 この動きに加えて世界の化学工業界は、ICCA(国際化学工業協
 会協議会)を中心とし、OECDに協力してこのHPVプログラム
 のスピードアップを図るため、2004年までに自主的に1000
 物質のHPV安全性評価を実施する方針を打ち出しました。

 私たちVECも日本化学工業協会を通じてこの動きに積極的に参画
 しており、塩ビにかかわる化学物質である、塩ビモノマーや1.2
 ジクロロエタンなどの安全性データチェックに関し、世界の塩ビ生
 産企業とともに参画しています。

●LRI(長期的自主研究)について
 以上のHPVプログラムは個々の化学物質についての安全性評価を
 行うものですが、これに加えて、人の健康と化学物質とがどのよう
 な関係にあるのかを、そのメカニズムから解明し、人々の健康な生
 活維持に役立てようという、化学産業界の自主的な研究プログラム
 が国際的に始動しています。

 それが、ICCAにより1998年10月からスタートしたLRI
 (Long−range Research Intiative)
 プロジェクトです。

 日本ではこの自主研究プロジェクトには、大学、政府および企業の
 研究者が参加して、内分泌かく乱物質、化学発がん、過敏症など
 10分野を中心に、現在24の研究課題について精力的な研究が進
 められております。

 このような研究を積み重ねることにより、化学物質と健康・環境の
 係わりについての科学的知識を広げ、また、新しい試験法やスクリ
 ーニング手法の開発を通して化学物質の適正な使用法に関する知識
 を深めることができると期待しています。

●おわりに
 現在、欧米及び日本でも、化学物質を利用頂いている企業などを中
 心として、化学産業界に対し、安全性情報提供の期待が高まってい
 ます。

 化学産業界では、こうした要望にお応えし、化学物質が社会にとっ
 て有益となる使われ方をされるよう情報を提供して行きたいと考え
 ています。

 安全性試験には長期の試験期間が必要なものもあり、全てのデータ
 をそろえるには相応の時間が必要ですが、中途半端な安全性情報を
 拙速で出すことは社会にとって混乱を招くだけであり、考えられる
 限りの情報をそろえて安全性の判断を行うことが重要であることを
 ご理解いただき、私どもの行動にお力添えと激励を頂ければ幸いに
 思います。


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☆わが社の環境活動(9)
 「環境活動の施策と体制」
           旭硝子(株)化学品事業本部 品質・環境安全部


 旭硝子は比較的環境負荷の大きい素材型事業を主力とする企業とし
 て環境保全に積極的に取組むことを経営の重要課題の一つと位置付
 けています。本社に専務取締役を本部長とする環境安全保安統括本
 部を設置し、環境問題に係る体制の整備と情報開示、地球温暖化対
 策、産業廃棄物の削減・リサイクル、化学物質の適正管理、環境ビ
 ジネスの推進の5項目を柱として具体的な施策を展開しています。

●環境マネジメントシステム
 2001年度中には国内全工場においてISO14001を導入の
 予定です。また国内外の関係会社においても、認証取得を進めてお
 り、すでに国内4社、海外6社の認証を取得済みです.
 また当社では各工場や中央研究所における環境管理活動の実態を把
 握し、全社的な観点から改善を図るように環境監査を行っています。
 具体的な方法としては、毎年1回、全工場・中央研究所を対象に書
 類監査を実施し、結果を踏まえ環境安全統括本部長が必要な工場に
 直接でかける実地監査を行います。これらの結果については本部長
 から社長へ報告されています。
 また国内外の関係会社における環境対策も重視し、関係会社につい
 ての環境監査を化学品関係を中心に1995年より継続して実施し
 てきました。

●具体的な取組み例
1.地球温暖化対策
 当社はエネルギー多消費型企業であることから、CO2の排出量も
 比較的大きなものとなっています。また温室効果ガスのうちHFC、
 SF6を製造しており、温暖化対策は重要な課題になっています。
 以上の観点からCO2の削減目標を1990年度実績ベースに20
 00年度12%削減をたて、21%削減を達成しています。

2.化学物質の適正管理
 2000年度の集計結果によればPRTR届出該当物質56物質を
 使用していますが、当社では法制化に先立ち1996年度から一部
 の工場で自主的にこれらの排出量等の集計を進め、削減に取組むな
 ど管理体制の整備を進めています。また化学品部門では1992年
 から使用・廃棄段階での安全配慮のため、MSDSの配布を行って
 いますが、使用いただいているお客様に洩れなく配布できるよう、
 当社独自のMSDS自動発行システムを構築しています。

3.廃棄物対策
 産業廃棄物の削減については1995年度実績に対し2001年度
 に90%削減目標をたて達成にむけて施策を進めています。 

 本年4月当社では新たな中期経営計画Shrink to Gro
 w2003を制定しました。この計画では環境保全に関する新たな
 目標を掲げており、本年から当社の環境保全活動の範囲を旭硝子単
 体ベースから関係会社を含めた旭硝子グループとしての活動に拡大
 していくことにしました。またゼロエミッションへの取組み、LC
 A展開、環境会計導入など当社が今後取組んで行くべき課題につい
 ても計画に織り込むとともに情報開示も積極的に務めることにして
 います。


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☆お知らせ

 ■出展予定 エコ・プロダクツ2001(東京)
  12月13日(木)〜12月15日(土)
  10:00〜17:00
  東京ビッグサイト 東4ホール ブースNO.248
  (ゆりかもめ 国際展示場正門駅 下車)

 ■「塩ビ樹脂生産・出荷実績表」および「塩ビモノマー生産・出荷
  実績表」をホームページにて掲載しています。
  https://www.vec.gr.jp/data/data.htm

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☆編集後記

 12号の巻頭コラムで、「塩ビはダイオキシンの犯人ではない・・・」
 と記したところ、各方面からお叱りを受けました。
 確かに「犯人でない」と言い切った形にしてしまったのは、筆の滑りす
 ぎ。塩ビもダイオキシン生成の要因になり得ますので、誤解を招く表現
 した。ついつい勢いあまって・・・ですが、今後注意いたしますのでご
 寛恕ください。
 もの書けば、指先冷たし師走の夜・・・(くだらないナ) (H2記)

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[塩ビと環境のメールマガジン]

 発   行  塩ビ工業・環境協会
 編集責任者  佐々木 修一

 塩ビ工業・環境協会     https://www.vec.gr.jp
 塩化ビニル環境対策協議会  http://www.pvc.or.jp