===「塩ビと環境のメールマガジン」 第19号 === 2002/1/17

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目 次

☆巻頭コラム
 環境教育は社会科か?
 「小学5年生の悲しい現実」

☆塩ビ「生い立ちの記」の講演会開かれる
 「国立科学博物館にて宮本主任研究員講演」

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☆巻頭コラム
 環境教育は社会科か?
 「小学5年生の悲しい現実」

 以前、この欄でドイツの環境事情について触れたことがありました
が、その記事を見た読者の方から、日本における環境教育の実態につ
いて、興味あるお便りをいただきました。

 その方の小学校5年になる娘さんが、学校で受けたテストの中にこ
んなのがあったのだそうです。
 問:「塩化ビニルを燃やして発生するものは次の中のどれですか。」
   (二酸化硫黄、窒素酸化物、ダイオキシン、水)

 この「正解」はダイオキシンだったそうです。「塩素を含む化合物
を燃やして…なら、まだ納得できるものの、塩化ビニルだけを取り上
げるとは…」と、その方は怒っておられましたが、また「悲しいかな
理科のテストではなく、社会科だったので、こうなってしまったので
しょうか」とコメントされ、「さらに悲しいことには、ウチの娘はダ
イオキシンに○をつけて正解でした」と結んでおられました。

 当然のことながら、塩化ビニルを燃やせば、二酸化炭素と塩化水素
と水が発生するわけで、条件によってはダイオキシンも発生する可能
性はありますが、この質問はどう考えても科学的にかなりいかがわし
いものであり、かつ社会科としてみても限りなく的外れではありませ
んか。

 学校の先生ももっと勉強してください、と文句を言うのは簡単です
が、その前に、私たちとしてやるべきことはないのか、考えてみる必
要もあると思います。

 もう一つの問題点は、言われるように、このテストが社会科のテス
トだったこと。環境教育は社会科ですか?と言われると、確かに社会
科のような気もしますが、この問題のような範疇は、もしかしたら理
科の時間のほうが良いのかも知れない、とも思えます。最近、教育改
革とやらも進められているようですが、こういった事象も改革の一つ
のヒントにはならないものでしょうか。
いろいろ考えさせられました。


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☆塩ビ「生い立ちの記」の講演会開かれる
 「国立科学博物館にて宮本主任研究員講演」

 1月12日、上野の国立科学博物館にて、博物館主催により産業技
術史講座「塩化ビニル樹脂技術発展の歴史」と題した講演会が開かれ
ました。この講座は、日本の産業技術発展の歴史を後世に残すことを
目的として継続的に開かれているもので、今回は塩ビについて、国立
科学博物館の宮本主任研究員が、日本における塩ビの誕生から今日に
至るまでの歴史を、その時々の時代背景やエピソードを交えて話され
ました。

 戦後間もない日本にとって、電線などのインフラ強化が急務であり、
この電線被覆材料としての塩ビが着目されていたこと、同じく急務で
あった衣食充実という観点から、化学肥料原料として広く使用されて
いたカーバイドと、衣料用副原料の苛性ソーダ併産品としての塩素を
利用するものとして、塩ビには当初から省資源を折り込んだ発想があ
ったこと。
 塩ビの重合技術も研究が進むにつれて変遷し、懸濁重合や乳化重合
などが関係者の努力で次々に花開いたこと、塩ビ製品も電線被覆から
フィルム、レザー、パイプ、シート、など幅広い分野に広がっていっ
たこと。昭和34年に愛知用水で日本初めての塩ビ製パイプが水道管
として採用されたこと。
 昭和40年ごろから、石油工業の発展に伴い、塩ビの原料源もカー
バイドからエチレンに転換され、生産規模が急速に拡大されていった
こと。
 今後とも塩ビはその耐久性と加工性を活かして、広く生活用素材と
して、またインフラ整備用素材としても、人類に大きな貢献を果たす
と考えられること。などなど。

 宮本先生の講演は大変判りやすく、また広い知識と優れた見識で塩
ビの将来性についてもコメントされており、深い感銘を受けました。
驚かされたのは、今でこそ塩ビはコストパフォーマンスが良いとされ
ているものの、塩ビの黎明期には大変な貴重品で、そば一杯が20円
の時代に塩ビ製のズボンのベルトが2千円もしたそうです。

 塩ビの発展も、日本経済の発展と同じく、さまざまな分野での職人
気質のキーマンの知られざる、たゆまぬ努力の賜物であることが今更
ながら実感され、まさに「プロジェクトX」の塩ビ版ではないかと感
じた次第です。


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☆お知らせ

 ■「塩ビ樹脂生産・出荷実績表」および「塩ビモノマー生産・出荷
  実績表」をホームページにて掲載しています。
  https://www.vec.gr.jp/data/data.htm

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☆編集後記

 テロ、不景気などの暗い話題や、内親王誕生など明るい話題は
 あるものの、概して静かな、のどかなお正月でしたね。H2も
 人並みに、のんびりした数日を過ごしました。しかし、のんび
 りしすぎて、初出勤直後は固有名詞をド忘れすること甚だしく、
 カンを取り戻すのに一苦労。「加齢現象」ここに極まれり、で
 した。困ったものです。
 なんてぇのを読んで笑ってるあなた、他人事ではありませんぞ。
 そのうちあなたも何時かそうなるんですから。イヒヒヒ。(H2記)

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[塩ビと環境のメールマガジン]

 発   行  塩ビ工業・環境協会
 編集責任者  佐々木 修一

 塩ビ工業・環境協会     https://www.vec.gr.jp
 塩化ビニル環境対策協議会  http://www.pvc.or.jp