===「塩ビと環境のメールマガジン」 第21号 === 2002/1/31

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目 次

☆巻頭コラム
 医療レベルの低下に懸念
 「塩ビ製血液バッグの材質表示の動きに思う」

☆塩ビモノマーのHPV完了、1,2ジクロロエタンについても
 3月完了の予定
 「いち早く安全性のデータ整備を進める塩ビ業界」

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☆巻頭コラム
 医療レベルの低下に懸念
 「塩ビ製血液バッグの材質表示の動きに思う」

 28日付毎日新聞の夕刊で、医療器材メーカーで組織する日本医療
器材工業会が、塩ビ製の医療器材に「本品は塩化ビニール(可塑剤
DEHP)を使用しています」という材質表示をすることを申し合わ
せたという報道がされました。

 血液バッグ、薬液バッグ、カテーテル、医療用チューブ、人工透析
用器材などおおかたの医療器材には、蒸気滅菌が容易であることに加
え、耐薬品性、柔軟性、透明性などなどの理由から、永年、塩ビが使
用されてきています。塩ビ製の医療器材については、多くの試験研究
でその安全性が吟味されており、過去数十年間、塩ビ利用による事故
は報告されていません。特に、血液に対する安定性が優れており、血
液バッグの材質としては、塩ビ製が殆んど唯一の材料となっています。

 可塑剤として含有されているDEHPは、時と場合によっては溶出
し、容器の内容物と混じりあうこともあります。このDEHPは健康
への影響が指摘されており、またいわゆる環境ホルモンの疑いがある
ともいわれています。しかし、健康影響に関しては、欧米も含めて綿
密な調査研究が行われた結果、例えばスエーデンの調査研究では、
「塩ビ製医療器材は健康に与えるデメリットよりも、医療救命のメリ
ットのほうがはるかに大きい」というのが結論でしたし、アメリカの
調査研究でも、「乳幼児が全血交換するようなケース以外では、DE
HPによる健康影響は無視できる。」というのが結論でした。

 医療器材が使用されるケースは、特に血液バッグや人工透析器材な
どは、命にかかわる大変な時です。殆んど無視できる塩ビ製器材のリ
スクを避けるために現状で塩ビ以外の素材に変更することは、かえっ
て医療レベルの低下を招く懸念すらあります。

 商品や製品にその材質や含有成分を表示し、利用者に情報開示する
こと自体は、メーカーとしては当然のことです。上記の報道によれば、
日本医療器材工業会では「可塑剤が溶出しても健康への悪影響はない
と思う…」とコメントしています。患者さんにとって医療器材は、取
捨選択の余地のないものであり、不正確な情報で患者さんに余計な不
安を抱かせることは避けるべきです。塩ビ製医療器材が現在、社会に
とって、特に人の命にとってかけがえのない素材であるだけに、こう
いった動きがむやみな塩ビ忌避につながらないよう、私たちはもとよ
り、マスコミも含む関係者の丁寧な対応が求められているのではない
でしょうか。


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☆塩ビモノマーのHPV完了、1,2ジクロロエタンについても
 3月完了の予定
 「いち早く安全性のデータ整備を進める塩ビ業界」

 最近、化学物質のリスクを巡る議論が多くなってきました。中心的な
議論は、人工的に合成された化学物質には、私たち人類や動植物などに
悪影響を及ぼす可能性がある、安全性が確認されない化学物質は使用を
制限・禁止すべきである、というものです。

 原則、誠にごもっともですが、一方、人類が製造する化学物質は、世
の中に役立つ、有用なものであるので、安全性が確認されないからとい
って、直ちに制限・禁止措置を取るのは行き過ぎだ、すべからくその有
用性とリスクとを天秤にかけて、ケースバイケースで判断すべきである、
というのも正論であります。

 いずれにせよ、化学物質の安全性については可及的速やかにデータを
整備し、リスク管理を進めるべきですので、化学業界としては、世界各
国と協力し、HPV(*1)やLRI(*2)などを進めている、私た
ちもその動きのなかで、私たちに関係の深い、塩ビモノマー(VCM)
と1,2ジクロロエタン(EDC)とについて、HPVに参画している、
ということは本誌第14号でもお伝えしました。

 このHPVとしては、2004年までに1,000種類の化学物質の
安全性データを整備しようということで進んでいますが、現在までに世
界で50物質の整備が終わった段階です。とにかく膨大な安全性試験
の実施や資料の整備を行う必要があり、計画の完了までにはまだまだ長
い年月がかかるといわれています。各物質の安全性データについて、世
界の学識経験者による審議会を行い、そこで承認されたものについてオ
ーソライズすることになっています。SIAM(*3)と称するその審
議会が欧米を舞台にして過去13回行われました。最近では2001年
11月スイスで(SIAM13)、次回SIAM14は2002年3月
にフランスで開催の予定です。

 そこでVCMとEDCですが、私たちVECはこの2物質について、
世界の塩ビ業界と連携して安全性データの整備に取組んできました。そ
の結果、VCMについてはデータが揃い、上記のSIAM13で審議さ
れた結果、業界のまとめた安全性データが正式なものとして承認される
ことになりました。また同様にEDCについても、業界提出の安全性デ
ータが次回SIAM14で議論されることになり、正式承認の目処がつ
きました。データ整備には多額の費用がかかり、時間とエネルギーも必
要でしたが、正しいリスク管理を進めるための当然のこととして、VE
Cをはじめ世界の塩ビ業界が率先して取組んだ結果です。

 本件に限らず、私たち塩ビ業界は、関連する化学物質の安全性データ
の整備のみならず、化学物質の環境への排出削減などにも注力していき
ます。
ご理解とご支援をお願いします。


(*1)HPV:正確にはICCA HPV INITIATIVE。
        国際化学工業協会協議会の推進する大量生産化学物質
       (High Production Volume)の安全性データ整備活動。
        世界レベルで大量に(年間1,000トン以上)生産
        されている化学物質1,000種類を選び、各国が手
        分けして至急データ整備を進めようということで、
        1998年から、世界各国の化学業界が始めました。
        日本では化学企業の団体である日本化学工業協会(日
        化協)が中心になって、そのうち約320物質に関与し、
        その化学物質の世界の製造・使用企業と協力して
        進めているところです。

(*2)LRI:LONG−RANGE RESEARCH
        INITIATIVE。
        長期自主研究計画。化学物質による発ガン性や、ヒト
        への影響のメカニズム、化学物質の健康影響、環境影
        響などに関し、長期的なテーマについて、世界各国で
        手分けして研究を進めようというものです。
        日本では同じく日化協が中心となって進めています。

(*3)SIAM:SIDS(Screening Information Data Set)
         INITIAL ASSESSMENT
         MEETING の略。
         HPVでまとめられた安全性データを世界レベルの
         学者や有識者が集まって審査し、オーソライズしよ
         うという会合。主としてヨーロッパで、年数回のペ
         ースで開催され、一回の会合で数種類から10数種
         類の化学物質について審査します。現在までに13
         回開催され、延べ約230物質について検討していま
         す。


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☆お知らせ

 ■2002年展示会出展スケジュール(予定)はこちら

  https://www.vec.gr.jp/NEW/Tenji-Kai_nittei_index.htm

 ■「塩ビ樹脂生産・出荷実績表」および「塩ビモノマー生産・出荷
  実績表」をホームページにて掲載しています。
  https://www.vec.gr.jp/data/data.htm

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☆編集後記

 仕事だけでなく、今や生活の必需品ともなりつつあるパソコンですが、
 大方のパソコンにはゲームのソフトがついています。凝り性のH2は
 パソコンを経験して以来、たちまちそのトリコに…。
 中でもトランプゲームの一種フリーセルに没頭しました。まさにフリ
 ーセル中毒です。
 ご存知のように、フリーセルには32,000種類の組み合わせがあ
 りますが、H2はまるまる4年間かけてこの全組み合わせをクリアし
 ました。
 完成したときのうれしかったこと!!しかし、一面むなしかったこと!
 その後暫くはパソコンに向かうとなんとなく心がうつろになりました。
 われながら馬鹿馬鹿しいお話でした。(H2記)

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[塩ビと環境のメールマガジン]

 発   行  塩ビ工業・環境協会
 編集責任者  佐々木 修一

 塩ビ工業・環境協会     https://www.vec.gr.jp
 塩化ビニル環境対策協議会  http://www.pvc.or.jp