===「塩ビと環境のメールマガジン」 第26号 === 2002/3/7

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目 次

☆巻頭コラム
 ネズミとヒトを一緒にしないで!
 「再び、おもちゃ規制に反論する。」

☆多様化進む電線配合剤
 「カルシウム系安定剤の製品も登場」

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☆巻頭コラム
 ネズミとヒトを一緒にしないで!
 「再び、おもちゃ規制に反論する。」

 厚生労働省が、食品衛生法を改定し、食品用器具、容器包装、おも
ちゃなどに対し、ある種の可塑剤入り塩ビの使用を禁止する方向で準
備に入っている、これに対し、私たち塩ビ関連業界はじめ、日本のみ
ならず多くの国や地域から、パブリックコメントなどを通じて反対の
意見が寄せられている、ということは本誌第1号でお伝えしたとおり
です。

 その後厚生労働省は、これらパブリックコメントの意見を斟酌しつ
つ考え方の整理を進め、近々関連の審議会で改めて審議した上で、今
後の方向付けをすることになります。

 私たちとしては当然、私たちはじめ多くのコメントで主張されてい
るとおり、科学的事実に基づく施策が公表されるものと信じています。
そこで私たちが主張する根拠の一部について、改めてここにご説明し、
読者のご理解をいただければと考えます。

 ○私たちの主張の第1:今回の規制はその科学的根拠があいまい
  である上、近い将来規制の方向を否定する研究結果の公表も予
  定されており、現時点での規制の判断は適当でない。
 ○私たちの主張の第2:万一規制されるとしても、溶出レベルで
  の規制でなく、使用禁止としていることは、リスクマネジメン
  トの原則に照らしても不適当である。
 ○私たちの主張の第3:この種規制は世界でも例がないものだけ
  に、国際貿易上、日本が世界各国からの非難を浴びることにも
  なりかねない。

 などなど、いろいろありますが、多言を費やしても仕様がない、
的を絞って科学的根拠についてだけやや詳しくご紹介しましょう。

 諸情報から推定すると、今回の規制の基になった科学的事実は、塩
ビ製玩具に使われる可塑剤を、かなり多量にネズミに投与した場合、
何匹かの雄ネズミの精巣の一部に萎縮が見られるという研究論文があ
ること、およびヒトの赤ちゃんのおしゃぶり行動を解析して可塑剤が
赤ちゃんに取り込まれる量を勘案した結果、その量がいわゆる「耐用
一日摂取量(TDI)」を越えるかもしれないと考えたことのようで
す。

 TDIに対する考え方にもいろいろ疑問点はありますが、私たちか
らするとまず、ネズミの実験結果だけから直接ヒトに対する影響を推
定していることに大きな疑問を抱きます。この方法は一般的ではある
ものの、実はこの種可塑剤に関しては、当てはまりそうにないことが
明らかになりつつあります。なぜかというと、ネズミとヒトとでは生
体反応機構が異なるため、ネズミには影響が出てもヒトには影響が出
ない、という有力な理論があり、実験データによってもそれは裏付け
られているからです。

 さらに、この学説を確たるものにするため、世界各国で研究が進め
られており、近い将来その成果が公表されるとも聞いています。もし
その研究の結果、ネズミでは影響があるがヒトには影響はないことが
はっきりしたら、どうなるのでしょうか。もしそうなれば、私たちと
しては、かなりの決断をもって行動することも考えなければなりませ
ん。規制当局者にはくれぐれも慎重な判断を願いたいものです。


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☆多様化進む電線配合剤
 「カルシウム系安定剤の製品も登場」

 家電用の電線や自動車用電線などには塩ビ被覆のものが広く使われて
おり、塩ビの国内消費量の1割強、年間20万トン近くにのぼっていま
す。
 この電線用塩ビには、可塑剤はじめ各種の安定剤が配合されています
が、最近のユーザーニーズの多様化に伴い、これら配合剤についても多
様な開発が進み、電線メーカー各社でも独自の戦略を取るところが目立
ってきました。

 大阪に本社をおき、住宅用電線のトップクラスのメーカーである河村
電線工業では最近、住宅用電線の代表品種であるVVF(フラット型ビ
ニル絶縁ビニルシースケーブル)にカルシウム系安定剤を使用する技術
を確立し、製品化したと新聞発表しました。
 従来このタイプの電線用塩ビには耐熱性や電気絶縁性に勝れ、コスト
的にも安価な鉛系安定剤が多用されていましたが、同社ではカルシウム
系でも従来の鉛系安定剤と同等の特性を保持し、施工配線性も従来品と
変わらないものの開発に成功し、価格的にも従来品と同レベルでの提供
が可能になったということです。多様化するユーザーニーズに対応した
一例といえるのではないでしょうか。

 最近、こういった多様化ニーズの例として、塩ビを使わない電線被覆
材の開発も進んでおり、実用化されているとも聞きますが、難燃性や耐
薬品性、柔らかさや腰の強さなどの物理特性、さらにはリサイクル適性
など、まだまだ塩ビには追いついていないようです。

「カルシウム系の塩ビ電線」か、「非塩ビの電線」か、どちらがユーザ
ーニーズにフィットするのかもさることながら、電線本来の機能、つま
り感電や漏電の心配がなく、火災にも強くて安全に電気を送るという機
能を大切に考えることが重要な基本でないかと考えます。


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☆お知らせ

 ■「塩ビ樹脂生産・出荷実績表」および「塩ビモノマー生産・出荷
  実績表」をホームページにて掲載しています。
  https://www.vec.gr.jp/data/data.htm

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☆編集後記

 3月の声を聞くとなんとなくほっとします。時々は寒い日も
 ありますが、寒くなっても多寡が知れ、暖かい春が近いぞ、
 と思えるからでしょうか。
 しかし、この季節になると、キツネ面風のマスク姿も目立っ
 てきます。花粉症です。幸いH2は無事ですが、くしゃみが
 続いて辛いんだ、という、まさに涙の物語をよく聞きます。
 これまた化学物質原因説がありますが、どうなのでしょうか。
 科学的事実の解明を急いで欲しいものです。(H2記)

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[塩ビと環境のメールマガジン]

 発   行  塩ビ工業・環境協会
 編集責任者  佐々木 修一

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 塩化ビニル環境対策協議会  http://www.pvc.or.jp