===「塩ビと環境のメールマガジン」 第32号 === 2002/4/18

===================================================================

目 次

☆巻頭コラム
 「環境先進県目指す心意気」
   片山鳥取県知事、鳥取環境大学のVEC寄付講座で熱弁

☆特別寄稿
 「塩素の来た道帰る道」
   東北大学工学研究科教授 奥脇 昭嗣

===================================================================

☆巻頭コラム
 「環境先進県目指す心意気」
   片山鳥取県知事、鳥取環境大学のVEC寄付講座で熱弁

 4月10日(水)の午後1時から、鳥取市にある鳥取環境大学
で、片山善博鳥取県知事が、300人を超える大学生達に講演を
されました。

 鳥取環境大学、と聞いても、なじみのある方は少ないでしょう。
実はこの大学、鳥取県と鳥取市が設置した学校法人によって運営
される、いわゆる「公設民営方式」で昨年に開校された、日本で
ただ一つの環境専門大学です。

 私たち塩ビ工業・環境協会は、一昨年10月の鳥取県西部地震
における塩ビ建材災害廃棄物のリサイクルを実施した経緯があり
ます。これは鳥取県や米子市、境港市などにご協力いただき、ま
た現地の市民ボランティアの方々にもご助力いただいて実現した
ものですが、この時のご縁もあって、今年から、鳥取環境大学に
私たち塩ビ工業・環境協会として、寄付講座を持たせていただく
ことになりました。そして、10日に、「資源リサイクルの理論
と実践」と題するこの講座の第1回講義が開かれ、片山知事が特
別講師として招かれた、ということなのです。

 当日、加藤尚武鳥取環境大学長の挨拶に続いて登壇した知事は、
鳥取環境大学設立の経緯と知事としての係わり方について述べら
れた後、「鳥取県は環境立県を目指します」と宣言され、東郷町
のウラン残土問題、県としてのISO14001の取得、県下で
の狂牛病対策の完全さなどについて触れ、県職員はじめ全員の意
識改革がぜひとも必要だと強調されました。さらに、「資源循環
型社会を形成するためには静脈産業の育成が大切だ。県下でもリ
サイクル関連事業の育成に力を入れるとともに、県でも環境職な
るものを作って優秀な人材に県庁で活躍してもらうことを考えた
い。これからの時代には環境問題などを総合的に考える人材が不
可欠で、そういった期待に応えられるように頑張って欲しい。」
と学生にエールも送られました。

 この講座は今後、原則毎週水曜日に開催され、国公立機関から
の客員教授を始め、NPOやメーカーからの講師による講義が予
定されています。さまざまな資源のリサイクル促進のための社会
経済システム、リサイクルと市民活動、プラスチックのリサイク
ル状況などを、幅広い視点からその当事者自らが講義するという、
新しい試みが行われる予定です。

 こういった活動を通じて、私たちも、資源循環型社会の形成に
少しでもお役に立てば、と願っています。

===================================================================

☆特別寄稿
 「塩素の来た道帰る道」
   東北大学工学研究科教授 奥脇 昭嗣

 国内に入ってくる塩素の形態は、工業塩が主、次いで塩ビモノ
マー用の1,2二塩化エチレン(EDC)であろう。高度経済成
長時代は苛性ソーダと塩素を供給するため電解設備が大増設され
た。この間の技術進化と規模拡大は目覚ましかった。ソーダ側か
ら見ると、アンモニアソーダ法苛性ソーダは廃止、ソーダ灰もソ
ルベー法から塩安ソーダ法に変わった。電解法は水銀法、隔膜法か
らイオン交換膜法へと完全に変わった。塩素側から見ると、食塩
電解工業は、発足時から塩素と苛性の需給バランスが問題であっ
た。今もこの問題は変わらず、不足の塩素がEDCの形で輸入さ
れているのであろう。

 塩素の用途は無機系では、塩酸、塩化物、塩素、次亜塩素酸塩、
二酸化塩素、塩素酸塩、過塩素酸塩などであろう。有機系は、
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素系ゴム等の高分子、
溶剤、合成中間体等であろう。

 わが国では、塩はメキシコおよびオーストラリアの大塩田で生
産された工業塩が、大型船で本牧埠頭、瀬戸内の三つ子島に着き、
各地の電解工場やソーダ灰工場に送られる。海に囲まれたわが国
とはいえ、工業塩を安価に生産できない。工業塩を完全利用する
技術の到達点の一つが、ガラス用ソーダ灰を供給する塩安ソーダ
法である。副生する塩安は窒素肥料であるが、塩素はアンモニア
の単なる固定材であり、他の無機塩素のように水に運ばれて末は
海にたどり着く。今でこそ専売が外れて、海外の食塩がスーパー
の棚を飾るが、つい最近まで食用塩の全量はイオン交換膜法で海
水を濃縮し、蒸発缶で結晶させたものであった。食卓塩、味噌、
醤油等の調味料、漬物等に使われる食塩は一人年間11kg程度
で、150万tが生産され、工業塩はその5倍ほど消費される。
わが国で使われたナトリウムと塩素の大半は、工業塩では別々に、
食塩では連れ立って母なる海に帰る。

 食塩と塩素系樹脂がごみ焼却炉で燃やされて大量のダイオキシ
ンを非意図的に生成して社会問題となったが、その生成挙動が解
明され、新鋭の大工場は、今やごみに付いているダイオキシンの
分解工場といえる。冷媒や溶剤として使われているフロン類も温
室効果のため将来は廃止される。ストックホルム条約の調印によ
り各地に保管されている農薬やPCBなどのPOPsが分解され
る。

 塩素ではパイプや窓枠の塩ビ材料はマテリアルリサイクルシス
テムの構築が進んでいる。そのため、ソーダのガラスのように、
リサイクル塩ビパイプは塩素のストックとみなせる。フィードス
トックリサイクル技術も開発されて、塩素の利用は、バランスと
経済性また小さな技術的問題が残っているが、ぼつぼつ出番の様
である。無機塩素の帰り道で残る問題の一つは、ごみ処理で発生
する塩酸やセメントキルンの塩化物の処分方法になろうか。食塩
もその一端を担う。ひと働きした塩素の良い帰り道をつけるため
に、パイプの場合より広く、ソーダ・塩素、塩ビ樹脂等関連業界
が主体的に行動する時ではないだろか。

注)きっちりした塩素収支を知りたい方は、河村、角館、鈴木、
  資源と素材116、161(2000)を参照して下さい。

===================================================================

☆お知らせ

 ■塩化ビニル産業 日中共同フォーラム
 (主催 化学工業日報社・中国化工報社)

 「開催要領」
   日 時 4月22日(月)終日、4月23日(火)午前中
   会 場 東京厚生年金会館 新宿区新宿5−3−1
   参加費 1名 ¥34,000円
        前記料金には資料代、初日昼食代、お茶代
        晩餐交流会費、消費税などを含みます。
   申込先 化学工業日報社 企画事業局事業グループ
         〒103-8485 東京都中央区日本橋浜町3−16−8
         電話 03-3663-7931 FAX 03-3663-2330

 「講師とテーマ」
  ●第一日目=22日(月)セミナー
  <日本側講師とテーマ>
  「日本における塩ビ工業の現状と展望」
          東ソー 理事 宇田川憲一
  「塩ビ樹脂の需給動向」
          新第一塩ビ 常務 前田宣忠
  「塩ビ工業におけるリサイクルの現状と課題」
          鐘淵化学工業 専務 乾佐太郎
  「塩ビ工業の環境問題と技術開発」
          信越化学工業 環境保安部長 久我直温

  <中国側講師とテーマ>
  「中国の塩ビ工業の現状と展望」
          中国クロロアルカリ工業協会 張国民秘書長
  「WTO加盟、塩ビ関連産業の事業チャンスと展望」
          上海クロロアルカリ化工股分有限公司 李軍総経理
  「中国塩ビ市場(原料・製品、生産能力拡充など)の回顧と展望
          河北滄州化工実業集団 于生春副総経理

  ●第二日目=23日(火)セミナーとパネルディスカッション
  【セミナー】
  「地球環境と塩ビ」
          塩ビ工業・環境協会専務理事 佐々木修一
  「塩ビの魅力と特徴」
          塩化ビニル環境対策協議会 運営委員長 牧野哲哉

  【パネルディスカッション】
    <日本側パネラー>
      東ソー専務(大洋塩ビ社長) 日野清司
      塩ビ工業・環境協会専務理事 佐々木修一
      塩化ビニル環境対策協議会  運営委員長 牧野哲哉
    <中国側パネラー>
      初日講師の3氏

===================================================================

☆編集後記

  今週は東北大学の奥脇教授にご寄稿いただきました。
 ありがとうございました。
  4月たけなわ、新学期です。新入社員のみならず、
 新入生もいっぱい。片山知事の特別講義は、鳥取環境大学
 の新入生にはどう受け止められたでしょうか。H2からも、
 鳥取環境大学の学生諸君に励ましのエールを送ります。
 えい!えい!えーい!(H2記)

===================================================================

[塩ビと環境のメールマガジン]

 発   行  塩ビ工業・環境協会
 編集責任者  佐々木 修一

 塩ビ工業・環境協会     https://www.vec.gr.jp
 塩化ビニル環境対策協議会  http://www.pvc.or.jp