===「塩ビと環境のメールマガジン」 第35号 === 2002/5/16

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目 次

☆巻頭コラム
 水資源対策に塩ビが役立つ大きな可能性
  「緑を育てるインドと日本のNPOが指摘」

☆特別寄稿
 「産業別労働組合から見た環境活動と今後について」
   日本化学産業労働組合連盟 中央執行委員長代行 山根昭昶

☆お知らせ

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☆巻頭コラム
 水資源対策に塩ビが役立つ大きな可能性
  「緑を育てるインドと日本のNPOが指摘」

 今週、日本のNPO(特定非営利活動法人)の方々、インドのNPO
の方々と意見交換をする機会に恵まれました。
 インドのグループは通称「WIDA」という会のウイリアム・スタン
リーさん達。日本のグループは「中部リサイクル運動市民の会」の萩原
代表以下数人。それに、WIDAと協力してインドでの植林を進める、
岐阜高山のNPO、「ソムニード・サンガム」の和田さん、などなど。

 インドのWIDAは、正式名称はIRDWSI(Integrated Rural 
Development of Weaker-Sections in India)と言う団体ですが、
通称のWIDA(ウイダ)はインドのオリッサ州の公用語で結束、つな
がりと言う意味だそうで、1981年以来当地で教育支援、保健事業、
森林保護活動、台風や地震の緊急支援などを幅広く手がけてこられたそ
うです。
 中部リサイクル運動市民の会は、名古屋地区で古くから、リサイクル
運動を進め、現実に名古屋市のごみ減量運動を市長に協力して成功に導
いた実績を持つグループです。

 当日の話題は植林活動の新しい概念について。
 萩原さんから、内外で中部電力と共同で始めている、植林活動の話が
ありました。本人や家族の記念日に記念植樹をするアイデアから始まり、
現在では愛知県で原生林拡大プロジェクトを進め、今年からはインド南
部でもWIDAと組んで同様な試みを始める計画だそうです。

 インド側からは、スタンリーさんと和田さんからそれぞれ、インドで
の植林活動の状況についてお話いただきました。2000年から植林を
始め、4万平方メートルの山地に12種類の樹木を試験植林して適種を
探り、2003年には植林面積の拡大や植林のモニタリング方式を確立
することなどを目指して本格的活動が始まるとのことでした。WIDA
の植林事業は紙パルプなど工業用のみを想定したモノカルチャー型では
なく、様々な種を配することで多様な生産活動を目指そうというものだ
そうで、環境、経済、人とのコミュニケーションの相互のバランスを重
視しながら推進していくとのお話が印象的でした。

 また、環境問題も担当している岩手県東京出張所の笹谷さんのコメン
トもありました。東北地方では、山地のブナ林が荒廃するにつれて水源
に異常が起こり、河川水が流れ込む沿岸地域の漁業資源の枯渇が深刻に
なってきたことを指摘され、海の生態系は山の生態系に大きな影響を受
けることを語られました。

 21世紀の世界の環境問題の中で、温暖化問題と並ぶ重要なテーマは、
水資源問題だといわれています。充分な水資源が確保できるのか、その
ためにはどういった手立てが必要なのか。

 インドや岩手県の実情が示すごとく、植林活動も温暖化対策としての
みならず、自然のダムを造ることで水資源対策としても大きな役割を持
つのではないかと思います。
 この水資源の有効利用として、農業、小型水力発電、飲料用水向けな
どに配管システムが必要であり、塩ビ管とその利用ノウハウが役立つ可
能性が示唆されました。インドでも塩ビ工場はあるが都市基盤向けで一
杯で、水保全など地域開発向けには手が回らない、とのことです。

 常日頃「省エネ、省資源、リサイクルを通じて、持続的発展に貢献す
る塩ビ」といっている私たちとしても、いろいろ考える必要があるので
はないか、と思った一時でした。


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☆特別寄稿
 「産業別労働組合から見た環境活動と今後について」
   日本化学産業労働組合連盟 中央執行委員長代行  山根昭昶

 企業籍を持つ産業別労働組合役員の立場で、連合の環境小委員会、連
合総研の「環境と経済研究委員会」、化学連合の「産業政策委員会」の
委員として、またICEMやILOでの国際活動への参加などを通じて、
様々な環境問題の取り組みに関わってきた。
 それらの活動を通じて実感してきたことをベースに、労働組合と企業
がこれからどのように、環境活動に関わるべきか所感の一端を述べてみ
たい。

 こうした委員会に参加していると、私たちの産業活動が環境を軽視し
ているのではないかと考えている環境派、極めて良識的・常識的だと考
えられる環境派の人たちの価値観が、しばしばぶつかり合うことがある。
前者の考え方が正論だと受け止めている人は、環境という言葉にやや陶
酔している感があり、科学的かつ具体的な根拠に乏しく感情的でもある。
 一方そうした人たちは、企業内・産業内労使間には甘えやもたれ合い
があり、お互いが環境問題へのハードルを低くして、自らの利益擁護を
しているのではないか。また環境に関する情報公開への努力不足、問題
を先送りしているのではないかという指摘もする。

 このようなことは、かつて私たちがPRTR法やダイオキシン対策法
等々の、法案成立過程で取り組んだ、地方自治体の首長や当該部局、地
方連合、地方自治体議員、衆参国会議員などとの、法律のあり方をめぐ
る厳しい対話活動の中でも実感をしてきた。

 このような活動においても、私たちは一定の自己主張はしているが、
私たちが一市民・消費者の立場であると同時に、メーカーであり産業人
・企業人でもあるだけに、どのようなスタンスに立ち、関係者と調和し
ていくのか実に悩ましいことになるのである。

 しかしこうしたささやかな体験を通じて、労使がいま考えなければな
らないことが見えてきたように思う。

 その第1点は、企業内や産業内で当面する問題の対策に、埋没してい
る感のある活動から脱皮し、私たちの目線を消費者やユーザーにおき、
その視点に立った運動への質的転換をしていく必要があるように思う。
そのためには、実効・即効が見えなくても、少し長い目で見て種を蒔く
地道な活動が必要ではなかろうか。もちろんそれらの活動の前提は、消
費者にとってわかりやすい科学的な知見とセットになった情報公開を進
めていくこと、そして少なくとも同じ化学業界間で、足を引っ張り合う
ような関係の改善ではなかろうか。これらのことを思わずにはおれない
実体験は、この間何度もしたことのひとつである。

 第2点は個々の企業の環境課題の位置づけと負担は、各社各様と思わ
れるが厳しい経営実態はあっても、もう一段の技術革新のためにヒト、
モノ、カネを投資して、将来に備えて欲しいと思う。それが産業・事業
の将来基盤をより強くし安定的なものにし、消費者とのよりベストな関
係を創る事につながると確信するからである。そのためには労使間の利
益の再配分に変化があっても当然だと思う。

 第3点目は私たち自らの事であるが、化学の産業別組織としての取り
組み体制も不十分といわざるを得ない。そのために正直言って、課題に
対する継続的な取り組み、課題に対する突っ込み不足は否めない。この
ようなことを考えると、私たちの組織にも環境はもとより、個別の産業
にある程度精通した人材の配置が必要だと考えている。その配置した人
と先に述べた環境派の人たちや消費者等の間で、しっかりとした対話活
動を行うことは極めて重要である。そのなかできっと、良きオピニオン
リーダーの役割が担えるものとと考えている。

 これらの活動を通じて、自らの意識そしてこれまでの組織と運動の改
革が進むものと考えている。そのことを労組も産別もしっかり認識して、
環境問題を自らのものとして、具体的なアクション起こさなければなら
ないのではなかろうか。


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☆お知らせ
 ■セミナー
  「プラスチック建材と建築」
   主 催:塩ビ工業・環境協会
   日 時:6月11日(火)14:00−17:00
   場 所:如水会館2F オリオンルーム
        地下鉄半蔵門線/三田線/新宿線
        神保町駅下車 A8出口 徒歩3分
   対 象:日本建築家協会会員、建築関係者
   問合先:塩ビ工業・環境協会 長繩
        TEL 03−3506−5481

   プログラム
   14:00−15:00「環境建築と開口部 −光と風の建築」
               東京大学大学院工学系研究科建築学専攻
                   坂本 雄三 教授
   15:00−16:00「米国のサイディング事情」
               塩ビ工業・環境協会 建材部会長
                   石田 博 氏
   16:00−17:00「建材リサイクルの現状と課題」
               塩ビ工業・環境協会 技術・調査部会長
                   阪内 孚史 氏

 ■展示会出展予定
  1.2002NEW環境展(東京)
    5月28日(火)〜5月31日(金)
      10:00〜17:00
    東京ビッグサイト 東1ホール ブースNO.1101−A06
    (ゆりかもめ 国際展示場正門駅 下車)

  2.MIE・みんなで創る 環境フェア(三重県四日市)
    6月1日(土)〜2日(日)
      10:00〜16:00
    四日市ドーム
    (近鉄・JR 四日市駅からシャトルバス)

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☆編集後記

  ゴルフにサッカー、大相撲にプロ野球と、今年もスポーツの話題
 が盛り上がるシーズンになりました。
  ゴルフではテキサスで丸山選手が米国ツアー2勝目を挙げたかと
 思えば、プロ野球ではあの阪神タイガースが、ジャイアンツと白熱
 の首位争いを演じているではありませんか。
  願わくばこれが、秋風吹く頃の状況であってくれれば・・・
 と思うのは、にわか隠れトラファンの、たぶん叶わぬ願望でしょう
 ね(H2記)

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[塩ビと環境のメールマガジン]

 発   行  塩ビ工業・環境協会
 編集責任者  佐々木 修一

 塩ビ工業・環境協会     https://www.vec.gr.jp
 塩化ビニル環境対策協議会  http://www.pvc.or.jp