===「塩ビと環境のメールマガジン」 第48号 === 2002/8/22

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目 次

☆巻頭コラム
 家電中の塩ビもマテリアルリサイクル
 「家電リサイクル法2005年改定へ向けて、
  取り組み展開中」

☆特別寄稿
 国立科学博物館塩ビ技術の系統化について
  国立科学博物館 産業技術史資料調査
    主任調査員  宮本 眞樹

☆お知らせ

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☆巻頭コラム
 家電中の塩ビもマテリアルリサイクル
 「家電リサイクル法2005年改定へ向けて、
  取り組み展開中」

 昨年の4月からいわゆる家電リサイクル法が本格施行され、
テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの使用済み家電4品目に
ついてリサイクルが開始されたことはご承知の通りです。

 現在のところ、各家電製品の再商品化率は50〜60%以
上と決められており、この段階では製品に使われているプラ
スチックのリサイクルは必ずしも必要ではありませんが、2
005年に計画されている法改正では、この再商品化率の大
幅引き上げが想定されており、80〜85%のリサイクルが
必須になってきます。

 こういった状況の中で、家電業界は、全国40ヶ所近くの
リサイクル工場と、400ヶ所近くの集積拠点を設置するな
ど、積極的にリサイクルシステムの構築を進めており、その
活動振りは目を見張るものがあります。

 家電製品には、当然のことながら塩ビ製品も使用されてお
り、私たち塩ビ業界では、使用済み家電製品中の塩ビについ
てもリサイクルを検討し始めています。

 具体的には、家電業界およびリサイクル業界に働きかけて、
工場端材だけでなく、いわゆるポストユースも含めたリサイ
クルシステム構築の試みを開始しました。使用済み家電から
塩ビ製品を分別し、それをリサイクル工場に運んで、住宅内
装材などの建築用途や、農水保全用遮水シートなどの土木用
途として再利用するシステムです。

 現在までのところ、まだほんのささやかなトライの段階で
すが、分別コスト、輸送コストなど経済性の問題や、再生用
途の市場適合性など製品開発の課題をクリアして、システム
の本格稼動の目途も立ちつつあります。

 こういう時にも、難燃性、加工性の良さ、品質劣化の少な
さ、など塩ビの本質的な特徴が活かされ、さまざまな分野で
もリサイクル製品が期待できそうです。こういった試みにつ
いては、成果が現実に出てきた都度、随時この欄で紹介する
ことを考えています。ご期待下さい。

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☆特別寄稿
 国立科学博物館塩ビ技術の系統化について
  国立科学博物館 産業技術史資料調査
    主任調査員  宮本 眞樹

 国立科学博物館<以下、科博とする>では平成12年度から
2ケ年をかけて、筆者が担当して塩ビの技術史に関する調査研
究を行い、このほど平成13年度の成果を「国立科学博物館 
技術の系統化調査報告(第2集)」<以下、「第2集」とする>
として公刊しました。平成12年度の調査結果は昨年度、同報
告の第1集<以下「第1集」とする>として発表しています。

 この調査研究は科博が平成9年度から実施している「産業技
術史資料の評価・保存・公開等に関する調査研究」の一環とし
てなされたもので、塩ビの技術史上重要と考えられる実物資料
(製品サンプル、製造装置など)の所在調査と、その資料が技
術史上どのような位置付けになるかを明らかにする「技術の系
統化調査」を内容とするものです。そして、特に重要と思われ
る資料を、近く設置される予定の「国立科学博物館産業技術史
資料情報センター(仮称)」<以下、「センター」とする>の
資料登録台帳に登録して、その保存を図ることを目的としてい
ます。登録された資料は科博で保存するのではなく、原則とし
て現在の所有者に保存して頂くことになります。

 科博でのこのような産業技術史の調査研究は初めての試みで
あり、「塩ビ」の他では「ビデオ」と「コンピューター」が選
ばれました。

 塩ビについては「第1集」では主として塩ビの製造技術(モ
ノマー合成を含む)を取り上げ、「第2集」では主として塩ビ
の成形加工技術の歴史をまとめました。続いて、技術開発者の
証言を中心とした個人業績についてまとめた資料集「国立科学
博物館 技術の系統化調査報告 塩化ビニル樹脂技術史資料集
[技術開発者達の証言と関連資料]」<以下「資料集」とする>
を近く発行する予定です。

 「第1集」と「第2集」は、先にも述べたように、実物資料
の発掘を目的としたものですので、文献資料を中心とした一般
の技術史とはやや趣を異にしますが、戦前の黎明期から現在ま
で、またモノマー合成、樹脂製造、成形加工までを含んでいま
すので、これに近く発行予定の「資料集」を加えれば、個人業
績を含めて塩ビの技術史はほぼ網羅的に把握できたと考えてい
ます。

 さて、塩ビに関しては、先の「センター」の資料登録台帳へ
の登録、または科博での保存の対象となる技術史的資料は多く
はありません。その主なものを紹介して見ましょう。
 製品サンプルでは、日本ゼオンの製造開始第1バッチの製品
サンプル、日本で最初に製造された硬質塩ビパイプ(アロン化
成)、日本で最初に製造された硬質塩ビ製バルブ(旭有機材工
業)などがあります。
 モノマーおよび樹脂の製造装置では、戦後の塩ビ工業草創期
のモノマー合成用反応器(鐘淵化学工業)、日本で最初のブル
マージン型重合器(日本ゼオン)、同じく最初のファウドラー
型重合器の同型機(呉羽化学工業など)、日本で最初のオキシ
クロリネーション法モノマー合成用反応器(東ソー)などです。
 成形機では日本で初めて硬質塩ビ板を製造したプレス機が現
存しています(三菱樹脂)。また、射出成形機では、直接塩ビ
とは関係がありませんが、射出成形の技術史の上で重要な成形
機が保存されています。
 特に、第2次世界大戦中にドイツから潜水艦で運ばれた射出
成形機(旭化成)と、同時に輸入された金型(積水化学工業)
は、日本に現存する最も古い射出成形機と金型と思われます。
 戦後の歴史的に重要と考えられる射出成形機は、日精樹脂工
業と名機製作所に保存・展示されています。
 特記すべきは日精樹脂工業です。同社の資料館には、同社が
開発した約20機種の射出成形機が保存・展示されていて、射
出成形機の歴史を知ることのできる貴重な資料館となっていま
す。これらの成形機は、一度、ユーザーである成形メーカーに
収められたものですが、その後、使われなくなった時、同社が
引き取って保存したものであり、企業による技術史資料の保存
の好例となっています。

 さて、この調査研究を終っての若干の感想を述べておきまし
ょう。
 第1は、予想通りと言うべきか、歴史遺産とも言うべき実物
資料はきわめて少ないことです。しかも現存するものも、例え
ば近年の製造プラントのように大型のものの保存はかなり困難
と考えられます。現在稼動中のプラントがその役目を終えた時、
保存されるか否かはその企業の意思に委ねられます。先に述べ
た「センター」の資料登録台帳への登録をしたとしても、それ
で保存を強制することはできませんし、小さいものならともか
く、大型のものでは博物館がこれを引き取って保存することも
困難です。
 つまり、科博が産業技術史資料の保存のため新に「センター」
を発足させ、重要資料の登録を始めることは、産業技術史資料
の保存の画期的第一歩ではあっても、それだけでは決定的な力
にはなり得ず、どうしても企業あるいは業界の技術史資料保存
に対する強い意思と高い評価が必須の要件となるのです。
 この調査研究を一つのキッカケとして、何とか業界で技術史
資料保存の気運を高めて頂きたいと願っています。

 第2は成形品サンプルの収集です。この調査研究を待つまで
もなく、塩ビ製品が広くわが国の経済社会、産業社会の発展に、
ひいては我々の生活の向上にきわめて大きな貢献をしているこ
とは明らかです。このことは、業界としてもっと積極的に社会
にPRしても良いのではないでしょうか。そのために、主要な、
あるいはユニークな塩ビ製品を収集し、それがどのように社会
に貢献しているかを示すデータや解説を付して展示することを
考えてはいかがでしょうか。
 こうした企画に今回の調査研究の成果を利用して頂ければ大
変幸せです。

 ところが、今回の調査研究で多くの会社にインタビューしま
したが、一部に「それが塩ビの製品であること」を積極的にP
Rすることをはばかる雰囲気が見られました。今日の「塩ビ忌
避」の風潮を考えると止むを得ないこととは思いますが大変残
念に思いました。
 手前みそではない正しい知識や情報は、長い目でみれば必ず
その製品を発展させる力になることを信じたいものです。「塩
ビ忌避」を克服する上でも、是非、優れた製品の収集と展示を
考えてみて下さい。

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☆お知らせ

 ■「塩ビ樹脂生産・出荷実績表」及び「塩ビモノマー生産・
   出荷実績表」をホームページにて掲載しています。
    https://www.vec.gr.jp/enbi/seisan.htm

 ■展示会出展

  1.2002NEW環境展(大阪)
     9月4日(水)〜7日(土)
      10:00〜17:00
     インテックス大阪 1号館(コマ番号1-11)
     (ニュートラム 中ふ頭駅 下車)

  2.「おもしろサイエンス IN ソラール2002」
     7月23日(火)〜8月25日(日)
      山口県防府市青少年科学館 ソラール

 ■シンポジウム

  『住環境フォーラム』
   「高齢化社会の住文化の創造に向けて」

  日時:平成14年8月27日(火)10:00〜12:20
  会場:UNハウス(国連大学ビル)3階
      ウ・タント国際会議場
      東京都渋谷区神宮前5-53-70
  主催:住環境フォーラム実行委員会
  後援:(財)建築環境・省エネルギー機構、国際連合大学、
     新建新聞社、(財)地球環境戦略研究機関(五十音順)
  協賛:板硝子協会、塩ビ工業・環境協会(五十音順)
  参加費:無料
  言語:日本語
  お問合先:住環境フォーラム実行委員会 事務局
   (三菱総合研究所 環境研究部内 担当:牧、又は小島)
      〒100-8141東京都千代田区大手町2−3−6
     Tel:03-3277-0446 Fax:03-3277-0512
     E-Mail: mailto:kkoji@mri.co.jp

  ●基調講演
   「高齢化社会の住文化を創造する—住環境の構造改革案—」
     坂本雄三 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授
  ●パネル・ディスカッション
    ・モデレーター:新井庄市郎 新建新聞社代表取締役社長
    ・地球環境の視点から(ビデオメッセージ)
       ラジェンドラ・パチャウリ
     気候変動に関する政府間パネル議長パネリスト(予定)

    パネリスト(予定):建築技術の視点から
              工務店の視点から
              環境NGOの視点から
              医学・健康の視点から
              海外の視点から
    まとめ:澤地孝男 (独)建築研究所環境研究グループ
             上席研究員

  ●レセプション(無料)12:20−13:40
    於:UNハウス(国連大学ビル)2階
       レセプション・ホール

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☆編集後記

  夏休み明け、久しぶりに特別寄稿を組みました。
 今回は国立科学博物館の宮本さんの登場です。玉稿
 を一挙掲載しました。宮本さん、どうもありがとう
 ございました。
  さて、前々号46号のパズルの答え:4桁の整数
 の4つの数を一回だけ加減乗除で組み合わせて0
 (ゼロ)ができないものは何種類あるか?

  答え:9種類
      1468、1579、3678、3789
      4568、4678、4689、5679
      5789

  ・・・・だと思いますが。(H2記)

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[塩ビと環境のメールマガジン]

 発   行  塩ビ工業・環境協会
 編集責任者  佐々木 修一

 塩ビ工業・環境協会     https://www.vec.gr.jp
 塩化ビニル環境対策協議会  http://www.pvc.or.jp