===「塩ビと環境のメールマガジン」 第51号 === 2002/9/12

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目 次

☆巻頭コラム
 「選ぶのは私達なんだから…」の社会を目指そう
   環境省「化学物質と環境円卓会議」第5回会合から

☆VECの三大責務は情報公開、リサイクル、環境
 への貢献である。
  「鳥取環境大学のシンポジウムで佐々木専務講演」

☆お知らせ

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☆巻頭コラム
 「選ぶのは私達なんだから…」の社会を目指そう
   環境省「化学物質と環境円卓会議」第5回会合から

 昨11日(木)、環境省主催の「化学物質と環境円卓会議」
の第5回会議が東京四谷で開かれ、聴講することができました。
 この会議は、化学物質の環境リスクについて国民的参加によ
る取り組みを促進することを目的として、市民、産業、行政の
代表による化学物質の環境リスクに関する情報の共有および相
互理解を促進する場として設置されたもので、昨年末から数え
て今回が第5回の会合になります。

 第5回ですから、出席の各委員も、お互い顔なじみになり、
気心もそれなりに知れ合ってきて、主義主張はともかく、フリ
ーな意見交換ができる雰囲気になっているようでした。
 今回の議題は、リスクコミュニケーションについて。前回ま
での議論を踏まえ今後この場で何を議論すべきかについて、委
員全員の意見集約をした結果決まったテーマだそうです。

 冒頭、この道の専門家である、横浜国大浦野紘平教授の話題
提供の後、意見交換に入り、リスクコミュニケーションの前提
となる情報の量的・質的不足の問題、企業の環境報告書の在り
方、具体的な地域住民との対話のやり方、リスクコミュニケー
ションをめぐる行政や市民の役割、など広い範囲の話題につい
て議論が弾みました。

 出席者各氏それぞれが大変貴重な発言をされましたが、とり
わけ興味深かったのは、(株)西友の大野さんのコメントでし
た。
 西友でも、企業倫理を守り、環境適合企業として発展すべく、
消費者の声に耳を傾けながら企業運営を進めているそうですが、
先般の日本ハムの事件の際、社会的に信用できない企業の製品
は販売しない、ということで、同業他社同様、日本ハム製品を
店頭から撤去したそうです。
 ところがかなり多くのお客から、「なぜ撤去したのですか?」
という批判を受けたのだそうです。「選択するのはあなた方企
業ではない。私達消費者だ」「選択の機会を与えるべきだ」
「買うのがいやな消費者は買わない、それだけの話ではないか」
というのだそうです。

 この話は大変意味深い話だと思います。確かに、率先して日
本ハム製品を店頭から撤去した西友に対する評価は、環境適合
企業として、高まるかもしれません。しかし、製品自体の品質
にかかわる問題ならばともかく、そうではない本件については、
本当に考えるべきなのは、顧客、消費者の選択の自由をより重
視することであったのかも知れません。まして、もしも店頭か
らの撤去というアクションが、「他社もやっているから、ウチ
だけ取り残されては困る」という、「横並び意識」からであっ
たとしたら、なにをかいわんやです。

 この話題は、会議の中でもいろいろな角度から取り上げられ
ました。真に環境適合企業というのはどういう企業なのか。消
費者の側でも、このような時にキチンと発言できる見識をもっ
と持つべきではないのか。企業の信用というのは、結局企業ト
ップのポリシーであり、そのポリシーを発信する態度に尽きる
のではないのか…。
 この会議自体は、結論を出す目的ではないようですので、意
見の一致には至りませんでしたが、「選択するのは消費者なん
だから、…」と胸を張っていえる、グリーンコンシューマー主
導の社会に向かうことが重要なのだなと、大変興味深く聞くこ
とができました。

 翻って私達塩ビ業界の周りでも、同じような状況が起こって
います。確たる考え方も、方針もなく、世間が、一部消費者が
嫌うから、という理由で塩ビ離れをする企業が、残念ながら跡
を絶ちません。そのことでその企業は本当に環境適合企業とい
えるのでしょうか。
 私達塩ビ業界がもっと世間や消費者に対して情報発信し、塩
ビについての理解を深めていただく努力をしなければならない
のは当然ですが、塩ビ離れを考える企業の側でも、世間や消費
者におもねることだけでなく、真に環境適合とはどういうこと
なのか、正確な情報に基づいて判断していただきたいものだ、
と、またまた思ってしまったひとときでした。

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☆VECの三大責務は情報公開、リサイクル、環境
 への貢献である。
 「鳥取環境大学のシンポジウムで佐々木専務講演」

 私たちVECが協力している、鳥取環境大学が主催する、「地球
に優しいリサイクル型社会を考える環境シンポジウム」が、9月7
日(土)に鳥取県米子市で開催されました。

 最初に、主催者を代表して岡崎誠鳥取環境大学教授と、後援者を
代表して森田隆朝米子市長のご挨拶がありました。中で森田市長は、
「リサイクル問題について米子市では重要な課題と考えており、自
治会の皆さん、リサイクル推進員やリサイクル協力員の方々などと
一緒になって取組んできた。先の鳥取県西部地震の時にも、塩ビ業
界のご協力を得て被害に遭われた家屋から出る塩ビの回収を進め、
成功裏にリサイクルすることができ、感謝している。これからもリ
サイクルには力を入れ、『明日の美しい米子市』を実現したい」と
述べられました。

 続いて、アジア太平洋エネルギーフォーラム代表で元日本経済新
聞論説委員の末次克彦氏が「新しい循環型社会がもたらすもの」と
題して基調講演されました。末次氏は、「地球温暖化を巡る問題を
考えるとき、いま人類を含む生態系を守っているシステムが予想以
上に脆弱なものであることを思い知らされる」とし、世界のエネル
ギー消費の状況や、クリーンエネルギーの将来展望、さらには排出
削減に対する市民としての心構えなどについて解説された後、「炭
酸ガス排出削減を実現できる社会に変革するために、蛮勇を奮わな
ければならない」と力説されました。また、地元に関する提題とし
て、「例えば、炭酸ガスを利用した宍道湖・中海再生プランを考え
てはどうか」と雄大な構想にも触れられました。

 休憩の後、「みんなで進めるリサイクルの和(環)」と題するパ
ネルディスカッションが行われました。岡崎鳥取環境大学教授の司
会で順次パネラーの方々が意見開陳し、議論しました。
 まず、近畿大学非常勤講師で消費生活アドバイザーの安本仁子さ
んが、地元米子市で消費生活相談員をされている経験を踏まえて話
され、「グリーンコンシューマー、環境に配慮した製品を使う、賢
い消費者になろう」と呼びかけられました。
 続いて同じく地元の境港市で市民グループ「ブルエコ」を立ち上
げている管幸恵さんが、古衣類の回収活動の体験から、悪戦苦闘の
末、リサイクルシステムが動き出した経緯を話され、「一人一人の
力は小さくても、努力すれば叶うことは沢山ある」と述べられまし
た。
 三番目に登板した、私たち塩ビ工業・環境協会の佐々木修一専務
理事は、行政部門や業・協会部門での経験から、「いまVECなど
プラスチック業界がやらねばならぬことは三つ、安心して使ってい
ただくための徹底的な情報公開、リサイクルの具体的推進、地球規
模での環境への貢献活動である」とし、開発途上国の衛生的な飲料
水確保に役立つ塩素・塩ビ、温暖化防止とともに豊かで健康な住ま
い実現に役立つ塩ビ製サッシ、建材や農業用資材、電線や家電など
あらゆる分野で始まっている塩ビリサイクルの実状などについて話
しました。
 日経エコロジー編集長の深尾典男さんは、環境ジャーナリストと
しての立場から、「日本は環境負荷の低減の点では世界で相当進ん
でいる」と話され、「しかし日本だけが循環型になってもあまり意
味はない。発展途上国へのトランスファーが大切だ」と主張されま
した。また、「環境によいものは高く売れ、高く買え、というのは
甘えではないか。品質の向上や新用途開発の努力が必須だ」と力説
されました。
 (有)三宝取締役社長の松尾裕子さんは、名古屋市で畳のリサイ
クルを実際に進めている立場から、「現実にはリサイクル品といえ
ども高品質低価格でないとビジネスにはならない。大企業よりも中
小の方が小回りも利くし、知恵も出る。行政サイドもその辺を踏ま
えて、現場に合った指導をすることが必要である」と述べられまし
た。

 これらの発言を踏まえて、会場からの意見も加え、熱心な意見交
換が続きましたが、最後に岡崎教授が、「リサイクルというのは答
えが一つではないことがお判りいただけたと思う。とにかく、人に
教わるのではなくて、人の話を聞いて自分自身で考えて結論を出す、
これが大切だ。私は話を聞いていて、今日からペットボトルを使い
捨てることは極力止めようと決心した」とまとめられました。

 午後2時半から、延々3時間に渡るシンポジウムでしたが、10
0人定員の会場に130人もの出席者で満員であり、しかし時間は
あっという間に過ぎて、充実した会合でした。このような、真剣に
環境問題やリサイクル問題を考える集会が、全国各地で頻繁に開か
れると良いな、と感じさせられました。私たちも出来るだけこのよ
うな集会には参加させて頂いて、私たちの考え方と塩ビに関する正
確な情報を市民の皆様にお知らせする努力を続けていく考えです。

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☆お知らせ

 ■展示会出展

  1.住宅リフォームフェア(大阪)
     9月20日(金)〜21日(土)
      10:00〜17:00
     インテックス大阪 5号館 ブースNO.B−10
      (ニュートラム 「中ふ頭」下車徒歩3分)

    この展示会はプラスチックサイディング懇話会にて
    出展しています。

  2.新潟 環境フェスティバル
    「エコビジネス展2002 IN 長岡」
     9月27日(金)〜28日(土)
      10:00〜17:00
     ハイブ長岡 大展示ホール

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☆編集後記

  妙な経験をしました。誰かこの謎について教え
 てください。
  家人が、料理用の小麦粉をプラスチックケース
 に入れて密封保存していたら、内部にコクゾウム
 シ(?)が発生して、小麦粉を食い荒らし、包装
 してあった紙袋にも穴を開けていたのだそうです。
 ところが不思議なことに、勢い余ってか、プラス
 チックのケースにも食い破った穴が沢山空いてた、
 というのです。
  コクゾウムシはプラスチック(多分ポリプロピ
 レン製)を食えるのか。もしも塩ビの容器だった
 らどうなるのか。ふしぎ、ふしぎ、(H2記)


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[塩ビと環境のメールマガジン]

 発   行  塩ビ工業・環境協会
 編集責任者  佐々木 修一

 塩ビ工業・環境協会     https://www.vec.gr.jp
 塩化ビニル環境対策協議会  http://www.pvc.or.jp