===「塩ビと環境のメールマガジン」第54号 === 2002/10/3

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目 次

☆巻頭コラム
 塩化水素とアクロレインどっちが怖い?
 「プラスチック燃焼時に発生するガスの知見から」

☆お知らせ

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☆巻頭コラム
 塩化水素とアクロレインどっちが怖い?
 「プラスチック燃焼時に発生するガスの知見から」

 最近は少し下火になった感がありますが、環境にやさし
い素材として、「燃やしても有毒ガスを出さない・・・」
というキャッチフレーズを見かけます。たいていは、従来
塩ビを使っていたものを、他の素材に変えます、というケ
ースが多くて、私たちはいつも切歯扼腕、とまで行かなく
ても、なんとなく暗い気持で広告を眺めていたものです。

 確かに、塩ビは燃やすと塩化水素を発生しますし、燃焼
条件が不適切であればご存知ダイオキシンも出します。し
かし、塩ビ以外の素材にしても、不適切な燃焼条件下では、
多種多様な化合物を発生させる、その中には有毒物もある
し、発ガン物質だってある、ダイオキシンだって出る、大
した違いはないのではないか、と私たちは考えます。

 つい先日、消防研究所の方の講演を聞く機会がありまし
た。火災時の有毒ガスの発生とその毒性についての講演で
す。その中で講演者は、各種高分子材料からの燃焼生成物
について、実験データに基づく話をされましたが、その内
容によると、塩ビのみならず、そこで取り上げられた高分
子材料の殆んどが程度の差はあれ、多種類の有毒化学物質
を発生させているということでした。

 その実験データによると、塩ビは220mg/gの塩化水素
と、7mg/gの一酸化炭素、11mg/gのベンゼン、その他を
出していました。一方、しばしば「燃やしても有毒ガスを
出さない」という接頭語で語られるポリエチレンは、同じ
データの中で、120mg/gの一酸化炭素、10mg/gのアセ
トアルデヒド、8.4mg/gのアクロレインなどを発生させ
ていました。

 このデータによると、塩ビは燃えると多量の塩化水素を
発生させ、人体への影響があるが、一方、ポリエチレンに
ついても、火災時の死因の大きな部分を占めている一酸化
炭素の発生量は塩ビよりも一桁多いこと、さらにポリエチ
レンの場合は、猛毒といわれているアクロレインを発生さ
せることが判ります。

 塩化水素の許容濃度はものの本によると5ppmですが、
アクロレインの許容濃度は0.1ppmで塩化水素の50倍
の危険度です。先のデータから換算すると、塩ビから出る
塩化水素とポリエチレンから出るアクロレインは、この許
容濃度で比較する限り、ほぼ同様の危険度があります。さ
らに、ポリエチレンから出る一酸化炭素の影響を考えると、
塩ビとポリエチレンと、燃やした時にどちらがより安全か、
そう簡単には決められないのではないでしょうか。

 環境・健康問題を考える時、単視眼的な発想は禁物で、
いろいろな要素を充分、総合的に考慮し判断しないといけ
ない、ということの実例ではないかと考えた次第です。

 ポリエチレンは、その特長を生かして、社会に広く役立
っている、貴重なプラスチックの一種であることは言うま
でもありません。この記事は、ポリエチレンの価値そのも
のを云々しているのではなく、環境や健康に対するものの
考え方を議論しているのです。くれぐれも誤解なきよう、
お願いします。

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☆お知らせ

 ■PVCニュース42号が発行されました。
  ホームページにも掲載しています。
    http://www.pvc.or.jp/pvc/index42.html

 ■セミナー

   日 時 10月11日(金)9:00−12:00
   場 所 沖縄コンベンションセンター特別会議室
   テーマ プラスチック建材と建築
       −プラスチック建材の現状と将来について−
   講 師 9:00−10:30
       「環境建築と開口部−光と風の建築」
         東京大学大学院工学系研究科建築学専攻
           坂 本 雄 三 教授
       10:30−11:15
       「米国のサイディング事情」
         (株)トクヤマ RC・環境経営室主席
           石 田 博 氏
       11:15−12:00
       「建材リサイクルの現状と課題」
         鐘淵化学工業(株)環境安全部総括担当部長
           阪内 孚史 氏

 ■展示会出展予定

  「ぐんま環境フェスティバル」
    10月27日(日)
     群馬県庁 県民広場

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☆編集後記

  今週は諸般の事情により、レポートは一つでお終い。
 たまにはラクしなくっちゃ。
  ラクで思い出しましたが、先週の編集後記でロハと
 書いたら、事務所の若者が、ロハってなんですか?と。
  なに!ロハって判らんか?と吃驚しましたが、事務
 所内総合調査をしたところ、どうも50歳前の人には
 判らなくなっているらしい。言葉は世につれ人につれ、
 なのでしょうが、改めて、時代の移り変わりの速さを
 しみじみ実感しました。(H2記)


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[塩ビと環境のメールマガジン]

 発   行  塩ビ工業・環境協会
 編集責任者  佐々木 修一

 塩ビ工業・環境協会     https://www.vec.gr.jp
 塩化ビニル環境対策協議会  http://www.pvc.or.jp