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2008年10月22日
日本経済新聞2008年10月21日(夕刊)
「家電大手、塩ビを削減」記事について

 日本経済新聞に上記の記事が掲載されましたが、記事内容が誤解を生じる内容となっております。特に、誤った理解により、塩ビとダイオキシン発生を結びつけて問題視させるような記事となっております。事実関係は以下の通りです。弊協会として、日本経済新聞社に抗議を申し入れておりますが、本件についての照会等ございましたら、弊協会まで連絡いただければご説明させていただきますのでよろしく御願いいたします。環境素材としてすぐれた性能をもつ塩ビ製品について正しい理解をいただき、その利点を生かしてご使用いただければ幸いです。

(1)ダイオキシンの発生について

 上記の記事において、「塩ビそのものは無害だが、低温で焼却するなどの不適切な処理で、有害物質とされるダイオキシンを大量に発生する可能性がある」と述べていますが、この事実認識は間違っています。実際には、塩素を含んだものであろうがなかろうが、あらゆるものを焼却する際、低温で焼却するなどの不適切な処理をすればダイオキシンを発生する可能性があります。また、ダイオキシンの発生量は、焼却するものに含まれる塩素の濃度にはほとんど影響されません。
 そもそも不適切な燃焼処理においてでも発生するダイオキシンの量は、焼却するものに比べて極めて微量です。焼却処理される一般廃棄物などの中には、発生する可能性のあるダイオキシンに含まれる塩素の量を遙かに上回る塩素が含まれています。また、その燃焼に使われる空気中にも相当量の塩素が含まれています。このため、焼却物質中の塩素量を変えてダイオキシンの生成量を調べる実験が行なわれておりますが、焼却物質中の塩素量とダイオキシンの生成量にほとんど相関が見られません。
 このため、塩ビ製品をいかなる製品で代替しても、同じ焼却条件下ではダイオキシンの発生を抑えることはできないと考えられます。他方、適切な焼却を行なうことによりダイオキシンの発生量は劇的に削減することができます。実際、焼却炉からのダイオキシン発生量は1997年のピークに比べて2006年には30分の1以下となっており、空気中のダイオキシン濃度も基準値の1/10以下となっております。(1997年時点での焼却施設からのダイオキシン発生量を元に計算しても、焼却した一般廃棄物中には発生したダイオキシン中に含まれる塩素の1000万倍〜一億倍程度の塩素が含まれていたと考えられます。また、その焼却に使われた空気中にも数百倍程度の塩素が含まれていた可能性があります)。
 実は、かつてダイオキシン発生の懸念から、1999年にすべての塩ビ製品はエコマークの対象から外れましたが、上記のような理解が進んだため、2005年に復活し、以降現在までに12品目がエコマーク対象となっています。

(2)塩ビ特有の柔軟性や耐久性を確保するための添加物について

 上記の記事のおいては、塩ビ特有の柔軟性や耐久性を確保するために添加する化学物質も多品種にわたるため、すべての化学物質の把握や管理作業が他の樹脂にくらべて煩雑とされると述べています。確かに、塩ビには可塑剤や安定剤など様々な化学物質が添加されて使用されることがあります。しかし、それらについて安全性データはよく整っており、多用される物質については詳細なリスク評価も行なわれております。結果として、安全に使用する管理手法が確立されております。

(3)塩ビの有用性について

 上記の記事においては、塩ビのもつすぐれた特性についての言及がありません。塩ビは様々な利点を持ちますが、中でも耐久性にすぐれ、また、自己消火性があります。省石油型の樹脂であり、リサイクル性能も優れています。成形性、着色性、風合いなどにもすぐれた特長を有します。
 家電製品ではしばしば発火事故が報告されますが、塩ビはそのリスクを防ぐことに貢献します。また、省資源でCO2削減においてもすぐれた性質をもっています。このような性能は、代替品ではなかなか実現が難しいのが現実です。

(4)終わりに

 このように、上記の日本経済新聞社の記事は、科学的に誤った認識にもとづいた記事となっています。本来環境性能に優れた塩ビ製品を不当に問題視する内容となっており、誠に遺憾です。皆様方には、塩ビ製品について正しい理解をいただき、その利点を活かしてお使いいただければと思う次第です。

塩ビ工業・環境協会
東京都中央区新川1−4−1
電話03−3297−5601
https://www.vec.gr.jp/



注) 当初掲載(10月22日)の原稿に一部誤記がありましたので修正を加えました。
お詫び申しあげます。