TOPICS
2008年11月11日
塩ビ可塑剤に関する最近の動向について
塩ビ工業・環境協会
可塑剤工業会
日本ビニル工業会

1.REACHにおける動向

(1) 概要

6月30日に、高懸念化学物質(SVHC)1)候補としてDEHP他塩ビ可塑剤として使われる2物質が提案された2)。その後、10月28日に、これらの物質を含む15物質がSVHCとなった3)
いずれも既に玩具、育児製品での使用が規制されているが、他の用途での使用は認められている。
SVHCは認可対象物質となる可能性があるが、ECはこれらの物質について詳細リスク評価を終えており、現行の規制を超える規制は必要ないと結論している。SVHC候補とするスウェーデンの提案書でも、現行の規制を超える規制は必要ないとしている。このため、現行の使用制限が維持されると予想される。
SVHCとなったため、0.1%を超えてDEHPを含有する製品については、その欧州内の供給者には川下へ情報提供義務が課される4)。欧州内の供給者から情報を求められた場合、可塑剤工業会WEBにおいて提供されている英文MSDS5)で対応可能。

(2) SVHCを含む製品(成型品、調剤(コンパウンド))に求められる対応

(SVHC対象物質を含む(意図128的放出がない)成型品の扱い(一般則))

SVHC指定された化学物質が、0.1重量%超で、年間1トン以上となる場合は、当該物質を含む成型品の欧州内の生産者あるいは輸入者は、欧州化学品庁に届出する必要がある6)。ただし、当該物質が、当該用途で誰かにより登録されていれば届出の必要はない7)
欧州内の成型品の供給者は、それを安全に使用するための情報(最低限物質名)を川下ユーザに提供8)
欧州内の成型品の供給者は、消費者からの要請があれば安全に使用するための情報(最低限物質名)を45日以内に提供9)

(コンパウンドに求められる対応)

構成化学物質の登録が必要(構成物質毎に年間1トン以上となるものが対象)
PVC樹脂の登録は不要だがサプライチェーンのVCMの登録が必要。

(3) 規制(Restriction)対象となっている化学物質10)に関する対応

制限されている用途には使用できないが、それ以外には使用可能。

(4) DEHPはどうなるのか?

(規制内容について)

DEHP(及びDBPとBBP)は、欧州で2005年に規制が導入されたことから、REACHにおいても規制対象となっている。規制内容は、おもちゃと育児用品へは、0.1重量%を超える使用は禁止されている。ECは、2010年1月16日までに新たな科学的な知見を基に再評価し、必要に応じて規制内容を変更することとなっている。
DEHPについては、最近までECが詳細なリスク評価を行なっており、2008年6月に終了している11)。現行の使用制限を超える制限は必要がないと判断しているため、再評価においても現行の使用制限が維持されるものと予想される。

(DEHPを含む成型品の義務に関して)

DEHPがSVHCとなったことで、欧州内の供給者は川下ユーザに情報提供をする義務が生じている。その者から情報を求められた場合、可塑剤業界が提供するMSDS5)で足るものと考えられる。
欧州の生産者又は輸入者は、DEHPを0.1重量%以上含む製品で、その生産者又は輸入者が扱う製品に含まれるDEHP総量が年間1トンを超える場合、 遅くとも2011年6月1日迄に欧州化学品庁に届けねばならない。但し、その時点までに、DEHPが、当該用途で誰かにより登録されていれば届出の必要はない。
消費者からの要請への対応は欧州で製品を供給する者に課される義務。基本的には物質名と供給者が知りうる範囲での安全な取り扱い情報。


注:
1) REACH第57条対象物質で認可対象物質の候補。
2) http://echa.europa.eu/doc/press/pr_08_18_pub_consultations_20080630.pdf
http://echa.europa.eu/consultations/authorisation/svhc/svhc_cons_en.asp
なお、塩ビ工業・環境協会と可塑剤工業会は、安全な使用法が確立されており追加的なリスク評価を求める必要がない以上、SVHCに指定する必要はないとの意見を提出している。
3) http://echa.europa.eu/doc/press/pr_08_38_candidate_list_20081028.pdf
4) REACH第33条1項。
5) 英文MSDS:http://www.kasozai.gr.jp/msds/msds01.html
6) REACH第7条2項
7) REACH第7条6項
8) REACH第33条1項
9) REACH第33条2項
10) REACH付属書XVIIに含まれる物質
11) http://ecb.jrc.it/documents/Existing-Chemicals/RISK_ASSESSMENT/REPORT/dehpreport042.pdf


2.米国の連邦レベルでの可塑剤規制

(1)概要

2008年8月14日、可塑剤6種類(DEHP、BBP、DBP、DINP、DIDP、DNOP)に対して連邦レベルの規制導入が決まった。施行日は2009年2月10日。
規制内容は欧州の規制とほぼ同等。DINP(及びDIDP、DNOP)への規制はDEHP(及びBBP、DBP)に対するものより限定的で、口に入れる可能性のあるものに限られている。
これまで複数の州で規制が導入されてきた12)が、各州の規制内容の違いによる混乱を避ける効果がある。

(2)規制内容

DEHP他2物質についてはおもちゃ(12歳以下)、育児用品(3歳以下)全般に使用規制(0.1%以下)。DINP他2物質は、子供の口に含まれる可能性のあるもの(おしゃぶり等)への使用規制でありより限定的。

(3)実態と対応について

日本の規制は欧米に比べて若干限定的ではあるが、日本国内で生産されている製品では、玩具、育児用品ではDEHPは事実上使用されておらず、一般的に欧米の規制並の対応が採られている。
仮に米国向けで12歳以下の子供が使用する可能性のある製品であってDEHPが使用されている部品等があっても、直接口に入れることが想定されていない用途であれば、DEHPをDINP等で代替することで対応が可能と考えられる。


注:
12) 例えば、2007年にカリフォルニア州、2008年にワシントン、ハワイ州で規制が導入されている。