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2009年04月09日
省エネ改修促進税制
−所得税控除は大きな福音−

 省エネ改修を促進するための政策措置が厚くなりました。昨年4月1日から、改修のために借り入れを行った際、断熱性能の改善度合いによりその残高の1%又は2%を所得税から控除する制度、及び、30万円を超える工事を行った際に、建物部分の固定資産税の翌年分を1/3減額する制度が導入されました(これらはH25年度まで延長されています)。これらに加えて、今年4月1日からは、省エネ改修工事費用の10%を所得税から控除する措置が加わりました。

 改修により、現行の省エネ基準(H11年基準)を満たすことが必要です。また、いずれも、対象となる工事には、居室の開口部(窓)の改修(断熱性能向上)が必須です。これは、開口部の断熱性能向上が、冷暖房エネルギー削減に大きく貢献するからです。

 コストパーフォーマンスの高い対策は、内窓の設置、或いは断熱性の高いガラスへの交換でしょう。使用するガラスの選択(単板、複層、LOW−Eガラス)の他、内窓を設置するために新たに額縁を取り付ける必要性の有無などで、工事費はかなり異なります。一度に多くの窓を改修できれば、一つの窓あたりの採寸、運搬、取付けにかかる経費は小さくなります。樹脂製の内窓設置であれば、単板のガラスを使用した場合でも、サッシ部の断熱性能改善と実質的なガラスの複層化が図られるため、東北地域南部及びそれより南であれば、要件となる省エネ基準を満たすことができると思います。北海道、及び、北東北地域の場合、既に窓が二重ガラスになっていれば、単板の内窓で省エネ基準値を満たすことができると考えられますが、現在の窓が単板のガラスの場合は、内窓に複層ガラスを入れる必要があるかもしれません。いずれの地域でも複層化すれば断熱効果はより高まりますが、費用対効果は地域の気候、冷暖房の使い方や家全体の断熱性能にも影響されるので、業者とよく相談されるとよいでしょう。

 このような事情ですので、ざっくりとした話しかできませんが、集合住宅の場合、居室の窓の数は4ないし5個程度でしょうから、単板ガラスを使用した内窓を設置しようとする場合、総工費は20万円台〜40万円程度ではないでしょうか。この程度の費用であれば、窓の改修だけでローンを組むことは希と思います。となると、新たに導入された所得税控除は大きな福音です。また、固定資産税の減税措置も併用することが可能です。

 仮に、工費で30万円かかったとしましょう。所得税の減免額は3万円ですが、さらに、建物部分の固定資産税減免措置が使えます。建物部分の固定資産税年額が14万円(建物評価額が1000万円の場合)であれば、4.7万円を別途に控除できます。合わせて、7.7万円の税額を控除することが可能となる訳です。
 さて、新たに導入された所得税減税については、

 (1)省エネ改修工事の費用の額、又は、
 (2)省エネ改修工事に係る標準的な工事費用相当額

のいずれか少ない方で、上限が200万円(太陽電池を付設した場合は300万円。減税額としては省エネ改修だけの場合、上限が20万円。太陽電池を付設した場合は上限が30万円)という条件があります。(2)については、3月31日に経済産業省・国土交通省の告示4号(租税特別措置法施行令の26条)で示されています。また、政府と関連業界等(国土交通省、(財)建築環境・省エネルギー機構、プラスチックサッシ工業会、(社)日本サッシ協会、板硝子協会)が協力して、改修の条件や税額控除申請手続きを分かりやすく示したパンフレットの作成に取り組んでおり、まもなく公開される予定です。

 ちなみに、固定資産税減免の場合は、(1)固定資産税減額申告書、(2)熱損失防止改修工事証明書、(3)住民票の写し、(4)見取り図が必須の書類です。(1)は施主が、(2)は建築士、指定確認検査機関、或いは登録住宅性能評価機関が作成します。いずれも紙一枚のものです。このほかに、工事内容、施工日、工事費を証明する書類を求められます。業者が作成した工事計画書と領収書で足りると思いますが、業者に、別途、紙一枚程度の適当なものを作成してもらうのも良いでしょう。

 所得税は国税、固定資産税は地方税ですので、申請はそれぞれ別途になります。固定資産税は、施工後3ヶ月以内に申請せねばなりません。施工業者は、このような制度を必ずしも熟知していないことがあります。手続きや提出書類については、施主が自ら最寄りの国税庁事務所、地方税事務所の担当部局に確認をしておくと良いでしょう。(了)