NO.074
発行年月日:2006/04/06

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トピックス
◇日韓協力して、塩ビに関する環境問題の解決と情報発信を
 韓国の塩ビ協会KOVEC発足

随想 
 「1人の高校教諭が始めた気象観測、80年」                   
東京農工大学大学院 技術経営研究科客員教授 瀬田重敏
お知らせ
編集後記

トピックス
◇日韓協力して、塩ビに関する環境問題の解決と情報発信を

韓国の塩ビ協会KOVEC発足

 世界の塩ビの生産量はどのぐらいか、ご存知ですか?
 つい先日公表された、経済産業省の資料によれば、2005年の世界の塩ビ樹脂の生産量は3,171万トンと推定されています。そのうち日本の生産量は215万トン、お隣の韓国は132万トンで日本の約6割程度の生産量ですが、日韓合わせると347万トンで、世界の約11%を占めることになります。

 この韓国でも最近、塩ビに対する社会からの風当たりが強まってきており、これへの対応が塩ビ業界としても急務になってきたようです。韓国で塩ビ樹脂を生産している大手企業はLG Chem社とHanwha社の2社ですが、以前から私たちはこの2社の関係者と、両国における塩ビと環境問題の状況や、それに対する塩ビ業界の対応について意見交換を続けてきました。

設立祝いの生花
掘比斗志委員長挨拶
設立総会風景
 そういった経験も踏まえて、このたび韓国の塩ビ業界は日本のVECと同じような業界団体を組織し、関係者一致団結して環境問題に対応する姿勢を打ち出しました。
 韓国塩ビ環境協会(Korea Vinyl Environmental Council−略称KOVEC)と名づけられたこの組織は、韓国Seoulに本拠を置き、樹脂メーカー2社及び加工メーカー20数社が会員となるもので、「環境問題の解決と塩ビに関する情報発信を行い、以って韓国塩ビ業界の発展を目指す」と言うのが設立の趣旨です。

 この協会の設立総会が、さる3月23日、Seoulのプラザホテルで開催され、私たちVECからも、VEC海外委員会の堀比斗志委員長(東ソー(株)構造改革本部参事)他が出席しました。堀さんはアジア各国の塩ビ関係者の組織である、有限責任中間法人Asia Pacific Vinyl Network(略称APVN)の副議長でもあり、設立総会に当たって祝辞を述べました。
 参列したのは会員各社の関係者を中心に、韓国技術標準院など行政部門のメンバーも含めて約100名、新聞やテレビなどマスコミ関係者も姿を見せていました。

 韓国と日本とは、隣同士と言う関係に加えて、塩ビに関してはともに社会からの「風評」被害にさらされているという共通点があります。そしてこれへの対応としては、塩ビに関する正確な情報を発信して、社会の皆様のご理解を得る活動と、たとえばリサイクルなど、現実の問題点については具体的な対策を立案推進する活動が基本であると考えられ、これまた共通点が多いのです。
 こういったことから、私たちは今回の設立総会時の意見交換を通じて、今後とも両組織の間で情報交換の場を持ち続けることを約束しました。

 幸か不幸か、ダイオキシン問題や環境ホルモン問題などで、日本の塩ビ業界は韓国に比べて一足先に、社会からの反発を経験しました。この経験を韓国の関係者に提供し、的確な対応を取ってもらうこと、それによって韓国での「いわれなき風評」が少しでも小さくなり、早く収まることが、私たちの願いでもあります。

随想

 「1人の高校教諭が始めた気象観測、80年」                   

東京農工大学大学院 技術経営研究科客員教授 瀬田重敏

 東京都武蔵野市吉祥寺、成蹊学園。その広大な敷地の一角、武蔵野の雑木林の中に、成蹊気象観測所がある。成蹊学園は私が中学、高校時代を過ごした学校である。
 2005年秋、私は「環境をはかる」というテーマで、ある大学で講演をした。その構想を練るに当り、私はまず、「ものをはかる」ということについてあらためて思いを広げてみた。その思考過程で、私は「はかる」ということが、科学の基本であり、生命、生活、社会活動、国家活動の基本、ひいては文明の基本となってきたことに、あらためて思い至る。そうした中で、私は凡そ50年前、高校1年のときに物理の先生の講義で聞いた話をふっと思い出したのだった。

 私が高校1年に進学した1953年、最初の物理の時間に加藤藤吉先生が我々の前に姿を現した。加藤先生の熱意溢れる講義のことは、私は先輩たちの話から聞いていた。その最初の講義で、加藤先生が新入高校生の私たちに話された中に「自分はこの30年、1日も欠かすことなく気象観測を続けており、その結果を東京管区気象台に報告している」という話があった。ただそれだけ、わずか1回の記憶が50年経ってまさにふっと蘇ったのである。
 当時で既に30年、私が高校を卒業して50年、観測はその後どうなったか、そして今どうなっているか、「はかる」を考える上でどうしても知りたいと思った。ときも折りある会合でお会いした現成蹊中学・高等学校の校長先生に、このことをお聞きしたところ、加藤先生はもう大分前に定年で去られたが、その観測は成蹊気象観測所として正式に引き継がれ、今も継続されている、この観測は気象観測だけでなく、最近は環境観測として重要さを認められ、「2004年地域環境保全功労者表彰」として環境大臣賞を受賞した、ということだった。これらのことは成蹊中学・高等学校のホームページに記載されている。

 私は、その観測を継承しておられる宮下敦先生をお訪ねして話をお聞きした。
 宮下先生によれば
1. 加藤先生の気象観測は、学生とともに昭和元年からスタートした。加藤先生はその2,3年前から準備し、やれると自信を持つに至って、正式に始められたという。
2.

観測は、気温(地上の高さ2点、定時、最高・最低)、気圧、地温、湿度、天候(雲量、降雨)、結氷、及び視程(学校の屋上から、正反対方向におよそ100キロづつ離れた富士山と筑波山が見えるかどうか)等から成る。

3.

測定結果は定期的且つ継続的に、関係機関に報告している。
(注)東京管区補助観測所としての報告は1976年で終了している。 

4.

加藤先生定年退職後、観測は成蹊気象観測所として継続しており、現在(宮下先生が)4代目である。

5. そして、昨年が観測開始後80年となる。
とのこと、具体的にその関連資料を見せていただきながら、80年という時間の重さに感じ入ったのだった。

 加藤先生はもう亡くなられたが、亡くなる前、死の病床に見舞いに訪れた後任の教諭の手をとり、涙を流しながら「君、あれを頼むよ、あれを頼むよ」と言って後を託されたという。歴代の先生方は、初代先生の意思を継ぎ、大雪のときなどは泊り込みで観測を継続した。そして今、「世界一小さい気象観測所」の誇りを以って継続し、現在に至っている。

 写真は、その歴史を物語る何十冊もの観測帳の中のいくつかである。
 1人の人間がひとつのことを開始して80年、その重さがひしひしと伝わる。
 なぜ、どのような思いで、加藤先生はこうした気象観測を始めたのか。残された書物や論文などから、宮下先生は次のように語る。
1) 「理化(理科)教育は自然を観察し、物事を正確に測ることから始まる」という教育観。
(注)加藤先生には、理化という言葉に強いこだわりがあったようだ。先生自身の書いたものでは「自然の現象をありの侭に観察し、測定し、又は之を記録して、それらの統計的考察から何等かの概念法則を帰納すること」という表現になっているという。
2)

大正デモクラシーの風潮。先生方の間で、教育への熱い思い、同僚との議論。官民の教育関係者間でもそうした熱い思いが交わされた中の活動であったようだ。

3)

加藤先生の遺された中にそうした流れを物語るいろいろな資料が残っている。


 宮下先生のお話を聞くと、気象観測というのは簡単なようで、実はなかなかに大変なもののようだ。毎日欠かさず、定刻に測定する。勿論替り合って測定するにせよ、測定には盆も正月もない。雨の日も雪の日も、きちんと出ていって間違いなく測定し、最高最低温度を記録した後再び計器をセットする。機器も故障があってはならない。まさに並大抵の辛抱でできることではなく、しかもそれが80年である。満を持して始められ、生涯を貫かれた加藤先生も立派だが、それを継承してこられた先生も偉大である。人に知られぬ苦労が多々あったことだろう。また、先生方の思いに触れて手伝ってきた歴代の学生たちもまことに立派なものである。彼らは、若い時代にこの80年の歴史の一翼を担った。1つのことを継続することの尊さ、彼らが得たものはどれほど大きいものだったか。話に聞く大正デモクラシー、その中で繰り広げられた本物の教育への熱い思い、私たちは知らぬうちにその一端に触れていたのである。

 「一行(ぎょう)50年」とは私の造語だが、1つのことを50年一心にやれば、誰でもそれなりにものになってくる。私が自分でも考え、学生たちに教えていることである。50年というと、今30歳の人が何かを始めて50年に至るときは80歳、もう今から始めても結構ぎりぎりなのだ。

お知らせ
勝ち組み工務店育成セミナー In宮崎のご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会では、下記のセミナーに参加し、樹脂サイディングの紹介を行うとともに、樹脂サイディングを使用した住宅の見学会も行う予定です。
    
・日 時 2006年4月21日(金)
13:00〜17:30 (受付開始 12:30)
・場 所 宮崎市民プラザ 4階大会議室(宮崎市役所隣り)
宮埼市橘通西1−1−2
・主 催 住まいづくり研究会
・後 援 (社)宮崎県建築士会【CPD制度認定講習】
・参加費 無料
・参加申込み締切り :  4月15日(土)
(定員100名になり次第、締切らせて頂きます。)
※参加希望の方は下記までお問合わせ下さい
住まいづくり研究会
電 話:092(871)2409

PVC Newsが3/14に発行されました。

 PVC News 56号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されました。
記事の一部をご紹介致します。

トップニュース(1)
塩ビを含む建設系混合廃プラのサーマルリサイクル確立へ
トップニュース(2)
塩ビ業界、新潟中越地震の塩ビ廃材リサイクルを全面支援
《《注目記事》》
視点・有識者に聞く
化学物質の安全性確保へ向けて
化学物質のベネフィットを考慮しつつ、リスク管理で健康被害を未然防止
環境省環境保健部 環境安全課長 上家和子氏
http://www.pvc.or.jp/news/56-03.html
リサイクルの現場から
使用済み塩ビ管・継手のリサイクルシステム、さらに拡充
塩ビ最前線
光触媒(酸化チタン)が可能にした、「テント革命」の驚き

 その他、塩ビに関する様々な情報をご紹介しています。

 ・PVC News最新号の詳細は、塩化ビニル環境対策協議会のHPよりご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/index/i_saisin.html
  購読を希望される方は、送付先などご連絡下さい。

 ・バックナンバーは、塩化ビニル環境対策協議会のHPよりご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/

編集後記
 まだ寒いなといっては飲み、暖かくなったといっては飲み、理由がなくなると理由がないからといっては飲む、これが酒飲みの極意だそうです(H2の創作ですが)。今日はそんな飲み会の話題から一つ。

 酒席のダベリの中で、飲み友達の一人が俳句の話を始めました。暇を見ては句作に励んでいる由。最近の自薦の句は?と聞くと曰く「退職後、何時の間にやら妻の部下」ってえのがお気に入りだそうです。
 うーん、なるほど。と居並ぶ全員、瞬間シーンとして・・・、そのあと俄然、座が盛り上がりました。「うーん、言えてる、言えてる」、「女は怖いからなあ」、「本音としては、"妻が部下"と言いたいところだけどねえ」、「"妻が馬鹿"てのはどうだい」、「ぶるぶる、禁句、禁句」と言った調子で、またまた酒が進んだものでした。

 さてその日、帰宅して家人にこの話をしたところ、家人、おもむろにニターと笑って曰く、「そうよ、そのとおりよあなた、あなたが退職したら、食事の後片付け、頼むわねー」と。

 ちょっぴり、背筋がさむーくなりましたぞ。
(H2記)
先週の編集後記についての読者からのお便り・・・[編集後記後]

WBCの盛り上がりのまま、オープン戦が始まりました。私は、毎年この時期に、その年に応援するチームを決める「風見鶏野球ファン」です。今年は、なんと言っても、プレイイングマネージャー古田率いるヤクルト。2番目に応援するのは、落合中日。3番目は、復活原監督の巨人。この3チームでAクラスなら、大満足。専らテレビで観戦なので、セリーグばかりです。・・・(楽天も頑張れ様)

先週の編集後記をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。
https://www.vec.gr.jp/mag/073/index.html#kouki

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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