NO.091
発行年月日:2006/08/10

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トピックス
◇塩ビ混合の建設系混合廃プラでも、サーマルリサイクルに技術的問題なし
VEC、関東建廃協、同和鉱業(株)の共同モデル事業で確認

随想 
考えることを考える(3):技術者の思考過程

某技術センター職員 遠藤勲

お知らせ
【NEW】エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06 開催報告
【NEW】これからの快適な住い作りセミナー・諏訪セミナー 参加報告
街と住まいづくり博 NAGANO 出展 & セミナー開催案内

編集後記

トピックス
◇塩ビ混合の建設系混合廃プラでも、サーマルリサイクルに技術的問題なし

VEC、関東建廃協、同和鉱業(株)の共同モデル事業で確認


 家を建てたり橋を架けたりする時に出てくる廃棄物、いわゆる建設廃棄物(建廃)の量は日本全国で約8,300万トンですが、うち約86%は再資源化され、最終的に埋立処分される量は約800万トンとなっています。この建廃のうち、アスファルトやコンクリートなどの再資源化率は95%以上ですが、木材や汚泥、混合廃棄物などは再資源化率が低い状態です。
 この混合廃棄物には、各種のプラスチックが混合されたもの、いわゆる建設系混合廃プラが含まれていますが、その再資源化は進んでおらず、多くが埋立に回されています。

 一方、塩ビ樹脂にとって建設分野は最大のマーケット。塩ビの国内需要の7割近くが土木建築分野で占められています。この分野で、塩ビを含む廃プラの再資源化が進まないのは、塩ビ業界にとって困ったことです。「マテリアルリサイクルの優等生」を自認する塩ビ業界としては、何とかこの分野での塩ビ混合廃プラの再資源化も進めたいのです。

 そこでVECは考えました。塩ビを含む建設系混合廃プラをサーマルリサイクル出来ないか。
 おりしも、自動車業界では、自動車リサイクル法に基づいて廃自動車の一部を粉砕してシュレッダーダストとし、これを全国各地の処理施設でサーマルリサイクルする動きが現実のものになってきていますし、容器包装リサイクル法でもサーマルリサイクルを再商品化の手法として位置づけることになりました。
 これらの流れを参考にしながら、塩ビを含む建設系混合廃プラがきちんとサーマルリサイクル処理できることを実証し、その事業を現実化させようではないか。

同和鉱業 岡山工場
集められた建設系混合廃プラ
 ということで、VECは3年ほど前から検討を始め、混合廃プラの成分や形態の調査、リサイクル手法の検討などを進めた結果、2年前から各地の処理施設で実証試験を行い、問題なくサーマルリサイクルできることを確認しました。そしてそれらを踏まえて2005年7月から、同和鉱業(株)および関東建設廃棄物協同組合(関東建廃協)と共同して、同社岡山工場の処理施設に毎月100トンのさまざまな建設系混合廃プラを輸送してサーマルリサイクルするモデル事業を展開し、既に延べ1,000トン近い処理実績を挙げるに至っています。

 その結果、多種多様な建設系混合廃プラでも、通常の運転条件下で、燃焼処理や排ガス等の処理に問題なく、安定的に連続処理できることが分かりました。エネルギー回収率約80%、廃棄物1トンあたり約2mの埋立量削減、自動車リサイクル法で定められた施設活用率という指標で評価すると0.53(基準は0.4以上)というのが得られたデータです。
 このことは、現在埋立処分に頼っている建設系混合廃プラのサーマルリサイクル処理の可能性に路を開くものであり、塩ビを含む廃プラの実用レベルでのサーマルリサイクル処理技術の確立に向けて大きく前進するものです。

 今後の大きな課題としてはさらなる経済性の追求(埋立処理に対するコスト競争力の強化)がありますが、VECとしては引き続き努力を続ける所存です。

 塩ビはマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルだけでなく、サーマルリサイクルも可能であり、その実現へ向けて私たちは努力を続けます。今後ともより一層のご理解とご支援をお願いします。

塩ビ製品を含む建設系混合廃プラスチックリサイクルのモデル事業実施について、2006年1月にプレスリリース致しました。こちらからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/press_release/20060111.htm

随想

考えることを考える(3):技術者の思考過程

某技術センター職員 遠藤勲


 前章を要約する。科学者の目標はある「真理」、ある「もの」を「発見」することである。技術者・工学研究者の目標はこれに対し、社会に役立つ「もの」を「作る、実現する」ことである。一言で言えば「発明」である。
 さて、技術者は「もの」をつくろうと考えたとき、「どのようなもの」を「どのように」つくるかを考える。そのために「目標」を明らかにし、かつ「最終製品のイメージ」を作ることが必要である。科学者の仮説設定と同じである。そのために科学者同様に主観的な観測、簡単な測定、記述を行う。この思考過程で「目標設定」の精度を高めながら、次は「どのような材料、部品を使い」、「どのように」組み立てるか、あるいは問題を解決するかを考える。言い換えれば製作の「段取り・手順」を考え、実験を行い、時には「模型」や「計算機」を使ってシミュレーションし、定量的、定性的な情報を収集する。そして「限られた時間と費用、場所や協力者」を考えに入れながらものつくりの「総合化」をおこなう。このような設計の基本思想をアーキテクチャーと呼ぶ。アーキテクチャーに基づき「ものつくりの指針」、後述する「設計」をおこなうわけである。

 藤本隆宏はいろいろな彼の著書のなかで、「アーキテクチャー」について次のように分類している。「アーキテクチャー」には「モジュラー型(組み合わせ型)」と「インテグラル型(擦り合わせ型)」とがあり、さらにそれぞれのタイプは「オープン型」と「クローズド型」に分けられる。
 「モジュラー型」とは、部品の品質が一定水準を超えていれば、何処の会社の部品を寄せ集め、組み立てても目的の機能を発揮できる製品、商品を作ることが出来る、そういった製作思想である。例えばラジオ、パソコンがこれに属する。一方「インテグラル型」とは、各種部品を擦り合わせながら最終的にある目的の機能、品質を満たす製品、商品を作る製作思想で、例えば自動車では、規格通りの部品が何百万もあって、それらが相互にうまく擦り合わされていないと自社ブランドにあった自動車と言う最終製品はできない。
 「オープン型」とは一社内の部品に限らずどこの会社が作った部品でも良い場合を、また「クローズド型」とは社内規格にあった部品、言い換えれば「系列会社」の部品でないと製品が作れない場合を言う。

 話を元に戻す。「設計」とは、冒頭に述べたように、人が頭の中であれこれ考えたイメージを現実の物の形にするための「情報を創り出す」ことであるとも言える。設計に従い素材はモデル、試作品となって現れ、その有用性、安全性、経済性、地域性(国情)などが検討され、工場の製品、さらには市場の商品となる。それであるから製品、商品は、企業情報の塊なのである。反対に設計によってアーキテクチャーが検討しなおされることは、しばしばある。それ故アーキテクチャーこそ科学者の仮説に対応すると言って良い。

 さて、設計する際あれこれ考えるといったが、正確に言えば設計の要件には、「機能設計」、「環境配慮設計」、「生産設計」、「意匠設計」などがあり、これらをいちいち説明することはここでは紙数に限りがあるので省略する。生産プロセスに力点をおいた「生産設計」だけではないことは、言うまでもない。その生産設計も詳しく見れば「製品設計」、「工程設計」、「レイアウト設計」、また「情報処理」などがある。
 このように「設計」の内容を議論すればきりがない。「設計」はものつくりの基本原則で、工学のエッセンスである。元石川島プラントエンジニアリング(株)の奥出達都摩は、製造業の実力は「設計力」に顕れると言っている。

 全ての観点から検討されクリアーされれば、組み立てのための材料・部品が調達され、「もの」は生産プロセスで製造され、製品となる。同時に特許や論文が用意され、製品(未だ商品ではない)の便益(加工性、信頼性、保全性、安全性など)が、またモラル、エシックスなどの面からもさらに厳しく検討される。このような様々な観点からのチェックを経て初めて工場内で製品は生まれ、最終的に製品は商品となって市場に出回ることになる。
 既に「総合化」と呼んだが、設計の段階から生産プロセスのあらゆる段階で、ものつくりの総合化が多くの人々の手や頭脳を介して行われる。その意味で「総合化」には製造企業の「組織力」が顕れる。遠藤功は「現場力」と言っている。

 言うまでもなく、現代では一人の技術者が発想から「ものつくり」、「商品」まで行うことは、伝統的工芸品を除けばほとんど無い。実に多くの人が生産・総合化の各段階で関与している。それでも「ものつくり」の思考、精神は、企業内で首尾一貫している。その意味で、現代の巨大科学、とくに大きな装置を駆使する、原子物理学、天体物理学、あるいは多くの科学者が共同して解明するゲノム解析、脳科学などの思考過程も同じで、「個人」というより、「集団」の思考過程と呼べないわけではない。

 話を技術者の思考過程に戻す。技術者は思考、創作の経験を積むことによって、技術者の知見が広がり、その様な知見は蓄積されて「勘」と呼ばれる直感力、洞察力、さらには審美眼が養われる。その上さらに「ものつくり」に対する認識(哲学)へと昇華される。名人、名工とは「ものつくり」に対する認識を深めた一人の技術者である。前段で指摘したように企業では、複雑な「ものつくり」の過程で多くの技術者が介入しているとはいうものの、それぞれの技術者が「ものつくり」にたいする哲学を深めるためには、仕事を通じて常に自らの五感を磨く他に道はないと筆者は思う。この意味で「伝統技術の伝承」とは、「ものつくりの考え方の伝承」と言えないわけではない。

 以上説明してきた技術者の思考過程を図2に示す。(続く)

前回の「考えることを考える」はこちらからご覧頂けます。
☆ 考えることを考える(2):科学者の思考過程

お知らせ
【NEW】 エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06 開催報告

 7/26(水)〜28(日)の3日間、東京電力(株)主催の『エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06』が東京ビッグサイト(西ホール1・2)にて開催されました。
 樹脂サッシ普及促進委員会と樹脂サイディング普及促進委員会は共同でこの催しに参加し、塩ビサッシ窓の性能が体験できる結露BOXや遮音BOX、実際に塩ビサッシの内窓・外窓を取付けたサンプル、塩ビサイディングで施工した家壁のサンプル等を展示しました。
 東京電力(株)主催なので、ほとんどがエコキュート・換気システム・床暖房等、省エネ電化機器の展示でした。東京電力ブースでの省エネ電化ショーをベースに、会場内では、IH・たこ焼き器等を用いての調理実演コーナーがあり、皆さん美味しそうに試食されていました。来場者数も3日間で21,500名と盛況でした。
 私たちブースへの来場者から、省エネ電化機器中心の展示会になぜ樹脂サッシの展示をしているのかとの質問があり、「いくら室内を省エネしても、家の開口部から逃げる熱損失を防がなければ、省エネの効果は半減。その対策として樹脂サッシ(外窓・内窓)で断熱性能を向上させ、家の断熱性能と室内の省エネがコラボしてこそ、住まいの省エネが始めて実現できる」と説明し納得して頂きました。又、既存のサッシの室内側に樹脂サッシを取り付ける、二重サッシの方法を知らない方が多いのに驚きました。今後、更に樹脂サッシの認知度を上げるべく普及促進に努めていきます。
(樹脂サッシ普及促進委員会 事務局長 浅田健二)

【NEW】 これからの快適な住い作りセミナー・諏訪セミナー 参加報告

 樹脂サイディング普及促進委員会、樹脂サッシ普及促進委員会では、去る7月28日(金)に諏訪市において行われた「これからの快適な住い作りセミナー・諏訪セミナー」に参加し「寒冷地に適する樹脂サイディング」「省エネルギーに貢献する樹脂サッシ」をテーマに樹脂サイディング、樹脂サッシの紹介を行いました。
 セミナーでは基調講演として、信州大学工学部の山下先生より「信州の快適な住いとは−限りなく無暖房住宅を目指しての研究速報」をテーマに現在取組まれている無暖房住宅の研究状況について、信州大学工学部の岩井先生より「近年の異常気象について−諏訪地方の気象を踏まえて」の講演に引き続き、中村建材コンサルタントより「寒冷地に適する樹脂サイディング」の講演、樹脂サッシ普及促進委員会の小川氏より「省エネルギーに貢献する樹脂サッシ」の講演が行われました。先日の大雨で甚大な災害が発生し多くの方が被災され大変な中、長野県、山梨県下より約50名の方の参加を頂きました。厚くお礼申し上げるとともに被災地の皆様に謹んでお見舞い申し上げます。

(樹脂サイディング普及促進委員会 事務局 長縄 肇志)


街と住まいづくり博 NAGANO 出展 & セミナー開催案内

下記の要領にて「街と住まいづくり博 NAGANO」が開催されます。

・日 時:2006年8月26日(土)〜27日(日)
      10:00〜17:00
・場 所:エムウェーブ 
       長野市北長池195番地
・主 催:新建新聞社
・入場料:無料

 樹脂サッシ普及促進委員会と樹脂サイディング普及促進委員会では、樹脂サッシ、樹脂サイディングの展示を行うと共に、特設会場にて以下のセミナーを開催致します。一般の方も是非、ご参加下さい。

勝ち組工務店育成セミナー in 街と住まいづくり博 NAGANO
   〜健康と省エネを考えた住まいづくり〜

・日 時:2006年8月27日(日)
      13:00〜16:00
・会 場:エムウェーブ 
     『街と住まいづくり博NAGANO』会場内の特設会場
・参加費:無料 定員70人
・セミナー内容:

  基調講演:『内緒の建楽会なのに集客が多いのは、なぜ?』
  講  師:(有)親和創建 取締役トータルアドバイザー 大滝典子氏

  セミナー:『サッシを選ぶと暮らしが変わる』
  講  師:(株)カネカ 宅資材部エクセルグループリーダー 青井郁夫氏

  セミナー:『長寿命・省資源・簡単メンテナンス〜樹脂サイディングの魅力』
  講  師:建材技術コンサルタント 中村扶氏

 ※参加ご希望の方は、メールにて、お名前・TEL・FAXをご連絡下さい。
  申込書をFAXにてお送り致します。( info@vec.gr.jp )
編集後記

 「涼しい」と書いたばかりだのに、東京は8月に入ってから「猛暑」になっています。おてんと様がH2の書きぶりに腹を立てた訳ではないでしょうが・・・。

 腹といえばここのところ、H2は胃と腸と立て続けに、いわゆる内視鏡検査をいう奴をやりました。腸の方は恒例でほぼ毎年やってるんですが、胃の方はこれまた毎年の健康診断でひっかかって「要再検査」になったのです。この検査、いやですねえ。前の日から絶食した上に腸検査では一度に大量の下剤入りの水を飲んで何回となくトイレに通って・・・。
 それでも検査が済んでホッとして、結果を聞いてまたまたホッとしました。いずれも、少し荒れてる所もあるが、たいしたことなし、悪性ブツも(今のところ)なし。
 もっともっとホッとしたのは、「お酒飲んでもいいですか?」と質問したらドクターに笑顔で「良いですよ」といわれた時。もっとも、「ただし、ほどほどにね」と追加コメントがありましたが。

 よーし、今夜はお祝いだァ! 

 嬉しいついでに、H2にとっては嬉しい「夏休み」のお知らせ。お盆のため、次週8月17日(木)のEKMMはお休みです。再来週24日(木)に、元気でお目にかかりましょう。(H2記)


先週の編集後記についての読者からのお便り・・・[編集後記後]

 H2氏も同じだと思いますが、私の子供の頃は学校から帰るとランドセルを放り投げて遊びに飛び出していました。町内の"悪ガキ集団"の中には、勉強の出来が悪い、けど統率力のあるガキ大将が一人か二人いました。彼らは人一倍責任感があり優しい心も持っていて、幼い者に気を配り、年少者は年かさの者のいいつけに従いました。みんな、そうやって社会性を身につけていったと思います。
 最近は経済格差、所得格差が言われますが、教育格差も大きくなっているように思います。一方は、定員割れの大学にあまり努力もせずに入学し、学力も生活力も身につけず卒業し、他方では、子供の頃から熱心に教育を施され、追いつめられて自宅に火を放って家族を死に追いやってしまうという悲劇も起こっています。教育のひずみは社会性を身につける機会がないままに育ってしまったところに原因のひとつがあるように思います。
 振り返って、東南アジアや中国の地方の子供たちは、みんな表情が生き生きとして、目が輝いています。貧しいので生きるのに一生懸命であり、社会の中に自分を必要としている人がおり、役割があります。そんな姿を見ていると幸せは経済的な豊かさとは違うところにあることを実感します。
 「のんびり、楽しく」が幸せだとは思いません。遊びの中でも、家族の中でも、社会の中でも、自分が必要とされていると感じられるかどうかが大切なのです。…(笛吹き童子様)


先週の編集後記をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。
https://www.vec.gr.jp/mag/090/index.html#kouki

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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