NO.122
発行年月日:2007/03/29

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トピックス
◇中国の食品容器で日本発のスタンダードが採用
−中国国家標準GB9685(食品容器・包装材用添加剤ポジティブリスト)
改正について−
塩ビ食品衛生協議会 常務理事 石動正和

随想
ネガティブ情報を評価しよう(連載3)
国際連合大学 上野 潔
お知らせ
【NEW】VEC HPを更新致しました。
【NEW】「化学物質の環境リスクに関する国際シンポジウム」がテレビ放映されます。
三菱地所、塩ビリサイクル景観材を採用。
NEDOの補助金事業が公募開始されました。
PVC Newsが3/19に発行されました。

編集後記

トピックス
◇中国の食品容器で日本発のスタンダードが採用
−中国国家標準GB9685(食品容器・包装材用添加剤ポジティブリスト)
改正について−
塩ビ食品衛生協議会 常務理事 石動正和

 2005年10月13日、上海系新聞に、PVCラップフィルムと含有される添加剤の安全性に関する非科学的な記事が掲載され、中国国内では大騒ぎとなりました。即ち、「PVCラップフィルムに含まれている塩素は有害である」、「PVCラップフィルムに含まれる可塑剤DEHAには内分泌かく乱作用がある」と書かれていました。言うまでもなく、PVCラップフィルムに遊離塩素が含まれることはありません。またDEHAについてはSPEED’98見直しの中で、内分泌かく乱作用がないことが明確にされています。さすがに騒ぎそのものは、3ケ月程度で収まったのですが、その間、全ての食品用器具・容器包装材に使用可能な添加剤リスト(ポジティブリスト(PL))の内容が、使用実態に比べ大きくずれていることが明るみに出ました。何しろ中国で現在制定されているPLには、65物質しかリストアップされていません。一方、市場で用いられている添加剤は1,000物質以上と推定されており、実態との乖離は誰の目にも明らかでした。

 中国政府は直ちに改正作業に取りかかり、先進国の実例に学ぼうとしました。2006年7月5日には当協議会が招かれ、PVC製品に係る自主規格(JHP規格)を紹介しました。中国政府は、日本に根付いた法と自主規格の協同について強い関心を持って聞いてくれたと思います。そして、その年の12月26日、中国政府はPLの改正案を示し、広く意見を求めました。物質の収載件数は格段に増加し958物質となりましたが、それでも日本にとって重要な添加剤が抜けているため、今後追加申請が必要になる問題点がありました。

 協議会は、ポリオレフィン等衛生協議会、塩化ビニリデン衛生協議会にも呼びかけ、本年2月9日、中国政府のリスクアセスメントの責任者Mr.Wang Zhutian中国衛生部疾病予防制御中心食品安全副所長らと面談しました。ここで中国側は、追加申請に対しつぎの手続きを示しました。即ち、追加申請においては、欧米の2つの規格と日本の自主規格(JHP規格等日本政府が認めたもの)を同格に位置づけ、これら3つの既存PLのうち2つに同時に収載された添加剤については、中国国内で現に使用され、かつ他の中国国内法と矛盾しない限り、優先的に(即ち安全性データの提出を待たず)登録すると言うのです。これは、JHP規格が、先進国範例を優先登録してきたことと同じ手続きです。

 既に韓国で取りまとめられたPVC系食品用器具・容器包装材のPL案については、JHP規格をベースにしていることから、今回、中国でも採用されたことは、アジア主要3ケ国間で、PVCについては高い互換性のPLが生まれることになります。日本の自主規格が、事実上アジアのスタンダードになろうとしている一例です。

随想
ネガティブ情報を評価しよう(連載3)
国際連合大学 上野 潔

 米国航空宇宙局NASAでは不具合報告(専門用語でMR制度と言いますが)の多い会社を信用しています。物を製造する以上は不具合が出るのは当たり前で、小さな不具合でも公開して是正措置がとられていることを重視しているのです。「不具合ゼロ」なんていう会社の製品は危なくて採用できないのです。

 多くの会社が毎年出している環境報告書に「当社は環境に関する事故、違法行為は1件もありませんでした」という会社と「企業の環境対応の度合いを表す1つは罰金と過料です。2002年当社の罰金は1件で840ドルを納めました。これは当社から遠く離れた海外で当社の社名が記された廃棄物と無害の事業廃棄物が発見されたことによるものです。過去5年間に当社は環境に関して12件の罰金を科せられておりその総額は14,796ドルとなっています。違法ではありませんが事故寸前の事件が3件あり対策を採りました。これは社内の告発により発見されたものです。」こんな環境報告書を読んであなたはどう思いますか?現実にこんな報告書を出す会社がアメリカにはあるのです。

 しかし、日本では「危ない会社」としてマスコミが報道し、多くの消費者はこの会社の製品を買い控えるのではないでしょうか。この会社の友人に聞いたら「当たり前でしょう。環境報告書はステークホルダーのために出しているのですから」との回答でした。こういう会社の製品なら安心して買えるでしょうし、安心して株式投資も出来るでしょう。「不良のない会社」は、「怪しい」と判断するのが科学的な態度です。残念ながら日本では大きな国家プロジェクトなどで失敗すると「血税!消える!責任の所在は!」などと報道され、トップが辞任して一件落着のスタイルが多いようです。

 「技術者倫理」という学問ジャンルがあります。放送大学の札野講師(金沢工大教授)の講義では、アメリカの「スペースシャトルチャレンジャー事故」(直接原因は低温時のOリングにあるが実際は巨大技術に対する時の人間の欠陥が致命的だったとされる)や「59階建てのシテイーコープビル事件」(横風の考慮を誤り強いハリケーンでビルが倒れることが分かり完成後に補強工事を実施)など多くの事例に対する技術者の対応が語られています。1940年の「タコマ橋の事故」(横風に誘発された自励振動による崩壊)については筆者も40年前に大学で学び、今でも鮮明に覚えています。

 大切なことは事故に対する技術者の対応が「倫理的」であれば評価され、再チャレンジが認められていることです。残念ながら日本のマスコミあるいは政治行政は「事故」に対して「トップの辞任」や「発注指名の停止」などの「厳しい対応?」しか知らないようです。本当につらく厳しい対応は「もう一回やってみろ。もちろん金は払う」と世間から言われたときだと思います。
 いや「技術者(経営者)が真相を隠蔽しようとするからだ」との意見と「世論やマスコミの反応を考えると怖くて公開できない」との意見があります。
 もちろん社会の成熟などという前にまず「公開すること」が結局は、信頼と顧客を獲得することにつながる事は自明です。これは環境情報についても同様だと思います。環境に関する沢山の忌避運動があります。フロン、炭酸ガス、塩ビ、鉛、水銀、臭素系難燃剤、ダイオキシン、環境ホルモン、そして原発、鯨・・・・、忌避運動が「糾弾」「責任追及」「信念」「そして忘却」に終わるのではなく、真実を科学的に追究し結果を訂正し尊重する姿勢が大切だと思います。ネガティブ情報がもっともっと評価される社会になることを強く願っています。

前回の「価格破壊と産業破壊(連載2)」は、下記からご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/117/index.html#zuisou

お知らせ
【NEW】VEC HPを更新致しました。

○3月16日付で、「プレスリリース」を更新しました。
 ・三菱地所、塩ビリサイクル景観材を採用

○3月22日付で、「塩ビの生産出荷データ」と「トピックス」を更新しました。
 ・2月度の塩ビの生産出荷データ
 ・トピックス
  1.塩ビサッシの導入が楽になります。
    −NEDO補助金事業、本年度の申込受付始まる−
  2.環境省の内窓増設工事始まる
  3.PVCニュースNo.60を発刊

TOPページのWhat's Newからご覧頂けます。
 日本語版: https://www.vec.gr.jp/
 英語版: https://www.vec.gr.jp/english/


【NEW】「化学物質の環境リスクに関する国際シンポジウム」がテレビ放映されます。

 メールマガジンNo.106でご紹介した、2006年11月12日〜14に環境省により開催された「化学物質の環境リスクに関する国際シンポジウム」が、以下のようにテレビ放映されます。

 3月31日(土)NHK教育 23:30〜24:40
 土曜フォーラム「化学物質とどうつきあっていくか
          〜リスクとメリットから考える〜」

メールマガジンNo.106はこちらからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/106/index.html#topics

三菱地所、塩ビリサイクル景観材を採用。

 東京大手町のオフィス地区広場に、リサイクル塩ビ製ベンチ(企画・販売(有)三宝)が、4台設置されました。
このベンチは、パイプなどの廃棄物を原料にした環境配慮型製品です。
内1台は太陽電池を利用した夜間用フットライトも備えています。

・日 時: 2007年3月20日(火)〜
・場 所: 東京都千代田区大手町2丁目6番
新日本製鐵、朝日ビルの間の公開広場

東京大手町のオフィス地区広場に設置した“リサイクル塩ビ製ベンチ”

塩ビリサイクルベンチ関連の記事は以下からご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/press_release/20070316.htm

NEDOの補助金事業が公募開始されました。

 住宅・建築物高効率エネルギーシステムの公募により、NEDO技術開発機構が指定する当該システムを住宅に導入する場合に、その費用の1/3が補助されます。

 様々な補助要件がありますが、樹脂サッシ普及促進委員会がお勧めする要件は『断熱リフォーム』です。
 既設住宅のリフォームで『塩ビサッシ+複層ガラス』の内窓を採用する事により、上記の費用補助の対象となるものです。

  公募期間:2007年3月13日〜4月26日
        (二次公募 : 7月上旬〜下旬を予定)

 詳細は、NEDO:独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構のホームページをご覧ください。
http://www.nedo.go.jp/informations/koubo/190313_1/190313_1.html

PVC Newsが3/19に発行されました。

 PVC News 60号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されました。
創刊15年、発刊60号の記念号です。目次をご紹介致します。

■ごあいさつ

創刊15年、60号発刊を迎えて
     JPEC事務局長/VEC専務理事 西出徹雄

■特別寄稿

PVCニュース発刊60号を記念して
     内閣府原子力委員会委員(前富士常葉大学教授)
     NPO法人「持続可能な元気ネット」顧問  松田美夜子

■トップニュース1
塩ビ被覆電線を官庁施設向けの建設資材として再評価
■トップニュース2
塩ビを含む建設系混合廃プラの有効利用へ新たな道
■視点・有識者に聞く

ソフトパワー強化で産廃業界の新時代を拓く
     (株)ハチオウ代表取締役社長/環境カウンセラー  森裕子氏

■リサイクルの現場から

加速する、セメント産業の廃プラリサイクル

■インフォメーション1
環境ホルモン問題とは何だったのか?
■インフォメーション2
米科学誌が可塑剤工業会の研究結果を掲載
■海外事例紹介
連携進む、VECと海外塩ビ業界
■広報だより

・塩ビ業界のありのままを伝える『データで見る塩ビ』発刊
・第4回「住まいと環境・エネルギーセミナー」開催
・「ENEX2007」に共同出展(JMADO&プラスチックサッシ工業会)

以上、新たな視点に立った塩ビに関する情報を、ご紹介致します。

記事内容は、こちらからご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/index/i_saisin.html

PVC Newsバックナンバーは、塩化ビニル環境対策協議会のHPよりご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/

購読を希望される方は、送付先などをご連絡下さい。

編集後記
 桜の便りがきかれ始めた矢先の日曜日、突然の能登地震に遭われた被災者の方々にお見舞い申し上げますと共に、一日もはやい被災地の復興を心から念じております。
 さて、今週のメルマガは期せずして”ポジティブリスト”と”ネガティブ情報”の取り合わせでした。
 JHP規格など日本の自主規格が欧米の規格と同格の扱いでアジア主要国の自主規格のスタンダードになりつつあるとのこと。これまで地道に取組んでこられた関係者の努力の賜物であり、本当に頭のさがる思いです。上野氏の”ネガティブ情報を評価しよう”の随想。「謝罪」「辞任」・・で一件落着の遠山の金さん的解決。何でもレッテルを貼って真実の追究を二の次にしてしまう風潮がこの日本の社会にはメディアを含めてあり、それがネガティブ情報の発信を妨げているのかもしれません。ネガティブ情報が評価される成熟した社会の到来までにはまだまだ長い道のりがあり、やるべき事は多そうです。(yy)

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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◆編集責任者 事務局長  東 幸次

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