NO.155
発行年月日:2007/11/29

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トピックス
◇VEC活動「環境教育」のご紹介

随想

国民が決めた?マスコミは決めた?(連載11)

国際連合大学 上野 潔

お知らせ
エコプロダクツ 2007 出展案内

編集後記

トピックス
◇VEC活動「環境教育」のご紹介

 『小中学生の約70%が、環境問題について授業で習った事がある』そうです。この調査結果は、バンダイネットワークスとネットマイルが共同でインターネットを通じてアンケートを実施し、そこで得られた696人の有効回答を集計したものです。サステイナブル社会に向けて、一人ひとりが環境に配慮した新しい価値観を持つ必要があると言われている今日、環境教育は更に推進されて行くでしょう。そこで今回は、VECが行なっている「環境教育」の一部、『教材提供』と『講演会』についてご紹介します。

 『教材提供』としては、VEC・JPECで発行した、塩ビに関する副読本「環境最前線」と生徒用「ワークノート」を全国の学校に配布し、授業で使っていただいています。この活動は2005年の夏から始めており、配布状況は以下の通りです。
2005年 中学・高校対象 約17,000校
2006年 中学・高校対象 約6,000校
2007年 中学校対象 約6,000校
 先生方の反応は、「塩ビ製品や環境問題について、幅広く勉強になった 」、「理解しやすい表現で最新の内容が伝えられており、参考になった。」など、概ね良好で、実際に授業で使っていただく割合も年々増加しています。
 今年は、同時に出張講座の案内を行い希望を募ったところ、上々の反応があり、9月から実際に6校実施しました。今後の開催が決定したり、実施の具体化が進んでいる学校もあります。来年は、『教材提供』の対象を小学5・6年生へ広げることも考えており、どのように行うか検討しているところです。

 『講演会』に関しては、以前から全国各地の大学で、環境問題を中心にしたセミナーの開催や協力を行っていましたが、2年前から理科系教師と中高校生にも対象を広げています。
 2005年8月に実施された、東京都教職員研修において化学業界として「学校で実践する環境教育」関連の講演を行いました。そこに出席していた、東京学芸大学附属高校の教諭からの要請で、化学担当の高校教師に環境セミナーを開催し、さらに生徒を対象に「塩ビをめぐる環境問題」について講義をする機会を得たのです。その講義後に行ったアンケートでは、塩ビに対するイメージが「かなり良くなった」、「一変した」と回答した生徒が95%にも達し、このような『講演会』の有用性を改めて認識しました。その後も同校や東京都立駒場高校で、中高の理科系の先生方や生徒を対象に定期的に講義を続けています。
 これらの経験が、上述した「環境最前線」配布時の出張講座案内へとつながって行きました。

 ある高校で実験的要素を取り入れた授業を行ったところ、生徒達の興味を引く事ができました。授業後の感想により、プラスチックは燃えないと思っていたり、ビニールとプラスチックは違うものだと認識していた生徒が、大勢いる事を知りました。生徒達は、燃え上がるプラスチックを見て素直に驚き、プラスチックやビニールに対する理解を深めつつ、地球温暖化や環境を大切にすることの重要性を認識して行っているようです。
 また、エコプロダクツ2007(12月13日(木)〜15日(土)ビッグサイトにて開催)に出展し、「もっと知ろう!塩ビと地球環境」をテーマとして、塩ビが地球に優しいプラスチックであることを、製品展示や解説パネルを通じて小学校高学年〜高校生にもわかり易いようにご紹介致します。
 実際に生徒や学生達に接する事によって、私たち自身もいろいろな事を学びながら、「環境教育」として、広く塩ビに関する情報を伝えて行きたいと考えている次第です。(了)

随想
国民が決めた?マスコミは決めた?(連載11)
国際連合大学 上野 潔

 数年前のウイーン国際空港で東京行きの帰り便を待っていたときのことです。数十人の迷彩服を着た軍人の集団が入ってきました。楽しそうに三々五々談笑をしています。左袖のマークでノルウエー軍と判ります。気さくそうな士官に「何処へ行くのか?」と聞いたら「コソボ、国連の要請」との答えでした。いろいろ雑談をした後「ところでなぜノルウエーはEUに入らないのだ?」と質問しました。長々と利害得失の説明が来ると思ったら「国民が決めた;People decided」と超簡単な答えが返ってきたのです。ノルウエーは、1994年にEU加盟の是非を国民投票にかけ47.8%対52.1%の僅差でEU非加盟を決定しているのです。
 そのときの彼の回答は実に短く新鮮でした。もちろん公務で移動中の軍人である彼はそのようにしか答えられなかったのかもしれませんが、同じような質問に日本人ならなんと答えたでしょうか?もっともEU加盟のような国運を左右する重要事項を国民投票にかける制度が日本には存在しませんが。

 ずいぶん話題が飛躍しますが、環境に関する規制が世界には沢山あります。とりわけ欧州の環境規制は影響が大きく事実上の世界標準になっています。経済活動のほうが先行してグローバル化していますから当然かもしれません。
 さて機会があったら「RoHS規制は誰が決めたの?」「なぜ6物質なの?」と欧州の「普通の人」に質問してみたいと思います。ドイツ人なら、「国民が決めたのです」と答えるだろうか?ノルウエー人は「EUに加盟していないので知りません」と答えるだろうか?日本の役人なら「それはEUが決めたことで日本の規制ではありません」日本の製造業の人なら「経緯は知りませんが、ビジネスのため良く知っています」だと思います。塩ビ関連の皆さんはなんと答えますか?
 近所の非民主国家ならなんでも「将軍様が決めた」「党中央が決めた」と答えればよいから気楽ですが、日本人の場合は環境関連の規制は誰が決めたと答えればよいのでしょうか。日本は議院内閣制ですから「国民が選んだ国会議員が国会で審議して決めたのです」となります。

 しかし本当は「マスコミが決めた」あるいは「役所が決めた」という、とんでもない答えが返ってくるような気がするのです。環境のように幅広く専門的な事項については、国会議員よりも役人のほうがはるかに専門家ですから、(国会議員の中には環境が専門だという人もいますが)法律を運用する政省令など細かな規制の作成は役人しかできません。政省令を決める前に「パブリックコメント」の制度があり、国民は意見を言うことができます。しかし役人は国民が選んだわけではありませんから、政省令は「国民が決めた」とは言えないでしょう。
 国民が得る環境情報はマスコミを通じて得られるものが大半です。普通の国民は「環境白書」や、まして「国会議事録」なんて読まないと思います。「VECメルマガ」から情報を得る人はよほど環境に関心が深い高度の専門家でしょう。やはり「新聞、テレビ」から大半の情報を得ているのです。役所は国民よりははるかに専門的な機関や海外駐在官から環境に関する情報を得ていると思いますが、やはりマスコミは無視できません。環境関連の委員会や審議会でもマスコミ情報がソースになっている委員が多いように見受けます。

 ノルウエーの国民投票のときもおそらく多くのマスコミが賛否の情報を沢山流したのだと思います。ノルウエーも日本も、民主国家ですから報道の自由は保障されています。同時に「思い込み」「信念」に基づく「偏ったマスコミ情報」も氾濫していたことでしょう。活字にされた丁寧な解説記事や、お笑いタレントのテレビでの発言はあたかも「真実」のようです。野原にたった一台廃棄された冷蔵庫の写真を見れば、日本中の不法投棄が激増したような印象を与えます。ダイオキシンもサリンも区別無く「猛毒」として報道します。マスコミを批判する週刊誌もありますが全国紙やテレビの報道はほとんどの人が信用します。誤報や捏造記事の訂正は忘れた頃に小さく片隅に掲載されるだけで正に人のうわさもマスコミ誤報も75日です。海外からの環境報道は記者自ら取材したものではなく、引用や伝聞が多いのも特徴です。

 しかしマスコミ報道が無ければ、環境に関する情報はほとんど国民には入らなくなります。どうすればよい判断ができるのでしょうか?一番よい方法は「原典を見る」ことでしょうが原典も刻々と変わりますからよほどの専門家で無いと不可能です。環境に限らないかもしれませんが「複数情報の見比べ」しかないように思います。新聞1誌だけ、テレビ1局だけの情報は危険です。家庭で複数の新聞を取ることは困難ですが、勤務先や大学、図書館、そしてインターネットなら複数の情報入手が可能です。役所のHPは抑制的でマスコミよりは遅れますが必ず情報源に加えるべきです。環境に関する規制は科学的な未来予測と政策的な国家戦略が絡みます。純粋な専門知識に加えて高度な政治判断も必要です。「答えがすぐ出る」課題ではないだけに、「マスコミが決めた」と言われないよう、一人一人が複数の情報を比較検討し科学的な判断ができることが望まれます。「国民が決めた」といえるような理念的な環境政策を日本から世界に発信したいものです。そして最後にもうひとつ「役所が決めた」といわれないために「審議会の傍聴」「議事録の精読」そして「パブリックコメントの発信」など多くの権利を有効に使いたいものです。(了)

前回の「信念がある分野は科学にならない(連載10)」は、下記からご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/151/index.html#zuisou

上野潔様の連載のバックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

お知らせ

エコプロダクツ 2007 出展案内

 『ダイエットCO2』を掲げる、「エコプロダクツ2007」が下記の要領にて開催されます。
 塩ビ工業・環境協会と塩化ビニル環境対策協議会は、『もっと知ろう!塩ビと地球環境』をテーマとして2年ぶりに出展し、塩ビが地球に優しいプラスチックであることを、製品展示、解説パネル、ステージ・デモでご紹介します。

・日 時: 2007年12月13日(木)〜15日(土)
10:00〜17:00
  ・場 所: 東京ビッグサイト(東展示場)
(VECブース:東3ホールNo.3035)
・主 催: (社)産業環境管理協会、日本経済新聞社
・入場料: 無料
・エコプロダクツ2007のホームページをご覧下さい。
http://www.eco-pro.com/


編集後記
 23日から25日の3連休、東京は抜けるような青空の好天に恵まれました。紅葉狩りを楽しまれた方も多かったのでは?
 今週のメルマガはトピックス、随想、どちらも期せずして環境情報に関係した内容で、次世代の市民である子供たちへの環境教育、そして今の大人の私たちが一番曝されているマスコミ情報の話しでした。“目からうろこ”という言葉があります。私など人の話しを聞くとすぐになるほど!と思い込み、別の考えの人の話しにまたなるほど!とその連続です。これって目からうろこが落ちて、別のうろこが貼り付いているのと同じことかも?
 上野先生が述べておられるように常に複数情報を見比べ、自分で考え、判断する習慣をもつことが、何よりも大切なことと痛感しました。(丸茶)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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