NO.182
発行年月日:2008/06/26

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トピックス
◇洞爺湖サミット記念環境総合展とアフターサミット活動
塩ビ工業・環境協会 専務理事 関 成孝

随想
古代ヤマトの遠景(26)—【国作り神話】—
    信越化学工業(株) 木下清隆

お知らせ
【NEW】VECホームページを更新しました。
PVC News65号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されました。

編集後記

トピックス
◇洞爺湖サミット記念環境総合展とアフターサミット活動
塩ビ工業・環境協会 専務理事 関 成孝

環境総合展会場
クリックでVECブースの写真を表示
 洞爺湖サミット関連イベントとしては最大級の行事として、洞爺湖サミット記念環境総合展が19日から21日にかけて札幌ドームにおいて開催されました。北海道庁、北海道内外の産業界、中央省庁、各種環境団体等が一丸となって実施されたものであり、サミットの成功に向けて、また、サミットの主要テーマとなる地球温暖化対策に対する関係者の真剣な意気込みが伝わります。
 開会式には、実行委員長の高橋はるみ北海道知事、経団連の御手洗冨士夫会長、内閣、自民党で要職を歴任された中川昭一衆議院議員、武部勤衆議院議員、環境省並木正芳政務官、エコプロダクツ等でご活躍されている東京大学山本良一教授他、各界のリーダーが開会式に参加しこのイベントを盛り上げました。
 企業、団体、政府・地方自治体及び関係機関等、出展者総数は333。来場者は、当初予定の6万人を大幅に上回り8万4千人程度となったとのことです。出展希望者が想定外に多かったため、なるべく多くの者が出展できるよう主催者が懸命の調整をされました。また、来場された方々も、様々な業種の方々、学生さん、一般の市民他実に様々でした。広報活動がしっかりしていたことが伺われます。また、展示場内では行き届いた案内や誘導が行なわれていました。主催者のご尽力には頭が下がります。

VECブースの様子
樹脂サッシ説明パネル
クリックで拡大します
 弊協会は、主催者側の調整に協力し、コマ一つだけで展示をしましたが、訪問者が絶えることはありませんでした。昨年12月のエコプロダクツ展では、当協会のブースは非常にはやっていたということで評判になっていたとのことでしたが、そのとき以上の忙しさを感じるほどでした。お陰様で、用意したパンフや景品の類は3日目の午前中には多くのものが底をついたため、それ以降はお配りせずにパンフをお見せしながら説明を続けておりました。
 来場いただいた方に御願いしたクイズの問いの一つは、「○○○では当たり前の樹脂サッシ。全国に普及させれば年間3500万トンのCO2削減に!」というものでした。○○○の正解は「北海道」です。北海道では新築家屋の9割以上は樹脂サッシが入っていますが全国平均では1割に達していません。しかし、北海道では、あまりに身近となっているために、自宅の窓が樹脂サッシであることに気づいておられない方々がたくさんいらっしゃいました。

 実は、日本では、脳卒中患者数が増加傾向にあるとのことで、最近では150万人とも170万人とも言われています。その人口あたりの発生率は北に行くほど高まりますが、北海道では例外的に低い水準となっています。北海道で普及している断熱性の高い住居では温熱環境が安定します。これが身体への無用なストレスを回避しているためではないかと考えられています。

 健康を犠牲にすることなく、生活の質を高めることができてこそ、温暖化対策を持続的に進めることが可能となります。北海道にはそのモデルがあることを、誇りを持って認識していただこうという当初の狙いは功を奏したように思えました。併せて、道内企業が夕張の病院に樹脂サッシ内窓を寄贈された結果、病室の居住環境が著しく改善し、年間で500万円相当の燃料が節約できた話も紹介させていただきました。

 来訪される方々にとって、温暖化に勝るとも劣らない関心事はリサイクルでした。ブースには、リサイクル塩ビを使用したパイプ、タイルカーペット、サッシ枠の他、リサイクルされているギフトカード(流通大手)も展示しておりました。また、景品として配布した消しゴムも農業用ビニールハウス廃材を再利用したリサイクル品でした。これらを使って塩ビがリサイクルに優れた素材であることをお話したところ、たくさんの方々が真剣に話を聞いてくださいました。北海道ということで、来訪いただいた方々の中には農業に従事されている人、ビニールハウスを日常的に見ていらっしゃる人が多いような印象を受けました。農ビのマテリアルリサイクルは高水準にあること、北海道においても上手に農ビを回収できれば、効果的にリサイクルしうることを説明させていただきました。また、凍害や塩害を受けず、施工が簡単で経済性に優れ、メンテナンスが容易な外断熱+塩ビサイディングの展示モデルも関心を集めていました。

東京大学地球持続戦略研究イニシアティブ
統括ディレクター 住明正教授(左)
北海道副知事 山本邦彦様(右)
 ブースには、地球温暖化問題の権威であり東京大学地球持続戦略研究イニシアティブ統括ディレクターの住明正教授、経済産業省三木健省エネ課長、NPO法人持続可能な社会を作る元気ネット鬼沢良子事務局長他、温暖化対策でリーダーシップを奮っておられる多くの方々にも来場いただけました。さらに、北海道副知事の山本邦彦様にもご来訪いただきました。

 洞爺湖サミットは、サミットの終了をもって活動が終わるのではなく、サミット後に効果的で持続的な温暖化対策が実現されてこそ成功と言えるものでしょう。その意味で、VECとしては、塩ビが環境特性に優れた素材であることを訴えることにとどまらず、この環境総合展を契機として、北海道庁、経産局、北海道の企業などと、断熱性能の高い住宅及び部材の普及促進のための協力を進めようとしています。先に紹介した夕張病院の話は、今後、意を共有する者で同様の活動を広げようという動きになりつつあります。併せて、様々な関係者と協力し、断熱効果の改善が健康にどれほどの効果を与えるのかについて客観的なデータをとることで、居住環境の断熱化の健康上の意義も明らかにしていきたいと考えています。ご関心のある方は弊協会にコンタクトいただければ幸いです。(了)

随想
古代ヤマトの遠景(26)—【国作り神話】—
信越化学工業(株) 木下清隆

 前回は、二〜三世紀の頃、出雲の神門(かんど)地方に大きな勢力が存在し、その王は出雲・伯耆連合の最高首長であった可能性があること、更にこの王が倭国連合の初代倭王に推戴されたと想定されることを述べた。
 ではこのようなストーリーは古事記・日本書紀の中から見い出すことが可能なのか、という問題が出てくるが、実はそれらしきものはある。それが大国主神或いは大己貴命(おおあなむちのみこと)による国作り神話である。古事記では大国主神で登場し、書紀では大己貴命となっているが、これらは書紀では同一神とされている。話は共に同様といえるが、書紀の内容を分かり易く書くと次のようになる。

崇神天皇陵
大己貴命と少彦名(すくなひこな)命とは力を併せて国作りをした。ところがこれからという時に、少彦名命が熊野の御崎で亡くなった。未だ平定されていないところは大己貴命が一人で頑張って平定し、最後に出雲へ戻った。「この国の平定が成ったと言うのに、これを治めるのは私一人しかいない。誰か私と共に国を治めるものは居ないのか」と大己貴命は嘆息した。ところが、そこに一神が海を照らして現れた。「汝がこの国を平定できたのは吾が力があってのことなり」「貴方は誰ですか」「吾は汝の幸魂奇魂(さきたまくしたま)なり」と述べた。更に「三輪山に住まんと思う」との希望が出されたことから、この神は三輪山に祀られることになった。 —

 このような簡単な話であるが、この話の要点は次のようにまとめられよう。
(1) 大己貴命が平定したのは出雲だけではなく倭国全体だったと考えられる。それは協力者の少彦名命が紀州の熊野灘付近で亡くなっていることと、大己貴命のこの国平定後の記述が、「遂に出雲国に至りて」と表現されており、全国平定の後に出雲に帰ったと理解したほうが自然だからである。
(2) 少彦名命の死は記紀共に明確に記載されており、書紀では熊野の御崎、一説には淡嶋で亡くなったことが述べられている。これだけ詳細な記述があると言うことは、全くの絵空事ではなく、何かの史実が反映されている可能性がある。
(3) 大己貴命が自分一人しかいないといって嘆息すると「わしが付いておる」と言って、三輪山の神が登場する。これは、倭国の歴史が大和で始まる以前から「三輪山の神」がこの地方の守護神であったことを示している。
(4) 三輪山の神のことを大己貴命の幸魂奇魂なりと説明しているが、要するに、
  三輪山の神 = 大己貴命
であることを主張していることになる。ところが(3)の結論は、三輪山の神が極めて古い神であることを示しており、この神と出雲の大己貴命と同一であるとするのは矛盾である。このことは大己貴命の処遇に困った記紀編纂者が、このような詭弁を弄する神話を創作したものと考えられる。

 おおよそ、こんなことが大己貴命の国作り神話から導かれる。このような内容から、大己貴命は実は初代倭王をモデルとして創作された神であると云いたいところであるが、そう簡単に結論は出せない。それはこの国作り神話がそのことを明示的に述べていないことと、類推するには物語が短か過ぎること、更に時代を特定できる要素が何も記述されていないこと等からである。このようなことから初代倭王探しは別の切り口から進めるしかないが、これは次回にまわすことにする。
 なお、この大己貴命は出雲の神ではあっても、それ以上のことはこの国作り神話からは判らない。ところがこの命を祀る神社から若干想定できることはある。その神社とは出雲大社である。出雲大社が江戸時代まで杵築(きずき)大社と呼ばれていたことは先に触れたが、この大社は極めて不自然な場所に位置している。出雲市駅の北西で島根半島の西端である。杵築大社が築造された頃はかなりの荒地であったと想定されており、なんでこんなところにという疑問が湧く。この問題を論じた人はこれまでには無いようであり、これは謎といえば謎である。しかしながら、場所的にはかつての神門地方の北方に当たり、大己貴命が神門に何か縁があったのではないか、と思わせる点はある。(続く)

前回の「古代ヤマトの遠景」は、下記からご覧頂けます。
☆ 古代ヤマトの遠景(25)・・・【出雲の王】

上記以前の「古代ヤマトの遠景」のバックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

お知らせ

【NEW】 VECホームページを更新しました。

1. 5月度の塩ビの生産出荷データ掲載。
https://www.vec.gr.jp/enbi/seisan.htm
2. トピックスに新しい記事を掲載。
日本語版 https://www.vec.gr.jp/topics/index.html
英語版 https://www.vec.gr.jp/english/topics/index.html

PVC News65号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されました。

◇視点・有識者に聞く
LCA、その功績と課題
神戸大学大学院 教授/工学博士 石川雅紀氏
◇リサイクルの現場から
開始半年、塩ビサッシリサイクルモデル事業の現状

最新号、バックナンバーとも、こちらからご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/

ご希望の方には、発行ごとにお送り致します。送付先を連絡下さい。
info@vec.gr.jp

編集後記
 テレビで放送されている、『灰色の風船に見立てられて空中に浮かんでいるたくさんのCO2を、白衣を着た人たちが虫とり網で集めて取り除いていく』という、CO2排出量削減をテーマにしたコマーシャルをご存知ですか。これって、よく考えると変だと思いませんか。なぜなら、CO2は空気よりも重いので、風船にしたら地面に落ちてしまうはず。本当(?)なら、虫とり網ではなく“どじょうすくい”のように集めなくてはいけないのではないでしょうか。
 「どうだ、まいったか!」と得意気に騒いでいたら、「あれは、CO2のイメージでしょ。コマーシャルのCO2の片付け方につべこべ言っているヒマがあったら、部屋の片付けをしなさ〜い!!」とヤブヘビになってしまったのでありました。トホホホホ…。(漠)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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