◇塩ビマテリアルリサイクルを進める欧州の取組み
−レコビニル(Recovinyl)システムについて− |
建物解体現場や施工現場からでる廃材、端材など使用済みの塩ビ建材を対象とした新しい収集システム、Recovinylがこの2,3年、欧州の広い範囲に拡大し、大きな実績を上げています。VECでは、Recovinylシステムの認定リサイクル事業者やRecovinyl事務局メンバーを4月下旬に訪問し、同システムの調査を行いました。以下このシステムについて紹介します。
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使用済み廃材(窓枠)【硬質】
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再生原料【軟質】
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再生製品(自動車マット)
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Recovinylとは、登録された廃塩ビの収集、運搬、選別者(廃棄物処理会社、自治体などさまざま)と認定された廃塩ビのリサイクラーがウェブサイト上で情報交換できる収集インフラを通じて収集、運搬、選別者やリサイクラーに対する経済的なインセンティブにより、これまでリサイクルされることなく最終処分されていた使用済み塩ビ建材をリサイクラーへ持ち込むことを促すための仕組みです。このシステムの運営母体は2003年6月、当初は民間会社としてスタートしましたが、2005年より欧州塩ビ製造者協議会(ECVM:欧州のVECに相当する組織)も参画している「Vinyl2010」が全額出資する現在のNPO法人(本部ブラッセル)となりました。このシステムに参加するにはRecovinylに登録し、更にリサイクラーは認定を取得する必要があります。登録事業者の手で収集、選別された使用済み塩ビ建材は認定リサイクラーによって再資源化されます。廃塩ビを受け取り、再資源化したことがリサイクラーからRecovinylへ報告され、Recovinylは提携している監査機関の確認を得て、収集、選別もしくはリサイクラーにインセンティブ(資金支援)が支払われます。これらの情報伝達はすべてウェブサイト上で行われ、2007年現在、欧州全体で既に8000件以上の収集、運搬、選別事業者およびリサイクラーが登録、認定されている、とのことです。
収集されている塩ビ建材には、硬質塩ビ製品では管・継手、雨樋、シャッター、窓枠、異型押出建材など、また軟質塩ビ製品では電線被覆材、床材などが挙げられ、排出場所に応じて、施工端材などと解体や改修からでる廃材とに分類できます。Recovinylによる収集実績は2005年、約1万t強に過ぎませんでしたが2006年には5万t近くまで、2007年は約11万tと急激な伸びを示しています。
Recovinyl以外も含めた2006年の全体収集量が8万トン余りですので、このシステムがいかに欧州の塩ビ製品のリサイクルに寄与しているかがわかります。ちなみに、日本ではほぼこれと同量の使用済み塩ビ製品がマテリアルリサイクルされており、欧州の塩ビ製品のマーケットの大きさが日本の4倍以上であることを考えると、量としては遥かに凌駕しています。またRecovinylが対象としている建材の分野でも、住宅メーカー、ゼネコンのゼロエミに向けた取組みや中間処理事業者との連携によるリサイクルなど個々のケースで欧州に比べ進んだ取組みがみられますが、Recovinylの優れている点は、製品の種類を問わず登録、認定さえすればウェブサイト上で収集からリサイクルへの流れに容易に入れることにあります。このことが経済的なインセンティブとは別にRecovinylにより収集実績が上がっている大きな理由の一つと思われます。更に必要な品質さえ確保されれば再生品であっても抵抗なく受入れる欧州消費者(最終製品メーカー)の合理精神に加えて、この進展には欧州全体で、特に2005年よりドイツで最終処分(埋立)の規制が強化されたことが追風として大きく影響しているものと思います。
建設分野の廃プラスチックリサイクルは、少量分散的に発生する廃プラスチックをいかに効率よく収集できるかが経済自立性のあるリサイクルにしていくうえの大きな課題であると言われ続けてきました。今回紹介したRecovinylシステムはこの課題に対する答えのひとつかもしれません。(了) |
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