NO.210
発行年月日:2009/01/29

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トピックス
◇塩ビ可塑剤DEHPがREACHの認可対象優先物質候補として提案された件について

随想
伝えていますか、届いていますか、塩ビのはなし
(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS)
環境委員会 大石美奈子

お知らせ
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編集後記

トピックス
◇塩ビ可塑剤DEHPがREACHの認可対象優先物質候補として提案された件について

  本年、1月14日、REACHの認可(Authorization)対象優先物質候補(案)として7物質が公表されました。その中にDEHPも入っています。本件については、過去のメルマガ等でも紹介をしてきましたが、DEHPは詳細なリスク評価が終わっており、現行の規制を超える使用制限は必要ないと結論されています。そのため、EUの可塑剤業界は、現在、認められているほぼすべての用途について認可が得られるであろうと見ています。
(関連情報: VEC情報 https://www.vec.gr.jp/topics/new116.htm
可塑剤工業会 http://www.kasozai.gr.jp/news/news25.html

 仮に認可(Authorization:Annex XIVリスト物質)対象物質となった際にどうなるのか?DEHPそのもの、或いは、調剤(コンパウンドなど)としてEU内で供給しようとする者は、それぞれの用途毎に認可を得る必要があります。
 他方、DEHPを含む製品(Article)の輸入品には追加的な義務や制約はかかりません。仮に、認可されていない用途であっても、当該化学物質を含む輸入製品(Article)は認可の対象ではなく、既存の規制を超える追加的な制限はかかりません。

 これまでも紹介いたしましたが、SVHCになった時点で、欧州で当該化学物質を含む輸入品については、その供給者は欧州化学品庁に届出をすることとなっています。また、SVHCになった時点で、欧州域内で製品を供給する者には情報提供義務が生じていますが、認可対象物質となったとしても、これを超える義務や制限は生じないと言うことです。欧州化学品庁への届出義務も、欧州域内で誰かが当該化学物質を登録(Registration)しておれば、不要となります。
 日本の製造業者や輸出業者は、おそらくほとんどすべてのケースが、製品(Article)でしょうから、結論として、認可対象候補となっても特段の心配をする必要はないと考えております。REACHのRegulationの詳細については、日本化学工業協会にお問い合わせください。
日本化学工業協会(REACHタスクフォース):http://www.nikkakyo.org/reach/

随想
伝えていますか、届いていますか、塩ビのはなし
(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS)
環境委員会 大石美奈子

  世の中を変えた化学製品といえば、まずプラスチックを思い浮かべる。中でも、熱に対しての安定性、経済性、加工のし易さで、ポリ塩化ビニル=塩ビほど、重宝に使われてきたプラスチックはないだろう。水道のパイプ、電気コード、ブランドバッグにと、私たちの生活に定着し、すっかり市民権を得ていた。

 しかし、ダイオキシンンによる汚染が問題になると、一番の悪者として糾弾されたのが、塩ビであった。多くのプラスチックの原料は、ほぼ100%石油だが、塩ビは食塩を原料として使うことで原料石油が節約できるし、今注目されているCO2発生量が少ないことも評価されている。が、塩素が含まれているということで、ダイオキシンが発生する原因物質とされ、実際は燃焼温度によることが解明された今でも、引き続き誤解している人が多いようだ。
 これは、日本の報道のあり方にも問題があると思う。センセーショナルで人々が飛びつくニュースであれば何でも取り上げるが、科学的にそれが間違いだったことがわかっても、それをきちんと伝えるメディアはほとんどない。例えあったとしても、新聞の片隅にお詫び広告として小さく載るくらいで、最初に大きく出したときとは、まったくトーンが違っていることが多い。加えて、私たち消費者の側にも問題がある。ニュースの真偽を冷静に確かめようとすることはほとんどなく、自分や家族の健康に被害が及ぶ可能性があると、ただただ守りに入る。ダイオキシンの場合も、母乳を通して乳児に影響が及ぶという、かなりショッキングな報道があったため、妊娠中の女性を含め、あらゆる人へのインパクトが大きかったのではないかと思う。

 ダイオキシン問題のあとは、可塑剤として使われているフタル酸エステルが環境ホルモンとして話題になり、環境や人体への影響が疑われた。科学的には問題ないことが公表されているにもかかわらず、大手電気メーカーから、製品に使われている塩ビを削減、または代替品に変えていくという発表があり大きな議論を呼んだ。国内であれば、家電リサイクル法に基づき、きちんと回収・処理・リサイクルされる方向にあるが、海外に持ち出される製品も多く、その場合、責任が不明確になってしまうことを懸念しているのではと考える。
 逆に、塩ビパイプ管のように、使う場所が限られ、不法に投棄される心配もなく、業者が扱い必ずリサイクルシステムに乗せられるものについては、今後も使われ続けるだろう。さらに、地球温暖化防止で注目されているのが塩ビを使った樹脂サッシや樹脂サイディングで、冷暖房効率を高めるとともに、結露防止、遮音効果もあるということで、役所をはじめ、さまざまな建築物で用途が広がっていると聞く。実は、楽器の音が漏れないように我が家も簡易工事をし、二重サッシにしたのだが、これが塩ビサッシであった。実際に結露はないし、冷暖房効率もよい。先ほどのパイプと同じで、専門の業者だけが扱い、不法に捨てられることもなく、取り外したあともリユースやリサイクルが可能で、その生産から使用・廃棄まで、きちんと管理できる仕組みがあることから、消費者は安心して使うことができ普及も進んでいるのではないかと考える。

 私が所属するNACS環境委員会では、持続可能な社会に向け、環境に配慮した商品選択ができるグリーンコンシューマーが一人でも増えるように、また、消費者と企業の環境情報コミュニケーションが進むことを目指して、研究・啓発活動を続けている。消費者は、購入・使用の場面だけでなく、資源調達から、製造、輸送、廃棄・リサイクルにいたる商品の一生の各ステージでかかっている負荷を考慮して商品を選ぶことが求められる。しかし、そのための情報は、まだまだ出されていないか、出されていたとしても、きちんと消費者に届いているとは言い難いために、環境に配慮した商品選択につながっていないと考える。特にBtoBである塩ビの場合、難しさはあるが、消費者に正しい情報が届いているかどうか、常に視野に入れておく必要があるだろう。
 それと同時に、消費者には、塩ビに限らず化学物質との冷静な付き合い方を学んで欲しいと感じている。リスクコミュニケーションという言葉も、やっと耳にするようになってきたが、まだまだ理解されていない。最初から新技術や物質を拒否するのではなく、リスクとベネフィットをきちんと検証することが重要で、科学技術に対しての理解が広がり賢く共生していくためには、年少期からの科学教育の拡充が重要なポイントになると考える。(了)

お知らせ
環境を考えた北海道の住宅づくり In函館 のご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会が、下記のセミナーに参加し講演を行います。

・日 時 2009年2月5日(木)
13:30〜17:30 (受付 13:00)
・場 所 サン・リフレ函館 大会議室
・主 催 (株)日建新聞社
・参加費 無料(定員:先着100名)
・お問い合わせ (株)日建新聞社・編集部
電話 : 011(726)3138

編集後記
 突然の樹脂サッシの防火性能偽装報道にショックを受けました。誠に遺憾です。
 ところで、1月20日付の日経BPケンプラッツには、以下のように書かれています。
 『今回、不正受験をして大臣認定を取り消された「防火仕様の樹脂サッシ」は、約5500棟で使われているという。決して少ない数ではないが、樹脂サッシの全販売量に占める割合は2%足らずだといわれている。それ以外の大半の樹脂サッシは、製品としては“まとも”なものだ。高い断熱性能が今後の温暖化対策に有効であることは間違いないし、結露の防止や安定した温熱環境の創出という面でも大きな役割を果たすことは何ら変わっていない。』
 内窓や外窓の一般グレードはすべて、それ以外の樹脂サッシに入りますが、同ケンプラッツが指摘するよう、『企業の行状に激しい憤りを感じるあまり、樹脂サッシそのものに対するイメージも悪化するだろうと見る向きが少なくない。』状況と思います。この記事にあるように製品としての樹脂サッシの環境性能が否定されたわけではありません。(逢坂山)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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