NO.087
発行年月日:2006/07/13

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トピックス
◇変なところに「ガッテン」するとは、「ガッテン」がいかない。
火のないところに煙を起こす、NHKの「商魂?」番組

随想 
環境指針値の新たな制定の問題点

塩ビ工業・環境協会 専務理事 西出徹雄

お知らせ
【NEW】これからの快適な住まい作りセミナー・諏訪セミナーのご案内
【NEW】グリーン・サステイナブル ケミストリー賞の募集始まる
東京おもちゃショー 2006 開催案内
エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06 出展案内

編集後記

トピックス
◇変なところに「ガッテン」するとは、「ガッテン」がいかない。

火のないところに煙を起こす、NHKの「商魂?」番組


 世の中の問題点を鋭く見抜き、大きな問題にならないうちにそれを社会に対して指摘して、被害の防止に資する、ということがマスメディアの重要な使命の一つですよね。
 一方で、「将来の大問題だ!」と考えて社会キャンペーンを張ったところ、その後いろいろな事実が判ってきて、騒ぐほどではなかったことが明らかになった場合は、速やかにかつ率直に前言を撤回し、正しい正確な情報を発信して社会に行き渡らせることもまたメディアの重要な使命ではないでしょうか。

 そういう観点から、例えばダイオキシン騒ぎや、いわゆる環境ホルモン問題などの例を考えて見ましょう。これらの問題はまさに「大問題だ!」と騒がれて社会問題化した後に、「そうではなかった、たいした問題ではなかった」ことが判明した好例だ、と私たちは考えています。
 しかるに、これらに対して新聞・雑誌やテレビなどのマスメディアが取っている行動を観察すると、問題指摘の段階では誠に見事にその使命を果たした感がありますが、その後の状況変化で「たいしたことはなかった」ことが判った現在に至っても、「その事実を社会に発信する努力は充分であった」とはお世辞にも言いかねるのですよ、ねえ。

 などといったクレームをごたごた書き並べたのには実は訳があります。6月28日(水)の夜8時から、NHKテレビが放映した「ためしてガッテン」のことを話題にしたいからです。
 この番組、この日は「環境ホルモンを覚えていますか?」という副題で、一時大きな話題になった、内分泌攪乱化学物質、いわゆる環境ホルモンに関する研究のその後の状況を取り上げたものでした。この問題についてはご存知のとおり、環境省がSPEED’98と称する研究プロジェクトを推進した結果、対象としてリストアップされた化学物質のうちの殆んどは「ヒトに対する影響はない」ことが確認され、以後はより長期的な基礎研究レベルでの検討を続けることになっているものです。
 しかし、例によってマスメディアは「たいした事はなかった」というメッセージを社会に発信することは殆んどなく、今日に至っています。そこへこの番組で取り上げるということでしたので、流石は天下のNHK、やっとここへきてこの問題の正確な情報を発信する気になったのか、と大いなる興味と関心を持って番組を見てみました。

 ところがどっこい、びっくり、しゃっくり。
 番組の前半でこそ、「環境中に存在する濃度では、哺乳類に対して明確な影響はない」という環境省上家課長のコメントを紹介したものの、後半では異常に高濃度での動物実験からのデータを以って「必ずしも安全とはいえない」というトーンの主張をしたり、コンピューターシミュレーションの結果として、構造上では2000種類の物質が環境ホルモンたりうると不安を煽ったり、「精子数の減少」やら「複合影響」やら「予防原則」やらありとあらゆるテーマを並べて、「やっぱり化学物質は安心できない、怖いものだ」という感じを視聴者に与えることに躍起になっているとしか思えない番組構成に見えてしまいました。

 確かにこの問題は、すべての点で科学的事実が明確になった訳ではないのでしょう。その意味では番組に出てきた研究者のセリフ「『分からない』ことが分かった」というのが正確なのでしょうが、一方では「しかし、少なくとも大した影響はないことも分かった」ということでしょうし、現時点でのマスメディアの対応とすれば、この「大した影響がないことが分かった」ということを社会に発信することが第一優先なのではないでしょうか。

 それを敢えて、「分からない」と言わせ、「こんな問題もありそうだ」と発信することは、視聴者をいたずらに不安に陥れて、偏った関心を持たせる、いわば「火の(殆んど)ないところに煙を起こす」、マスメディアの「商法」のように見えてしまうのです。

塩化ビニル環境対策協議会の「PVCニュース」で、環境省上家課長のお話を伺いました。
こちらからご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/news_ind/56-03.html

環境ホルモンについて詳しい情報は、こちらをご覧下さい。
 チビコト(Lohas/環境ホルモン学)(環境省)
【PDF】http://endocrine.eic.or.jp/siryou/bunken/chibikoto/index.html

随想

環境指針値の新たな制定の問題点

塩ビ工業・環境協会 専務理事 西出徹雄


 大気汚染物質には色々な物質がありますが、これまで有害大気汚染物質としてリストアップされているもののうち、優先取り組み物質として22物質が位置付けられています。これらの物質は何らかの健康障害をすぐに起こすような大気中の濃度にはなっていないものの、長期間暴露することにより健康への影響のおそれが考えられることから、これまでは事業者が排出を自主的に削減する形で対応が取られてきました。1997年以来3年ずつ2回にわたって自主削減が計画的に進められ、既に平均で75%の削減が達成されています。

 またこれらの物質のうち影響が大きいと考えられるベンゼン等の物質には環境基準が設けられていますが、それ以外の物質についても国や自治体による大気環境モニタリングが行われており、3年前に環境省は4物質に関し疫学データ等に基づいて、大気環境モニタリングの指標として環境指針値なるものを設定しました。環境基準値自体が大気中の濃度を常時この値以下にしなければならないというものではありませんが、環境指針値は環境基準を設定するほど科学的なデータの信頼性が高くない物質について、大気汚染防止法に基づかないにもかかわらず中央環境審議会の審議を経て設定されるというものです。

 環境省は今年5月30日、新たにアセトアルデヒド、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,3−ブタジエンの4物質について環境指針値を設定する方向で、中央環境審議会に設けられた専門委員会を開催し、その審議結果に基づいてパブリック・コメント(6月12日〜7月11日)の募集を行いました。しかし、今回の環境指針値設定にはいくつかの問題があると思いますので、この点を以下に述べてみたいと思います。(それにしても5月30日の会議の議事録をパブリック・コメント最終日になって初めてホームページに掲載するとは、意図的とは思いたくありませんが、どういうことでしょう?)

 環境指針値は法律による義務づけではありませんが、中央環境審議会という公的な機関により審議決定され、モニタリングを実施する都道府県等では測定値を評価する指標とするわけで、決して軽いものではありません。当然のことながら、その科学的な根拠、審議の過程、決定内容等は基本的には全て公表されるべきものです。その上でパブリック・コメントにより、より広い範囲から意見を求め、審議会での審議にこれらの意見を反映して最終的な決定が行われるべきであります。

 しかし、今回の審議の過程を見ますと、審議会のもとに設けられた専門委員会に先立ってワーキング・グループによる検討作業が行われたとされていますが、検討の過程でどのような議論や判断が行われて今回の指針値案がまとめられたのかが、議事録も資料も全く公開されていないため判りません。
 また、今回対象となった4物質の中で、私ども塩ビ業界とも関係の深い1,2−ジクロロエタン(EDC)については疫学データがないため、動物実験データだけから吸入による発ガン性を認定し、リスク評価を行っていますが、この動物実験データの基になる研究は中央労働災害防止協会日本バイオアッセイ研究センターにより行われており、その研究結果は報告書として公表されていません。また、フルレポートとしても学会発表されていません。公的な性格をもつ環境指針値を決定するわけですから、当然のことながらその根拠となる科学的データは公表され、広く専門家の目による評価(ピア・レビュー)を経て初めて信頼性や正確さが評価されるものですが、今回のデータは公表されていないため、外部の人には内容を見ることができませんし、その結果として、吸入による発ガン性を証明した唯一のデータであるにもかかわらず、海外の同種のリスク評価でも引用されていません。

 これらの基本的な問題点に加えて、疫学データではなく、動物実験データに基づいて動物への影響に不確実性の係数を掛けて人への影響に換算するため、結果としては人についての発ガン性が明らかになっている物質より、疫学データがなく、発ガン性は弱いと考えられるEDCの方が、より厳しい値になるという矛盾が発生します。その意味で科学的データに基づいてリスク評価をした数値をどのように扱うかは、行政的な判断が加わります。
 7月11日になって公開された議事録から、5月30日に開催された専門委員会の審議の様子を読んでみると、専門委員会の委員の間ですら、環境基準値にするか、環境指針値にするか、それとも指針値にする以前の段階であるかについて統一的な理解ができていないことが明らかです。もともと3段階に分ける判断基準が抽象的な言葉で書かれているだけで、明確な線引きがなされていないため、このような共通理解の欠如となって現れています。事務局の説明も、環境指針値を決めるということで始めた作業なので環境指針値とすると説明するばかりで、選択したデータに基づいて導いた有害性の評価値がなぜ環境指針値にするのが相応しく、それ以上でも以下でもないのかということについての議論も判断も行われていません。

 また、これらの他に、動物実験データの解釈についても、ラットを使った実験データをどのように扱ってユニットリスクを算定するかなどの疑問点があります。しかし、それ以前のところで、今回の環境指針値案の審議については以上のような問題点を多々含んでいるため、根拠データの公表、審議過程の公表を一つ一つ改めて行った上で、再審議を行うべきであり、このまま進めることは、将来に悪い前例を残すだけだと考え、パブリック・コメントに意見を提出いたしました。

 私たちの生活環境の安全性をより高めていくには、しっかりした科学的根拠に基づくリスク評価を丁寧に行い、その不確実性の程度を明示しながら周知を集めて議論を進めていくべきです。多少時間が掛かってもそれ以外に道はありません。信頼される環境行政のあり方を実現して欲しいと切に希望いたします。


お知らせ
【NEW】 これからの快適な住まい作りセミナー・諏訪セミナーのご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会、樹脂サッシ普及促進委員会では、下記のセミナーに参加し、樹脂サイディング、樹脂サッシの紹介を行うとともに、樹脂サイディングの施工実演も行う予定です。

 これからの快適な住まい作りセミナー・諏訪セミナー
    −無暖房住宅へ限りなく挑戦−

・日 時 2006年7月28日(金)
  13:15〜17:00 (受付開始 12:30)
・場 所 ホテル山王閣
長野県諏訪郡下諏訪町諏訪大社秋宮境内
・主 催 信州大学工学部
エネルギー自立型環境調和住宅研究会
・会 費 無料
・参加申込み締切り 7月20日(木)
(定員70名になり次第、締切らせて頂きます。)
※参加希望の方は下記までお問合わせ下さい。
信州大学工学部 社会開発工学科
建築コース 山下研究室
電話:026(269)5360

【NEW】 グリーン・サステイナブル ケミストリー賞の募集始まる

 グリーン・サステイナブル ケミストリー(GSC)ネットワークとは、化学技術の革新を通して「人と環境の健康・安全」を目指す組織です。
化学系の学会・団体および国立研究所により、2000年3月に設立されました。
VECは、GSCネットワークを構成する団体の一つとして協力しています。
GSCネットワークでは、「第6回(2006年度)グリーン・サステイナブル ケミストリー賞」を募集しています。 

募集期間:2006年7月1日(土)〜10月31日(火)

詳細は、グリーン・サステイナブル ケミストリーネットワークのHPをご覧下さい。
http://www.gscn.net/

募集問合せ先:naito@jcii.or.jp

東京おもちゃショー 2006 開催案内

 下記の要領にて「東京おもちゃショー 2006」が開催されます。
一般の皆様には、イベントや華美な装飾に頼ることなく「おもちゃ」に実際に触れて「おもちゃ」が持つ楽しさを再認識していただき、バイヤーの皆様には、夏休み・年末に向けた新製品の発表と商談の場及び消費者の皆様とのふれあいの場としていただく為の展示会です。
 日本空気入ビニール製品工業組合が出展致します。

・日 時 商談見本市(バイヤーズ・デー)
2006年7月13日(木)、14日(金)
 10:00〜18:00

一般公開(パブリック・デー)
2006年7月15日(土)9:00〜17:00
2006年7月16日(日)9:00〜16:00

・場 所 東京ビッグサイト(西1〜4ホール)
東京都江東区有明3−21−1
・主 催 社団法人 日本玩具協会
・共 催 東京都
・後 援 経済産業省
・入場料 無料
 
ただし、商談見本市には、原則として主催者発行の招待状が必要です。(招待状のない方は、受付での登録手続きが必要です。学生の方、お子様連れでのご来場は出来ません。)一般公開は、手続き不要でどなたでも入場自由です。

・東京おもちゃショー2006のホームページをご覧下さい
http://www.toys.or.jp/toyshow/top.html

・日本空気入ビニール製品工業組合のホームページはこちらからご覧頂けます。
http://www.ku-bi.or.jp/

エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06 出展案内

 下記の要領にて「エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06」が開催されます。
 本展示会のテーマは「エコロジー&エコノミーの両立」です。
 「エネルギー効率の高い社会」を実現する為には、蓄熱システムやヒートポンプなどの普及が肝要であると考えられますが、これに関連する最新・最適な情報が提供されます。
 塩ビ工業・環境協会、樹脂サッシ普及促進委員会、樹脂サイディング普及促進委員会にて「オール電化住宅ゾーン」に出展し、「窓からの熱損失対策」、「長寿命外装材」等のご紹介を行います。

 ・日 時:2006年7月26日(水)〜28日(金)
      10:00〜17:00

 ・場 所:東京ビッグサイト(西1・2ホール)
       東京都江東区有明3−21−1

 ・主 催:エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06実行委員会
       東京電力株式会社
       財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター
       電気事業連合会

 ・入場料:無料

 ・エネルギーソリューション&蓄熱フェア’06のホームページをご覧下さい。
  http://www.tepco.co.jp/solution/fair06/index-j.html

 ・塩ビ工業・環境協会他の出展者詳細情報はこちらからご覧頂けます。
  http://www.tepco.co.jp/solution/fair06/exhibition/ent0014-j.html
編集後記
 10日程前の夜のこと。親類筋からわが家人の携帯電話に電話があった。聞くと「あんたんちの固定電話、通じないわよ」とのお知らせ。調べてみたらなるほど、通電はしているのに発信も受信も出来ない。とりあえずNTTの故障係に携帯から通知しておいたら、翌日担当者が出張ってきて調査して曰く、「引込み線の途中がトラブっていた」とのことですぐに修理完了。なんと前日の雷が原因らしい。

 続いて次の日、例によって呑んだくれて深夜ご帰還のH2。翌日、気がつくと携帯電話がどこにもない!蒼くなってオフィスや昨夜の宴会会場や地下鉄やらへおおわらわで問い合わせたが発見できず!とりあえずこれまたNTTドコモへ連絡して機能停止してもらった。
「また1万円で買い替えか」とがっかりしたものの、最後の手段とばかり地元の通勤駅で聞いたところ、「拾われて保管されてる!」とのこと。欣喜雀躍、取りにいって取り戻して、ホット一息。

 というわけで立て続けに電話のトラブルがありました。「二度あることは三度ある」のでは、と目下戦々恐々中です。

 しかし、面白かったのは、東京メトロに問い合わせた時。先方の担当者曰く「携帯電話の落し物ですか。今日は28個拾われてます」と。いやあ、さすが東京ですねえ。人口も多いし、バカモノも多いんだなあ。(H2記)

先週の編集後記についての読者からのお便り・・・[編集後記後]

「脳を鍛える」というのは、ゲームでも流行っていますね。「昨日の夕食」が思い出せるかどうかが、鍛えられ度の目安のようです。ところで、文章の音読で思い出しましたが、「声に出して読みたい日本語」の齋藤孝が新聞のコラムで書いていました。
『食欲・性欲・睡眠欲を人間の三大欲という。しかし、私をもっとも支配しているのは、「あったまりたい欲(別名ぬくぬく欲)」だ。』
『私は「血」や「気」や「リンパ液」が体内をゴーと音を立てて流れているのを実感する時に、人は幸福感を得るのだと直感的に確信している。』
具体的には、食事改善(血液をサラサラに!)と風呂内読書を勧めています。温まった体をしっかりと基盤として持つと、外からの働きかけに対し、柔軟に対応する事ができるそうです。これも、老化防止になりそうですね。…(伊藤様)

先週の編集後記をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。
https://www.vec.gr.jp/mag/086/index.html#kouki

VEC関連URL
●VEC 塩ビジュニア https://www.vec.gr.jp/kids/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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