NO.153
発行年月日:2007/11/15

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トピックス
◇サーマルリサイクル・焼却施設に関する調査
 −塩ビを含んでいても焼却できます−

随想

古代ヤマトの遠景(20)—【伊勢氏・度会氏】—

信越化学工業(株) 木下清隆

編集後記

トピックス
◇サーマルリサイクル・焼却施設に関する調査
 −塩ビを含んでいても焼却できます−

産廃処理ではもっとも代表的な
ロータリーキルン式焼却炉
 塩ビは長く親しまれてきたプラスチックであり、その特長の一つは劣化が小さくまた異物等の影響を受けにくいために、使用済み塩ビ製品を再び塩ビ製品として利用するマテリアルリサイクルがし易いことにあります。実際に、農業用のビニールシートや塩ビパイプなどは、それぞれ分別・収集システムが構築され、農ビは約7割、パイプは約6割がマテリアルリサイクルされています。このように塩ビだけをきちんと分別すれば、様々な製品に再生することができます。しかしながら、紙や木や他のプラスチックと混ざり、塩ビだけを分別回収することが難しい場合もあります。このような塩ビを含む混合廃棄物はサーマルリサイクル・焼却処理が環境負荷を低減し、資源を節約するもっとも合理的な方法となります。現在の焼却施設はダイオキシン類対策特別措置法を境に設備性能が大幅に向上し、またガス化溶融炉など最新設備をもつリサイクル施設も増えています。そこで、「塩ビ工業・環境協会」と「塩化ビニル環境対策協議会」は国内の産廃系プラスチックサーマルリサイクル・焼却施設あるいはASRリサイクル施設を対象にアンケート調査を実施しました。今回の調査は、塩ビの受入・処理実績、サーマルリサイクル(エネルギー回収)の現状、さらに今後の塩ビの受入に対する考えなどについて質問したもので、中間処理事業者サーマルリサイクル施設の皆様のご協力を得て、塩ビの処理実態を概ね把握することができました。

 塩ビを焼却すればダイオキシンが発生するという風評が一時流布されましたが、結論として焼却物の問題ではなく焼却条件の問題であることが明確になっています。現在の焼却炉では焼却条件が適正に管理され、ダイオキシンの問題は解消されています。また塩ビの焼却で発生する塩化水素も、SOxなどの酸性ガスと同時に中和処理することによって排出規制をクリアできます。実際に、今回の調査結果により、回答を得られたほとんどの施設では少量の塩ビは、通常に処理していることがわかりました。塩ビを処理していることを積極的に公表していただいた施設の数も6割を超えています。

 当初は塩ビを含む廃棄物は忌避されているのではと懸念しましたが、実際には多くの施設で塩ビを受入れると回答していただき、 我々塩ビ関係者にとっても非常に心強い限りです。
 塩ビを受入れ可能とする施設のなかで、公表に同意いただいた約70施設については、「塩ビ工業・環境協会」の「リサイクルビジョン−私たちはこう考えます−」でその社名を公表しています。塩ビを含む廃棄物の排出者には有用な情報になると考えています。今後もこのような調査を継続して行い、サーマルリサイクルや焼却処理に関する情報を提供していきたいと考えています。(了)

「リサイクルビジョン」(サーマルリサイクル)は、こちらからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/topics/3thermal_recycle.pdf

随想
古代ヤマトの遠景(20)—【伊勢氏・度会氏】—
信越化学工業(株) 木下清隆

 前回は雄略天皇が天照大神を伊勢に遷すに当たっては、事前に伊勢氏の了解をとっていたはずだと想定したが、ではなぜ伊勢氏はその受け入れを承諾したのであろうか。
 その鍵は伊勢氏の出自にあるようである。『新撰姓氏録』によれば、伊勢氏の祖神は、
   「天底立命孫天日別命之後也」
 となっている。ここの「天底立命」とは、書紀の神代紀に出てくる「国底立命」から派生した神と考えられるが、記紀の中にその名が登場しないことから、伊勢氏が創作した神と考えられる。「国底立命」は天地開闢神話に出てくる始原神で、特に造形や事跡を伴わない観念的な神とされている。この命の孫として「天日別命(あめのひわけのみこと)」が次に記されているが、この命は『伊勢国風土記』に登場する神である。先住の「伊勢津彦命」を「天日別命」は追い出したとされているが、なぜ追い出したのかは複雑な事情があり、ここではこれ以上深入りしない。

大間国生神社
 この風土記に登場する「天日別命」は、記紀には全く登場しない氏素性の明らかでない神であるが、この神を祖神とする氏族が他にもいる。それが度会氏(わたらいし)である。度会氏は伊勢神宮の創建に当初から深く係わり、以来、伊勢神宮の内宮と外宮を護り続けた一族である。この伊勢神宮創建時の功労者が大若子(おおわくご)命で、この命は度会氏の直接の祖として、外宮の近くの「大間国生(おおまくなり)神社」に祀られている。ところが、約200年後の持統朝になって、度会氏は外宮(げくう)のみの禰宜(ねぎ)に格下げされた。内宮(ないくう)の禰宜職には荒木田氏がこのとき初めて登用された。このため、明治になって神職の世襲が廃止されるまで1000年以上、両氏の本家争いは続いた。度会氏はこのように由緒ある一族であるが、彼等も一時期「天日別命」を自分たちの祖と認めていたのである。なぜ一時期なのか。その理由は定かではないが、基本的に度会氏と伊勢氏は同族だった可能性が出てくる。同族だとすれば、天照大神の伊勢遷座の受け入れ問題の謎がある程度見えてくる。それは、雄略天皇からの要請を受諾した伊勢氏は、具体的な場所として同族度会氏が支配していた度会の地を選択し、そのことを指示したといった筋道が描けるからである。伊勢国は現在の四日市・鈴鹿等の北部・中部が先に拓けた国で、現在の伊勢地方は雄略時代は未だ未開の地だった可能性が高い。そんな僻地になぜ天照大神を遷したのかは一つの謎であるが。伊勢氏が先住民族でなかったとしたら、この問題にも手掛かりが得られる。要するに、ヤマト政権が伊勢国を服属させたときに、ヤマトから行政官が送り込まれたのではないかとの推測である。その時期は3世紀末から4世紀初頭と考えられるが、その後、一世紀半、伊勢氏は北部で地盤の強化を図ると共に、未開の南部にも一族の者を入植させ、徐々に開拓させたといったことが考えられよう。

 このように考えると、なぜ雄略天皇が伊勢氏に引き受けを頼んだのか、なぜ度会の地に伊勢神宮が創設されたのかの理由を説明することができる。従って、伊勢氏・度会氏同族説、伊勢氏派遣行政官説はある程度の史実性があることになる。

 一時期、度会氏は「天日別命」を祖としたことを述べたが、そのことが記されているのが『倭姫命世記』である。この世記が完成されたのは、鎌倉時代初期から中期にかけてとされているが、これには原本があり、その原本を『太神宮本記』とする有力な説がある。この『太神宮本記』は度会氏によって編纂されたと考えられており、その編纂時期が日本書紀撰上(720)後、間もなくと想定されていることから、『伊勢国風土記』の完成時期と重なってくる。風土記は和銅6年(713)にその撰進が諸国に通達され、その命に従って諸国が編纂したもので、720年前後にはかなりのものが撰進されたらしい。この時期に『伊勢国風土記』も完成されたとすると、『太神宮本記』の編纂時期と重なってくる、というのがここでの想定である。年代的には本記の方が少し後になったようである。理由は、風土記の中で天日別命は大活躍するが、本記の中即ち『倭姫命世記』の中では、「先祖天日別命」と簡単に注書きされているだけだからである。要するに、伊勢氏の先祖として天日別命が登場したことを風土記で知った度会氏も、これに便乗して自分達の『太神宮本記』に書き添えた、といったことが考えられるからでる。このことに伊勢氏がクレームしていないことは、両氏が本来的に同族であったことを意味していることになる。更に、この「天日別命」は新しく伊勢氏によって創作された祖神である可能性が出てくることになる。何故、創作したのか?この問題についてここではこれ以上深入りしないが、何れ明らかになってこよう。(続く)

前回の「古代ヤマトの遠景」は、下記からご覧頂けます。
☆古代ヤマトの遠景(19)・・・【伊勢神宮】

上記以前の「古代ヤマトの遠景」のバックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

編集後記
 今週のトピックスで紹介されたサーマルリサイクル・焼却施設の調査に、2、3度同行しました。「街中に貴金属が転がっている」と携帯電話から貴金属を回収している施設とか、石油の代替燃料として廃プラスチックを利用しながら発生した熱を更に利用するところなど様々でした。仕事を通し資源の有効利用や地域産業へ貢献していることを誇りに働く人たちの姿が、とても印象的でした。このように、循環型社会の展開には多くの人に支えられているのですね。(HI)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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