NO.162
発行年月日:2008/01/31

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トピックス
◇プラスチックとリサイクルに関する出前授業の実践

(社)プラスチック処理促進協会 広報部 西谷吉憲


随想

見えるお金と見えないお金(連載12)

国際連合大学 上野 潔


お知らせ
ハロッズバッグ・プレゼントクイズ本日締切!
ENEX2008 第32回地球環境とエネルギーの調和展 出展案内
環境を考えた北海道の住宅づくり In 旭川 のご案内

編集後記

トピックス
◇プラスチックとリサイクルに関する出前授業の実践

(社)プラスチック処理促進協会 広報部 西谷吉憲


発泡スチロールのリサイクル実験
魚箱をリモネンで減容化→
エタノール で分離→
そして再び発泡スチロールのボールを作る
(中央区立久松小学校)
ごみの分別と身の回りのいろんな
プラスチック製品を熱心に勉強
(杉並区立杉並第二小学校)
 「ウァー!」、「ウォー!」子供たちの歓声が理科室に響きます。当協会が行っている出前授業のいつもの光景です。現在、小学校での理科の実験と言えば、4年生の2学期でようやくマッチの点け方、アルコールランプの取り扱いを学習する程度ですから子供たちにとって、たとえば発泡スチロールのリサイクル実験で魚箱やトレイをリモネンで減溶化し、次いでエタノールでポリスチレンを分離、最終的にアセトンを発泡剤にして発泡スチロールのボールへ再生するリサイクルの流れが体験できたり、PETボトルから繊維(綿)を作ったりするリサイクルの実験は全てが新鮮で驚きの連続です。
http://www.pwmi.or.jp/public/news200705_1.html

 循環型社会形成をめざし1995年に制定された容器包装リサイクル法によりPETボトルやプラスチック容器包装のリサイクルが始まり、一般生活者から私どもの協会へのプラスチック廃棄物に関する問い合わせが数多く寄せられるようになりました。とくに小学生では夏休みの自由研究のテーマとしてPETボトルや発泡スチロールのトレイなどのリサイクルについての問い合わせも多くありました。同時に当協会としても2002年にスタートした小中学校での「総合的学習の時間」の4つのテーマの1つに“環境”が取り上げられたことからプラスチックとリサイクルについて正しい知識を教育現場へ届ける良い機会になるのではと考えました。これが正に当協会が環境教育支援に取り組んだきっかけです。最初の取り組みとして教材コンテンツ『プラスチックとプラスチックリサイクル』を制作、HP(ホームページ)上に開設しました。プラスチックとリサイクルについて広範囲に分かりやすく解説した『図書館』、クイズ形式で学べる『探検隊』と授業ですぐに使えるワークシート36枚が入った『先生方へ』の3つのコンテンツから構成されています。HPでは、サイトのアクセス件数は把握できるものの活用状況、特に先生方にとってどの程度役に立つものなのか分からなかったことから実際に3校でワークシートを使っての検証授業を行い、その有効性を確認することが出来ましたが、学校を訪問した際、職員室の先生方の机の上にはネットに繋がるパソコンがないという現状を目の当たりにし、HP上で一方的に教材(情報)を提供するだけでは実効ある支援が出来ていなかったことを思い知らされました。

 この反省に基づき直接教育現場を支援するため教師向けの研修と出前授業に取り組み始めました。2005年度6校、2006年度14校、本年度は25校と先生の口コミで着実に拡大、すでに授業を受けた子供も延べ3000人を超えるまでになっております。ごみ問題、環境問題、プラスチックの有用性、リサイクルなどについて本格的な理科の実験とともに学んだ体験はきっと大きくなっても記憶に残るものと思います。また出前授業による予想外の成果としては、子供たちだけではなく先生方にもプラスチックとリサイクルについて正しい理解と好印象を持ってもらうことが出来たことです。このことは将来的に大きな財産になると思います。
 子供たちや一般の人たちに目に見える体感、驚きや発見を通して化学の面白さ、プラスチックなどの化学製品と環境問題について理解してもらうことが大切であり、日本化学工業協会の夢化学での実験ショーや塩ビ関係では、昨年末のエコプロダクツ展でのVEC・JPECのプレゼンやVECの出前授業などの取り組みも狙いは同じです。

 これまでの出前授業を通して先生方から寄せられた要望の中で、すでに補助教材としての副読本やサンプルボックスも完成し、更に本年度は、リサイクル実験のマニュアルをHPに加え充実を図っております。

 本来、当協会の出前授業の狙いは、決してイベント的なものではなく場合によって社会科であったり、理科であったり総合学習の環境であったりしますが授業の年間計画の中に組み込んで実施することにあります。よって、学校側から申し込みがあった場合、必ず事前打ち合わせを持ち、それまでの学習内容、出前授業への要望を確認し、それに基づき内容(「導入」から「まとめ」まで)を検討し計画書を提出した後実施しております。
 また、これまでの出前授業は主に関東圏中心でしたが、昨年度後半から会員会社の地域貢献活動の一環として取り上げていただき本格的に地方展開に着手しております。
 HPのコンテンツ制作から5年経過し、ようやく形になってきたプラスチック環境教育支援ですが今後とも当協会広報活動の基盤事業と位置付け、会員会社との連携で着実に発展させていこうと考えております。

 資料や出前授業をご希望の方は是非下記にご連絡ください。
 TEL:03−3297−7511
 FAX:03−3297−7501
 URL:http://www.pwmi.or.jpのお問い合わせからメールで
 広報部 西谷(にしや)、神谷


随想
見えるお金と見えないお金(連載12)
国際連合大学 上野 潔

 EPR(Extended Producer Responsibility;拡大生産者責任)の理念が曲解されて何でも生産者にお金を負担させればよいとの考えが広まっています。そこでどうしても指摘したいのが、「見えるお金」と「見えないお金」の問題です。
 リサイクル処理料金が製品の中に含まれているとメーカーが処理費用を負担しているように感じていかにもいいように見えます。しかし、「見えるお金」と「見えないお金」という見方で見てみると、解釈がずいぶん変わってきます。

 典型的な「見えないお金」が、間接税と住民税でしょう。ほとんどのサラリーマンの所得税も源泉徴収されるから見えないお金に分類されます。「見えるお金」の典型が実は家電リサイクル券なのです。というのは、冷蔵庫が使用済みになって捨てるときに、現実に5000円なり6000円を取られるわけですから誰でもわかる「見えるお金」なのです。その反対に、欧州の家電リサイクル方式では新製品を買うときに処理料金が含まれていますから、消費者にはリサイクル処理料金が一体いくらか分かりません。典型的な「見えないお金」になっています。

 EUの付加価値税は、EUに加盟する以上は15%以上の付加価値税を義務づけられています。1カ国だけが「国の事情によって付加価値税を5%にしたい」などとするとEU統合の経済システムが崩れてしまうからそれを許さないのです。
 付加価値税は全部、「見えないお金」、In-Visible Feeになっています。例えばドイツはこの間、付加価値税を値上げして19%にしました。しかし実際に買い物をするときに、商品の価格が上がったことは分かるけれども、一体どのぐらい上がったか分からないのです。(もちろん計算すれば分かります)だから今回の付加価値税の値上げも日本のマスコミは張り切って報道しようとしましたが、肝心のドイツではあまり大きな社会問題に発展しなかったようです。
 実は日本の消費税5%も今までは外税として別表示をしていましたが、総額表示が義務付けられてから消費税も見えないお金になっているのです。In-Visibleにすると払った金額の内訳が分からなくなってしまうのです。105円のガムは5円が消費税だろうとわかりますが、800円の日替わりランチの消費税はいくらなのか計算しなければ分からないのです。(普通の人はいちいち計算などしないでしょう)

 「見えるお金」「見えないお金」のそのほかの典型的な例として、あまり気がつかないけれども、自動車の路上放置車(不法投棄車)の処理料金があります。
 新車を買うときに、購入者もディーラーもたぶん知らないだろうが、2000円ぐらいの不法投棄車の処理金が入っているのです。ディーラーに質問しても多分入っていないと言うでしょう。実はメーカーの利益の中から寄付しているのです。典型的な見えないお金です。最近は金属価格が高騰していますから車の不法投棄は少なくなっていると思いますが、その前から車の不法投棄はあまり大きな話題にならなくなっています。車が不法投棄されても路上放棄車処理協力会から自治体に対して1万円程度の寄付金(処理料金)が出るのです。だから不法投棄があっても自治体はあまり困りません。(もちろん困っていると言うでしょうが)自動車処理業者にとっては仕事になることだから歓迎です。最近ではもっと寄付金の範囲を拡大すべき(平成19年1月全国市長会提言)の声もあります。おそらく今後も自動車メーカーの社会的責任として寄付の形で支払われるのでしょう。

 家電製品の不法投棄でも同じようなことをいう人がいます。家電製品の不法投棄は年間に15万台程度で安定的に推移していますが、不法投棄は製造メーカーの責任で処理すべきだという意見です。
 不法投棄の処理をメーカー責任にするのは簡単です。自動車に比べて数が多く、販売単価が安いから冷蔵庫1台当たりほんの数円、販売価格を上げれば、目立たぬ単価ですから反発は出にくく、不法投棄を処理をする費用はすぐ解決するのです。実際は競争が激しく製品価格の値上げは難しいのでメーカーの利益の中から処理料金を拠出することになるのでしょうが、要するに「見えないお金」にすると消費者は文句がいえないのです。
 しかし、すぐ判ることですがこれは法律を守る善良な消費者に犯罪行為を助けさせていることになるのです。「泥棒さんも困っているのだから皆の税金で盗まれたお金を被害者に上げ、泥棒さんを捕まえるのはやめましょう」と言う考えです。違法者が得をする典型的なモラルハザードなのです。「見えないお金」にすると為政者は楽なので喜び、善良な人の権利がいつの間にか侵害される可能性のある制度であることをよく認識する必要があります。(了)

前回の「信念がある分野は科学にならない(連載11)」は、下記からご覧頂けます。
http://www.vec.gr.jp/mag/155/index.html#zuisou

上野潔様の連載のバックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
http://www.vec.gr.jp/mag/index.html

お知らせ

ハロッズバッグ・プレゼントクイズ本日締切!

 12月から実施しておりました、ハロッズバッグが当たる塩ビに関するクイズは、本日締切となります。
 ぜひ、ご応募下さい。

詳細はこちらから!!
http://www.vec.gr.jp/

ENEX2008 第32回地球環境とエネルギーの調和展 出展案内

 樹脂サッシ普及促進委員会(Jmado)では、プラスチックサッシ工業会と協力し、下記の「ENEX2008」に出展致します。

[東京会場]
・日 時 :2008年1月30日(水)〜2月1日(金)
 10:00〜17:00
・場 所 :東京ビッグサイト(西3、4ホール)
・内 容 :省エネルギー・新エネルギーの総合展示会
・主 催 :財団法人 省エネルギーセンター
・入場料 :無料

・ENEX2008のホームページをご覧下さい。
 http://www.enex.info/

環境を考えた北海道の住宅づくり In 旭川 のご案内

 樹脂サイディング普及促進委員会、樹脂サッシ普及促進委員会では、下記のセミナーに参加し、講演を行います。

・日 時 :2008年2月4日(月)
 13:30〜17:00 (受付 13:00)
・場 所 :旭川市リサーチセンター・研修室
・主 催 :(株)日建新聞社
・参加費 :無料(定員:先着50名)
・お問い合わせ:(株)日建新聞社・編集部
       電話 : 011(726)3138

編集後記
 21日は大寒、この日から2月4日の立春までが暦の上の寒の期間、一番寒い時期です。日本列島は昨年の暖冬とは対照的に先週から寒い毎日が続いています。東京も23日は2年ぶりの雪らしい雪、協会のある六甲ビル近くの亀島川にはこの時期の北からのお客さん、冬鳥たちも寒そうに丸まっています。今年は地球温暖化防止京都議定書の約束期間が始まる年、お正月の新聞はどこも地球温暖化のことを大きく扱っていました。暦どおり寒くなってくれると何だかひと安心、変な時代になってきました。
 不法投棄処理にかかるお金を見えなくすることが結果として善良な人の権利を侵し、違法者のモラルハザードになっているという上野氏のご指摘。見えなくすること、負担を感じなくさせることで真の解決を遅らせてしまっていることが、今の日本には他にもたくさんあるような気がします。(丸茶)

VEC関連URL
●家族で学べるページ http://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー http://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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