NO.171
発行年月日:2008/04/03

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トピックス
◇塩ビ建材が“エコマーク”の対象製品に!

随想

知的財産権(連載14)

国際連合大学 上野 潔


お知らせ
PVC Newsが3/19に発行されました。

編集後記

トピックス
◇塩ビ建材が“エコマーク”の対象製品に!

エコマーク
 “エコマーク”っていったい何?読者の皆様は全員お分かりのことと存じますが、“エコマーク”は、日本初の“環境ラベル”として約20年前に誕生いたしました。“エコマーク”は、ISOでタイプI環境ラベル(第三者認証)に分類され、(財)日本環境協会の登録商標になっています。現在、日本の“環境ラベル”は、“エコマーク”のほかに、LCAデータを表示する“エコリーフ”や各メーカーが独自の基準に基づいて表示する“自主ラベル”がありますが、これら環境ラベルの草分け的存在と言っていいでしょう。ちなみに、世界のタイプI環境ラベルには、ドイツの“ブルーエンジェル”やアメリカの“グリーンシール”等があります。

 ところで、この“エコマーク”皆様も一度はご覧になったことがあると思います。身近なところでは、ノートやファイルといった文具・事務用品で良く見かけますが、エコマークの対象となっている商品は、日用品や衣服、家具から太陽電池に至るまで、約50の類型があり、実際にエコマークのついた製品は約5000ブランドに上っております。これまではどちらかと言うとオフィス用品や生活用品が中心でしたが、昨年、商品類型No.123「建築製品」の改定が行われ、我々の住環境を支える「建築資材」や「建築設備」を対象に、数多くの建築製品が追加されました。今回の改定で、その中心となったのが“塩ビ建材”です。塩ビを主要な材料として使用する「建築資材」や塩ビ製品を部材として使用する「建築設備」で、新たに10製品がエコマーク対象製品となり、その認定基準が制定されました。塩ビ建材のエコマーク対象製品は、これまで「タイルカーペット」や「上・下水道材(再生硬質塩化ビニル管)」がありましたが、今回の追加分10製品とあわせて合計12製品となりました。新たに対象となった製品には、「排水・通気用硬質ポリ塩化ビニル管」、「ビニル系床材」、「ルーフィング」、「プラスチックデッキ材」等がありますが、これらは、塩ビの特徴である、耐久性やリサイクル性の高さが評価されたものであることは言うまでもありません。

 もともとエコマークは、商品の「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられます。正に“丈夫で長持ち、おまけにリサイクルが容易な”塩ビにとって、うってつけの環境ラベルと言えます。ところが、1999年、当時吹き荒れた塩ビバッシングの嵐の中で、塩ビを使用した製品は、エコマークの対象から外されてしまうという不幸な出来事がおこりました。今現在でも、電気電子製品を中心に塩素系樹脂の不使用表示や使用を制限する基準が見られることは残念でなりません。

 しかし、ダイオキシン問題が解決されたことを背景に塩ビに対する再評価が進み始めた2005年に、商品類型No.118「プラスチック製品」の改定が行われ、塩ビを使用した製品に関する基準が明文化されました。この中で、「使用済み製品の70%を回収し、その内70%をリサイクルする」ことが基準化されましたが、「20年以上使用する製品についてはこの原則を適用しない」旨の除外規定が設けられました。すなわち、塩ビ製品の中でも建材のように長期間にわたって使用される製品は、ズバリ“エコ”であることが認められたわけで、LCAの観点からも理にかなったものと言えます。今回新たに制定された「建築製品」の認定基準は、このNo.118「プラスチック製品」の考え方に基づいています。但し、使用済み製品を回収するための仕組みや再生材を定められた比率で混合使用することは製品毎に義務付けられています。

 昨今再生紙を始めとする“エコ偽装”問題が発覚し、エコマークやグリーン調達そのものへの信頼が揺らいでおりますが、技術的根拠に基づかない基準作りや商品の認定が、結果として偽装という社会悪を生んだものと思われます。こうした中、塩ビ建材は、新たに制定された認定基準に基づいて各建材メーカーが、これまで培ってきた技術力を背景に、積極的に自社の商品の認定を取って頂く段階に入りました。先行している「タイルカーペット」については、既にエコマーク認定商品が数多く世に出ておりますが、これらの中には、LCAの効果をアピールするためにエコリーフの認証を受けている商品もあります。CSRや環境経営が叫ばれ、環境に対する姿勢や取り組みが企業の行方を左右する時代になって参りましたが、建材メーカーの方々は、今回の認定基準制定をチャンスと捉えて、是非、積極的にエコマークを取得して頂きますようお願い申し上げます。(了)

随想
知的財産権(連載14)
国際連合大学 上野 潔

 日本が世界をリードしていくための重点分野が知的財産権だと思います。日本は持続可能な社会を目指す分野でも知的財産権の取得を多いに進める必要があります。これまでも日本のものづくりの優位性は設計、製造、サービスまで多岐に渉っていますが、多くは目立たない知的財産権によって支えられてきたのです。
 製品やシステムがグローバル化し世界のどこで生産されても使用されても権利が保障されるのが知的財産権です。知的財産権に関してはWTO(World Trade Organization)の中のTRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)で国際的に権利が定められているのですが、途上国を中心に権利が侵されている事例が多発しています。

 環境分野では特にリユース、リビルドに関して、知的財産権の考え方を整理しておく必要があります。最近ではいずれも日本を代表する世界企業の発明による「レンズ付きフィルム」や「インクカートリッジ」の事件があります。どちらもサードパーティによるフィルムやインクの詰め替えビジネスの例です。安価な詰め替え製品の参入によってビジネスモデルが破壊されてしまいます。それぞれ裁判によって開発者の知的財産権が守られる結果になっています。(カメラは04年2月東京地裁、05年1月東京高裁、インクカートリッジは07年1月知財高裁大合議部、07年11月最高裁第一小法廷でいずれも開発企業が勝訴)

 世界的には消費者保護の観点から詰め替えビジネスを支持する意見も多数あります。意図的に安価な製品を販売して、後から高価な純正消耗品を買わざるを得なくするビジネスモデルに疑問を感じる人は沢山います。しかし、膨大な開発費と技術者の労苦を思えば、他人の開発製品を無断で横取りして手を加えて商売をするのはやはり犯罪です。もしも詰め替えビジネスを認めると、今後は「詰め替え不可能」な製品開発が進むでしょう。今回の裁判は日本よりも世界で注目されたとも言われています。日本が今後も環境を配慮した先端技術で生きることを選ぶのであれば知的財産権を重要視することは当然であると思います。

 販売された製品はその時点で製造に関する特許権は消失しています。購入者は購入した製品と同じ製品を製造して販売すれば特許権に抵触しますが、修理して販売する場合は抵触しないので、裁判所の判断基準は、対象製品が「製造された」のか「修理された」かによるとされています。

 環境のためと称して無条件にリユース促進を唱える有識者や消費者がいます。日本だけでなく世界的にもリユースは良いこととされています。
 高度な工業製品をリユースする場合は、使用する前に専門知識を持った技術者による修理や改造が必要です。不適正な修理や改造はPL法(製造物責任法)で保護されるべき消費者の安全だけでなく、新たな環境汚染を生む恐れがあります。そのために組織的に大量に修理改造(リビルド製品、リマニュファクチャリング製品と呼ばれる)されると、知的財産権の懸念が生じます。異なるメーカーや複数製品から中古部品回収をして、再生産するリビルド製品が先進国からも輸出されるようになっています。もちろん世界用語になった「もったいない」は当然のことであり日本の美しい習慣を世界にも広めたいと私も願っていますが、知的財産権を考えた上でのリユースの必要性を主張しているのです。

 最近、I社、N社、S社などの世界的に有名な電気電子企業が環境保護関連の特許を無償公開することがニュースになっています。これは一見すばらしいことのように見えます。環境、安全、に関わる発明を知的財産権として企業が独占することに疑問が出るのは当然だからです。しかし発明企業、発明者個人に対する対価を適正に評価することがまずは先決であり、重要だと思います。
 環境保護関連だからといって、その知的財産権を無償譲渡するようなことは、環境を売り物にする企業のパフォーマンスになっているのではないでしょうか?このために苦労して取得した知的財産権が無償開放されたら、今後は環境、安全、に関する知的財産の取得意欲がなくなる懸念があります。知的財産権本来の目的である「技術の公開」が阻害され企業や個人の秘密にされることも考えられます。もっともこれらの世界企業も本業に関する知的財産権はきちんと独占しているようですから、彼らにとっては「環境」は刺身のツマなのかもしれません。

 知的財産権は多くの技術者が考案した無形の結晶です。日本が環境分野で世界に貢献するのであれば、ODAによる環境分野の知的財産権の無償供与(当然、発明の対価はODA予算委よって発明者に支払われる)などの方策は考えられないでしょうか?箱物支援とは一味異なるユニークなODAになります。

 製品だけでなく、プロセスにも沢山の知的財産権を所有する化学産業界の諸兄はどのようにお考えですか。(了)

前回の「見えるお金と見えないお金(連載13)」は、下記からご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/166/index.html#zuisou1

上野潔様の連載のバックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

お知らせ

PVC Newsが3/19に発行されました。

 PVC News 64号(塩化ビニル環境対策協議会)が発行されました。

◇トップニュース
動き始めた「塩ビリサイクル支援制度」
◇視点・有識者に聞く
高まる科学コミュニケーションの必要性
日本科学未来館 工学博士 山科直子氏
◇リサイクルの現場から
(株)川島織物セルコンのタイルカーペットリサイクル
◇広報だより
反響呼ぶ、中学校での「環境出前講座」
http://www.pvc.or.jp/news/64-7.html


最新号、バックナンバーとも、こちらからご覧頂けます。
http://www.pvc.or.jp/

ご希望の方には、発行ごとにお送り致します。
送付先を連絡下さい。
info@vec.gr.jp

編集後記
 新入生や新入社員にとって一般的には期待9割、不安1割で新しい人生を迎える4月となりました。毎年、この季節になると(財)社会経済生産性本部が新入社員の特徴を表すタイプを発表しています。今年度の新入社員のタイプは「カーリング型」だそうです。冬季オリンピックでお馴染みになったスポーツですが、新入社員は磨けば光るとばかり、そっと背中を押してブラシで“こすり”つつ、周りは働きやすい環境作りに苦労する。少しでも“こする”のをやめると、減速したり止まってしまったりしかねないし、売り手市場入社組だけに会社への帰属意識は低く、“こすり”過ぎると目標地点を越えてしまったり、はみだしたりすると評しています。今週のトピックスはエコマークですが、技術が伴わないのに世の中がエコだ!エコだ!と“こすり”(騒ぎ)過ぎて、ドンと背中を押したために偽装に至ったのではないかと。(古鍋)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

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