NO.198
発行年月日:2008/10/23

今週のメニュー

トピックス
◇日本経済新聞2008年10月21日(夕刊)
「家電大手、塩ビを削減」記事について

随想
食べ物を電子機器に使うな(連載21)
国際連合大学 上野 潔

お知らせ
【NEW】 VECホームページを更新しました。

編集後記

トピックス
◇日本経済新聞2008年10月21日(夕刊)
「家電大手、塩ビを削減」記事について


 日本経済新聞に上記の記事が掲載されましたが、記事内容が誤解を生じる内容となっております。特に、誤った理解により、塩ビとダイオキシン発生を結びつけて問題視させるような記事となっております。事実関係は以下の通りです。弊協会として、日本経済新聞社に抗議を申し入れておりますが、本件についての照会等ございましたら、弊協会まで連絡いただければご説明させていただきますのでよろしく御願いいたします。環境素材としてすぐれた性能をもつ塩ビ製品について正しい理解をいただき、その利点を生かしてご使用いただければ幸いです。

(1)ダイオキシンの発生について

 上記の記事において、「塩ビそのものは無害だが、低温で焼却するなどの不適切な処理で、有害物質とされるダイオキシンを大量に発生する可能性がある」と述べていますが、この事実認識は間違っています。実際には、塩素を含んだものであろうがなかろうが、あらゆるものを焼却する際、低温で焼却するなどの不適切な処理をすればダイオキシンを発生する可能性があります。また、ダイオキシンの発生量は、焼却するものに含まれる塩素の濃度にはほとんど影響されません。
 そもそも不適切な燃焼処理においてでも発生するダイオキシンの量は、焼却するものに比べて極めて微量です。焼却処理される一般廃棄物などの中には、発生する可能性のあるダイオキシンに含まれる塩素の量を遙かに上回る塩素が含まれています。また、その燃焼に使われる空気中にも相当量の塩素が含まれています。このため、焼却物質中の塩素量を変えてダイオキシンの生成量を調べる実験が行なわれておりますが、焼却物質中の塩素量とダイオキシンの生成量にほとんど相関が見られません。
 このため、塩ビ製品をいかなる製品で代替しても、同じ焼却条件下ではダイオキシンの発生を抑えることはできないと考えられます。他方、適切な焼却を行なうことによりダイオキシンの発生量は劇的に削減することができます。実際、焼却炉からのダイオキシン発生量は1997年のピークに比べて2006年には30分の1以下となっており、空気中のダイオキシン濃度も基準値の1/10以下となっております。(1997年時点での焼却施設からのダイオキシン発生量を元に計算しても、焼却した一般廃棄物中には発生したダイオキシン中に含まれる塩素の1000万倍〜一億倍程度の塩素が含まれていたと考えられます。また、その焼却に使われた空気中にも数百倍程度の塩素が含まれていた可能性があります)。
 実は、かつてダイオキシン発生の懸念から、1999年にすべての塩ビ製品はエコマークの対象から外れましたが、上記のような理解が進んだため、2005年に復活し、以降現在までに12品目がエコマーク対象となっています。

(2)塩ビ特有の柔軟性や耐久性を確保するための添加物について

 上記の記事のおいては、塩ビ特有の柔軟性や耐久性を確保するために添加する化学物質も多品種にわたるため、すべての化学物質の把握や管理作業が他の樹脂にくらべて煩雑とされると述べています。確かに、塩ビには可塑剤や安定剤など様々な化学物質が添加されて使用されることがあります。しかし、それらについて安全性データはよく整っており、多用される物質については詳細なリスク評価も行なわれております。結果として、安全に使用する管理手法が確立されております。

(3)塩ビの有用性について

 上記の記事においては、塩ビのもつすぐれた特性についての言及がありません。塩ビは様々な利点を持ちますが、中でも耐久性にすぐれ、また、自己消火性があります。省石油型の樹脂であり、リサイクル性能も優れています。成形性、着色性、風合いなどにもすぐれた特長を有します。
 家電製品ではしばしば発火事故が報告されますが、塩ビはそのリスクを防ぐことに貢献します。また、省資源でCO2削減においてもすぐれた性質をもっています。このような性能は、代替品ではなかなか実現が難しいのが現実です。

(4)終わりに

 このように、上記の日本経済新聞社の記事は、科学的に誤った認識にもとづいた記事となっています。本来環境性能に優れた塩ビ製品を不当に問題視する内容となっており、誠に遺憾です。皆様方には、塩ビ製品について正しい理解をいただき、その利点を活かしてお使いいただければと思う次第です。

塩ビ工業・環境協会
東京都中央区新川1−4−1
電話03−3297−5601
https://www.vec.gr.jp/


注) 当初掲載(10月23日)の原稿に一部誤記がありましたので修正を加えました。
お詫び申しあげます。

随想
食べ物を電子機器に使うな(連載21)
国際連合大学 上野 潔

 洞爺湖サミットのディナーで16種類ものメニューでディナーを楽しんだG8首脳がアフリカ食料危機について話し合ったのは茶番だとの報道がありました。この手の論陣を張るマスコミには、そういうあなたは昨夜何を食べましたか?と質問したくなります。
 まさに骨と皮になったアフリカの子ども達の映像が出てくる中で、丸々太ったアフリカ首脳が、大勢の随行員を連れてファーストクラスの航空機で来日し、高級車でサミット会場に乗り込む姿をみて、1枚のビスケットが子どもの命を救うなんていうポスターが白々しく見えます。私たちの税金からアフリカに援助してもあの人たちの脂肪を厚くするだけなのではと考えてしまいます。

 バイオ燃料がブームになり始めた2007年2月、衆議院調査局でもったいない学会会長の石井吉徳先生が「食べものを車に奪われて良いのか」と報告しています。そして2008年の7月16日にOECD(経済開発協力機構)はバイオ燃料の利用促進政策の見直しを求める報告書を出しました。石井先生の主張と同じ内容です。日本のバイオ政策はとうもろこし等の食料からではなく、茎や海藻からエタノールを得るという作戦です。研究は大いに進めるべきと思いますが、実用する前にLCAによる科学的な評価が必要だと思います。

 さて、今回の話題は植物由来プラスチックです。植物由来プラスチックを照明器具、パソコンや携帯電話に使用する事例が増えています。「カーボンニュートラルで環境に優しい電子機器」の誕生と宣伝しています。電気電子機器だけでなく、自動車のマットなどにも使用され「環境に優しいプラスチック」と宣伝しています。自動車の場合はケナフなどの非食用繊維からのプラスチックのようですが、それなら布製や塩ビ製のマットのほうがはるかに環境によいと思います。

 私は、以前から石井先生の真似をして「食べ物を電子機器に奪われて良いのか」と言っています。しかし私の理由は「飢餓のため」だけではありません。植物由来プラスチックが「リサイクルを阻害する」からなのです。
 VECメルマガの読者はご専門でしょうから釈迦に説法ですが、「生分解性プラスチック」と「植物由来プラスチック」とは全く異なります。「生分解性プラスチック」に「石油由来プラスチック」を混合して機械特性を上げたのが「植物由来プラスチック」です。

 バイオ燃料は、使用されれば消えてしまうのに対し、「植物由来プラスチック」は使用済みになっても分解されて土に戻るわけではありません。日本が世界に先駆けて実現している、プラスチックの水平型自己循環(最近は「水平リサイクル」といっていますが)のシステムを破壊するのです。理由は簡単です。リサイクルプラントで回収されている大量の石油由来プラスチック(PP,PS,ABSそして塩ビ)に、植物由来プラスチックが混じると、プラスチックが汚染され高品質の水平リサイクルが不可能になります。
 幸い、まだ使用量が少ないのでリサイクルプラント回収される懸念はないのですが、外観だけでは「植物由来プラスチック」と石油由来プラスチックの区別は付きません。全てを植物由来プラスチックにするならまだよいのですが、大型製品の中に部分的に植物由来プラスチックを採用されたらお手上げです。比重も極めて似ているため比重選別も困難です。小さなマークを付けたとしても、概観を塗装されたら区別することは不可能です。植物由来プラスチックはプラスチック全体から見たらごくわずかな量かもしれません。しかしわずかな量でもリサイクルシステムが破壊されるのです。ジェット機のエンジンがわずか1本の虫ピンで止まるのと同じです。偽エコ商品に騙されてはいけません。

 塩ビ工業・環境協会の会員企業では植物由来プラスチックも生産されているかもしれません。「環境に優しい」という植物由来プラスチックがせっかく構築したリサイクルシステムまで破壊しようとしているのです。植物由来プラスチックそのものが悪いのではありませんが、それを混在して使用する組み立て産業の責任は大きいと思います。唯一の解決策は、植物由来プラスチックを使用した組立て産業の会社が自社製品を自社の工場に回収することです。
 リースレンタルシステムが中心のコピー機などの産業ではクローズドリサイクルを実現しているためそれが可能です。そして実際に実行しています。しかし不特定多数の消費者を対象に売り切る商品では自社引き取りが可能でしょうか?「そんなことできないよ!」それならリサイクルを阻害する無責任な使用促進はやめることだと思います。もちろん、食料を電子機器に使うことも良くありません。(了)

前回の「今日も、暇です(連載20)」は、下記からご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/195/index.html#zuisou
バックナンバーは、以下のアドレスからご覧頂けます。
https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

お知らせ

【NEW】 VECホームページを更新しました。

1. 9月度の塩ビの生産出荷データ掲載。
https://www.vec.gr.jp/enbi/seisan.htm
2. トピックスに新しい記事を掲載。
日本語版 https://www.vec.gr.jp/topics/index.html
英語版 https://www.vec.gr.jp/english/topics/index.html


編集後記
 総務省の「住宅・土地統計調査」をご存知ですか?5年に1度、全国から抽出された約350万世帯を対象に行われているものですが、今年の10月1日現在で実施され、幸か不幸か私の世帯も対象となりました。
 調査内容は、住宅や世帯人員に関する事柄などでした。その中に「省エネルギー設備等」として、「太陽熱温水器等」、「太陽光発電機器」、「断熱窓(二重サッシ又は複層ガラスの窓)」の有無を聞く設問がありました。「断熱窓」に関しては、昨今、省エネだけでなく地球温暖化防止(CO2排出削減)の為にも住宅の断熱の重要性が認識されてきたので、新しく調査項目に加えられたのかと思いましたが、実際は前回の平成15年から調査されていました。当時、全国で「あり」と答えた世帯は18%とのことで、思ったより普及が進んでいる印象を受けました。5年前に比べ今回の調査ではどうなるでしょうか。
 実は・・・私は小心者なので、調査票に記入しながら「これに選ばれたから、裁判員には選ばれないと良いなぁ」などと思ってしまいました。(自称ハチドリ主婦)

VEC関連URL
●家族で学べるページ https://www.vec.gr.jp/kids_new/index.html
●塩化ビニル環境対策協議会 http://www.pvc.or.jp/
●樹脂サイディング普及促進委員会 http://www.psiding.jp/
●樹脂サッシ普及促進委員会 http://www.jmado.jp/
●メールマガジンバックナンバー https://www.vec.gr.jp/mag/index.html

■メールマガジン登録解除
メールマガジンの送信希望登録・解除は下記URLよりお願いします。
https://www.vec.gr.jp/mag.html
■プライバシーポリシー
当協会の個人情報保護に関する考え方については、
下記のページをご覧ください。
https://www.vec.gr.jp/privacy/index.html

◆編集責任者 事務局長  東 幸次

■東京都中央区新川1-4-1
■TEL 03-3297-5601 ■FAX 03-3297-5783
■URL https://www.vec.gr.jp/  ■E-MAIL info@vec.gr.jp